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どうぶつえん日記

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令和6年8月「新たな驚きと当時の思い出」

新たな驚きと当時の思い出

 いよいよ夏本番です。猛暑を想定して身構えていたのですが今のところ(7月下旬)猛暑にはなっていません。今年は夏本番の前に、ぺんぎん館、ほっきょくぐま館の日よけの新設やもうじゅう館でも日射対策の擬岩の改修、レッサーパンダの日陰兼遊具の設置、さらには獣舎内の空調新設などを行いました。毎年記録を塗り替える想定外が恒例になっているのでまだまだ気を引き締めて対策を続けていかなければと考えています。内地の動物園の方が、冗談半分、本気半分で夏場は動物園の開園はできなくなるかもねと話していました。外出自粛を行政として発信する中で屋外施設メインの動物園が集客を促すようなことはできなくなるのではとの懸念が現実味を帯びているからです。
 さてエゾタヌキのお話です。今年ゆっくりロードのエゾタヌキのペアが繁殖に成功して8頭の子タヌキが順調に成長しています。両親は幼獣での保護個体です。巣箱内に設置したカメラで出産の様子を一部始終観察できました。メス親(うみ)が産み落としたそばからオス親(こたろう)が子をなめていて、出産は長時間に及んだのですが、どちらがうみかわからないくらいにこたろうがずっと寄り添っていました。オス親がここまで出産に関わるのを目の当たりにして、とても新鮮な驚きでした。こたろうは時にはうみに餌を運び、積極的に子守をし、巣を守っていました。生後一ヶ月頃から子ダヌキたちはおっかなびっくり巣の外に顔を出しプチ冒険をするようになりました。生まれた8頭の子は今ではすっかりタヌキ模様になっています。
 そういえば30年くらい前の話になるのですが、繁殖しても子育てをしないためにエゾタヌキの人工保育に取り組みました。生後一ヶ月令くらいで毛の色が親と同じになる頃に足の裏や目の周りの皮膚がカサカサになり痂皮が形成されミルクは飲むのに成長が止まり痩せて死亡してしまいました。当時できる限りの検査はすべてしたのですが原因がわかりませんでした。翌年も同じ結果になってしまいました。当時ミルクは牛乳や安価な一般的な犬用ミルクなどを使用していました。3度目の春、段ボールに入れられた子犬が飼育事務所前に捨てられていました。見るとタヌキと同じく足の裏、目の周りなどが痂皮で覆われていて痩せていました。これは!と思い犬の疾病を調べたら、剛毛犬種で成長期に亜鉛が欠乏するとこの症状が出ることがわかりました。この子犬に亜鉛の添加剤を混ぜたミルクを与えるとみるみる症状は改善し、無事にもらい手を見つけることができました。そして3度目の挑戦、亜鉛の添加剤をミルクに混ぜエゾタヌキの人工保育に成功しました。ふと子ダヌキたちを見ていて思い出しました。

tanuki
子どもたちを抱いて寝ている
父親のこたろう


 

 

令和6年8月7

旭山動物園 坂東

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