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旭山動物園では12月に入り雪は降るのですが日中の気温が高い(といっても旭川基準)日が続き、感覚的には札幌圏のような気候でした。今年は冬休みに入ってからコロナ禍前のように来園者が多くなりました。3年ぶりに帰省や旅行という方も多いのではないかと思います。 コロナ禍での3年間は、環境問題やその解決のための一人一人の行動変容につながることを期待しての活動は必ずしも積極的には行えませんでした。日常の不安や閉塞感が続く中、飼育動物たちの子育て、成長など動物の営みに関心が集まる・心が動く3年間であったように感じます。どこかでふと安らげる癒やしを求めていたのかもしれませんね。空前のペットブームを迎えているのもうなずけます。 明日から兎年、新しい年を迎えます。コロナ禍はまだまだ続きますが、ほぼ3年間凍結状態だったボルネオでのボルネオゾウなどの保全活動も再開のめどが立ちました。新たにゼロカーボンの取り組みも始めます。空白の3年間を一気に取り戻す勢いで頑張る一年にしたいと思っています。
今年も一年暖かく見守っていただきありがとうございました。 来年もよろしくお願いいたします。皆様にとってもよい年になりますように。
写真をよーく見てね
園長:坂東 元
みなさんのお家の冷蔵庫を見てみると 大体のご家庭でたまごが入っていると思います。
卵焼き、ゆで卵、目玉焼き、生卵などなど…
私たちは様々なニワトリが産んでくれたたまご料理を日常的に食べていますが、たまごについて、どれだけのことを知っているでしょう?
「旭山動物園で飼育しているニワトリが産んだたまご」
恐らく多くの方は「黄身」がヒヨコになるのかな?と思うかもしれません。 ですが、「黄身」はヒヨコになるまでの栄養なんです。(ちなみに「白身」は黄身を守るためのクッションの役割があります)
では、たまごのどの部分がヒヨコになるのでしょうか? 答えは、「黄身」の中にある「白い点(胚)」です。 たまごを割った時に見えることもあるので、是非探して見てください!
また、黄身の左右には、黄身を真ん中に固定するハンモックの役割がある「カラザ」があります。生卵を食べた時に少し口に引っかかる感じがあるものです。
そして、あまり知られていないのは、赤いたまごの方が栄養があると思われがちですが、白いたまごと赤いたまごは栄養価が変わりません。 たまごを産む親の羽の色で、たまごの色の違いが出てきます。(赤い羽なら赤い卵など)
「たまごを産む瞬間。うんちと同じ場所から出てきます」
「たまごが産まれる瞬間」
「産まれたたまごを確認するニワトリのメス」
いかがでしたか? いつも日常的に食べているたまごについて、お話しましたが、この内容を見ていただいて家畜について見つめ直すきっかけとなればいいなと思います。
こども牧場の展示エリアでは、「いただきますパネル」と呼ばれる、家畜について分かりやすく解説をしたパネルがありますので、旭山動物園に来た際はパネルにも注目して楽しんでみてください!
「いただきますパネルはこども牧場内にあります!見つけてみてね!」
こども牧場担当:志子田紗希
今年は積雪が遅いなと思っていましたが、12月に入るとあっという間に雪も積もり、すっかり冬になりました。そして今年ももう残すところわずかとなりました。 ここ数年、北海道ではヒグマの市街地への出没や人との軋轢が問題となっています。そんな中で今春にオープンした「えぞひぐま館」もはじめての冬を迎えています。 オープンからこれまでの間、少しでもこの軋轢が解消できればとの思いで、展示物を製作したり、日々ガイドを行ったりしていきました。そんな中で感じたのは、どこか人ごとのように思っていたり、動物園の動物と野生動物を同じように考えていたり、ヒグマを誤解しているような方などがまだまだ多くいらっしゃることでした。 市街地で生活していると野生動物を見たり身近に感じる機会はそう多くはないかもしれません。しかし、私たちが生活する同じ環境下には当然のことながら人だけではなく多くの生き物も暮らしています。もちろんヒグマも。 来園された一人でも多くの方が、動物園に足を運んだことで、少しでも他の生き物に目を向けるきっかけになったり、彼らとの適切な関係や周囲の環境について考えてもらえるようになればと願ってこの冬もガイド等の活動ができればと思います。 野生のヒグマはもう冬眠(冬ごもり)に入っている頃でしょう。活動期ではなくなったのでヒグマを意識する機会も少なくなってしまうと思いますが、この時期にしっかりとヒグマについて知って、考えて来春を迎えましょう。飼育している「とんこ」は野生のクマと違い冬でも毎日エサを食べることができるので冬眠をすることはありません。とんこを通してヒグマと人の未来について意識してもらえれば幸いです。 まだ少し早いですが、来年はヒグマにとっても人にとってもよい一年でありますように。
フクロウ・えぞひぐま館担当 大内章広
みなさん、サッカーワールドカップ楽しんでいますか? 私は楽しんでいます。
ただ一つ問題なのが、今回の舞台のカタールは日本と時差が6時間あり、試合によっては夜中から朝方になってしまいますよね。 どうしても寝不足気味で、早く寝ようとは思うのですが、その時間も注目の試合があったりで悩ましい日々です。
さて、やっと動物の話になりますが、私の担当しているシロテテナガザルはとっても早寝早起きです。元々、夕方収容後にはすぐ食べ終わって寝てしまうな、と思っていましたが、野生のテナガザルの研究でも3時頃には寝るということを知りました。 冬期は閉園後すぐに最後の餌を与えるのですが、あまり食べずに寝てしまうことが多いです。 そのかわり、とても早起きなので、朝は動物舎に入る前から歌声が聞こえることもあります。
ですので、元気なシロテテナガザルを見たい方は開園直後がおすすめです。
他の動物たちも活動時間はさまざまなので、もし動物が寝ていても静かに見ていただき、時間を変えて再度訪れると違った姿を見られるかもしれません。
獣医師・テナガザル館担当 中村亮平
12月1日より、小学生の皆さんを対象とした 「第23回 旭川市旭山動物園 動物読書感想文コンクール」の作品募集がスタートしました。 この「動物読書感想文コンクール」は、毎年、旭川市内はもちろん、道内外の小学生の皆さんから 作品の応募があるコンクールとなっています。
応募締切は、冬休み明けの1月27日(金)必着となっております。 人間のために働く動物やイヌやネコ、インコなどの愛玩動物(ペット)、 環境破壊や環境汚染などにより数を減らしている動物について書かれている本といった、 動物に関する本を読んで思ったことを原稿用紙に表現してみませんか。
詳しくは「応募要領」を参照してください。
たくさんのご応募、お待ちしております!
※動物読書感想文コンクールの詳細や応募要領、応募用紙のダウンロードはこちら
投稿者:動物図書館 北川 裕美子
先日、動物慰霊碑のそばの葉の落ちた木の枝先に、黄緑色の物体を見つけました。 葉っぱは散っているのに、なんで緑があるんだろうと近寄ってみると…
繭だということがわかりました。 この黄緑色の繭は、「ウスタビガ」という蛾の繭で、中にはサナギが入っています。 冬になる前に繁殖し、卵で越冬する蛾なので、繭のまま残っているのは、 何らかの理由でサナギから出てこれなかったということです。
他の場所にも違う繭がありました。
これは、「クワコ」の繭。 「こども牧場」で飼育している「カイコ」の原種と言われている蛾の繭です。 「クワコ」は本来、夏には羽化しているはずなので、これも何らかの理由で羽化できなかったサナギとなります。
ちなみに今年のお盆すぎ、旭川をはじめとする上川管内や 空知管内で異常発生した大型の蛾「クスサン」の繭は
こんな感じです(7月下旬)。 葉っぱの裏にある茶色(白の場合もある)に編まれた俵型の繭です。 中の様子(サナギ)が見えるので「スカシダワラ=透かし俵」とも呼ばれています。 (クスサンの繭は網目になっていて、中のサナギが見えます)
葉が落ちた冬は、こういった繭やサナギだけでなく、野鳥も観察しやすくなる季節です。 雪が降ると足もとに注意して歩かなければいけないですが、 視線を少し上にしてみるのもいいかもしれませんね。
さて、先日、旭山動物園だより・みにだよりの最新号を発行しました。 「旭山動物園だより」は、「続々と放飼場デビュー!」ということで、 レッサーパンダやライオンの仔、 キングペンギンのヒナを紹介しています。 「みにだより」では、「ヤギとヒツジ」を紹介。 似ている生きもの同士を比べた企画になっています。 ぜひ、園内観察の参考にしてみてくださいね。
投稿者:動物図書館 北川裕美子
「旭山動物園だより」はこちらからダウンロードできます(新しいウインドウが開きます)
「あさひやどうぶつえんみにだより」はこちらのページからダウンロードできます。(新しいウインドウが開きます)
日ごとに冬を訪れを感じる中、冬期開園しました。 そんな中、私がお伝えするのは、12月中旬頃からほっきょくぐま館で、今年も展示するシロザケの卵のお話です。 卵から孵化して仔魚から稚魚までの成長を観ていただけます。 そして、4月には成長したシロザケの放流イベントも行われます。 今年は、卵を展示している水槽の隣の水槽に前回、展示していた卵から孵化して成長を続けているシロザケを展示しています。 皆さんもご存知の通り、シロザケは河川で孵化して、河川を降り、海に出て、3年から4年ほどかけて成長して産卵のために孵化した河川に戻って来ます。 その習性を母川回帰と言います。 前回、孵化したシロザケを展示している水槽は、海で成長している間の変化を観察出来るように海水に近づけた濃度の水で展示しています。 実は、去年も同じ試みをしていたのですが、データ等も少なく、手探りでの展示で10月を越える事が出来なかったのですが、昨年の経験を活かし、今年は10月を無事に越えて、今も成長しています。 皆さんにも河川を降り、遠い海で成長しているシロザケを少しでも感じていただけたら嬉しいです。 そして、シロザケは陸上養殖が難しいとされており陸上養殖に成功出来たら、世界初の出来事になります。 そこで、この水槽で展示しているシロザケを立派に成長させて、その難しいと言われているシロザケの陸上養殖の壁を打ち破る何かを得られたらと思っています。 それでは、冬の旭山動物園にご来園の際には、暖かい服装と滑りづらい靴でお越し下さい。 そしてぜひ、ほっきょくぐま館内で展示しているシロザケの卵とシロザケを観察してみてください。
ぺんぎん館:高橋太郎
天井のヒーターに向かって暖を取る
ワオキツネザル
一気に秋が訪れ足早に冬を迎えようとしています。本来寒冷地に生息する動物たちも断熱仕様に衣替えです。エゾシカの鹿の子模様が消えると冬が間近に迫っていることを実感します。夏期開園も気づけばあっという間に終わろうとしています。予想もしなかったコロナ禍での2年間、開園できないこと、行事ができないこと、うれしいことを大きな声で伝えられないこと、ブレーキを踏みながらの綱渡りが続きました。動物園の存在って何だろう?そんな不安もいだいてしまう中で過ごしてきました。動物園の動物たちには当たり前の日常の営みが続いていること、まずはそこを伝えていこうと試行錯誤をしてきました。今年度に入り、少しづつ私たちも日常を取り戻し多くの方が動物園にも足を運んでいただける状況になりました。もぐもぐタイムを始め中止していた行事の再開や新規の行事にも取り組めました。えぞひぐま館のオープンを象徴に身近な野生動物との関係を知り考えるきっかけになるフォーラムの開催、北海道内で保全活動などを行っている団体のオリジナルグッズの販売を行うアニマルハッピーマーケットの開催、ボルネオでのボルネオゾウのレスキューセンターの2期工事に向けての活動の再開準備なども進めることができました。 冬期間は多くの中規模の改修やリフォームを行います。ホッキョクグマ館では空調設備の全面改修、子供牧場のゲート改修、そしてチンパンジーとボルネオオランウータンの通称サンルーム増設です。春や秋の肌寒い季節のための遠赤外線ヒーター付きの小部屋を屋外放飼場に作ります。冬期間は屋外放飼の機会が減るので、この時期での工事となります。すでにサル舎、テナガザル舎には増設済みです。ガラス越しにはなりますが人も動物もお互いに間近で観察ができます。サル舎ではワオキツネザルが天井に設置されているヒーターを見上げるように足を投げ出して座り両手を広げ暖をとる姿がよく見られます。ワオキツネザルは夏期でも朝や夕方太陽に向かって同じ姿勢をとり日光浴をします。体温調整機能が発達していない、代謝が低いための特徴的な行動です。 さらにキリンの結の事故死に伴い検証と反省をし、多数箇所の改修工事を最優先で進めています。制作などに時間を要するものもあるのですが順次改修は行い一日でも早く終えるように取り組んでいます。 冬期に向けてコロナ対策は継続していかなければならない状況は続きますが、これからの季節、動物園としても気になるのが高病原性鳥インフルエンザです。緊張感を持ち皆様を迎え入れられるように取り組んでいきたいと思います。
