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モカの独り立ち

モカの独り立ち

 今年の4月、閉園期間中にオランウータンのモカの独り立ちを行い、3年に及ぶ兄モリトとの同居を終了しました。

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独り立ちしたモカ

 令和元年にモカの母であるリアンが急死し、当時4歳になりたてのモカが孤児となりました。孤児となったモカですが、エサに困ることはないため、そのまま一人で暮らすこともできましたが、精神面の成長のことを考え、当時すでに独立していた兄のモリトとの同居を試みました。モリトが穏やかな性格であることや、モリトの独立後もたまにリアン親子と一緒に過ごさせていたことなどが功を奏したのか、同居は成功し、モリトは保護者のようになってくれました。あくまで母親ではないので、モカにとっては頼れる大人といった感覚でしょうか。


 オランウータンは群れを作らない動物です。仔育て期間が長く、一人の仔が独立するまでに7~10年ほどかかり、その間は基本的に母と二人だけで暮らします。仔は一人で生きていくために、エサの取り方や探し方、他の個体との距離の取り方など、「オランウータンとしての生き方」の全てを母親から学びます。母親の存在は精神的にも肉体的にも仔の成長にかかせません。野生では考えられない兄と妹の二人暮らしという形でしたが、この同居はモカの精神の安定や成長に良い影響があったと考えています。

 お互い良い遊び相手になり、寒い時には寄り添って暖め合い、モカがやんちゃをしすぎた時には怒っても、本気で激怒するようなことはありませんでした。エサの時だけはやさしさが一切無くなっていましたが、とても良い関係で同居できていたのはモリトだったからこそと思っています。


 モカは今年7歳になりました。野生のオランウータンでも早い個体なら独立しはじめる年齢になったこと、モカの性成熟まではまだ猶予があるものの、近親交配の可能性があることなどから同居を終了し、モカは独り立ちとなりました。

同居解消後、モリトは気にした様子も無く普段どおりでしたが、モカは不安そうな声で鳴いたり、イライラしたりしていました。寂しさもあったのだろうと思います。しかし独り立ちから2ヶ月以上たち、今のモカは大分おちついてきています。


 モカとモリトは今後、オランウータンらしい一人暮らしをすることになります。

 モリトは独り立ちした後にモカと同居となり、遊び相手がいる状態で長く過ごしたためか、年齢のわりに少し子どもっぽいところがあります。一人暮らしに戻り、これからは立派な大人のオスになっていくでしょう。そしてモカは独り立ちの寂しさを乗り越え、一人前のオランウータンに成長していくはずです。彼らの今後をぜひ見守っていただければと思います。

(オランウータン担当 中野 奈央也)