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天井のヒーターに向かって暖を取る
ワオキツネザル
一気に秋が訪れ足早に冬を迎えようとしています。本来寒冷地に生息する動物たちも断熱仕様に衣替えです。エゾシカの鹿の子模様が消えると冬が間近に迫っていることを実感します。夏期開園も気づけばあっという間に終わろうとしています。予想もしなかったコロナ禍での2年間、開園できないこと、行事ができないこと、うれしいことを大きな声で伝えられないこと、ブレーキを踏みながらの綱渡りが続きました。動物園の存在って何だろう?そんな不安もいだいてしまう中で過ごしてきました。動物園の動物たちには当たり前の日常の営みが続いていること、まずはそこを伝えていこうと試行錯誤をしてきました。今年度に入り、少しづつ私たちも日常を取り戻し多くの方が動物園にも足を運んでいただける状況になりました。もぐもぐタイムを始め中止していた行事の再開や新規の行事にも取り組めました。えぞひぐま館のオープンを象徴に身近な野生動物との関係を知り考えるきっかけになるフォーラムの開催、北海道内で保全活動などを行っている団体のオリジナルグッズの販売を行うアニマルハッピーマーケットの開催、ボルネオでのボルネオゾウのレスキューセンターの2期工事に向けての活動の再開準備なども進めることができました。 冬期間は多くの中規模の改修やリフォームを行います。ホッキョクグマ館では空調設備の全面改修、子供牧場のゲート改修、そしてチンパンジーとボルネオオランウータンの通称サンルーム増設です。春や秋の肌寒い季節のための遠赤外線ヒーター付きの小部屋を屋外放飼場に作ります。冬期間は屋外放飼の機会が減るので、この時期での工事となります。すでにサル舎、テナガザル舎には増設済みです。ガラス越しにはなりますが人も動物もお互いに間近で観察ができます。サル舎ではワオキツネザルが天井に設置されているヒーターを見上げるように足を投げ出して座り両手を広げ暖をとる姿がよく見られます。ワオキツネザルは夏期でも朝や夕方太陽に向かって同じ姿勢をとり日光浴をします。体温調整機能が発達していない、代謝が低いための特徴的な行動です。 さらにキリンの結の事故死に伴い検証と反省をし、多数箇所の改修工事を最優先で進めています。制作などに時間を要するものもあるのですが順次改修は行い一日でも早く終えるように取り組んでいます。 冬期に向けてコロナ対策は継続していかなければならない状況は続きますが、これからの季節、動物園としても気になるのが高病原性鳥インフルエンザです。緊張感を持ち皆様を迎え入れられるように取り組んでいきたいと思います。
令和4年11月15日
旭山動物園 園長 坂東 元
(7/5に誕生した2頭のレッサーパンダ)
すっかり秋です。今年は様々なイベントも行い充実した年を過ごしています。ドングリも豊作のようで旭山近郊でもヒグマ出没の情報を聞かなくなりました。ヒグマたちも山でたっぷりと栄養をつけて冬に備えることができているといいなと思います。ただし来年に備えて、旭山はヒグマにとっていい所なんだけど居心地が悪い山にしなければいけません。関係機関と連携して協議をし具体化していきます。心配は旭山近辺でもデントコーンの作付面積が増え続けるであろうこと。ヒグマにとってもとても魅力的な食べ物です。食糧自給率、家畜飼料の自給率を増やすことは日本として重要な課題です。試行錯誤しながらヒグマとの折り合いをつける方法探り続けていくことになるでしょう。 さて、レッサーパンダの子は巣箱から出てくるようになり、アビシニアコロブスの子は母親から離れ兄弟と遊ぶ時間が増えてきました。そうそうホッキョクグマのゆめもたくましく成長しています。ここまで来ると早く雪が降らないかなと思ってしまいます。雪と戯れるゆめの姿を思い描いてしまいます。 そして9月に入りヤギ、ライオンの出産と続きました。ライオンは猫科唯一、雄雌共同で子育てをします。安全を保障する雄ライオンがいる環境下だからこそ子供たちは実に無邪気にじゃれ合いながら成長していきます。 今年は我慢する、何かできることを探すのではなく、やること、やらなきゃいけないことを追いかけ具体化するスタートの年になりました。空白の2年間を一気に取り返さなければとの思いも強く持ちました。今年は悔いを残さず締めくくりたいと思います。
令和4年10月11日
(えぞひぐま館で「ヒグマと共に
暮らす未来」を考えてみませんか?)
