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夏期開園も終わりました。 一息つく間もなく冬季開園に向け、越冬準備などをしなくてはいけません。 今年は例年になく園路や獣舎の改修がたくさんあり、さらにテレビ取材がびっちりです。 開園期間中よりも忙しくなる予感がします。 動物と飼育係だけの時間はもう二度と持つことはできないのでしょうか... ひとつ、とても残念な改修を決断しました。 ぺんぎん館の手すりです。 高さを高くし、一部にはアクリルを貼って手を入れることが出来ないようにします。 干渉しない生き物とのつき合い方、ルールやマナーも提案できたらと思い、全国でも異例な、 遮る壁のない目の前でペンギンが見られる展示方法だったのですが、限界です。 さて、チンパンジーの森ですが、キーボがいないことに気づいたでしょうか? 実は、新居に引っ越してから世代交代が起きたのです。 引っ越して間もなくミコ(♀)に発情がきました。 子のミラクルが6才になり、そろそろ親離れの時期です。 ミラクルに手が掛からなくなってきて次の子を宿す準備が出来たのです。 発情当初はキーボがそばから離れずに交尾の権利を主張していたのですが、 息子のシンバが割って入ってきました。 シンバはフルト(♀)との間の子で11才。血気盛んな若者です。 ミコはシンバを選びました。 強気になったシンバはミコに操られるようにキーボに挑み掛かるようになりました。 肉体的にキーボに勝ち目はありません。 生傷が絶えなくなり、キーボは緊張の糸が切れたように精神的に弱気になってしまいました。 雌や息子を制御できなくなる屈辱は図り知れません。それでもミコの発情が終わると シンバも落ち着きキーボと和解したように見えました。小康状態です。 ただ、ミコはキーボのすることがいちいち気に入らないようで、 時々癇癪を起こしキーボを追い回していました。 9月の末、キーボが唇に裂傷を負っていたため、迷ったのですが麻酔をかけ手術をしました。 その日一晩群れと隔離し、次の日の朝、群に戻しました。 事件はその時に起きてしまいました。 群れと一緒にした瞬間にミコがキーボに襲いかかりました。 群れ全体が騒然とする中、シンバが闘争に加わりました。床が血で染まります。 やっとの思いでキーボを隔離しました。 体中に傷を負い、膝関節が裂け、骨が露出しています。緊急手術を行いました。 幸い、後遺症もなく怪我は快方に向かっています。 もぬけの殻のようになった目にも生気がよみがえってきました。 厳しい社会、ルールが彼らにはあります。 野生下ならばキーボの役目は終わったのかもしれません。 キーボが旭山にきて31年、38才です。 どのような形で群への復帰が可能なのか模索する日々が続いています。
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