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どうぶつえん日記

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ゲンちゃん日記・平成27年6月「イルカをめぐる議論と動物園のあり方」

ゲンちゃん日記・平成27年6月「イルカをめぐる議論と動物園のあり方 」

 イルカ問題に揺れた日本の動物園水族館でした。マスコミもかなり取り上げたので関心をもたれた方も多いのではないでしょうか?
 10年以上の議論の過程を得て、世界動物園水族館協会(WAZA)は、日本動物園水族館協会(JAZA)が太地のイルカ追い込み漁からえら得られたイルカ類の導入を止めないことを重大な倫理規定違反だとして、会員としての資格を停止し、改善しない場合は除名するというものでした。
 話題は追い込み漁の是非に集まりちょっとおかしなことになっていました。WAZAは追い込み漁という手法から導入するなと言っていたわけです。追い込み漁を残酷で手段を選ばない方法だとは言っていましたが追い込み漁をやめろとは言っていなかったのです。別の捕獲方法があるでしょと言っていました。イルカの捕獲自体を禁止している国はアジア圏も含め多いのですが、日本は法的にもイルカ漁が認められているわけで、WAZAはイルカ漁そのものは否定していなかったのです。日本では伝統、法律、倫理がごちゃごちゃになり全くかみ合わない議論がされていた印象を持ちました。
 さて、ヒトは動物を動物学的な分類ではなく、知らず知らず感情で分類しています。たとえば「可愛い」とか「有害か無害」とか。チンパンジー、ゾウ、イルカ、どこかで分けなさいと言われたらどうでしょう?日本人の多くは、悩むでしょうがゾウとイルカの間に線を引くのではないでしょうか。日本の伝統も含め、水産資源との意識がどこかで働くと思います。食糧資源としてのイルカと見れば、追い込み漁は効率のいい方法であり、ほ乳類の命を奪うという視点からできるだけ苦痛を与えないようにとの配慮をしているのだから問題はないと感じるでしょう。
 でもイルカを食べる習慣は世界の中ではごく限られています。世界中の大多数の人はチンパンジー、ゾウ、イルカは分けれない!つまり知能が高く社会性があり豊かな感性のある野生動物だと。追い込み漁で一網打尽にされるイルカをゾウに置き換えてみたら皆さんはどう感じるでしょう?追い込み漁という手法が、生態学的な配慮、遺伝的な配慮、精神的な配慮に欠けると感じるでしょう。
 つまり糧としてのイルカが主語なのか野生動物としてのイルカが主語なのかで全く相容れない感情が働くのだと思います。ましてイルカの仲間は国境線のない公海も生活圏です。
 WAZAもJAZAの加盟園館も、自然の素晴らしさ、多様性の大切さ、生き物の素晴らしさを伝える場だとの立場です。飼育動物は自然と人の心をつなぐ動物大使として飼育しています。
 動物園、水族館の根本的な立ち位置が問われたのだと思います。

イルカ絵:坂東 元