お盆期間の夜の動物園も無事に終了しました。期間を通しての来園者はコロナ以前の8割ほどでしたが、16時以降の夜間の部の入園者はコロナ以前よりも多くの方が来園されました。3世代そろっての方々、若い世代の来園者が多い印象を持ちました。
8月に入り、旭山公園でヒグマの目撃がありました。例年のことなのですが今年は状況が違う可能性があります。この時期に郊外で目撃されるヒグマは、親から離れた若い雄グマが自分の生活圏を求めてさまよい出てくる「一見さんグマ」がほとんどで「そのうちいなくなる」のですが、今回は自分も目撃し、旭山のとんこよりも体格の良い成獣でした。
今年は21世紀の森から旭山近郊にかけて家庭菜園などの食害が多く、足跡から複数のヒグマが食べ物を求めて出没しているようです。ヒグマ注意報が発令される事態になっています。
庭先の被害は気づきやすいですが、山や川に隣接する農地の「盗み食い」には気づきにくいのが実態に思えます。エゾシカ、アライグマも多く生息しているのでヒグマの被害だけを特定するのも困難だと思います。夏から秋にかけては山の恵みは非常に乏しい時期。反対にヒトの生活圏では実りの時期になります。ヒグマが本格的にヒトの生活圏を取り込み始めた兆候なのかもしれません。
と言うわけで、今年は旭山近辺を拠点に活動する長期滞在型ヒグマ出現の可能性があります。ヒグマはヒトを狙って旭山に現れたわけではありませんが、不意に出会ってしまうと危険なので旭山公園は封鎖しています。ただ人払いをするとヒグマにとってはますます居心地のいい場所になります。対応は難しいですね。
今は本来臆病で慎重、さらに冷静にヒトの動きを観察しているヒグマなので、日中ヒグマを目撃することはほぼありません。というかヒグマがヒトと出会うことを避けてくれています。ヒグマの良心に頼った私たちの日常が続いているとも言えます。
でもこの関係だけは壊してはいけません。この関係を壊す一番の原因は食べ物です。ゴミのポイ捨が原因でヒトと食べ物が紐づくとヒグマがヒトに積極的に近づく「悪いクマ」に豹変させてしまう可能性が高まります。
まずは山であろうが郊外、市街地であろうがゴミのポイ捨てだけはしないように!心がけましょう。
令和4年9月14日
(ダチョウの親子が見られるのは、
国内で旭山動物園だけかも?)
7月に入り旭川も夏本番です。今年は6月に暑い日が少なく、どうなるのかなと思っていたら暑さが来ました。新型コロナ第7波か?と言ったニュースも聞こえる中どんな夏休みになるのでしょう?今年は3年ぶりに小学校高学年対象のサマースクールも行う予定なのですが…。 さて、先月に続きダチョウの雛ですが順調に成長しています。まだまだ小さいのですが、足も伸びてダチョウのプロポーションになってきました。屋外放飼場では雛たちが走り回り、よく食べとにかくよく運動しています。親は無関心かというとそうではなく、特に雄親は周りの気配に気を配っています。首をかしげるように片方の目で上空を見上げている先には遠くで旋回しているトビが見えます。親が安心できると判断できるくらい、僕が見ていると種の判断ができなくなるくらい豆粒の方に小さく見える遠くに去るまで目で追っています。これは雛がいないときには見られない行動だったので、雛に危険が迫らないように警戒しているのだと思います。カラスに関しては近くを飛び回ったりすることがあるのですが、かなりな勢いで追い払っています。 アフリカでは雛を狙うチーターなども追い払うと言われています。所狭しと走り回る雛たちを見ていて、ふとライオンの子育てを思い浮かべました。子どもたちが無警戒にじゃれ合うことができるのは、周囲に圧倒的な存在感を持ちにらみをきかせる雄ライオンの存在があること。ダチョウの雄親の姿がライオンに重なりました。 あっ、余談ですが日本で親子で生活しているダチョウを見られる動物園はおそらく旭山動物園だけなのですよ!ちょっと鼻高々だったりします。 先日、レッサーパンダの子も誕生しました。すくすくと成長しています。命の営みは途切れることはありませんね。
令和4年8月12日
(1年もすると、ひなは親と同じくらい
の大きさに成長します。)
