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どうぶつえん日記

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平成18年5月 「キリン」

待望のキリンの来園、
くもざる・かぴばら館での悲しい事故の後に生まれたカピバラの子供、
飼育係の介添えで育児に成功したチンパンジーのチロの子供、
無事にデビューをしたでしょうか?
今は夏期開園前のドタバタの最中です。

キリンは名古屋市東山動物園で昨年3月30日生まれの雌1才です。
1才と言っても頭までの高さは3メートル近くあります。
なんせ生まれた時点で180センチメートルあるのですから。
タミオが死んでから2年近く経ちました。
主のいない寝室、展示場は時が止まったままのような寂しさがありました。

キリンは見れば見るほど不思議な生き物です。
横方向よりも高さの方がずっと高いので脚立のようです。
バランスで立っているようなものなので、一本でも足を痛めると致命的です。

昔、春に生まれた仔が初雪の日に親と一緒に外に出てしまったことがありました。
急いで掃除をして寝室に入れたのですが、ほんの少し右後肢を引きずっていました。
おそらく初めての雪に足を滑らせたのでしょう。
次の日、右足を地面から浮かせていました。
そして次の日、右足をかばうことで左後肢も痛くなり、
バランスをとるために、頭を地面に着け前足とで3点倒立のような状体になっていました。
結局、起立不能となり死亡しました。
解剖してみると、右後肢の股関節部にごく小さな出血痕を認めました。
「こんな小さな捻挫程度のことで…」と愕然としたことを思い出します。
原因としてキリンは皮膚が硬く、遊びがないということがあります。
まるでピチピチのウェットスーツを着たような感じです。
キリンは頭まで血液をポンプアップするために血圧が高いのですが、
皮膚や血管がブヨブヨでは頭に血を上げるどころか血管が破裂してしまいます。
でも、皮膚が硬いとちょっとした捻挫でも腫れることで熱や痛みを外に逃がすことが出来ません。
腫れや痛みも筋肉組織の内部にこもります。
ちょっとした捻挫や打撲が致命傷になってしまうのです。 

楽しくない思い出が一番に頭に浮かんでしまいましたが、キリンがいない間、
他の動物園でキリンを見るたびにキリンがいないことを思い出しドキッとしていました。
キリンが運ばれてきてこの個体が旭山のキリンになるんだと思うと、とても嬉しくなりました。
「器量、スタイルもいいし、落ち着いている性格も申し分ないな!」と
早くもみんなに自慢したい気分になりました。


追伸(5月14日)

キリンはまだ本格的に放飼場に出ていません。
一部新聞等で「ひきこもり」とおもしろ半分で紹介されました。
これから新しい環境に馴れていく過程で、ちょっと時間が掛かっているだけです。
別に「ひきこもり」ではありません。
キリンは20年くらいの寿命があります。
初めてこのキリンを見た子供が成人になっても生きていることになります。
今あせって、転倒などの致命傷になりかねない事故を起こしたくはありません。
このキリンは成長して大人になり沢山の子を産んでくれるかもしれません。
そして年老いて次の代に命が引き継がれていくことでしょう。
このキリンの成長を見ながら、たくさんの子供たちにも成長して欲しいな、と思います。
もう少し時間を下さい。