令和4年11月15日
旭山動物園 園長 坂東 元
先月しいくにゅーすでお伝えしたとおり、10月20日にブラッザグエノンのモモが出産しました。3年連続の出産です。 しばらくはしっかり抱いて離さないので性別がわからなかったのですが、生後1週間くらいからときどき離して遊ばせるようになり、オスだと判明しました。 兄たち同様なかなかやんちゃで、出窓ではよく母から離れて遊んでいます。
あかちゃんの毛は金色で数年かけてだんだんと大人の色になっていきます。2020年生まれの「マモル」はだいぶ大人の色に近づいてきました。こどもたち3頭の毛色の違いにも注目して見てみてください。(まだ名前は考え中です)
モモとこども(10月31日撮影)
8月に生まれたアビシニアコロブス(オス)は「あたる」という名前にしました。 まっ白だった毛は黒い部分が増え、大人の配色に近づいてきています。 最近はあたるが鳴くとあんずがだっこしようと近づき、あたるは手を伸ばして自分から抱きつくようになりました。
あたる(11月11日撮影)
これからどんどん寒くなり、サル舎のサルたちは短時間の放飼が基本になります。出窓のヒーターがついていたら放飼のサインです。
日々の様子はSNSにアップするのでそちらもチェックしてみてください。
サル舎・狸狐担当:佐藤和加子
動物園の獣医には様々なおしごとがあります。その中でも今回は麻酔についてお話ししたいと思います。皆さんは麻酔と聞いてどんなイメージを思い浮かべますか?もしかすると、麻酔の注射を刺したら、すぐにバタッと倒れてグーグー寝始める。と思う方も多いと思います。でも実際はちょっと違います。
先日ホッキョクグマのホクトを搬出するために麻酔をかけたので、それを例に説明すると、まずはじめに吹き矢で麻酔その(1)を刺します。ホクトの体重は400kgだろうと推測したのですが(実際は386kgでした)、麻酔(1)の量は13mlもあります。15分くらい経つと、立っているけどボーっとしてる様子になりました。そこからさらに10分経つとうつ伏せで寝ている様子になりました。ここでさらに麻酔(2)を24ml注射して深い麻酔状態にします。そこからさらに5分経つとかなり深く麻酔がかかりここでやっとホクトと同じ部屋に入ることができます。麻酔中は獣医がつきっきりで呼吸、心拍数などの状況をチェックします。今回の麻酔は問題なくスムーズに寝てスムーズに起きたので、ホッとしています。
皆さんの中には吹き矢は痛いからかわいそうとか、麻酔自体がかわいそうと思う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、動物の移動をするとき、検査をするとき、手術をするとき、様々な場面で安定した麻酔が必要になります。麻酔をしている所は中々見ることは無いかと思いますが、獣医の大事な仕事の一つです。
麻酔の薬が入った吹き矢がホクトの右太ももに刺さっています。
麻酔中のホクト
麻酔から醒めたホクト
獣医師・くもざる・かぴばら館担当:佐藤伸高
毎年11月に入ると今年が後2ヶ月しかないことに驚いていますが、今年もしっかりと驚いている今日この頃です。
ここ最近SNSで随時更新しているライオン一家ですが、子どもたちの愛称が決まりましたのでお披露目したいと思います。
「フウ」「レイ」「イト」です。
フウ
左がレイ 右がイト
それぞれの見分け方としては、
「フウ」
耳が大きい。目が丸い。今のところ1番大きい。と比較的パッと見でわかりやすいかと思います。
「レイ」
顔が細め。顔が少し引っ張られたような顔?疲れ顔?(職員たちの感覚的なものなのであしからず)
「イト」
つり目。毛の色が薄い。
といった感じで「フウ」以外は分かりにくいかと思います。私たちもなんとかじーっと見てこっちか?というような感じではあります。。。
今回の名前の付け方は「響き」「2文字」「親しまれている歌の中にある言葉」的なところで考えました。
カタカナ表記にはしていますが漢字では「風」「麗」「糸」となります。
いくつかの候補の中からかなり悩み決めました。他の候補は秘密です。
いよいよ冬期開園がスタートしますが、ライオンの子どもたちに関しては天候や体調を見て、不定期の展示になりますので、その時のお楽しみです。
子どもの見た目や成長に目が行きがちですが、それだけではなく群れで生活し、オスも子育てに参加するというライオンらしい営みや、群れとしての成長を見ていただけると嬉しいです。
これからも随時SNSで発信していきますので、引き続き暖かく見守っていただければと思います。
もうじゅう館・フラミンゴ担当:若山晃暉
現在SNSを大多数の人が使うようになり、『推し』という存在の情報もかなり得やすくなったと思います。
推しの対象はもちろん人間だけでなく、動物にも当てはまるもので、マヌルネコの『グルーシャ』だけを見に旭川まで来られる方も一定数いらっしゃいます。
私はヘビのガイドで、贔屓目を無くすため「私はヘビが好きなわけではありません」と言うのですが、営業トークではなく本音です。
「好きな動物は何ですか」と聞かれれば、レッサーパンダともマヌルネコとも両生類とも答えません。
私が好きな動物は『オカピ』と『オオアリクイ』と『ラティメリア(現生のシーラカンス)』です。
少しでもシーラカンスに興味がある方は、沼津港深海水族館を訪れてみてください。
冷凍された本物のシーラカンスを見ることが出来ますし、展示物も分かりやすくオススメです。
これがラティメリア
「自分の担当動物=好きな動物」ではないことに驚かれることが多いのですが、飼育員としてはそんな珍しい事では無いと思います。
そもそも担当動物は変わるので、自分の好きな動物の仕事だけが出来るわけではありません。
ただ、勘違いして欲しくないのは、好きな動物にその種が挙がらないだけで、個体に関しての気持ちはそれぞれの飼育員が一番に持っていることと思います。
砕いて言うと、好きな動物がレッサーパンダではないけれど、本園のレッサーパンダは一頭残らず好きです。
他の動物園にレッサーパンダを見に行っても、レッサーパンダそのものではなく旭山動物園のレッサーパンダのために、施設やエンリッチメント等を見ている時間の方が圧倒的に多いです。
マヌルロックに憧れた
我々飼育員は、好きな動物じゃなくても、苦手な動物だろうと、その個体のよりよい生活や命のために、知識や観察力を身につけ、様々な技術も磨いていかなければなりません。
とは言うものの、私は動物そのものが好きなので、8年経った今でも毎朝仕事に行くのが楽しみです。
こんなにも色々な体験や新しい発見を与えてくれる動物にはしっかりと恩返しをしていきたいですね。
発見だらけの日々
(小獣舎・両生は虫舎担当:鈴木 達也)
しいくにゅーすでお伝えしている通り、ホッキョクグマのホクトが札幌・円山動物園に移動することになりました。
最近しばしば来園者から「きょうはホクトを見られますか?」と質問されます。今回の繁殖成功で、ホクトとピリカはちょっとした「有名グマ」になったようです。
ホクトはサツキ&ルルと入れ替えで半日展示しています。
先日、園内の「どうぶつ図書館」にご家族連れが来園され、お子さんが絵を2枚渡してくれました。「ホクトに渡してください」と言伝があったそうです。
ね
ら
か
ほ く
く い
とまたあいに
「ホクトまた会いに行くからね」。ちょっと前に流行った「縦読み」みたいですね。
こちらは妹さんが描いてくれたそうです。兄妹でホクトへの似顔絵付きメッセージを描いてくれたのですね。
ホクトに渡すとビリビリにされちゃうと思うんで、ほっきょくぐま館2F、階段を上がったところにある掲示板に貼らせていただきました。
ホクトは今後、吹き矢で麻酔をかけ、鉄製の輸送箱に入れられて移動。円山動物園の施設に入ったらすぐにメスとのペアリングを試みられるでしょう。その運命を知らぬは本人(熊)ばかりなり。
ホクトには試練となりますが、まずは無事に札幌に移動すること。さらには繁殖に成功することを、旭川の地から祈っております。
ホッキョクグマ繁殖成功は、間違いなく私の飼育係人生で最高実績でしょう。ホクトとピリカには特別な思い入れがあります。
ホクト感動をありがとう!札幌でもがんばれよ!
(ホッキョクグマ・アフリカ水槽担当:大西 敏文)
~新しいおりがみえほんを作成いたしました!~ 先日新しい「おりがみえほん~マヌルネコ編~」を作成いたしました。 かわいいだけじゃない、マヌルネコの姿を「おりがみえほん」を通じて、 生息地ではどんな姿なのか想像してみてはいかがでしょうか。 そしてぜひ、マヌルネコ舎でマヌルネコをゆっくり観察していただき、 動物資料展示館2階の動物図書館にて新作おりがみえほんを作っていってくださいね!
~自己紹介~ おくればせながら、4月より動物図書館にて勤務をしております中谷真弓です。 旭山動物園との出会いは、学生時代の右も左もわからない世間知らずの私を、大学の実習生として優しく迎え入れてくださったのは遡ること数十年前・・・。 生きものの強い生命力を肌で感じられた、何事にも変えられないこのすばらしい経験が私の基となり、漠然と環境保全活動にたずさわりたい・・・などと強いシンパシーを受け、その後海外へ渡り野生動物の保護活動に携わり、帰国後は子供たちへの環境教育や啓発活動など、いろいろな場所で経験を重ね、ついに念願だった旭山動物園で働いています。 旭山動物園の動物図書館での仕事は、どうやったら楽しくわかりやすく動物たちの魅力やすばらしさを伝えられるか、日々考えながら勤務しているところです。旭山動物園での時間は、私にとって改めて”いのち”について考える貴重な時間となっています。 ちなみに私生活では、やんちゃ盛りの男の子3人を育てている肝っ玉母ちゃんです。 園内は徐々に冬支度へと進んでいます。残り少ない紅葉を背景に、ぜひ動物たちに会いにきて下さいね! 投稿者:動物図書館 中谷 真弓
去年のある夏の日のことです。
「そうだ、こども牧場でカイコの展示をしよう!」
もちろんただの思いつきではありません。なぜこども牧場でカイコなのかというと、理由は2つあります。
1つ目はカイコ(家蚕)が家畜であるということ。こども牧場はウサギやヤギなどの家畜・ペット種を飼育しています。カイコ(家蚕)は移動能力が低く、幼虫はほとんど移動せず、成虫は羽があるのに飛べません。人の手がないと生きていけない動物、いわば究極の家畜なのです。
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2つ目は学びの機会が平等にあるといいな、と思ったこと。本州などの一部の学校では授業でカイコの飼育をすることがあるそうですが、旭川の学校に通っていた私は存在もあまり知りませんでした。野生にいないので、機会がないとなかなか見ることができないカイコを、多くの人に見ていただきたいと思いました。
こうして始まったカイコ飼育計画。入手方法や飼育方法を調べ、去年の12月になんとか飼育展示を開始することが出来ました。
飼育する中でも困ったことがいくつかありました。特に困ったのは温湿度の管理です。カイコは温湿度の管理がとても重要で、温度は25度以上、湿度が70%ほど必要です。しかも風通しは良くなければいけません。しかし、冬のこども牧場は20度ほどしかありませんでした。そこで、網とアクリル板で作った専用の飼育ケースを準備し、ヒーターや加湿器で温湿度をなんとか保てるようにしました。
そしてまもなく、飼育開始から1年が経ちます。現在3代目のカイコが繭を作っているところです。展示を始めてみて、たくさんのことを学びました。例えば、カイコの繭は1本の糸で出来ていること。交尾後、人の手でオスとメスを離さなければいけないこと。思った以上にカイコが繊細な動物であること。学んだことを上げ始めたらきりがありません。
1番の収穫は思っていたよりも多くの方がカイコに興味を持ってくださったということです。
明治時代、日本は諸外国と対等になるために製糸業に力を入れ、たくさんのカイコが飼育されていました。そんな日本の発展に一役買っていたカイコについて、これからも多くの方に興味を持ってもらえるよう、飼育展示に取り組みたいと考えています。
まだまだ私自身分からないことも多くあるので、皆さんと一緒に勉強していきたいです。もし詳しい方がいらっしゃいましたら是非教えて下さい!
