ページの本文です。

しいくのぶろぐ

ゲンキとあさひのお話

ゲンキとあさひのお話

 6年やっていた小獣舎(レッサーパンダ・マヌルネコ・ホッキョクギツネ)の担当も変わり早1カ月。
 現在はカバとキリン、引き続きの両生類は虫類舎を担当しています。未だに、ふとした時に自然と小獣舎の作業をやるために体が動いており、そのたびに「あぁ、もう担当じゃないんだった」と我に返り、6年のルーティーンというのは恐ろしいものです。
 担当が変わり初めて尽くし、、、と言いたいところですが、キリンもカバも代番(担当者が休みの時の担当)として通年やっていたことがあるので、基本的な作業自体は履修済ということになります。その分、自分が担当になった時はこうしたいというのをようやく出来る機会が来ました。
 やりたいことを語っていく前に、まずはゲンキとあさひのお話を。昨年までゲンキとあさひは放飼場で同居していました。今期からは別々で展示をしています。
 ゲンキに関しては、過去にメスの陰部が気になりすぎて、首を下げ前傾姿勢のまま活動していたことにより肩を痛めて以来、定期的にぶり返し、そのたびにケアを行っています。また、協力的なこともあり削蹄も行えています。
 

 あさひに関してですが、先天的な骨格の変形によって、股関節が外側に開き、蹄の付け根などの関節の腫れがみられ、全体的に体重も後ろにかかっています。これは完治するものでもなく、手術云々以前にキリンの場合は麻酔を打つこと自体が、死に直結する可能性が段違いです。ゲンキはまったく悪気があるわけではなく、むしろあさひのことが大好きなので首をスリスリしに行くのですが、それが万全ではないあさひにとっては負担になるため別居をしています。もちろん、完治するものではないから放置というわけではなく、投薬や寝室の床材を砂と乾草に替え脚への負担を軽減するとともに、足元の湿度を上げ蹄が自然と削れるようにしています。また、それでもある程度の蹄のケアは必要になるので、そこに行き着くまでのトレーニングも継続して行っています。
 繰り返しになりますが、これは完治するものではありません。これから体が成長するにしたがって、脚への負担も増えていくので、できるケアは積極的に行いあさひが少しでも快適に生活できる時間を長くしていきたいです。


1

あさひ初めての新寝室


 さて、ここからは担当としてやりたいことですが、まずは共生展示。きりん舎かば館は「大きな生物の足元には小さな生き物がいて、初めて生態系が成り立つ」というコンセプトがあります。そのため、キリンとカバの足元が見れる下階にアフリカの昆虫や両生類などが展示されています。前まではキリンはホロホロチョウとモモイロペリカンも一緒に放飼していました。先にも述べたように、ゲンキとあさひは単独での展示になりますが、本来の野生下では色々な刺激を受けながら生活しています。小さな生き物で直接干渉せずとも、同じ空間に他の生き物がいるだけで精神的にも得られるものがあると考えています。
 カバでもアフリカに生息している魚を入れれるよう調整中です。カバの糞がエサになったり、カバの皮膚をつついたり、本来の生き物間の作用を期待しています。
 また、展示物に関しても文字だけでなく、より五感に訴えるような半体験型の展示物を随時作成しています。ただ文字を追うだけでなく見て触れて子どもも興味を持つような展示物が必要だと感じています。パネルに関しては、まずはパッと見て目につくような絵本味のある素晴らしい物をキリンカバの他の職員達が作ってくれました。

2
コンセプトアート
 

 他にもシンプルに自分が驚いた物として、マイナーな需要ですが濡れたキリンの蹄の展示を行いたいです。濡れると手で曲げられるほど蹄が柔らかくなり、湿った放飼場を歩くことで立体的に蹄が削れると同時に、関節が前後左右に柔軟に使われることで硬い場所だけ歩いているよりもよっぽど脚の健康につながります。幸いぬかるむような床ではないですし、放飼場に水たまりができ歩くコースが変わるのも担当的にはありがたいことです。どうしても雨の日の動物を見ると可哀想という声が聞こえてきますが、雨の日には雨の日なりに色々なポジティブな効果があります。そういったこと含め濡れた蹄と普段の蹄を展示したいと思っています。あと、めっちゃ臭いのも感じていただければと思います。
 そして、一番必要だと思っているのが屋根です。一度ゲンキが首を挟めた関係で、放飼場の雨よけを撤去しているため、雨が降ると小さなくぼみに収まらない体を詰めているのを見て、なんだかなぁと思っていました。屋根を付ける位置はもちろんのこと、キリンに破壊されない耐久性、絶対に首が挟まらないような構造、旭川の積雪量を考慮した形状など様々な要因が絡んでくるため、色々と調整を行っているところです。
 

 文字ばっかは良くない旨を語りつつ文字量多い文章を今書いていますね。
 ありがたいことに多くのマヌラー(マヌルネコファン)とレサラー(レッサーパンダファン)の方から「担当変わっちゃったんですね」とのお声をいただきます。これからもジララーとヒポラーから同じ言葉をかけられるよう、誰よりも楽しみながら動物と向き合っていきたいですね。
 

きりん舎・かば館、両生類・は虫類舎担当:鈴木達也