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7月は、開園40周年、アムールヒョウのビック、 ホッキョクグマのハッピーの死、 そしてオランウータンのリアンが7月30日に第2子を出産しました。 生と死は向かい合わせであること、動物園が年を重ねることは、 年輪を重ね樹木が大地に根ざすように、 たくさんの誕生と死が積み重なり 動物園の存在が地域に根ざし、責任も大きくなるんだなと いろんなことを考えさせられる一ヶ月でした。 7月30日12時半頃、「リアン出産」の無線が入り、 飼育職員がたくさん駆けつけました。 僕たち飼育係が一斉に集まったのには訳があります。 リアンは長女モモを出産した時、育児放棄をしていたのです。 オランウータンは群れを作りません。 子供は8才くらいで母親から離れ独立します。 大人の雌と雄が共に過ごすのは交尾の時期のほんの数日だけです。 雌は10歳前後から出産できるようになり 4~5年おきに子供を産みます。 子供は自分の弟か妹が生まれてから 数年で独り立ちと言うことになります。 つまりこの時期に自分が親になった時の大切な学習をするのです。 オランウータンの4~5才というと、 好奇心が旺盛でとても多感で学習能力の高い時期です。 ちょうどこの時期に弟、妹が生まれます。 とてもうまくできているな、と感心してしまいます。 それにしても母親の母性は僕なんか、 というか男性から見ると、尊敬に値します。 オランウータンは単独で生活するので 群れのメンバーが育児を手伝ってくれるということがありません。 24時間×365日×4年間ずっと子供と一緒です。 さらに次の子が生まれるとやんちゃ盛りの上の子と、赤ちゃんです。 大変ですね。 一方的に与え続ける愛情があるのです。 リアンは台湾の動物園生まれで、6歳の時に旭山に来ました。 母親が弟、妹を出産しなかったために出産を見ていません。 リアンは10歳の時にモモを出産したのですが、 われわれは「育児ができない可能性があるのでは?」 と考えていていました。 出産しても子を抱かない、あるいは授乳をしないことを想定し、 飼育係が「仔を乳首に吸い付かせる」 ことができる信頼関係をリアンとの間に作りました。 03年3月24日リアンはモモを生みました。 やはり予想は的中しました。 地面に置いたまま抱こうとすらしません。 担当者が寝室に入り、リアンの乳首に子を吸い付かせ、 子をリアンにあずけました。 リアンの「母性」のスイッチが入りました。 戸惑いながらも抱きかかえて 二度と地面に起きっぱなしにはしませんでした。 次の日リアンの顔は「母親の顔」になっていました。 子に触ろうとすると怒りました。 「哺乳類」これはただ単に分類上の言葉ではありません。 リアンとジャック(雄)は昨年の10月、11月、12月と交尾をしました。 1月と2月には尿で妊娠の判定ができる簡易検査で 妊娠陽性の反応がでていました。 オランウータンの妊娠期間は約270日です。 7月下旬から9月に出産するだろうと観察していました。 ここ一ヶ月くらいはイライラすることが多く、 モモに当たり散らすこともありました。 お腹も大きくなり、おへそが出っ張ってきました。 7月30日、「出産!」の無線に 今度は大丈夫かな?という不安がよぎりました。 しっかりと抱っこしています。 モモも興味津々です。 「大丈夫だ!」これからのモモ、 そして子の生長を見守っていきたいと思います。 そうそう大事なことを書き忘れていました。 子供はオスでした。 それと8月1日から通常通り、皆さんにごらんいただく予定です。
オランウータンの親子(ゲンちゃん画伯)
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