こども牧場での展示の様子
枝蔟に作った繭
こども牧場担当:泉こはる
最近の園内では虫の鳴き声が少なくなり、シジュウカラやヒガラといった 野鳥の声をよく聞くようになりました。耳をすますとアカゲラなどキツツキの仲間が木をつつく音も聞こえてきます。
(アカゲラ;やすらぎの森の横)
10月1日、雪虫(トドノネオオワタムシ)が飛んでいました。
10月8日、シマエナガを園内で観察しました。
(シマエナガ・写真中央:ゆっくりロード下)
今年は昨年と違い「ナナカマド」がたわわに実っている園内。 昨年はほとんど観察できなかった旭川市の鳥「キレンジャク」が 「ナナカマド」の実を食べにきてくれるかも…と思っています。 ちなみに、「ナナカマド」も市の木として制定されています。
(イベントホールそばのナナカマド)
(2020年に園内で観察したキレンジャク)
さて、先日、旭山動物園だより・みにだよりの最新号を発行しました。
「旭山動物園だより」は、「この秋も、たくさんの命が生まれています!」ということで、 ヤギの子の誕生などに触れているほか、エゾシカのツノが完成したことなどを紹介してます。
「みにだより」では、「チョウ」を紹介。園内で観察できるチョウの生活について紹介しています。
季節の移り変わりとともに変わる生きものの生活を、ぜひ、観察しに来てくださいね! 投稿者:動物図書館 北川裕美子
秋を迎えて旭山も紅葉が進んでいますが、北海道で最も高い山、標高2291mの旭岳では10月5日初冠雪となり着実に冬の訪れの足音が聞こえてくるようなそんな毎日を過ごし一年の時のはやさを実感しています。
さて、タンチョウの雄のコウセイは3月に釧路市からやってきて半年がたち初めて旭山で冬を過ごすことになります。
コウセイは雌のノモ子が6月に亡くなりさみしくなりましたが食欲もあり元気です。食べ物は雑食性で、旭山では、ホッケ・ワカサギ・シシャモ・オキアミ・トウモロコシにペレットなど与えています。自らミミズや昆虫類など時にはネズミまで食べることもあります。冬は氷も口にします。
私が餌をもってコウセイにもっていくと本来なら、なわばりもあるので威嚇してくるのですがコウセイは落ち着かずフェンス超しに逃げまわります。そして私がいなくなると餌を食べ始めます。
コウセイは2017年、標茶町で他のタンチョウと争い喧嘩してしまい左羽翼は半分骨折して無い状態です。その影響で将来、空を飛ぶのもほぼできないので私に対してもおびえてしまっているのでしょうか?しかし、保護され獣医さんに手当され命は助かり、こうして元気に過ごしている姿、特に冬の雪景色のタンチョウをみなさんもぜひ見に来てください。
新しいパートナーと将来めぐり合って鶴の舞う姿を見せてほしい願いはあります。
タンチョウのコウセイ
(タンチョウ舎・ちんぱんじー館担当 高井正彦)
(7/5に誕生した2頭のレッサーパンダ)
すっかり秋です。今年は様々なイベントも行い充実した年を過ごしています。ドングリも豊作のようで旭山近郊でもヒグマ出没の情報を聞かなくなりました。ヒグマたちも山でたっぷりと栄養をつけて冬に備えることができているといいなと思います。ただし来年に備えて、旭山はヒグマにとっていい所なんだけど居心地が悪い山にしなければいけません。関係機関と連携して協議をし具体化していきます。心配は旭山近辺でもデントコーンの作付面積が増え続けるであろうこと。ヒグマにとってもとても魅力的な食べ物です。食糧自給率、家畜飼料の自給率を増やすことは日本として重要な課題です。試行錯誤しながらヒグマとの折り合いをつける方法探り続けていくことになるでしょう。 さて、レッサーパンダの子は巣箱から出てくるようになり、アビシニアコロブスの子は母親から離れ兄弟と遊ぶ時間が増えてきました。そうそうホッキョクグマのゆめもたくましく成長しています。ここまで来ると早く雪が降らないかなと思ってしまいます。雪と戯れるゆめの姿を思い描いてしまいます。 そして9月に入りヤギ、ライオンの出産と続きました。ライオンは猫科唯一、雄雌共同で子育てをします。安全を保障する雄ライオンがいる環境下だからこそ子供たちは実に無邪気にじゃれ合いながら成長していきます。 今年は我慢する、何かできることを探すのではなく、やること、やらなきゃいけないことを追いかけ具体化するスタートの年になりました。空白の2年間を一気に取り返さなければとの思いも強く持ちました。今年は悔いを残さず締めくくりたいと思います。
令和4年10月11日
10月になり、レッサーパンダにとっては過ごしやすい季節になってきました。 SNSにも随時掲載しております、仔の続報です。 ようやく竹をかじるようになってきて、日中も外でのびのびと遊び回っている状況であり、母親の渝渝(ユーユー)も外放飼場で授乳を行うほどに落ち着いています。 また、レッサーパンダの仔の名前が決まりましたので、ご報告させていただきます。
【仔の名前】 オス「菫菫(ジンジン)」 メス「茜茜(チェンチェン)」 となります。
左の写真「菫菫(ジンジン)」 右の写真「茜茜(チェンチェン)」
現状の個体識別の方法に関して、菫菫は目の周りに『S』がくっきり見えます。 茜茜は目の周りの茶色模様が顔の中央側により伸びています。 個人的には『S』で見分けるのが分かりやすいかなと思います。 とは言うものの、上から見るとさっぱりですが。。。
名前に関しては、「花の名前」「音の雰囲気・呼びやすさ」「顔のイメージ」を元に決めました。 菫は「すみれ」で、茜は「あかね」となります。 名前は最後まで悩みっぱなしでした。 椿(つばき)や葵(あおい)、薊(あざみ)など色々な候補が自分の中でありました。 特に楡(にれ)が個人的に激アツだったのですが、読みがユーユーにしかならず断念でした。 もちろん生まれる前から名前を決めておく担当者もいるでしょうし、私のように顔つきが整ってきてから最終決定をする飼育員もいます。 日本だけでなく、世界にも発信される名前なので、じっくりしっかりと時間をかけて決められて良かったのかなとは個人的には思っています。
さて、近況の様子に関しては、まぁ菫菫が困ったものです。 おととし生まれの蓮蓮(レンレン)はかなりのやんちゃなのですが、当時の蓮蓮よりも身体能力も高く、まだ無理だろみたいなところもズイズイ登っていくので、正直どきどきです。 とは言うものの、本来レッサーパンダは木の洞で子育てをする生き物であり、赤ちゃんだからと我々が過保護にしているだけで、能力的にはきっとまだまだ持て余しているのだろうなと飼育員ながらに思い知らされる日々です。
公開に関して、現在は放飼練習中であり、晴れている日はシュート(室内への扉)を開放して、半日程度の放飼を行っています。 もちろん親子の様子や天気・気温次第になりますので、あらかじめご了承ください。 一担当者としては、仔だけでなく、他の大人の個体も素晴らしい魅力があるので、仔が出ていようと出ていなかろうと楽しみに来て欲しいのですが。。。
レッサーパンダの近況に関してはSNS等で発信していくので、引き続きあたたかく見守っていただければと思います。
小獣舎・両生類・は虫類舎担当:鈴木達也
朝、事務所から外に出ると温度計が10度ちょっとしかないことが多くなりました。
北海道に住む私たちですが、冬に近づくにつれ空気が冷たくなってくると、体がまだ慣れていないため寒い寒いと言いながら外に出て行きます。
オオカミのヌプリとアオイがいる獣舎のところにはマユミの木があります。
この木の実が赤くなり、パカっと割れると「秋が来るなー」と感じます。
シンリンオオカミたちは毛で覆われているためこの程度の寒さなら全く平気で、日が出ている日は気持ちよさそうにチップの上で寝ているアオイが見られます。
ヌプリとアオイの獣舎にあるマユミの木
さて、最近のレラ・ワッカ・ノチウの様子はと言うと。。。
レラがノチウのお尻を嗅ぎに行くと、ノチウはそのまま匂いを嗅がせ、その後下からペロリとレラの顔を舐めることがありました。また他の日には、投げ入れたおやつを取り合い、ノチウとワッカがケンカになりましたが、最初ノチウが尻尾を上げてアピールしていましたが、その後スッといなくなり、ワッカが残ったおやつを食べていました。
朝様子を見に行くと3頭で寝ており、ノチウとワッカはすぐにこちらに気がついて耳をたてたり顔を上げますが、レラは反応することなく寝ていることが多いです。
レラ(左)とノチウ(右)
レラ(左)ワッカ(上)ノチウ(右)
これからオオカミたちは冬毛に衣替えをします。保温のための毛足の短い毛とそれを覆うように毛足の長い毛で全身が覆われます。首の周りがたてがみのようになり、体が一回り大きくなったように見えます。そんな凜々しい姿への変化も楽しみながら、これからもしっかり観察していきます。
(オオカミの森・ととりの村担当:原田 佳)
4月の中旬、美瑛にあるファームズ千代田さんに「こむぎ」を連れていき、オスと交配させていただきました。そして約5ヶ月の妊娠期間を経て、無事に9月10日の14時頃に出産しました。 旭山動物園でヤギが産まれたのは、今最年長の「はなこ」と「まるこ」以来9年ぶりのことです。産まれた子どもはオスとメスの双子で、オスを「かえで」、メスを「あかね」と愛称をつけました。 ヤギの成長はとても早く、体重は生後2週間で産まれたときの約2倍になりました。すでに他のヤギやヒツジ達と一緒に展示をしており、放飼場で兄妹で遊んでいる姿を見ることができます。 子どもの時期はあっという間に過ぎていってしまうので、お早めにこども牧場の子ヤギの姿をぜひ見に来てください!
左:「あかね(メス)」 右:「かえで(オス)」
いきなりですが、みなさんはアザラシの体をじっくり観察したことはありますか?
正直泳いでいたり、水中にいることが多いのでじっくり観察することはちょっと難しい生き物かもしれません。
ですが多くの方にアザラシについて知ってもらいたいと思うのが飼育担当だと思うので、私がブログ担当の時は普段見ることが難しい体の部位や、あまり知られていないアザラシのことを紹介していこうと思います!
さて今回は1番みなさんが観察しにくい場所だと思う「口の中」を紹介します!
まずはゴマフアザラシの麦に協力してもらって撮影した口の中をみてください!
どうですか?
私たちとちょっと違うところがいくつかあったのではないでしょうか?
全部話しているとすごく長くなってしまうので今回は2つに絞って簡単にですが話していきます。
1つ目は歯の形が違います。
私たち人間は前歯で物を噛みちぎったり、奥歯ですり潰したりしますよね?
アザラシは犬歯という尖った歯で魚を捕まえてすり潰すことなく丸呑みで食べていきます。
そのため人のようなすり潰す形の歯がないんです!
2つ目の違いは舌の形です。
写真をみてもらえると分かると思いますが、先が少し割れています。これは魚を丸呑みにする時に喉奥へ魚を入れていく時の支えのように使うそうです。
ちなみに丸呑みで食べるので味覚がほとんど発達していません。そのため私たちが食べて美味しいホッケも残念ながら味が分からないんです…
今回は簡単にでしたがアザラシの口の中の紹介をさせていただきました。
第2弾があれば違う体の場所を紹介しようと思うのでお楽しみに!!
最後に気持ちよさそうに寝ているアザラシを載せておきます。
(あざらし館担当:大村 凌也)
(えぞひぐま館で「ヒグマと共に
暮らす未来」を考えてみませんか?)
お盆期間の夜の動物園も無事に終了しました。期間を通しての来園者はコロナ以前の8割ほどでしたが、16時以降の夜間の部の入園者はコロナ以前よりも多くの方が来園されました。3世代そろっての方々、若い世代の来園者が多い印象を持ちました。
8月に入り、旭山公園でヒグマの目撃がありました。例年のことなのですが今年は状況が違う可能性があります。この時期に郊外で目撃されるヒグマは、親から離れた若い雄グマが自分の生活圏を求めてさまよい出てくる「一見さんグマ」がほとんどで「そのうちいなくなる」のですが、今回は自分も目撃し、旭山のとんこよりも体格の良い成獣でした。
今年は21世紀の森から旭山近郊にかけて家庭菜園などの食害が多く、足跡から複数のヒグマが食べ物を求めて出没しているようです。ヒグマ注意報が発令される事態になっています。
庭先の被害は気づきやすいですが、山や川に隣接する農地の「盗み食い」には気づきにくいのが実態に思えます。エゾシカ、アライグマも多く生息しているのでヒグマの被害だけを特定するのも困難だと思います。夏から秋にかけては山の恵みは非常に乏しい時期。反対にヒトの生活圏では実りの時期になります。ヒグマが本格的にヒトの生活圏を取り込み始めた兆候なのかもしれません。
と言うわけで、今年は旭山近辺を拠点に活動する長期滞在型ヒグマ出現の可能性があります。ヒグマはヒトを狙って旭山に現れたわけではありませんが、不意に出会ってしまうと危険なので旭山公園は封鎖しています。ただ人払いをするとヒグマにとってはますます居心地のいい場所になります。対応は難しいですね。
今は本来臆病で慎重、さらに冷静にヒトの動きを観察しているヒグマなので、日中ヒグマを目撃することはほぼありません。というかヒグマがヒトと出会うことを避けてくれています。ヒグマの良心に頼った私たちの日常が続いているとも言えます。
でもこの関係だけは壊してはいけません。この関係を壊す一番の原因は食べ物です。ゴミのポイ捨が原因でヒトと食べ物が紐づくとヒグマがヒトに積極的に近づく「悪いクマ」に豹変させてしまう可能性が高まります。
まずは山であろうが郊外、市街地であろうがゴミのポイ捨てだけはしないように!心がけましょう。
令和4年9月14日
今年のこども牧場は、夏に行っていたクワガタ・カブトムシ展が大盛況に終わり、秋の訪れを感じる身近な「鳴き虫」を展示していきます。
旭川で見られるキリギリスの仲間やコオロギの仲間を現在9種類展示しています(今後10種類に増える予定…)。
昼間でも「鳴き虫」たちの声は聞こえてきますので、どの鳴き声がどの「鳴き虫」なのか、鳴き声の解説看板を参考にしながら、 ゆっくり足を止めてご覧ください。鳴いていない場合は、看板で鳴き声を覚えてくださいね。
第2こども牧場の建物内で展示していますので、ぜひ身近な「鳴き虫」を感じに足を運んでもらえればと思います。
こども牧場・教育担当:佐賀真一
すでにしいくにゅーすでお伝えしましたが、8月10日にアビシニアコロブスの「アビ」が出産しました。
今回はアビの過去の出産間隔よりも1ヶ月早い出産でした。
朝、室内の出血の跡を見て「ギガースとアルが大げんか?そのわりには2頭とも落ち着いてる…」なんて思いながらコロブスたちをよーく見ていたらアビのお腹にくっつく白いものが!びっくりしました…。
<8月18日撮影>
こどもは生後2日目には母以外のものに興味を示し、現在は母の近くならひとりで遊ぶようになっています。ときどきアル・あんず・アクイラもこどもの相手をしていて、あんずはだっこもしています(あまり上手ではありませんが)。
アビシニアコロブスは同じ群れの他のメスが子育てを手伝います。あんずはアクイラが生まれたときよりも積極的にこどもに関わっています。「こうやって子育てを学ぶのだなぁ」と見ていてほほえましいです。
<9月2日撮影 弟を抱くあんず>
きょうだい3頭(もしかしたらアルも加わって4頭?)で遊ぶ日もそう遠くなさそうです。こどもの毛色はこれからだんだんと変化して、生後4~5ヶ月頃にはおとなと同じ配色になるので、その様子にも注目しつつ観察してみてください。
ちなみに、性別はオスでした。名前は考え中です。
<おまけ:とある日のアルの寝姿。室内では丸太の上で休むことが多く、このポーズはなかなか見られません。>
開園記念日の7月1日と7月2日に園内限定で配布していた「開園55周年クロスワードパズル」。
わずか2日間の配布期間でしたが、締切の7月15日までに全国各地から73通もの応募がありました。
たくさんのご応募、ありがとうございました。
遅くなりましたが、「開園55周年クロスワードパズル」の答えを発表させていただきます。
旭山動物園の理念が答えでした。
答えは「ツタエルノハイノチ」でした。
夜の動物園・最終日の8月16日、坂東園長による厳正なる抽選会をおこないました。
(抽選を行う坂東園長)
当選者の皆さん、おめでとうございました。
抽選で選ばれた10名の方には、先日、賞品を発送させていただきました。
賞品は、毎年抜け落ちるオスのエゾシカのツノを切ったものです。 穴を開け、ヒモを通してあります。
「開園55周年クロスワード」に挑戦していただいた皆さん、 ご応募、本当にありがとうございました!