7月1日、55回目の開園記念日も無事に迎えることができました。今年は7月1日2日とクイズ大会等のイベントも実施しました。さらになんと市長のインスタライブも行いました。今でも視聴できるので 旭川市か旭山動物園の公式インスタを是非見て下さい!と過去形で書いていますが、実は手紙を書いているのは6月中旬です。こんな報告ができるように企画をしています! 6月は珍しくうだるような暑い日がなく穏やかな日々が続いています。ほんと3年ぶりに幼稚園の遠足や宿泊研修、修学旅行などで子どもたち、学生さんの姿が多くなりなんだかほっとする園内の雰囲気が続いています。 ホッキョクグマ、ピリカの子はぐんぐん成長していています。気が早いですが雪の中ではしゃぐ姿を想像してしまいます。旭川の冬を誰よりも満喫するのはきっとこのピリカの子になるでしょう(どんな愛称になっているでしょうかね)。 動物園では嬉しいことが続いています。ダチョウの誕生です。しかも自然孵化です。旭山動物園では過去に卵を孵卵器に入れて孵化させ人工育雛での繁殖例はありましたが、親が卵を温め孵化し育雛したのは初めてのことです。ダチョウの卵は重さが1、5キロ近くもあり雛も孵化時1キロ近くと巨大なのですがなんせ親の体重は100キロ前後もあるので、雛の体重は親の100分の1しかありません。 親と一緒にいると大きさの違いに驚かれることでしょう。足下にいる雛に気づかないお客さんがいるほどです。雛の足は短く羽色も親とは違うので、雛が地面のエサをついばむ姿は、親子だと知らなければ別の種の鳥に見えるかもしれませんね。現時点まで(6月17日)順調に生育しています。成長を見守りたいと思います。
令和4年7月29日
夏期開園を迎え、ここまで順調に開園を継続できています。子供たちの歓声が聞こえ、修学旅行の学生なども多く、コロナ以前とまではいきませんが、園内は程よくにぎやかです。個人客が多く、それぞれのペースで過ごされているので、行列などはほとんどなく、混雑した様子はありません。ホッキョクグマの子の公開や、えぞひぐま館のオープンがあり、お客さんが集中したらと心配していたのですが、うれしい誤算でした。お客さんはホッキョクグマの子「を」見に来たというより、ホッキョクグマの子「も」見に来たという感じで、密にならず、園内に満遍なくお客さんがいるようです。 ホッキョクグマ・ピリカの子は、日に日にたくましくなっています。走って泳いで、おなかがすくと授乳、エネルギーが充電されるとまた走って泳いで、たまに休憩。思わず目が釘付けになり時間を忘れてしまいます。 エゾヒグマのとんこは、こちらの想定以上に早く新居に馴染みました。土の上でごろんと昼寝をしたり、のんびりと水浴びをしたり、引っ越し前よりも表情や仕草が豊かになりました。運動量も増え、ひいき目かもしれませんが体型も引き締まってきたように見えて、惚れ惚れしてしまいます。 そして、えぞひぐま館のもう一つの目標である渓流魚の飼育。水道水を使った閉鎖式濾過循環でのチャレンジは、コンクリートの「あく」との格闘も解消し、魚が元気に生活できる水質を実現できつつあります。毎日見ていると魚の個体識別ができるようになり、習性も分かるようになってきました。 シマフクロウのひなも大きくなり、巣箱から顔が見える機会も増えました。ひなの食欲も旺盛で、父鳥が日中も魚を運ぶ姿が見受けられます。この手紙が届く頃には巣立っているでしょう。 今年は行事なども復活できそうです。楽しみにしていてください。
令和4年6月23日
この手紙を書いているのは4月中旬。夏期開園準備のため、一年で最も忙しい休園期間中です。今年の夏期開園は、約9年ぶりの大型施設である「えぞひぐま館」のオープン、ホッキョクグマの子のお披露目など、自分たちも今からワクワクしています。
エゾヒグマのメス・とんこの新居への引っ越しも無事に終わり、今は新居の寝室で過ごしていて、少しずつ慣らしている段階です。引っ越しは麻酔で眠らせて行うので、とんこにすると目が覚めたら「ここはどこ?」状態です。新居の寝室の檻や寝室の出入りの仕方などは「もうじゅう館」と同じ材質・形状にしていますが、新築の建物なので生活の気配がない無機質な空間になっています。もうじゅう館では向かいの寝室にトラがいて、にぎやかでした。とんこは、母グマが駆除されて旭山動物園で暮らすことになり、子グマの頃から今までずっと、もうじゅう館で暮らしてきました。もうじゅう館では母親にもなりました。新居に住むのはとんこだけなので、とんこも戸惑っていると思います。 でも徐々にとんこ自身の匂いや飼育員の匂い、人の出入りの気配などを感じて少しずつ落ち着ける場所になっていくはずです。とんこの生活空間として、まずは寝室と室内放飼場に馴染んでもらい、最後に屋外放飼場へ、という流れになります。もうじゅう館では発現する機会のなかった、よりヒグマらしい感性や行動が目覚めてくれると期待しています。今までよりもとんこが尊く見える、輝いて見える姿を想像しながら、えぞひぐま館を建てました。 今年、誕生から55年を迎える旭山動物園。「保全・共存のプラットホーム」を新たな目標に、スタートを切りたいと思います。 コロナ禍による空白の2年間を一気に取り戻します!
