令和3年度旭川市文化賞 受賞者決定
令和3年度 旭川市文化賞 各賞の受賞者
旭川市文化賞は、芸術・科学・教育の分野で、旭川市の文化の発展に特に貢献したと認められる個人や団体に授与しています。今年度は、旭川市文化賞に芸術(絵本作家)の あべ 弘士(あべ ひろし)さん、旭川市文化功労賞に芸術(文学)の 秋岡 康晴(あきおか やすはる)さん、旭川市文化奨励賞に芸術(文学)の 柴田 望(しばた のぞむ)さんの受賞が決まりました。
旭川市文化賞
あべ 弘士(あべ ひろし)さん / 芸術(絵本作家)
昭和23年に旭川市で生まれる。旭川市在住。
旭川市内の高校を卒業後、鉄工所勤めを経て昭和47年から旭山動物園飼育係として勤務する。飼育員の間で話し合った行動展示の夢を絵として残し旭山動物園の復活に貢献してきた。氏の作品は旭山動物園に今なお展示されているのみならず、鉄道・バス・旭川空港など本市の多くの場所で市民に親しまれてきたという経歴は、氏の卓越した技量を物語っている。
動物園退職後は、アフリカや北極など世界各地を訪れ動物たちを見つめ触れ合うとともに、すでに取り組んでいた絵本作家としての仕事に鋭意取り組み多数の賞を受賞するなど、そのいのちといのちを響かせあうような深く温かな生命観に貫かれた表現世界は出版界から高く評価されている。令和元年には絵本作家として30周年を迎えた。
動物たちと向き合ってきた氏は、自然と動物のありのままの観点から日本全国で講演会やワークショップを多数開催してきたほか、本市を拠点にNPO法人を設立して理事長としてアートスペースの運営や、七条緑道を中心に街の活性化に努めてきた。また、嵐山ビジターセンターの設立に係わるなど地域の児童文化振興や自然保護活動にも貢献をしている。
絵本作家として、旭山動物園飼育係の経験を基に、永年にわたり170冊以上の絵本を手掛け多数の賞を受賞するとともに、講演や環境保全活動を通じて生命の尊さを伝えるなど、本市の芸術の振興と発展に尽くした功績は極めて大きい。
旭川市文化功労賞
秋岡 康晴(あきおか やすはる)さん / 芸術(文学)
昭和17年に札幌市で生まれる。旭川市在住。
北海道大学を卒業後、釧路第一高校勤務を経て、昭和46年から国語教諭として旭川藤女子高校に勤務する。
平成7年に旭川市生まれの作家である井上靖の自伝的小説『わが母の記』の読書会が行われ、それを機に市民サークル「井上靖読書会」が発足した。毎週、井上靖記念館に会員が集まり井上作品の輪読が行われてきた。近年では、絶版となった井上作品も多いことから、朗読CDの鑑賞や、井上作品とその他の作家作品との読み比べなど、氏は主宰として読書会をリードしてきた。会員のみならず一般市民にも講演などを通じて文学鑑賞の貴重な機会を提供してきた。読書会は令和2年に25周年を迎えている。
旭川藤女子高校勤務時には、国語作文教育等に鋭意取り組み、有島青少年文芸賞やユネスコ協会主催高校生作文コンクールにおいて受賞者を輩出するなど優れた指導実績を残している。
自主夜間中学旭川遠友塾では、国語科チーフを務めるなど、ボランティア活動にも大変熱心である。
高校国語教諭として永年勤務した経験を基に、創作活動の重要性を訴え、自らも詩・俳句・短歌・川柳・エッセイに取り組み、新聞や文芸誌において多数発表してきた。
また、旅行・視察などにより井上文学の舞台となる中国や韓国を訪問し、現地の歴史や風俗習慣について深く勉強をされており、研究の成果を文芸誌等にて発表する一方、井上靖生誕百年を記念した著書を上梓するなど、文学の普及・発展に多大な貢献をしている。
永年にわたり、高校教諭としての経験を基に、井上靖読書会主宰として活動されるとともに、著書執筆や国語作文指導など文学を中心に普及活動にも永年尽力され、本市の芸術の振興と発展に大きな功績を有する。
旭川市文化奨励賞
柴田 望(しばた のぞむ)さん / 芸術(文学)
昭和50年に岩見沢市で生まれる。旭川市在住。
旭川大学に入学後、文芸評論家としても活躍された故・高野斗志美名誉教授(三浦綾子記念文学館初代館長)に師事して文学の創作を学ぶ。在学中には高野氏らと文芸同人誌「タイムポテンシャル」を創刊する。大学卒業後も現代詩の研究と創作活動を続けて、令和2年には、詩の分野で高く評価されている「北海道詩人協会賞」を受賞する。
平成29年には道内最長の72年間発行が続いた旭川の詩誌「青芽」(故・富田正一氏主宰)の後継誌として、詩誌「フラジャイル」を創刊し主宰に就く。全国各地の詩誌・団体と交流する一方、吉増剛造氏など全国的な詩人・評論家の寄稿を収録するなど発刊を継続している。
旭川の文化団体である「東鷹栖安部公房の会」では事務局長に、「小熊秀雄賞市民実行委員会」では一次選考委員に就任されるなど活動の場を広げている。また、道内外の文芸誌等に詩作や論文を寄稿する一方、近年では、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を通じて旭川の文学・詩文化を全国に発信する活動にも精力的に取り組んでいる。
詩集発行などの創作活動により、北海道詩人協会賞を受賞する活躍をされているほか、小熊秀雄賞市民実行委員会運営委員や道内最長発行詩誌の後継「フラジャイル」の主宰として詩の普及活動に努めており、文学の分野で本市の芸術の振興と発展に寄与する人物として、今後一層の活躍が期待される。