引き続き、旭山動物園を、よろしくお願いいたします。
当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきますことをご了承ください。
(投稿者 動物図書館 北川裕美子)
初めまして!今年の7月から旭山動物園にて勤務をしております、こども牧場担当の永澤と申します。 担当動物はクジャクです。 前職では、農業に携わっており、IPMという作物の病害管理をする仕事をしておりました。 動物に関わる仕事をするのは初めてですが、毎日新しい発見があり、刺激的な毎日を過ごしております。
さて、皆さまクジャクというとどのようなイメージがございますでしょうか? ゴージャズな目玉模様の羽を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか? 私もクジャクの担当になるまでは知らなかったのですが、実はこの羽は1年中見られるものではないんです。 クジャクは派手な羽を持っている方がオス、地味な方がメスになります。オスが派手な羽を持つのは繁殖の際にメスにアピールをするためです。クジャクの繁殖期は5月~8月頃で、それを過ぎると立派な飾り羽は抜け落ちてしまいます。
クジャクのオス(羽を広げた状態)
クジャクのオス(羽を閉じた状態)
クジャクのメス
先週あたりから、一部のオスの飾り羽が抜け始めました。ゴージャスな羽が見られるのは今時期で最後になります。また、これからは羽が抜け落ちていく様子もお楽しみにいただけると思います。 旭山動物園にお越しの際は、ぜひクジャク舎にも足を運んでみてくださいね!
飾り羽が抜け始めているオス
とある日のクジャク舎内で抜け落ちていた羽(1日でこの量が抜けました)
こども牧場担当:永澤琴音
この春からもうじゅう館では新たなムーブメントが起こっています。
それがこれ!
そう、ダンボールだ。
変な書き出しになってしまいましたが、現在もうじゅう館の動物に不定期で段ボールを与えています。
与えているダンボールはレッサーパンダ用竹が入っていたものや餌用鶏肉の梱包ダンボールなど基本ゴミです。
「竹6kg」と書いてあります
どうせ捨てるものだし試してみよう的なノリで与えてみたところ予想外の好反応でした。
与える際には肉汁を塗ったり、肉を入れたり、何もしなかったりと様々ですが、何もしていない段ボールでも反応は変わりません。
ダンボールの使い方はひたすらちぎっていることが多いです。おそらく、捕らえた獲物の毛や皮をむしる感覚に近いのかな?と想像しています。
片付けが大変です。
ただ他にも使い方や反応は様々で、
箱のまま運び、
足取りも軽く見えます
高いところでちぎったり、
登って片付けるのが大変です
さらに上り下りが大変です
水の中で遊んだり、
プール掃除が大変です
時にはびっくりして飛んだり
初ダンボール、中になんかいる!?
何回遊んでも盛り上がる!
といった感じで、ダンボールひとつで様々な反応を見ることができました。
ただただ捨ててしまっていたダンボールですが思いもよらず役に立つこともあるようです。これからもちょくちょくもうじゅう館のどこかにダンボールを投入していますので見つけたら少し立ち止まって観察してみると面白いかもしれません。
またSNS等でも随時発信していきますのでお楽しみに!
(フラミンゴ・もうじゅう館担当 若山 晃暉)
(ダチョウの親子が見られるのは、
国内で旭山動物園だけかも?)
7月に入り旭川も夏本番です。今年は6月に暑い日が少なく、どうなるのかなと思っていたら暑さが来ました。新型コロナ第7波か?と言ったニュースも聞こえる中どんな夏休みになるのでしょう?今年は3年ぶりに小学校高学年対象のサマースクールも行う予定なのですが…。 さて、先月に続きダチョウの雛ですが順調に成長しています。まだまだ小さいのですが、足も伸びてダチョウのプロポーションになってきました。屋外放飼場では雛たちが走り回り、よく食べとにかくよく運動しています。親は無関心かというとそうではなく、特に雄親は周りの気配に気を配っています。首をかしげるように片方の目で上空を見上げている先には遠くで旋回しているトビが見えます。親が安心できると判断できるくらい、僕が見ていると種の判断ができなくなるくらい豆粒の方に小さく見える遠くに去るまで目で追っています。これは雛がいないときには見られない行動だったので、雛に危険が迫らないように警戒しているのだと思います。カラスに関しては近くを飛び回ったりすることがあるのですが、かなりな勢いで追い払っています。 アフリカでは雛を狙うチーターなども追い払うと言われています。所狭しと走り回る雛たちを見ていて、ふとライオンの子育てを思い浮かべました。子どもたちが無警戒にじゃれ合うことができるのは、周囲に圧倒的な存在感を持ちにらみをきかせる雄ライオンの存在があること。ダチョウの雄親の姿がライオンに重なりました。 あっ、余談ですが日本で親子で生活しているダチョウを見られる動物園はおそらく旭山動物園だけなのですよ!ちょっと鼻高々だったりします。 先日、レッサーパンダの子も誕生しました。すくすくと成長しています。命の営みは途切れることはありませんね。
令和4年8月12日
園内で聞こえるセミの鳴き声も、シーシー鳴くニイニイゼミよりジリジリと低めに鳴く エゾゼミが増えた感じがしますし、キリギリスやヒメギス、トノサマバッタといった 夏の虫をよく見かけるようになりました。
草地を歩くと、バッタがあっちこっちへ逃げていく様子にとても夏を感じますよ。
↑ ハネナガキリギリス。イベントホール近くや、東門の階段のわきで鳴いていますよ!
↑ イブキヒメギス(緑色のもいます。シャカシャカ鳴きます)
↑ ハネナガフキバッタ(結構な距離を飛びます。細めのバッタです)
↑ トノサマバッタ(鳥かと思うぐらい飛びますね! チッチッチと鳴くそうです)
↑クルマバッタモドキ(結構ワイルドな顔立ちのバッタです。モドキは北海道にいますが、 クルマバッタは北海道には生息していないと図鑑に出ていました)
「旭山動物園だより」は、「子どもも生まれにぎやかな夏。夏毛の様子も要チェック」ということで、 ダチョウのヒナやレッサーパンダの出産などについて紹介しているほか、夏毛の様子も少し紹介しています。
「みにだより」では、「ダチョウのヒナ」を紹介。ぜひ、園内観察の参考にしてみてくださいね。
6月のブログで、ダチョウのひなが5月27日に一羽孵化したのを報告しましたが、その後の6月7と9日にも孵化しています。
3羽のヒナは親についてよく動きまわり、エサもよく食べて元気です。
体重も背丈も生まれた頃の何倍にもなり、どんどん大きくなっています。
6月の写真と、最近の写真を載せます。
成長しているのがよく分かりますよね。
6月19日の様子
8月1日の様子
ダチョウ・ヤマアラシ・ぺんぎん館担当:田中千春
(1年もすると、ひなは親と同じくらい
の大きさに成長します。)
7月1日、55回目の開園記念日も無事に迎えることができました。今年は7月1日2日とクイズ大会等のイベントも実施しました。さらになんと市長のインスタライブも行いました。今でも視聴できるので 旭川市か旭山動物園の公式インスタを是非見て下さい!と過去形で書いていますが、実は手紙を書いているのは6月中旬です。こんな報告ができるように企画をしています! 6月は珍しくうだるような暑い日がなく穏やかな日々が続いています。ほんと3年ぶりに幼稚園の遠足や宿泊研修、修学旅行などで子どもたち、学生さんの姿が多くなりなんだかほっとする園内の雰囲気が続いています。 ホッキョクグマ、ピリカの子はぐんぐん成長していています。気が早いですが雪の中ではしゃぐ姿を想像してしまいます。旭川の冬を誰よりも満喫するのはきっとこのピリカの子になるでしょう(どんな愛称になっているでしょうかね)。 動物園では嬉しいことが続いています。ダチョウの誕生です。しかも自然孵化です。旭山動物園では過去に卵を孵卵器に入れて孵化させ人工育雛での繁殖例はありましたが、親が卵を温め孵化し育雛したのは初めてのことです。ダチョウの卵は重さが1、5キロ近くもあり雛も孵化時1キロ近くと巨大なのですがなんせ親の体重は100キロ前後もあるので、雛の体重は親の100分の1しかありません。 親と一緒にいると大きさの違いに驚かれることでしょう。足下にいる雛に気づかないお客さんがいるほどです。雛の足は短く羽色も親とは違うので、雛が地面のエサをついばむ姿は、親子だと知らなければ別の種の鳥に見えるかもしれませんね。現時点まで(6月17日)順調に生育しています。成長を見守りたいと思います。
令和4年7月29日
先日お伝えしたとおり7月5日(火)にレッサーパンダの「渝渝(ユーユー)」が2頭の仔を出産しました。
渝渝は今回の出産を含め11頭もの仔を育ててきたので、子育てに関しては安心して見守ることが出来るベテランお母さんです。
例年は3日間ほど産箱に籠もりきりになってしまうのですが、今年は出産した日からエサを置くとすぐに食べに来るほど落ち着いており、生後0日の赤ちゃんを初めて生で見ることが出来ました。
150g程度だった体重も、今では500gまで増えており順調にすくすくと育っています。
まだ目は開いていませんが、徐々に体色も付き始め、動きもかなり活発になってきました。
性別もすでに確認しており、おととし同様にオスとメスです。
顔立ちや性格を踏まえた上で名前を決めていくので、もうしばらくお待ちください。
模様も出てきました
展示に関しては親子の体調や成長具合によりますが、例年どおり10月頃になるのかなと思います。
また、産箱内の様子が見られるモニターに関しては、出産直前に渝渝にカメラを破壊されてしまったため、準備ができ次第の公開となりますのでそちらも楽しみにお待ちいただければと思います。
レッサーパンダ・両生・は虫類担当:鈴木 達也
4年前の赤ちゃん、メスのニコルは生後3ヶ月でオスの個体に乱暴され事故が起きてしまい大変残念な出来事がありました。(2018年6月14日しいくにゅーすより)その後、出産例はありましたが上手く育たない状態が続き、メスの高齢化や近親交配を避けて避妊など行ってきました。
しかし、今回近親交配を避けていた群れの中で、フルト(41才)が6月22日に7年ぶりの出産をしました。性別は不明です。
複雑な心境ですが、生まれてきてくれた命には素直に喜びたいです。ベテランの母親はしっかり赤ちゃんを朝も夜も離さず抱きしめています。生まれてから3才半から5才くらいまで母親のお乳を吸っていますので母子はいつも一緒で深い絆で結ばれます。母親は約5年周期で次の出産ということになります。さて、赤ちゃんは生まれてから少し弱い子で心配しましたがひと月の間で随分大きく成長しました。
6月22日に産まれたチンパンジーの赤ちゃん
赤ちゃんの生まれながらにして3つの行為が反射的にできる様子もみられます。一つ目は、腕を広げての先にある母親のおなかの毛をつかみ、しがみつきます。足の力はまだ弱いので母親が手で抱きかかえます。二つ目は、母親の乳を探します。頬に刺激があると口の方に持っていくことです。三つ目は、乳首を吸うことです。人も含めてサルの仲間に共通したことと言えるでしょう。子どもは母親にしがみつき、母親は子どもを抱きかかえて愛情たっぷりと成長していく姿が微笑ましく思います。繁殖成功と言える時期(生後半年)を楽しみに見守ってくだされば幸いです。
ちんぱんじー館・タンチョウ舎担当 髙井正彦
はじめまして。4月からペンギン担当として勤務しております、川勝と申します。
大阪出身で、3月までは一般企業で経理の仕事をしておりました。小さい頃から動物が好きで、学生時代に動物の生態や環境について学んでいたこともあり、飼育員として採用いただきました。飼育員となり3ヶ月が経ち少しずつ業務にも慣れてきましたが、日々生き物と接することの責任を感じております。今回は3ヶ月間ペンギンを担当して、感じたことをお話したいと思います。
まず、衝撃を受けたのは、エサの時間(もぐもぐタイム)でのペンギンの個性の強さです。ペンギンたちはよく人を見ており、3か月経った現在でも私からエサを食べないペンギンもいます。どうしたら食べてくれるだろう?と食べ方やタイミングなど、飼育している46羽それぞれの個性を見極めてエサをあげることができるよう、歩み寄っていきたいと思っています。
現在の私の課題は潜水作業です。1ヶ月に数回、ぺんぎん館のプールを掃除します。具体的には水中で体勢を維持しながらガラス面を擦ったり、掃除機をかけたりします。潜水作業を行うには潜水士という国家資格が必要で、この資格は学生時代に取得していました。また、趣味で海でのダイビング経験は有りました。しかし水中で作業を行った事はなかったため、プール内で浮いたり沈んだりしてしまい、まだまだ練習中です。早く先輩方のように潜れるよう慣れていきたいと思います。
さて、先日もブログにてお伝えしましたが、6月17日にキングペンギンのヒナがふ化しました。毎日大きな声で鳴き、元気に育っております。体重は1ヶ月で10倍以上になり、成長が早いなと感じました。是非足を運んでいただき観察いただければと思います。
ふ化当日のヒナ。体重は200gほどでした。
7/17(30日令)のヒナ。体重は2,640gになりました。毎日体重を測っています。
まだまだ未熟な点が多くありますが、日々変化するペンギンたちの魅力を伝えられるようになりたいと思っております。また、私自身お客様との会話から気付きを沢山いただいております。ぺんぎん館で見かけた際は是非話しかけてください!
