令和5年度旭川市文化賞 受賞者が決定しました
令和5年度 旭川市文化賞 各賞の受賞者
旭川市文化賞は、芸術・科学・教育の分野で、旭川市の文化の発展に特に貢献したと認められる個人や団体に授与しています。
令和5年度は、旭川市文化賞に芸術(陶芸)の 千尋 悠子 さん、旭川市文化功労賞に芸術(書道)の 旭川書道連盟 さん、旭川市文化奨励賞に芸術(吹奏楽)の 学校法人旭川宝田学園 旭川明成高等学校 吹奏楽部 さんの受賞が決定しました。
旭川市文化賞
千尋 悠子(ちひろ ゆうこ)さん/芸術(陶芸)
宋の青磁と北大路魯山人の器の美しさに心惹かれ、高橋武志氏が主宰する陶芸教室で研修した後、昭和47年に旭川のまちを見晴らす丘の上に「千尋窯」を開窯。以降50年の長きにわたり、旭川の陶芸を牽引する存在としてひたむきに創作活動に取り組む。
「手のぬくもりを伝えたい」と願い創り上げた作品で、開窯して間もない頃から若手陶芸家の登竜門と名高い「伝統工芸新作展」で道内初となる連続入選を果たし、陶芸作品ではあまり例のない百貨店での個展を定期的に開催するなど、早くからその才能を開花させてきた千尋氏の活躍によって、窯業の歴史が浅いために陶芸の振興は難しいと言われてきた旭川における陶芸の人気は飛躍的に向上した。日常の中で食器を愉しみ愛おしんできた自身の経験から、作陶の原点は「器は料理とともにあるもの」「実用して楽しめるように」という思いであると語る氏の作品は、気取りのない美しさから日本国内はもちろん海外にも愛好者がおり、特に優しく温かみのある人柄が反映された花絵(かたくりの花をはじめとする季節の草花をモチーフとした絵付け)が施された食器は代表作として、多くの家庭の食卓を柔らかく彩っている。
旭川の陶芸界の中核的な存在として今なお豊かな発想と真摯な姿勢で作品を創り続ける一方で、陶芸を志す後進に向けて本来は明かすことのない作陶の舞台裏や熟練の技術に関する講義を行い、陶芸を愛好する市民に対して自身の窯を開放して陶芸教室を開催する千尋氏の功績は、本市の陶芸文化の振興と発展において極めて大きなものである。
旭川市文化功労賞
旭川書道連盟(あさひかわ しょどうれんめい)さん / 芸術(書道)
昭和18年に設立した「旭川書道連盟」(会長制)を前身として、同37年に理事長制に改組した現組織が成立。数多の会派に分かれている書道であるが、旭川及びその周辺地域の書道塾や教育現場の指導者をはじめとする書道愛好家が会や社中の壁を越え、互いに切磋琢磨しながら書道芸術の研究、振興及び普及を図るという目的の下に結成した当連盟は、全国でも稀有な存在である。
互いの個性を尊重して成り立つ当連盟の特徴は、80名を超える会員の作品による「旭川書道連盟展」によく現れており、漢字の書、仮名の書、詩文書(現代文や詩歌を題材とする書)、墨象(前衛芸術としての書)といった書道のジャンルをすべて網羅したバラエティ豊かな作風の同展は、実際に書いている姿を公開する作品解説会や席書会の同時開催と合わせて、来場者の書への関心の引き上げを果たしている。また、芸術観の違いなどから会員が相互に刺激し合える当連盟の環境は、書道芸術の追究や書道理論の深化を推し進めることによって作品の顕著な向上に繋がり、北海道書道展や毎日書道展など全国規模の大会で上位入賞する書家や、本市文化賞並びに文化奨励賞の受賞を果たす書家が数多く輩出された。
長きにわたり書家や書道愛好家の活動を推進する環境の醸成に努めるだけにとどまらず、近年はデジタル化の進行に伴い手書き文字が減少している情勢から若い世代を対象とした書道の普及にも意欲的に取り組むなど、本市のみならず道北地区の書道文化の振興と発展に尽くしてきた当連盟の功績は極めて大きい。
旭川市文化奨励賞
学校法人旭川宝田学園 旭川明成高等学校 吹奏楽部(がっこうほうじんあさひかわたからだがくえん あさひかわめいせいこうとうがっこう すいそうがくぶ)さん / 芸術(吹奏楽)
平成3年、現在の旭川明成高等学校の前身である「旭川女子高等商業学校」に創部。以降、「心一響奏~伝えよう心を、奏でよう笑顔で~」を目標に掲げて、自己の成長や仲間との相互理解に努めながら自分たちの音楽をつくり上げてきた。
高校吹奏楽において多くの実績を持つ指導者を顧問の一人として迎えた昨年は、個々の演奏技術が飛躍的に向上。比例するように「練習が楽しい」と思えるまでに部員の意識が変革し、結果として「北海道吹奏楽コンクール」に初出場し銀賞、「全道高校音楽発表大会」でも初出場を果たし最優秀賞(第一位)を受賞する。「日本管楽合奏コンテスト」では最優秀グランプリ賞と文部科学大臣賞の同時受賞を達成し、わずか半年足らずで日本一となる。それまで出場していた少人数編成の部門ではなく、顧問の「全員が少しでも長くステージ上で演奏できるように」という思いから出場した多人数編成の部門での目覚ましい躍進ぶりは、一人の問題を全員で考える姿勢や初めての合宿などを通じて強まった部の結束力をよく表している。
現在は部の著しい成長を支えた前3年生7名が引退し、総勢65名の部員がコンクールや大会のほか、北海道音楽大行進をはじめとする市内外の音楽イベントで質の高い演奏を披露する。自分たちの音楽が奏でられるように、見ている人に少しでも喜んでもらえるようにという思いを胸に、日々努力を積み重ね研鑽に励むその活動は、「音楽のまち」としての本市の文化振興と発展に大きく寄与するものであり、今後も一層の活躍が期待できる。