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どうぶつえん日記

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平成19年8月 「おめでとう!リアン!!」

7月は、開園40周年、アムールヒョウのビック、
ホッキョクグマのハッピーの死、
そしてオランウータンのリアンが7月30日に第2子を出産しました。

生と死は向かい合わせであること、動物園が年を重ねることは、
年輪を重ね樹木が大地に根ざすように、
たくさんの誕生と死が積み重なり
動物園の存在が地域に根ざし、責任も大きくなるんだなと
いろんなことを考えさせられる一ヶ月でした。 

7月30日12時半頃、「リアン出産」の無線が入り、
飼育職員がたくさん駆けつけました。
僕たち飼育係が一斉に集まったのには訳があります。
リアンは長女モモを出産した時、育児放棄をしていたのです。

オランウータンは群れを作りません。
子供は8才くらいで母親から離れ独立します。
大人の雌と雄が共に過ごすのは交尾の時期のほんの数日だけです。
雌は10歳前後から出産できるようになり
4~5年おきに子供を産みます。
子供は自分の弟か妹が生まれてから
数年で独り立ちと言うことになります。
つまりこの時期に自分が親になった時の大切な学習をするのです。
オランウータンの4~5才というと、
好奇心が旺盛でとても多感で学習能力の高い時期です。
ちょうどこの時期に弟、妹が生まれます。
とてもうまくできているな、と感心してしまいます。
それにしても母親の母性は僕なんか、
というか男性から見ると、尊敬に値します。
オランウータンは単独で生活するので
群れのメンバーが育児を手伝ってくれるということがありません。
24時間×365日×4年間ずっと子供と一緒です。
さらに次の子が生まれるとやんちゃ盛りの上の子と、赤ちゃんです。
大変ですね。
一方的に与え続ける愛情があるのです。

リアンは台湾の動物園生まれで、6歳の時に旭山に来ました。
母親が弟、妹を出産しなかったために出産を見ていません。
リアンは10歳の時にモモを出産したのですが、
われわれは「育児ができない可能性があるのでは?」
と考えていていました。
出産しても子を抱かない、あるいは授乳をしないことを想定し、
飼育係が「仔を乳首に吸い付かせる」
ことができる信頼関係をリアンとの間に作りました。
03年3月24日リアンはモモを生みました。
やはり予想は的中しました。
地面に置いたまま抱こうとすらしません。
担当者が寝室に入り、リアンの乳首に子を吸い付かせ、
子をリアンにあずけました。
リアンの「母性」のスイッチが入りました。
戸惑いながらも抱きかかえて
二度と地面に起きっぱなしにはしませんでした。
次の日リアンの顔は「母親の顔」になっていました。
子に触ろうとすると怒りました。
「哺乳類」これはただ単に分類上の言葉ではありません。

リアンとジャック(雄)は昨年の10月、11月、12月と交尾をしました。
1月と2月には尿で妊娠の判定ができる簡易検査で
妊娠陽性の反応がでていました。
オランウータンの妊娠期間は約270日です。
7月下旬から9月に出産するだろうと観察していました。
ここ一ヶ月くらいはイライラすることが多く、
モモに当たり散らすこともありました。
お腹も大きくなり、おへそが出っ張ってきました。
7月30日、「出産!」の無線に
今度は大丈夫かな?という不安がよぎりました。
しっかりと抱っこしています。
モモも興味津々です。
「大丈夫だ!」これからのモモ、
そして子の生長を見守っていきたいと思います。

そうそう大事なことを書き忘れていました。
子供はオスでした。
それと8月1日から通常通り、皆さんにごらんいただく予定です。

おめでとう!リアン!!画

オランウータンの親子(ゲンちゃん画伯)