(ぺんぎん館担当:川勝 優衣)
6月17日にキングペンギンがふ化しました。今回は、このヒナのふ化のお話です。
毎年、キングペンギンが産卵すると卵はふ卵器へ入れ、親には偽物の卵を抱卵させます。ふ化したら、その偽物の卵とヒナを交換します。そうすると親は自分で孵したと思って、そのまま育ててくれます。
キングペンギンは、はしうちしてから雛が孵るまで48~72時間かかります。時間がすぎても卵から出てこられないと、そのまま死んでしまうので、飼育係が殻を割ってふ化を介助することがあります。ふ化できない雛は、体が十分に成長していないこともあるので、必ずしもそれがうまくいくとも限りません。
今回は72時間たってもふ化しませんでしたので、雛の状態を見て介助すると判断しました。体を傷つけないように、卵を慎重にすこしずつ割っていきます。雛は介助後も元気そうでしたので、もう少し待つと出てこられたのかもしれませんが、その判断は難しく、毎回迷います。
今は両親の元、順調に成長しています。ふわふわの茶色い綿羽が生え、愛らしさが増してきました。しばらくは室内展示場にいるのでぺんぎん館内でご覧ください。
(ぺんぎん館・ダチョウ・ヤマアラシ担当:田中 千春)
今年の4月、閉園期間中にオランウータンのモカの独り立ちを行い、3年に及ぶ兄モリトとの同居を終了しました。
独り立ちしたモカ
令和元年にモカの母であるリアンが急死し、当時4歳になりたてのモカが孤児となりました。孤児となったモカですが、エサに困ることはないため、そのまま一人で暮らすこともできましたが、精神面の成長のことを考え、当時すでに独立していた兄のモリトとの同居を試みました。モリトが穏やかな性格であることや、モリトの独立後もたまにリアン親子と一緒に過ごさせていたことなどが功を奏したのか、同居は成功し、モリトは保護者のようになってくれました。あくまで母親ではないので、モカにとっては頼れる大人といった感覚でしょうか。
オランウータンは群れを作らない動物です。仔育て期間が長く、一人の仔が独立するまでに7~10年ほどかかり、その間は基本的に母と二人だけで暮らします。仔は一人で生きていくために、エサの取り方や探し方、他の個体との距離の取り方など、「オランウータンとしての生き方」の全てを母親から学びます。母親の存在は精神的にも肉体的にも仔の成長にかかせません。野生では考えられない兄と妹の二人暮らしという形でしたが、この同居はモカの精神の安定や成長に良い影響があったと考えています。
お互い良い遊び相手になり、寒い時には寄り添って暖め合い、モカがやんちゃをしすぎた時には怒っても、本気で激怒するようなことはありませんでした。エサの時だけはやさしさが一切無くなっていましたが、とても良い関係で同居できていたのはモリトだったからこそと思っています。
モカは今年7歳になりました。野生のオランウータンでも早い個体なら独立しはじめる年齢になったこと、モカの性成熟まではまだ猶予があるものの、近親交配の可能性があることなどから同居を終了し、モカは独り立ちとなりました。
同居解消後、モリトは気にした様子も無く普段どおりでしたが、モカは不安そうな声で鳴いたり、イライラしたりしていました。寂しさもあったのだろうと思います。しかし独り立ちから2ヶ月以上たち、今のモカは大分おちついてきています。
モカとモリトは今後、オランウータンらしい一人暮らしをすることになります。
モリトは独り立ちした後にモカと同居となり、遊び相手がいる状態で長く過ごしたためか、年齢のわりに少し子どもっぽいところがあります。一人暮らしに戻り、これからは立派な大人のオスになっていくでしょう。そしてモカは独り立ちの寂しさを乗り越え、一人前のオランウータンに成長していくはずです。彼らの今後をぜひ見守っていただければと思います。
(オランウータン担当 中野 奈央也)
7月1日、旭山動物園は開園55周年を迎えました。1日が平日だったので「どうせなら2日の土曜日もやっちゃう?55の節目だし・・・」ということで、2日間にわたりいろんなイベントを行いました。飼育員の回顧トークや○×クイズ、あちこちで行われたマルチポイントガイドばどなど、どのイベントも盛り上がり、やってる私たちもとても楽しいひとときでした。
○×クイズ
人形劇
働く車大集合
中でも初の試み、午前0時から始まる「真夜中のインスタライブ」「そんな夜中に誰が見る?」と想っていましたがフタを開ければ常に1800人くらいの人が見てくれていて、トータル1万人の方が視聴してくれたという結果にビックリです!
みなさん、楽しんでいただけたでしょうか?
個人的には、この日用に作った「55thスプレーアート看板」新境地でございます。処女作ゆえ出来はいまいちですが、腕を磨きまたトライしてみようと想っています。
60年、80年、100年とまだまだ頑張っていきますので、これからも旭山動物園をよろしくお願いいたします。みなさん、ありがとうございました。
(副園長 あざらし館 てながざる館担当:中田 真一)
6月19日の朝、ととりの村の大池を見るとキンクロハジロのヒナが3羽、母鳥と一緒に泳いでいました。
その3羽はフラミンゴとととりの村の間にある出入口の近くで卵を抱いていたキンクロハジロの卵から孵ったヒナでした。
キンクロハジロは潜水が得意なカモですが、ヒナたちも卵から孵るとすぐに泳ぎ回り潜ることもできます。
ととりの村では、鳥たちの間で闘争などもあり、ヒナが産まれても死んでしまうこともありますが、キンクロハジロのヒナたちは、母鳥がしっかりとヒナたちのことを見守っているため、順調にすくすくと成長しています。
3羽のうち、1羽だけ好奇心旺盛ではぐれがちなので、2羽しか見つからない時にはいつもドキドキします。
水を飲むキンクロハジロのヒナ
ヒナがかえると、育雛用のペレットと大人が食べるペレットを砕いたものを混ぜて池にまきます。
最近では、陸に上がって餌台にある餌を食べようとする姿も見られました。
クチバシがまだ小さいため、ペレットを池まで運んで食べようとする姿に、成長を感じました。
羽繕いするキンクロハジロの親子
ととりの村では、今も3羽のキンクロハジロが卵を抱いています。
3羽のキンクロハジロたちが安心して卵を温め、ヒナを育てられるように環境づくりをがんばりたいと思います。
余談ですが、ととりの村では毎年野生のスズメも繁殖しているようで、少し薄い色をしたスズメの幼鳥が餌を食べたり砂浴びするのを見かけることがあります。また、網の外ではカラスが巣を作って子育てをしているようです。
アオダイショウも細くて短い若そうな個体が多く、飼育動物以外でも新たな命が生まれているのを感じました。
(ととりの村・オオカミの森担当:原田 佳)
動物図書館から発行している「動物園だより」282号で実施した、 クロスワードパズルへのたくさんのご応募、ありがとうございました。 今年も、旭川市内を中心に道内外の方からたくさんのご応募いただきました。
さて、「クロスワード」の答えを発表させていただきます。
今年の答えは、紙面にヒントとなる動物の写真を入れていたので、 答えが先にわかった方もいたかもしれませんね。
(紙面の上部にヒントとなる動物がいます)
(クロスワードの答えです)
答えは「ブラウンベアー」でした。
今年は、夏期開園日にあわせて、9年ぶりの大型施設「えぞひぐま館」がオープン。 エゾヒグマは英語で「エゾ・ブラウンベアー」と言います。
そして、6月27日、坂東園長による厳選なる抽選を行いました。
(厳選なる抽選を行う坂東園長)
抽選で選ばれた10名の方には、近日中に賞品を発送させていただきます。 当選者の皆さん、おめでとうございました。 (「こども牧場」のヒツジの毛を土台に使った 「エゾヒグマ」羊毛フエルトマスコットブローチ です。)
クロスワードに挑戦していただいた皆さん、ありがとうございました!
また、7月1日・2日の55周年開園記念日イベントにて、 「開園55周年クロスワードパズル」を来園者限定で配布することになりました。 園内各門とサポートセンター、動物図書館に設置してありますので、ぜひ挑戦してみてくださいね!
引き続き、動物図書館をよろしくお願いいたします!
夏期開園を迎え、ここまで順調に開園を継続できています。子供たちの歓声が聞こえ、修学旅行の学生なども多く、コロナ以前とまではいきませんが、園内は程よくにぎやかです。個人客が多く、それぞれのペースで過ごされているので、行列などはほとんどなく、混雑した様子はありません。ホッキョクグマの子の公開や、えぞひぐま館のオープンがあり、お客さんが集中したらと心配していたのですが、うれしい誤算でした。お客さんはホッキョクグマの子「を」見に来たというより、ホッキョクグマの子「も」見に来たという感じで、密にならず、園内に満遍なくお客さんがいるようです。 ホッキョクグマ・ピリカの子は、日に日にたくましくなっています。走って泳いで、おなかがすくと授乳、エネルギーが充電されるとまた走って泳いで、たまに休憩。思わず目が釘付けになり時間を忘れてしまいます。 エゾヒグマのとんこは、こちらの想定以上に早く新居に馴染みました。土の上でごろんと昼寝をしたり、のんびりと水浴びをしたり、引っ越し前よりも表情や仕草が豊かになりました。運動量も増え、ひいき目かもしれませんが体型も引き締まってきたように見えて、惚れ惚れしてしまいます。 そして、えぞひぐま館のもう一つの目標である渓流魚の飼育。水道水を使った閉鎖式濾過循環でのチャレンジは、コンクリートの「あく」との格闘も解消し、魚が元気に生活できる水質を実現できつつあります。毎日見ていると魚の個体識別ができるようになり、習性も分かるようになってきました。 シマフクロウのひなも大きくなり、巣箱から顔が見える機会も増えました。ひなの食欲も旺盛で、父鳥が日中も魚を運ぶ姿が見受けられます。この手紙が届く頃には巣立っているでしょう。 今年は行事なども復活できそうです。楽しみにしていてください。
令和4年6月23日
はじめまして。今年の4月から旭山動物園にて勤務しております、こども牧場担当の紺野と申します。
担当動物はブタです。旭山動物園に入ったばかりの時は、慣れない飼育作業に苦戦していましたが、2か月経った今は楽しみながら業務に当たっています。
僕が担当している「ゆず」と「うめ」の様子を写真でどうぞ!
うめ
ゆず
最近、うめは泥遊びを始めまして、夏の暑さで熱中症にならないように泥だらけになります。暑い日は見事な黒豚になっているので、ぜひ見に来てください。
また、やすらぎの森休憩所付近にある循環型農園で、毎週土曜日(雨のない日)に畑作業を行っており、サークル活動で来てくれる高校生と共に野菜を育てています。
最後に、この仕事はとても大変なのですが、動物たちとふれあうことで自分の知らなかったことを知ることができています。これからもよろしくお願いします。
こども牧場担当:紺野 聖空
シロテテナガザルやインドクジャクの鳴き声が賑やかな季節になりました。 野鳥ではキビタキやニュウナイスズメの鳴き声も聞こえてきます。
(西門トイレそばのエゾノコリンゴの木/6月10日)
西門トイレそばのエゾノコリンゴの木では、 たくさんのエゾシロチョウが羽化しました(5月20日ごろからサナギになり始め、6月2日ごろから羽化し始めました)。
(西門トイレそばのエゾノコリンゴの木/6月18日)
産卵している個体を見つけました! また新しい命がこの木の葉から始まります!
ちなみに、もうじゅう館前のヒメリンゴの木でも、たくさんのエゾシロチョウが羽化し、産卵していますよ。
葉っぱの上にはバッタの幼虫(成虫と同じ姿)やアマガエル、 木の枝や幹などではイモムシ・毛虫、カタツムリがいたりします。 (バッタ:ヒメギスの幼虫) (ハネナガフキバッタの幼虫) (アマガエル)
樹上にはそんな生きものをくわえている野鳥も多く見かけます。
(虫をくわえているヤマガラ/5月28日) (近くでは巣立ったばかりのヒナがエサを待っていました/5月28日)
いろんな生きものの生き方が今、とてもよくわかる季節なんじゃないかな…と思います。
「旭山動物園だより」は、プールで泳ぎ始めたホッキョクグマの子をはじめとする 初夏の動物たちの暮らしを紹介しています。
「あさひやまどうぶつえんみにだより」では、動物たちの「なまえ」について紹介しています。 名前の由来がわかると、動物観察がより楽しめると思いますよ!
