旭山動物園ヒストリー・読み物 昭和49年

最終更新日 2016年2月24日

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旭川叢書

「きたの動物園-旭山のすてきな仲間たち-」から

著者 菅野 浩

平成9年、旭山動物園30周年記念の時に刊行された本(現在は絶版)の中から、
抜粋して動物たちや園でのお話を紹介していきます。

昭和49年(1974)頃 ガチョウ脱走事件

「ガチョウが飛んで園外に逃げたので、応援をお願いします」という担当者からの連絡に、居合わせた飼育係員一同は、思わず顔を見合わせました。「エーッ!!ガチョウが飛んだって?何かの間違いじゃないの?他の鳥と見違えているんじゃないの?」
ご承知の通り、ガチョウはガンの仲間を飼いならして家禽化したものです。ヨーロッパや中国など産地によって幾つかの種類がありますが、いずれも、肉や脂肪を利用するために改良され、いいだけ太っています。世界の三大珍味の一つとされるフォアグラは、強制的に餌を食べさせて病的に太らせたガチョウの、過度に脂肪のついた肝臓を食べているのです。
こんなガチョウですので、とっくに空を飛ぶ能力を放棄して、人間に飼育されることによってそのように品種改良され、空を飛ぶなんてことは考えられないことなのです。
飼育係員一同が、半信半疑で駆けつけてみると、確かにガチョウが一羽、園の外周柵の外の道路を歩いています。担当者の話では、放し飼いの群れを小屋に入れようとした時、突然飛んだということです。
ともかく捕まえようと、取り囲んで包囲網をせばめて追いつめたところ、突然羽ばたいて走り出し「グワーグワー」と声を発しながら飛び上がったのです。飼育係員一同、ただただあっけにとられて、頭上はるか上を羽ばたいて飛ぶガチョウを見ていました。信じられないことを見てしまったのです。自分達の常識でありえないはずのことが、今、目の前でおこっているのです。
気がついてみると、ガチョウは近くのつり堀の池に着水して、ゆうゆうと泳いでいます。
これはまずい、つり堀の商売用の魚に被害を与えたりすると大変です。そおっと静かに池から追い上げて、再度捕獲作戦の開始です。今度はうまく飛び上がる前に取り押さえることができました。
さて、このガチョウの取扱いをどうしようかということになりました。
ガチョウが空を飛ぶなんて、前代未聞の珍事だから、天然記念物にすべきだなどの珍説もありましたが、群れにもどして餌を十分与えれば、太って体が重くなって飛ばなくなるだろうという説に従って群れにもどしました。
餌を十分与えられて、満足したためなのどうかは知りませんが、その後、二度と空を飛ぶガチョウは現れませんでした。
それにしても、彼は空を飛ぶために、ひそかに餌を控えて体重を減らし、翼をトレーニングによって鍛えたのでしょうか?あの”カモメのジョナサン”のように。そうでなければ、どう考えても、体重が重くて飛翔力の弱いガチョウが、空に浮き上がることはできないはずです。どうにもわからない、解けない謎です。

ガチョウは空を飛ぶ?

当時、ガチョウは現在の「いこいの広場」にあった浅いビニールの池で飼育していました。
秋の閉園後、鳥たちを越冬舎に移す作業をしていた時のことでした。他のガチョウは簡単に捕まったのに、一羽だけ正門広場の方まで逃げ回っていたのがいたそうです。
しょうがないので、担当のA氏が追っかけ回していたところ、意を決して大空に飛び立ったそうです。
さて、ガチョウは一般的に空を飛ぶ力がないはずですが、このガチョウはやせていたというのも飛ぶことができた原因と考えられています。