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シンリンオオカミ「マース」について

シンリンオオカミ「マース」について

 5月25日の朝、シンリンオオカミの「マース」が死亡しているのを確認しました。


 「マース」は「ケン」との間に子を産み育て、長い間この旭山動物園でオオカミファミリーのお母さんとして飼育されてきました。

 白い毛色をしていて、性格はおっとりマイペース。

 普段からどの個体よりもエサを食べたがる、少し食いしんぼうなところがある個体でした。


 そんな「マース」に変化が起きたのは5月22日のことでした。

 朝から「マース」がいないと連絡があり探してみると、オオカミたちがいつもいる岩山のすぐ近くにオオカミたちが  掘った穴があり、そこから顔を出しこちらを見ている「マース」がいました。

 私たちが近づくと穴から出てきてこちらを向いて伏せ、離れるとまた穴に戻っていきました。

 帰り際にまた見に行くと、他の3頭は「マース」の近くで寝ていました。

 時々「マース」に近づき、どの個体なのかは確認できませんでしたがクンクンと鳴き声がしました。

 次の日も、その次の日も「マース」は朝から穴の中にいました。

 他の3頭も同じように「マース」の近くで寝たり、周りを歩いたりしていました。


 そして5月25日の朝、「マース」は穴の近くで園路側に顔を向け横になり動かない状態でした。

 他の3頭は伏せの状態で岩山の上からこちらを見ていました。

 外傷はなく、他の個体と争った様子もありませんでした。

 解剖の結果、死に至るほどの大きな病気はなく、老衰・心不全ということでした。


 生きている以上いつかはやってくる死。

 野生とは違い動物園には獣医師もいるし、病気や怪我をした時には手術もできます。オオカミについては、独自の社会性を持っているため、入院や隔離などをすることにより、群れの関係性を壊してしまう恐れもあるため、病気や怪我をした時の対応も気を使います。

 「マース」は死亡するほんの数日前までよく食べしっかりと歩き、群れの中で最後を迎えました。


 旭山動物園にはたくさんの種類の動物たちが暮らしていますが、私たち飼育員が動物のことをよく見て理解することによって、その動物らしく、その個体らしく死を迎えることができるように考えていきたいです。

 また、動物たちの生き様を伝えていけるような命の伝え方ができるといいなと「マース」の最後を見て思いました。


 「レラ」・「ワッカ」・「ノチウ」は、「マース」の死後も元気に過ごしており、「ワッカ」が上げた尻尾を振りながら「レラ」に近づいていったり、「ノチウ」が「ワッカ」にクンクン鳴きながら近づいていったり、3頭で顔をくっつけたりする様子が見られました。


 「ケン」と「マース」がつくりあげた群れは子どもたちだけになってしまいましたが、今後とも、みんなに慕われ立派に群れを率いて来た「ケン」と、おっとりマイペースに群れの中で一生を遂げた「マース」の背中を見て育った旭山動物園のオオカミたちを見て楽しんでいただけると幸いです。

マース

マース(2021年4月撮影)


オオカミ3頭

元気に過ごしています


お花をいただきました

マースにお花をありがとうございました


オオカミの森・ととりの村担当:原田佳