ホッキョクグマの子、順調に成長しています。ようやく自発的にプールを泳ぐようになり(やれやれ)、ダイビングして遊ぶ子熊の姿に来園者も釘付けですね。
6月1日から子熊の愛称を募集しています。ほっきょくぐま館入口に貼ってあるQRコードをスマホで読み込んで応募できますので、みなさんぜひご参加ください!
私の担当動物の愛称を公募するのはこれが7度め。もう慣れたものです。手書き看板を準備します。
まずは絵のモデルにする写真を選ぶ。これがいいかな。
レイアウトを紙にざっくり下描きします。(雑すぎ?)
カラーパネルには下書きなしで直接描きます。
完成!
後輩の中には驚くほど絵の得意な「画伯」がいてビビります。がしかしオジサンも負けてられません。17年も絵を描き続けてればちょっとは上達するってもので・・・。うん、我ながらいいデキだ!
看板を描きながら、改めてホッキョクグマ繁殖に成功したのだなーとしみじみ感じました。気を抜かずに子熊の成長を見守っていきたいと思います。
2016年に繁殖したアムールトラやユキヒョウは、搬出先の園ですでに父親になり、命が次の世代に受け継がれ始めています。
あのチビどもが今では父親か~。
ホッキョクグマの子熊もいずれ立派な母親として子育てしてくれる事を期待しています。
そんなわけで、良い名前の応募待ってます!
(ホッキョクグマ アフリカ水槽担当:大西 敏文)
四月から新人飼育員として働いている土井と申します。担当動物はキリンです。新人といっても、昨年までは旭山動物園で広報の仕事をしていたので他の新人飼育員と比べてフレッシュさが足りません・・・
さて、飼育員として働き始めて約2ヶ月となりますが、事務職の頃とはまったく違う仕事に最初は悪戦苦闘していました。広いキリンの寝室を慣れない道具(ほうきやホースなど)を使いながら掃除をするのですが、あまりの時間のかかりっぷりに悲しくなりました。
最近では作業のコツがわかってきたのか、少しずつですが慣れてきて楽しみながら業務にあたっています。
キリンたちを日々観察していると、様々な疑問が生まれてきます。先輩職員に聞いたり、専門書等を見てわかることもあれば、わからないこともたくさんあります。そのような気づきや発見を大切にしていき、もぐもぐタイム等でみなさんにお伝えしていければと思っています。
最近のキリンたちとペリカンの様子を写真でどうぞ!
あさひ すっかり大きくなりました。身長は3m近くになります。
結 メスの頭はつるっとしています。
ゲンキ オス特有の頭のゴツゴツがあります。
モモイロペリカン キリンたちがいなくなると自由に放飼場内を動き回ります。
最後に、キリンを飼育するという仕事はやりたいと思ってもタイミングや運がないとなかなかできないことだと思います。担当動物に責任を持ちをしっかりと観察し様々な知識を身につけていきたいと思っています。
これからよろしくお願いします!
きりん舎担当 土井尚哉
5月30日ととりの村で3羽のマガモのヒナが孵りました。
翌日からも次々と卵が孵り、ととりの村の大池はまるでカモの幼稚園のようです。
眠るカルガモのヒナ
4月末に鳥たちを外放飼場に出し、すぐにメスたちが卵を産み始めました。
それからヒナが孵るまで、何度もカモたちの巣にヘビが入り、捕まえてはととりの村の外に放していたので、無事ヒナが泳いでいる姿を見たときは嬉しかったです。
泳ぎ回るヒナたち
ヘビやネズミ、時にはカラスなどの天敵から親鳥に守られながら、よく食べよく泳ぎ、秋になる頃には親鳥と同じくらいの大きさになって、鳴き声もピーピーからグエーグエーと変わり、成長していくヒナたちのを見るのは感慨深いです。
野生では、キツネなど他にも外敵が多いカモたち。
厳しい自然界で親鳥は外敵の目につかない場所を探し、巣材を集め、自分の羽を抜いたりして巣を作り、たくさんの卵を産みます。
たまに巣材をかぶせて卵を隠し、餌を探しに行ったり水を飲みに行ったりしながら、雨の日も風が強い日も卵を温めます。カラスが近づいて来た時には卵を守るために羽で叩いて戦うこともあります。
卵を抱くマガモ
母鳥たちが産み大切に大切に温める卵の中には、孵るとすぐに自力で泳ぎ、餌を探し回ることができるたくましい生命力が詰まっています。
ととりの村のヒナたちも少しずつ大きくなっています。
これから半年間、その成長を見守っていきたいと思います。
カルガモのヒナ
(ととりの村・シンリンオオカミ担当 原田 佳)
5月27日にダチョウが一羽孵化しました。孵化3日目から室内の巣から離れ、親と屋外へ出るなど行動範囲も広がってきています。
初めて屋外に出た日
ヒナは1.4キロくらいの大きな卵から、体重1キロくらいで孵化します。親と比べると100分の1以下です。小さなヒナが身長2メートルの親と一緒に歩くのを見ると、踏まれないかと心配になってしまいます。
これから1年もすると、大人と同じくらいの大きさに成長します。これからどのように成長するのか、楽しみにしています。
親子の屋外と室内の出入りは自由にしていますので、どちらかでご覧下さい。
ブログ読者の皆様、はじめまして。
今年の4月から旭山動物園に配属され、エゾシカ及び教育を担当している上江と申します。
私の動物飼育経験としては、昔実家にいたネコやイヌの飼育を少し手伝ったことがあり、最近はSNSでかわいいネコの動画をよく見る、といったくらいで、多くの方々とほとんど同じか、少し乏しい経験からのスタートだったと思います。
そんな私ですが、この約1ヶ月間で担当のエゾシカについて感じたことをお話します。
エゾシカは、北海道にたくさん生息していて身近な動物である一方、「車とぶつかった」「農作物を食べられた」などの被害がクローズアップされており、一般的にはあまり良いイメージがない動物かもしれません。私自身もそうでした。
私が給餌の際に初めてエゾシカと同じ空間に入った時には、そうした先行イメージと実際の体の大きさに驚き、「いつ襲ってくるのだろうか」と、非常に緊張しました。怖いばかりで、ウサギやリスといったかわいい小動物の担当の方が良かったと思いました。
しかし、ほぼ毎日顔を合わせている今では、エゾシカはかしこくて、かっこよくて、勇ましいけど臆病で、少しのんきな一面もあり、旭山動物園で1番魅力的な動物だと感じています。(まるで親バカですが、距離感に関して油断しないよう肝に銘じております)
自分が一生懸命掃除しているのに、ゆったりと座って、まるでガムをかんでいるかのように反芻したり、あくびをしてこちらを見ていたときは、少しイラッとして笑ってしまいました。
これまでエゾシカは、肉や皮などを目的とした乱獲や天敵であるオオカミの駆除などにより、絶滅寸前まで追い込まれたり、現在では数が増えすぎて年間10万頭以上駆除されるなど、ヒトの行いに振り回されてきた動物といえると思います。
だからといってエゾシカは、ヒトを威嚇したり襲ったりするわけではありません。生きるために必死に食べて、時にはのんきに暮らしたいだけなのです。私たちと同じですよね。
エゾシカと接していると本当に多くの気づきがあり、家に帰っても動物のことをを少し考える時間ができて、環境や動物に関するニュースなども注目するようになりました。
これから、私自身もっと多くのことを学び、展示や教育活動を通じて皆様にエゾシカや動物の魅力を伝えていきたいと考えています。
さて、エゾシカの森では、5月におびひろ動物園からメスのエゾシカを迎え、繁殖を目指しています。また、今年もエゾシカとの共生を形にした野菜農園をつくる予定です。
皆様もぜひ、私と一緒に楽しみながら動物のことを知ってもらえたら幸いです。
岩山でたたずむエゾシカ
角が片方落ちたエゾシカ
おびひろ動物園から来たエゾシカのメス
エゾシカ・教育担当:上江昌弘
この手紙を書いているのは4月中旬。夏期開園準備のため、一年で最も忙しい休園期間中です。今年の夏期開園は、約9年ぶりの大型施設である「えぞひぐま館」のオープン、ホッキョクグマの子のお披露目など、自分たちも今からワクワクしています。
エゾヒグマのメス・とんこの新居への引っ越しも無事に終わり、今は新居の寝室で過ごしていて、少しずつ慣らしている段階です。引っ越しは麻酔で眠らせて行うので、とんこにすると目が覚めたら「ここはどこ?」状態です。新居の寝室の檻や寝室の出入りの仕方などは「もうじゅう館」と同じ材質・形状にしていますが、新築の建物なので生活の気配がない無機質な空間になっています。もうじゅう館では向かいの寝室にトラがいて、にぎやかでした。とんこは、母グマが駆除されて旭山動物園で暮らすことになり、子グマの頃から今までずっと、もうじゅう館で暮らしてきました。もうじゅう館では母親にもなりました。新居に住むのはとんこだけなので、とんこも戸惑っていると思います。 でも徐々にとんこ自身の匂いや飼育員の匂い、人の出入りの気配などを感じて少しずつ落ち着ける場所になっていくはずです。とんこの生活空間として、まずは寝室と室内放飼場に馴染んでもらい、最後に屋外放飼場へ、という流れになります。もうじゅう館では発現する機会のなかった、よりヒグマらしい感性や行動が目覚めてくれると期待しています。今までよりもとんこが尊く見える、輝いて見える姿を想像しながら、えぞひぐま館を建てました。 今年、誕生から55年を迎える旭山動物園。「保全・共存のプラットホーム」を新たな目標に、スタートを切りたいと思います。 コロナ禍による空白の2年間を一気に取り戻します!
令和4年5月20日
4月14、18日に2018年以来2回目のヒナの誕生がありました。2018年以来となります。
前回の繁殖時とは営巣場所(巣箱)が違うため、どうなることかとワクワクドキドキしながら観察を続けていましたが、無事に産卵、孵化を迎えることができました。
抱卵中からモニターを設置し、来園者の皆さんに見てもらえるようにしていましたが、最近では何度も通って見てくれていた方もいるようで、「ヒナ大きくなってるねー。」なんて声も聞こえてきます。嬉しい限りです。
途中メス親に巣内のカメラを翼で叩かれ、ズレて見えなくなってしまいましたが、奇跡的にまたメス親がカメラをいじったことで修復され見えるようになりました。
野生下では165羽程度しか生息していないシマフクロウ。野生のシマフクロウの子育ての様子はまず見ることができないと思いますが、それが動物園だとずっと観察することができます。動物園で希少種を飼育する意味はまさにこういったことで、少しでも来園者の皆さんに野生動物の生態や現状を知って興味を持ってもらい、その気持ちを彼らの保全に繋げていくことだと思います。道内では今まさに同じように子育てをしている野生のシマフクロウのペアもいると思います。動物園の子育てペアを見ながら野生に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
左からメス親、ヒナ1、ヒナ2(頭だけ)。オスは巣の外で見張っている。
巣内の奥に写っているのは叩かれてズレてしまったカメラ。
フクロウ・えぞひぐま館担当:大内章広
夏期開園初日は咲き乱れていた薄紅色も散り、あっという間にみずみずしい緑色が辺りを染める季節となって参りました。
四月から新人飼育員として働いている高橋と申します。担当はワシ・タカなどの猛禽類、それからカバです。
小さい頃から動物が好きで、「いつか旭山動物園に関わる仕事がしたい」という思いで、単身十勝からこの旭川に出てきた私にとって、今回このように飼育員として(しかも大好きなカバ担当として)働けることが未だに夢のようで、毎日楽しみながら業務にあたっています。
寝室での百吉。放飼場の掃除が終わるのを待っています。
旭子と凪子。あっという間に顔を覚えてくれました。
とはいえ、前の部署ではもっぱらパソコンに向かって仕事をするのが常でしたから、猛禽たちの餌を配り歩き、カバのうんちを運び、餌を運び、プール掃除をし…。たくさん身体を動かす動物園の仕事に、ひゃ~!!となりながら頑張る毎日です。
水中凪子。凪子は私の姿を見つけるといつも近くに寄ってきます。
ところで、この時期は猛禽たちの産卵シーズンでもあります。
先輩飼育員に教えてもらいながら、私も採卵した卵を孵卵器(卵をあたためる機械)に入れてお世話しているのですが、表情豊かな成鳥たちと違いぴくりとも動かない卵と向き合う時間は、孵化するかどうか期待や不安でなかなか形容しがたい気持ちになります。
無事に孵化したらいいなあ……。
知識も経験もまだまだ先輩方の足下にも及びませんが、新鮮な気持ちを大切に、一歩一歩成長していけたらいいなと思います。
小さい頃夢見た旭山動物園の飼育員さん。
次は私が、誰かの夢になるような、誰かに夢を届けることのできる素敵な飼育員になれるよう、精進していきたいです。
これからどうぞよろしくお願いします!
