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平成元年、北海道ではすでに絶滅したとされていたカワウソが見つかった。 このカワウソが本当に北海道のカワウソの生き残りなのか。 それとも誰かが飼っていて逃がしたものなのか。 はたまた外国からやってきたものか。 当時、新聞などの報道も手伝って大騒ぎになりました。
Lutra lutra
Eurasian Otter
ネコ目イタチ科カワウソ亜科
ユーラシア大陸とアフリカ大陸北部に生息
イタチの仲間らしく細長い身体をしており、足は短く水かきがついています。 肉食性で、魚やカエル、昆虫などを捕まえて食べます。 ニホンカワウソは、ユーラシアカワウソの一亜種で、以前北海道から九州まで、日本中に広く分布してました。1979年に目撃されたのが最後で、現在は生存が確認されておらず、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種ということで、絶滅危惧種(1)A類に分類されます。
Lutra lutra whiteleyi
Hokkaido river otter ユーラシアカワウソの北海道亜種とされますが、分類学的位置づけは明確にはなっていません。1950年代での知床での捕獲標本が北海道最後の記録としてあるだけです。 北海道に広く分布していたようですが、昭和20年ごろには、生息情報はほとんどなくなっていたようです。現在、カワウソが棲めるような魚がたくさんいる豊かな生息環境は、ほとんど残ってはいません。
1989年6月27日、旭川市の神居古潭でカワウソの死体が発見され、動物園に届けられました。 動物園では、外部計測をして写真を撮り、保存のためそのまま冷凍をしました。
8月8日上川家畜保健衛生所などの協力を得て病理解剖を実施したところ、ほぼ全身に骨折がみられ、特に頭骨と右肩甲骨は粉々になっていました。体の左側に多くの出血の跡があり、胸やお腹の中にも出血していました。カワウソは、左から車にはねられて、即死したようです。 解剖後採取された検査材料は、それぞれの研究機関へ運ばれました。
歯石が厚くついていたこと、寄生虫が少ないこと、薬剤耐性大腸菌を持っていたこと、12才(野生では最高齢)という高齢の割には歯の摩耗が少ないことなどから飼育下にあったことが考えられました。 胃腸管内の魚は誰かが採集して与えた可能性は残りますが、カワウソが自ら採食したものと考えられました。 ただし、小型の魚が多いので餌の採りかたは下手であったと考えられました。
以上各研究分野のご協力によってカワウソ事件にも幕が引かれました。この間、多くの方々よりカワウソに関する情報や資料をいただきました。残念ながら今回発見されたカワウソは野生ものではなかったようですが、この北海道のどこかでニホンカワウソ(北海道個体群)が生き延びていてくれたらと願っています。
当時、出自調査に入ることとなった時点に比較材料がないことに小菅園長は驚いたそうです。 「血液やDNAなどを保存している機関がなく、各種研究者の方たちに調査協力をしてもらったにも関わらず、亜種同定までに至らなかったことは極めて残念なことであった」と、モユクカムイno.19に記載されています。 また、翌年1990年3月には、「旭川のカワウソ」として北海道保健環境部自然保護課から出自調査報告書が出されました。
「持ち込まれた時、正直ドキッとしたよ。 本当に北海道のカワウソが生き残っていたのかと思った。 そして、報道機関がつめかけて大騒ぎになった。」 面白かったのは、「旭山動物園が調査できるのか。」と言われたことだそうです。しかし、多くの人たちの協力で調査ができました。 貴重な資料なので、「環境省や大学へ任せるべきだ。」という圧力が、いたるところから押し寄せてきそうです。 そして、旭山動物園にたくさんのカワウソについての電話がありました。 「カワウソを見た」という問い合わせが何百件とありました。小菅園長は、「写真を送るように。」と見た人に伝え、写真を送ってもらいましたが、旭山動物園に来た写真は全て、ミンクの写真でした。
全国の色々な人たちから、「生き残るなら、北海道だと思った。」というような電話もたくさんありました。 実際は、河川開発や水質の悪化、道路設備などでカワウソが生きていけるような場所はありませんでした。 発見された場所は、本当にカワウソが棲んでいるような雰囲気(風景)で、ある人はカワウソがまだいるかもしれないと確認をするためにカヌーで川を何度も調査したそうです。 小菅園長は、「憶測だがカワウソは、たぶん、ロシアの船に乗ってきて魚を食べながら石狩川を上がってきたのではないだろうか。」と言っていました。
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