令和4年5月20日
(順調に成長しているホッキョクグマの子(3/20撮影))
さて新しい年度が始まりました。春ですね。人の移動も多い時期ですが、動物園の動物たちの移動も秋頃と春先が多くなります。真冬は吹雪などで輸送のスケジュールが狂うリスク、夏は気温が高いと動物の健康へのリスクが高くなるからです。4月と言ってもこちらでは残雪もありまだまだ涼しいのですが、本州以南はあっという間に北海道民の感覚では初夏のような暑さになってしまいます。
この原稿を書いているのは3月中旬です。昨年遅れに完成したえぞひぐま館、雪が降り積もる中での完成だったので、工事の不手際と言うことではなく雪解け後に放飼場の土が沈んでいたりあれやこれや手をかけなければならないことが出てきます。今は魚が棲める水作りに精を出しています。完成後すぐに「渓流」の水の循環を開始しました。システムや濾過の状態のチェック、擬岩に覆われているのでコンクリートやモルタルのあく抜き、水温やpHなどのチェックを継続し、ある程度安定した水質の水ができてきました。先日少数の魚を入れましたが元気もあり手応えを感じています。プチ淡水魚水族館を目指しています。ヒグマ(とんこ)のエサとしてではなくヒグマと魚の共存型飼育展示を目指しています。ただ水が流れているだけではなく、生き物の気配を感じる水があることで、とんこにもヒグマらしさが目覚める良い刺激になると考えています。来園者には水中の魚を観てふと見上げるとヒグマがいる、どうですか?ちょっと感動的ではないですか!
もう一つ、ホッキョクグマの子も順調に成長しています。生後100日を超え本来ならば巣穴から出て来ても良い大きさです。現在は産室から母親と一緒に寝室側にも頻繁に出てきて、母親にじゃれついたり走り回ったり一緒に固形物も食べ始めています。伸び伸びと運動をさせるためにもそろそろ放飼場に出す練習をしなければいけないほどの成長です。
旭山動物園は55回目の夏期開園を迎えます。充実した年を皆様と共に過ごしたいと願います。
令和4年4月18日
(今にも遠吠えが聞こえてきそうなオオカミ)
雪あかりの動物園、夜間開園も無事に終わりました。イベント的なことは一切できませんでしたが、静けさの中でオオカミの遠吠えが園内に響き渡り、とても印象的な夜になりました。すっかり定着してきたインスタライブだけは連日行い、好評をいただきました。 手紙を書いている今は2月中旬。日中の最高気温が高く、雪の少ない日が続いています。雪あかりの動物園で展示する予定だった、風船に水を入れて作る水滴型のランタンが計画どおりに製作できなかったり、水温が思ったように下がらないため、あざらし館の流氷再現も断念せざるを得ませんでした。もしかしたら、この手紙が届く3月中旬には雪解けが進み、地面が見えているのではないかと心配になります。 さて、動物たちですが、ホッキョクグマの子は生後2か月で体重約8キログラムとなり、順調に成長しています。じっとしていると縫いぐるみと見間違えてしまいそうな容姿ですが、動きに力強さも感じられるようになってきました。キングペンギンのひなは、巨大キウイのような茶色い姿から、羽根の換羽が進み、大人ペンギンに日々成長しています。 冬から春にかけての寒冷な時期は、動物への負担が少なく、引っ越しに適しています。旭山動物園からはユキヒョウ・レッサーパンダ・ゴマフアザラシ等が、他の動物園に旅立ちました。送り出すときは少し寂しさがあるのですが、いずれも新天地で新たなペアを組むことになります。命をつなぐことに期待を大きく膨らませつつ、新たに迎え入れる動物の準備も進めています。 この手紙が届く頃には、夏期開園のセレモニーができるのかな?えぞひぐま館のオープンイベントはできるのかな?など、春に向けて具体的な調整を始めなければいけません。新緑の匂いを思いっきり吸い込める春になるといいですね。
令和4年3月16日