(猛禽・かば館担当:高橋 ひな)
現在、夏期開園に向けての準備のため休園中の旭山動物園ですが、
いろんな場所で、いろんな生きものが新しい季節をスタートさせています。
エゾヒグマの新施設への引っ越しも終わりました。
シマフクロウはヒナが卵から孵化しました。
インドクジャクのオスは、美しい飾り羽がはえそろい繁殖期をむかえています。
動物慰霊碑そばの野草園では、エゾエンゴサクやカタクリが咲いています。 園内のエゾヤマザクラも少しずつ咲き始めています。
(青くて小さな花がたくさん咲くエゾエンゴサクと、濃いピンク色の花が咲くカタクリ)
サナギで越冬していたモンシロチョウ、成虫で越冬していたクジャクチョウやオツネントンボ、
幼虫で越冬していたエゾシロチョウの幼虫(5mmぐらいの大きさ)などいろんな虫たちも出てきました。
(花の蜜を吸うモンシロチョウと、越冬あけで翅が少しいたんでいるクジャクチョウ)
園内に来る野鳥も変わりました。今、園内でよく見かけるのはカワラヒワです。 繁殖のために北海道にやってきています。もちろん北海道では留鳥のカラ類も観察できるのですが、
行動が変わってきました。巣作りの季節をむかえているようです。
動物の毛を運んでいる鳥も多くみかけますし、冬は群れで行動していたシマエナガは、
ペアもしくは単独で行動しています。
カワラヒワ(上がオス、下がメス)はこれからペアになります)
(シマエナガのジュルッジュルッという鳴き声はあまり聞かなくなりました)
生きものによって、いろんな春の過ごし方があるんだと実感しました。
さて、先日、4月29日の夏期開園にあわせて、旭山動物園だより・みにだよりの最新号を発行しました。
「旭山動物園だより」は、夏期開園号恒例となったクロスワードパズルとなっております。
旭山動物園や、生き物、自然に関する問題です。園内で無料配布をしておりますが、来られない方は、
ファイルをダウンロードしてご利用ください。
「あさひやまどうぶつえんみにだより」では、動物たちの「け」について紹介しています。
園内の動物たちを観察する際に、ぜひ参考にしてみてくださいね。
(順調に成長しているホッキョクグマの子(3/20撮影))
さて新しい年度が始まりました。春ですね。人の移動も多い時期ですが、動物園の動物たちの移動も秋頃と春先が多くなります。真冬は吹雪などで輸送のスケジュールが狂うリスク、夏は気温が高いと動物の健康へのリスクが高くなるからです。4月と言ってもこちらでは残雪もありまだまだ涼しいのですが、本州以南はあっという間に北海道民の感覚では初夏のような暑さになってしまいます。
この原稿を書いているのは3月中旬です。昨年遅れに完成したえぞひぐま館、雪が降り積もる中での完成だったので、工事の不手際と言うことではなく雪解け後に放飼場の土が沈んでいたりあれやこれや手をかけなければならないことが出てきます。今は魚が棲める水作りに精を出しています。完成後すぐに「渓流」の水の循環を開始しました。システムや濾過の状態のチェック、擬岩に覆われているのでコンクリートやモルタルのあく抜き、水温やpHなどのチェックを継続し、ある程度安定した水質の水ができてきました。先日少数の魚を入れましたが元気もあり手応えを感じています。プチ淡水魚水族館を目指しています。ヒグマ(とんこ)のエサとしてではなくヒグマと魚の共存型飼育展示を目指しています。ただ水が流れているだけではなく、生き物の気配を感じる水があることで、とんこにもヒグマらしさが目覚める良い刺激になると考えています。来園者には水中の魚を観てふと見上げるとヒグマがいる、どうですか?ちょっと感動的ではないですか!
もう一つ、ホッキョクグマの子も順調に成長しています。生後100日を超え本来ならば巣穴から出て来ても良い大きさです。現在は産室から母親と一緒に寝室側にも頻繁に出てきて、母親にじゃれついたり走り回ったり一緒に固形物も食べ始めています。伸び伸びと運動をさせるためにもそろそろ放飼場に出す練習をしなければいけないほどの成長です。
旭山動物園は55回目の夏期開園を迎えます。充実した年を皆様と共に過ごしたいと願います。
令和4年4月18日
気温が上がってきてサルたちが外で過ごす時間が長くなってきた今日この頃です。
サル舎で暮らす3種のサルたちは寒さに強くないので、冬期は基本的には「展示していません」なのですが、放飼場にはヒーター付き出窓があるのでコロブスとブラッザは冬の間もほぼ毎日放飼することができました。気温・天気・サルたちの様子を見つつ短時間の放飼でしたが、ずっと出窓にいるわけでもなく、体が温まると動き回ったりと外でも元気に過ごしていました。
(ワオは体温調節が上手ではないので放飼しない日が多く、放飼中もシュートを開放していつでも室内に入れるようにしていました)
<出窓でくつろぐ兄妹>
7月に生まれたコロブスの「アクイラ」と10月に生まれたブラッザのこども(まだ性別確定できず、名前を決めかねています…)は順調に成長しています。それぞれ1歳年上の姉・兄がいて、きょうだいで楽しそうに遊んでいます。
<ブラッザのこども>
冬の間に、古くなった丸太を交換したり、台を増やしたり、消防ホースを編んだ遊具を設置したりしてきました。
個人的には遊具がなかなかのヒットで、ワオとコロブスに同じものを設置してみました。最初、ワオの遊具の下のほうにエサかごを付けたら横の台の上からエサかごをひっぱり寄せていたので高い位置に付け替えました。コロブスは主にあんずとアクイラが使って遊んでいます。
<アクイラ、アクロバティックな遊び方です>
<そうじゃない…>
<正しい(?)使い方>
あとは、体重測定を行いました。
こどもたちとワオは以前から量っていましたが、もっと重たい個体も量れるようにいつもと違う体重計を借りてきました。見慣れない体重計でもコロブスたちはあまり警戒せずに乗ってくれて、無事に量ることができました。ブラッザは警戒心が強く、どうにか体重計に触れずに大好きな落花生を取ろうとします。マキャベリはこどもの頃に経験したことがあったそうなので何回か試すうちに乗れるようになったのですが、モモはいまだに乗ってくれません。
今後は定期的な測定を継続しつつ、モモの練習を続けます。
<ギガース、10.8kgでした>
<マモル、慣れたものです>
最後におまけの写真を。
父のしっぽに自分のしっぽをからませるマモル。夕方、電気を消しに行くとよく見られる光景です。
<仲が良い父と息子>
サル舎・北海道産動物担当:佐藤 和加子
大西です。
いまや盛り上がっている私の担当動物をご紹介します。
さっそく生まれた子の写真からご覧いただきましょう!
↓
じゃじゃーん!
ウガンデンシスオオツノカナブンの幼虫です。
昨年4月に購入した成虫ペアは夏に死亡し、昨年10月に購入したペアもメスが死に、現在生きている成虫はオス1頭だけです。
エメラルドに輝く成虫オス。美しいです。
でもご心配なく!4月ペアの幼虫世代が成長し、とうとう繭玉(まゆだま)を作りました。
カナブンの繭玉です
カナブンはカブトムシと同様に地中で蛹になりますが、周囲の土をカチカチに固めます。
「繭玉」と呼ばれるそうで、私もはじめてお目にかかりました。想像以上にカチカチで、簡単には壊れなさそうです。
計6頭が繭玉を作っています。待望の羽化までもう少しです。
10月ペアの幼虫も大量に生まれています。彼らが成虫になるのは秋~冬でしょうか。
このように羽化時期が異なるふたつのサイクルの個体群を飼育することで、成虫を展示できる期間を増やそうという試みです。果たしてうまくいくか、乞うご期待!
マダガスカルゴキブリ(以下マダゴキ)の水槽には「ゴキゴキルーペ(要は虫メガネ)」を再設置。マダゴキたちの姿をじっくりと観察できます。
また、マダゴキ水槽にはマダガスカル原産の植物たちを植えてあります。
奥にひっそり植えてあるのはパキポディウム・ゲアイー。観葉植物マニアから愛される珍奇植物。鋭いトゲをもつ特異な姿はマダゴキにもキャラ負けしません。
鉢植えしてあるのはマダガスカル・ジャスミン。きれいな白い花をつけます。つる植物で、伸びた新芽に次々と花を咲かせる・・・はずなのですが、新芽が出たそばからマダゴキに食べられてしまい、一向に伸びませんでした。
樹液に弱毒があるはずなのですが、マダゴキたちは気にせず葉を食べます。おそるべき生命力。
しかしここに来て急に新芽が伸びてきました。
待望の新芽が。
このままマダゴキに食べられずに生長すれば、念願の開花をご覧いただけるかもしれません。
まだまだご紹介したい点はたくさんありますが、今回はこのへんにしておきます。
見どころいっぱいのアフリカ水槽、みなさんお見逃しなく!
P.S.私のもう一つの担当動物(白くて危険なヤツ)も繁殖がうまくいってるらしいです。そちらが気になる方は公式YouTubeの方をチェックしてみてください。
(アフリカ水槽 ホッキョクグマ担当:大西 敏文)
(今にも遠吠えが聞こえてきそうなオオカミ)
雪あかりの動物園、夜間開園も無事に終わりました。イベント的なことは一切できませんでしたが、静けさの中でオオカミの遠吠えが園内に響き渡り、とても印象的な夜になりました。すっかり定着してきたインスタライブだけは連日行い、好評をいただきました。 手紙を書いている今は2月中旬。日中の最高気温が高く、雪の少ない日が続いています。雪あかりの動物園で展示する予定だった、風船に水を入れて作る水滴型のランタンが計画どおりに製作できなかったり、水温が思ったように下がらないため、あざらし館の流氷再現も断念せざるを得ませんでした。もしかしたら、この手紙が届く3月中旬には雪解けが進み、地面が見えているのではないかと心配になります。 さて、動物たちですが、ホッキョクグマの子は生後2か月で体重約8キログラムとなり、順調に成長しています。じっとしていると縫いぐるみと見間違えてしまいそうな容姿ですが、動きに力強さも感じられるようになってきました。キングペンギンのひなは、巨大キウイのような茶色い姿から、羽根の換羽が進み、大人ペンギンに日々成長しています。 冬から春にかけての寒冷な時期は、動物への負担が少なく、引っ越しに適しています。旭山動物園からはユキヒョウ・レッサーパンダ・ゴマフアザラシ等が、他の動物園に旅立ちました。送り出すときは少し寂しさがあるのですが、いずれも新天地で新たなペアを組むことになります。命をつなぐことに期待を大きく膨らませつつ、新たに迎え入れる動物の準備も進めています。 この手紙が届く頃には、夏期開園のセレモニーができるのかな?えぞひぐま館のオープンイベントはできるのかな?など、春に向けて具体的な調整を始めなければいけません。新緑の匂いを思いっきり吸い込める春になるといいですね。
令和4年3月16日
(なんだか、真っ白じゃない! 汚れてる?)
先日、ゆっくりロードのエゾユキウサギを観察していたら、 なんだか色が白くないことに気付きました。
真っ白じゃないんですよ。
汚れてるのかな? とも思ったのですが…
(うっすら茶色いのです)
もう(?)夏の毛が下からはえてきてるんです!
エゾユキウサギ、これからどんどん冬の白い毛が抜け、
茶色っぽい夏の毛に換わります。
さて、先日、動物園だより・みにだよりを発行しました。
動物園だよりでは、「動物たちの寒さ対策」特集にしてみました。
もうすぐ寒さ対策が終わる春を迎えますが、どのようにして寒さをしのいでいるのか、
動物別にまとめてみたので、ぜひ、読んでみてくださいね。
みにだよりでは、「みずのなかを『およぐ』」生き物をシルエットクイズで紹介しています。
旭山動物園には、水の中を泳ぐことができる生き物が何種類かいます。
園内では水中の様子も観察できるので、ぜひ、今度来園したときの
動物観察の参考にしてみてくださいね。
しいくにゅーすでお知らせした通り、ジェンツーペンギンが1羽来園しました。
来園後すぐは隔離スペースで飼育していましたが、エサを食べるようになり、少し慣れた様子だったので9日から他の個体と合流させました。
合流した時も他の個体はあまり気にすることなく穏やかな様子でひと安心です。
このまま少しずつ旭山の環境に慣れてくれると良いと思っています。
新入りは左の個体です
ぺんぎん館・アフリカタテガミヤマアラシ担当:田中千春
動物の移動たびに悩むことがあります。今回は移動用の輸送箱はどうしようかと。
輸送箱の条件ですが、まずは動物園にはいろいろな大きさの動物がいるので、それぞれの大きさに合った箱でなければいけません。そして当たり前ですが輸送中に動物が逃げないようにすることが重要です。そして、輸送中にある程度中で自由に向きを変えられたり、横になったりできる広さがいります。ただし、あまり広過ぎるのもよくありません。
例えば鳥などはあまり広いと、翼を中で広げることで怪我する可能性もあります。限られた時間での移動ですから、少し窮屈かもしれませんが怪我をさせないための広さということも考えないといけません。猫やイヌを飼っているかたはキャリーケースを想像してもらうと良いかもしれませんね。動物の大きさに対してそんなに大きくないと思います。
大体の大きさが決まったら次は箱の調達です。大体調達方法は三つ。
一つ目は特定動物といわれる飼育に登録が必要な動物たちを移動する場合。このときは許可を受けた檻を使う必要があること、動物の大きさが様々なため、動物輸送業者や他の動物園から借りることが多いです。最近だとライオンの移動に使った檻は業者に借りました。
2つ目は、園にストックされている各種大きさの輸送箱でなんとかなる場合。
そして3つ目は、園で自作する場合です。自作だと大きさは自由に作れるので良いのですが、輸送中に絶対に壊れないことが必要なので、なかなか気を遣います。他園から輸送用に送られてきた箱に補強をすることもあります。
動物の移動は箱のことが気になるお仕事でもあるのです。
箱のストックはありますが、なかなか合うものはありません
主幹:池谷優子
(1/23ホッキョクグマの子ども)
年が明け2月、そろそろ春が待ち遠しくなる時期ですね。 えぞひぐま館(仮称)は、建物が完成し、今は掲示物の作成などオープンに向けて着々と準備を進めています。知床財団の掲示ブースの制作物は、知床自然センターで鋭意制作中なので、完成が今から楽しみです。えぞひぐま館は、今までの施設から一皮も二皮もむけた次世代の施設。「保全のプラットホーム」を具現化していますので、乞うご期待! それにしてもオミクロン株…。またも一寸先は闇の中です。雪あかりの動物園は、果たして実施できるのでしょうか。この先、ホッキョクグマの子が無事に成長してお披露目となったときに、手放しで「見に来てね」とは言えない状況なのでは?下手をすると、混雑回避のために、ほっきょくぐま館エリアの封鎖等も検討しなければならないのでは?とマイナス思考になってしまいます。
そんな中、旭川東高校の生徒が、クラウドファンディング「旭山動物園応援プロジェクト」を立ち上げてくれました。旭山動物園をコロナ禍から救い、もっと動物たちと人をつなぎたい!という思いで、支援を広く呼び掛けてくれています。もう、涙が出るほどうれしいです。地元の学生が、わがまちの動物園の危機を「自分事」として捉え、力になりたいと考えてくれた気持ちが、ひしひしと伝わってきます。正直、運営面でもかなり危機的な状況に追い込まれているので、とてもありがたいです。 動物園の役割は、動物たちの素晴らしさや命の尊さを感じてもらうことだと考えています。観光地のイメージが定着した旭山動物園に、危機感をずっと抱いていましたが、コロナ禍で地元からの来園者が戻ってきています。今一度、地元に根を張った動物園としての顔を取り戻すチャンスだと前向きに捉え、夏期開園に向けて準備を始めます。
令和4年2月19日
はじめまして! 昨年11月より旭山動物園にて勤務しております、こども牧場担当の志子田と申します。
自宅でイヌ1頭、ネコ4頭に、鳥1羽、そして魚を飼育している大の動物好きです。
現在、こども牧場の中でも「ニワトリ・アヒル舎」を担当しております。 小さい頃から慣れ親しんだ、大好きな旭山動物園で働くことができ、毎日楽しく過ごしています。 見かけた時は気軽に話しかけてみてくださいね!
