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どうぶつえん日記

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令和7年10月「静かな夏、動物たちの声」

静かな夏、動物たちの声

 今年の夏というか7月に入ってから暑い日が多かったですね。年々増すように感じる肌を刺すような日差しの強さに異常さを感じます。ボルネオへの恩返しプロジェクトで訪れる、赤道直下のボルネオ島と変わらないのではと感じてしまう日もありました。今年の暑さの中で一番不気味さを感じたのは、夏に鳴くエゾゼミの声がほとんど聞かれなかったことですね。ここまで少ないのは自分の記憶では初めてのことです。日本には四季があり、そのリズムの中で植物を含めすべての生き物が調和とバランスを保っています。四季のリズムが狂い始めているような怖さを感じる夏でした。
 動物園では、マヌルネコの新たな屋外放飼場と、ヒトの子ども用の遊具エリアの建設を行っています。マヌルネコ放飼場は、現在の施設ではなかなか発現しないマヌルネコ独特の行動や習性が目覚める施設を目指しています。どんな行動かは完成後のお楽しみということで…。ヒトの子どもの遊具エリアは、できるだけシンプルな遊具をそろえ、スポーツ競技のようにある目的のために体を動かすのではなく、体を動かし使うことが楽しくなる、そんなコンセプトです。もちろん旭山動物園ならではの仕掛けも盛りだくさんです。
 朝晩はすっかり涼しくなったこの頃、紅葉の季節を迎えますがやはり気になるのはヒグマですね。ここ数年、毎年私たちの想定を超えてヒグマとの関係が同時多発的に悪い方向に向かっています。オオカミは絶滅させたけど、ヒグマとは現在まで共存できてきた理由の一つに、ヒグマがとても臆病(というより慎重、保守的)で人の生活に大きく干渉してこなかったことが挙げられます。例えるなら、石橋を叩いてもなかなか渡る決心がつかない慎重なヒグマにとって、生まれ育った環境とは異質な(人工的な)物質、匂い、音、そして家畜やヒト…がとても高い壁になっていたのだと思います。その心理的な壁が大きく崩れ、石橋を渡るヒグマが続々と現れているのが今なのかなと感じます。夜中にこっそりではなく、白昼人目を気にせず大胆に、が象徴的な行動の変化だと思います。ヒグマはヒトを観察しています。ヒトの行動の変化が壁を崩しているのかもしれないということも、真剣に考えないといけないと感じます。
 秋が来て冬が来る、当たり前の年の瀬を迎えられるといいですね。
 

マヌルネコ舎
現在のマヌルネコ舎。岩の上にいることが多い

 
令和7年10月2日
旭山動物園 坂東

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