(1/23ホッキョクグマの子ども)
年が明け2月、そろそろ春が待ち遠しくなる時期ですね。 えぞひぐま館(仮称)は、建物が完成し、今は掲示物の作成などオープンに向けて着々と準備を進めています。知床財団の掲示ブースの制作物は、知床自然センターで鋭意制作中なので、完成が今から楽しみです。えぞひぐま館は、今までの施設から一皮も二皮もむけた次世代の施設。「保全のプラットホーム」を具現化していますので、乞うご期待! それにしてもオミクロン株…。またも一寸先は闇の中です。雪あかりの動物園は、果たして実施できるのでしょうか。この先、ホッキョクグマの子が無事に成長してお披露目となったときに、手放しで「見に来てね」とは言えない状況なのでは?下手をすると、混雑回避のために、ほっきょくぐま館エリアの封鎖等も検討しなければならないのでは?とマイナス思考になってしまいます。
そんな中、旭川東高校の生徒が、クラウドファンディング「旭山動物園応援プロジェクト」を立ち上げてくれました。旭山動物園をコロナ禍から救い、もっと動物たちと人をつなぎたい!という思いで、支援を広く呼び掛けてくれています。もう、涙が出るほどうれしいです。地元の学生が、わがまちの動物園の危機を「自分事」として捉え、力になりたいと考えてくれた気持ちが、ひしひしと伝わってきます。正直、運営面でもかなり危機的な状況に追い込まれているので、とてもありがたいです。 動物園の役割は、動物たちの素晴らしさや命の尊さを感じてもらうことだと考えています。観光地のイメージが定着した旭山動物園に、危機感をずっと抱いていましたが、コロナ禍で地元からの来園者が戻ってきています。今一度、地元に根を張った動物園としての顔を取り戻すチャンスだと前向きに捉え、夏期開園に向けて準備を始めます。
令和4年2月19日
(ホッキョクグマ産室の様子)
新しい年を迎えることができました。皆様はどのようにお過ごしでしょうか。
この手紙を書いているのは12月中旬です。雪の便りはいつになるのかと心配していたら突然の吹雪です。日中溶けてツルツル路面は本当にいやなのでもうしっかり積もって下さいって感じです。今年(2021年)はキリンの放飼場に降った雨や溶けた雪が夜中に凍りスケートリンク状になって、キリンを放飼場に出せない日が数日続きました。こんなことは初めてのことでした。
今年は昨年にも増してコロナの影響を受けました。そんな中でも様々な新たなイベントなども行ってきましたが、どこかブレーキを踏みながらの状況の中、やりきった感が希薄でもありました。来年はいろいろとやりきった!と言える年にしたいですね。と言うかやりきれる状況になっているといいですね。
さて昨年はアミメキリンの出産で年の瀬を迎えました。今年はホッキョクグマの出産で年の瀬を迎えています。ホクトとピリカのペアでの繁殖です。順調に生育すると旭山動物園としては実に40年ぶりのこととなります。
覚えておられる方もいらっしゃると思いますが、当園で飼育していたシロウとユキの間で生まれた、片腕のコロが日本の動物園で初めて繁殖・成育に成功した個体でした。当園ではコロの妹に当たるハッピでの繁殖・成育を目指しましたが実現はしませんでした。ただコロの弟に当たるダイが他園に行き、そこで繁殖に成功しています。現在当園にいるルルになります。円山動物園のララとは双子の姉妹です。そして今回繁殖に成功したのが、ララの子のピリカと言うことになります。シロウとユキの代から数えると玄孫(やしゃご)と言うことになります。コロ誕生から40年繁殖に向けて様々な取り組みをしてきました。旭山動物園で生涯を閉じた個体は8頭になります。
命のバトンが引き継がれていることを改めて実感しています。そして旭山動物園もこれからもこの地で存在し続けていかなければいけない使命を改めて覚悟し新たな年を迎えたいと思います。
令和4年1月14日
フッターです。