さて、先日よりアヒル舎室内へ新アイテムとして子供用プール(人間用)を導入しました。
冬場だとどうしても凍結が避けられないため、外のプールへは水を入れず、室内になる小さいプールでの展示を行っています。 アヒルは「水鳥のマガモ」から作られた家禽です。そのため、小さいプールでは水鳥としての本来の動きを制限されてしまうのでは?と頭を悩ませておりました。
冬場でものびのび羽を広げ、思いっきり水浴びを楽しんでほしいという思いがあり、この度、子供用プールの導入を決意しました。
結果は、と言うと…………見事大成功でした!
「周りなんてお構いなし!」 派手に水しぶきをあげるアヒルたち。見ていてこっちも楽しくなりました(私もビチャビチャになりました)。 驚くほど撥水する羽や、目を開けたまま水中に潜る姿等を観察し、アヒルのことをもっと知ることができる絶好のチャンスですので、ご来園の際は、ぜひとも「ニワトリ・アヒル舎」へお立ち寄りいただければと思います。
ゆったりと泳ぐ3羽のアヒル
外の放飼場へ歩いて遊びに行くこともあります
こども牧場担当:志子田紗希
先日SNSで北九州にある到津の森公園の岩野園長が退任されることを知りました。
岩野園長で思い出すことがあります。私が動物園で働き始めた16年前、到津の森公園で行われた動物園水族館獣医師の研究会に参加した時のことです。懇親会の挨拶で「これからが本番です、ぜひ親睦を深めて下さい」とおっしゃっていました。
私は先輩飼育係から、当時園長だった小菅前園長と同じ研究会に参加した際に、前泊の夜に電話がかかってきて「今何をしているんだ!」と聞かれ、「○○動物園の人と飲んでいます」と答えると「よし!!なら良い」と言われたというエピソードを聞いていたので、同じようなことをおっしゃるなぁと思ったものです。その夜は二人の言葉を実行して、朝まで親睦を深めました。
昔は今ほど海外や他園館の情報も得ることが難しかったこともあり、横のつながりを作る大切さを教えてくれたのだと思います。昨年末、円山動物園から旭山動物園に研修に来ていた飼育員に「小菅前園長は旭山で何を見てこいとか言っていましたか?」と聞いたところ、「とにかく飼育係とつながりを作ってこい!と言われました」とのことでした。時代は変われど、今もその大切さは変わりませんね。
岩野園長が退任すると、当園の小菅前園長や上野動物園の小宮元園長、富山市ファミリーパークの山本前園長、天王寺動物園と宇部市ときわ動物園の宮下前園長など、いわゆる団塊の世代前後の名物園長たちが園長という一線を退くことになります。動物園の役割が変わっていく時代のなかで、動物園を支えていた世代の皆様のおかげで今の動物園があると思います。コロナ禍で動物園も大変な時代ではありますが、私たち現役世代には動物園をよりよいものにしていく責任があると感じています。
私が言うのもおこがましいですが、岩野園長長い間お疲れ様でした(旭山動物園一同)
お近くにお住いの方ぜひ参加してみてください。
(獣医師・トナカイ・テナガザル担当 中村 亮平)
なかなかもうじゅう館全体のことをお伝えする機会もないので、今回は近況をお伝えしようと思います。
まず、1月中旬にユキヒョウのジーマが繁殖のために引越しをしました。それまで一緒に生活していた娘であるユーリはジーマがいない環境にまだ戸惑っているようですが、徐々に今の状況に慣れてもらい、ゆくゆくはジーマのように立派な母親になってもらえればと思っています。
昨年新しく仲間入りしたライオンのイオ。今のユーリのように新しい環境に戸惑いを隠せない様子でしたが、今ではすっかり慣れてくれたようで、雪が降り積もる放飼場に出て遊んだりしています。寒さには強くはないので、外に出てる時間はまだ短いですがたくましくなっています。
アムールトラは、あっという間に大きくなった3頭の仔が今の悩みのタネで、もう親から独立させてそれぞれ単独で分けてやりたいのですが、部屋数や放飼場の関係から父、息子2、母と娘の3グループで展示しています。これがなかなか大変で両親を合わせて5頭のトラをどうやって部屋を入れ替えたり順番に放飼場に出してあげられるか?という点に苦労しています。
ヒグマのとんこはもうじゅう館での生活も残りわずかとなってきました。新施設では土の地面や小川があったりするようなので今まで出来なかった新しい行動を見せてくれると思います。「えぞひぐま館」での活躍を期待しています。
そして最後にアムールヒョウ。メスのみらいはアムールヒョウの個体数がとても少ないこともあり、繁殖相手が現れるのを待っているような状況です。そして昨年からバックヤードに移動したキン。まだまだ元気はありますが、やはり股関節は徐々に思うように動かなくなってきているようで、後肢を引きずることが当初よりも増えてきました。なるべくキンの思うように過ごして欲しいので放飼場と寝室は開放したままで自由に行き来できるようにしていますが、寒さのためか最近はすぐに寝室に戻りたがっています。
また機会をみて近況をお伝えしていければと思います。
(もうじゅう館担当:大内 章宏)
今回は冬の間展示できていない、こども牧場のカメたちについてお伝えします!
こども牧場にはホルスフィールドリクガメという種類のカメが4頭います。 夏など温かい季節は日光浴をするために、外に出ていることが多いのですが、寒い季節は温かい室内で過ごしております。
特に冷え込む日には、温かいライトの下から動かないことも多く、先月よりほんの少しですが、みんな体重が増えてきました。
ライトの下で温まるカメたち
また春には外を元気に歩き回るカメたちを見ていただけると思いますので、お楽しみに!
こども牧場担当:鈴木彩音
(ホッキョクグマ産室の様子)
新しい年を迎えることができました。皆様はどのようにお過ごしでしょうか。
この手紙を書いているのは12月中旬です。雪の便りはいつになるのかと心配していたら突然の吹雪です。日中溶けてツルツル路面は本当にいやなのでもうしっかり積もって下さいって感じです。今年(2021年)はキリンの放飼場に降った雨や溶けた雪が夜中に凍りスケートリンク状になって、キリンを放飼場に出せない日が数日続きました。こんなことは初めてのことでした。
今年は昨年にも増してコロナの影響を受けました。そんな中でも様々な新たなイベントなども行ってきましたが、どこかブレーキを踏みながらの状況の中、やりきった感が希薄でもありました。来年はいろいろとやりきった!と言える年にしたいですね。と言うかやりきれる状況になっているといいですね。
さて昨年はアミメキリンの出産で年の瀬を迎えました。今年はホッキョクグマの出産で年の瀬を迎えています。ホクトとピリカのペアでの繁殖です。順調に生育すると旭山動物園としては実に40年ぶりのこととなります。
覚えておられる方もいらっしゃると思いますが、当園で飼育していたシロウとユキの間で生まれた、片腕のコロが日本の動物園で初めて繁殖・成育に成功した個体でした。当園ではコロの妹に当たるハッピでの繁殖・成育を目指しましたが実現はしませんでした。ただコロの弟に当たるダイが他園に行き、そこで繁殖に成功しています。現在当園にいるルルになります。円山動物園のララとは双子の姉妹です。そして今回繁殖に成功したのが、ララの子のピリカと言うことになります。シロウとユキの代から数えると玄孫(やしゃご)と言うことになります。コロ誕生から40年繁殖に向けて様々な取り組みをしてきました。旭山動物園で生涯を閉じた個体は8頭になります。
命のバトンが引き継がれていることを改めて実感しています。そして旭山動物園もこれからもこの地で存在し続けていかなければいけない使命を改めて覚悟し新たな年を迎えたいと思います。
令和4年1月14日
昨年の5月に母親のマースが死亡し、3頭の子どもたちだけの生活が始まったオオカミの森ですが、夏にレラが顔をハチに刺されて腫れたり、ワッカがジャンプした際に足を怪我したり、外の放飼場内に3メートルもの長い穴が掘られたり、色々あり心配しましたが、現在は3頭ともケガもなく元気で平和に暮らしています。
昨年の旭川は雪が多く、除雪をたくさんしなければならなかったため、今年は雪対策として、いつでもオオカミたちが獣舎に帰ってこられるよう、朝と夕に分けて獣舎で給餌をしています。
今のところ、朝も夕も3頭とも獣舎に入り餌を食べるのですが、たまにワッカが警戒して入ってこない時には、ノチウが出て行き、その後ワッカが入って来て餌を食べたりします。
その時ノチウは餌を食べずに獣舎の外の放飼場で柵越しにエゾシカと追いかけ合っていることが多いです。
また、私がメインの放飼場で作業をしている間、オオカミたちは小さなサブ放飼場で過ごすのですが、作業が終わり戻るとノチウがレラの隣で並んで休んでいる様子が見られるようになりました。
レラは順位が一番下位の立場で、よくワッカに追いかけられたり監視されることが多かったのですが、徐々にそれが少なくなり、10月にはノチウがレラの隣で寝ていたり、11月に一度ワッカに強く当たられ隠れていた時期があったものの、12月にはワッカがレラのすぐそばで休んでいる様子が見られました。また、メインの放飼場内を点検していると、猛獣館側の奥の隅っこに、3頭分の雪の跡がついており、夜の間ここで3頭で寝ていた様子も確認できました。
ノチウ(左)とレラ(右) 10月撮影
ワッカ(左)とレラ(右) 12月撮影
最近では、私が片手におかし(血を凍らせたもの)が入ったバケツを持ちガイドを始めると、ワッカが「ウオオン」と鳴き、ワッカとノチウが顔をすり寄せた後、2頭でレラにすり寄っていくことがあります。
おかしを投げると、レラはキャッチできなかったり、できても他の2頭に遠慮して口から離してしまうことも多かったのですが、最近はキャッチした後にしっかり掴んで離さず、自分の分を食べ終えて横取りしようとするノチウとワッカに追いかけられても、かなり長い時間エサをくわえて走って粘る様子が見られます。
全てのことがどのような意味を持つのか、言葉が通じないオオカミたちのことを決めつけることはできませんが、飼育下で生活するオオカミたちにとって何が幸福なのかを考えながら、これからも様々な表情を見せてくれるオオカミたちを楽しく観察して行きたいと思います。
ヌプリ(左)とアオイ(右)も元気です
(シンリンオオカミ・ととりの村担当:原田 佳)
2022年がスタートしました。 新しい干支の年になりましたね。
雪まみれになっている干支の動物
2022年の干支は「寅」。そう、今年の干支の動物は「トラ」です!
雪の上で遊ぶアムールトラのリキ(左)とシン(右)
ヨーロッパやアフリカでは「ライオン」が強さや王者のシンボルとして 彫刻や紋章などに使われていますが、 私たちが住む日本やアジア、ロシアでは「ライオン」ではなく 「トラ」が多く使われています。 ぜひ身の回りの「トラ」を探してみてくださいね。 そして、絶滅危惧種の「トラ」のこと、考えてみてくださいね。
さて、先日、動物園だより・みにだよりを発行しました。 寅年ということで、「動物園だより」では、「トラQuiz」を掲載してみました。 クイズの中にいろんな「トラ」がいるので、ぜひ挑戦してみてください。
「みにだより」では、旭山動物園で飼育しているアムールトラの紹介をしています。ト ラを観察するときの参考にしてみてくださいね。
また、ただ今、旭山動物園では、小学生の皆さんを対象にした 「動物読書感想文コンクール」の作品を1月24日まで募集中です。 たくさんのご応募、お待ちしております!
第22回 動物読書感想文コンクールの作品募集についてはこちら
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