皮膚科

最終更新日 2023年11月8日

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診療科の特徴 皮膚科実績 どのような時に皮膚科を受診するか

代表的な疾患の説明(アトピー性皮膚炎 乾癬 蕁麻疹 薬疹 帯状疱疹 蜂窩織炎円形脱毛症

スタッフ紹介   

診療科の特徴

 皮膚の病気を引き起こす原因には、感染症(例;細菌、ウイルス、真菌)、アレルギー(例;接触皮膚炎、薬剤アレルギー)、物理的・化学的障害(例;熱傷、褥瘡、手あれなど)、種々の過敏反応(例;アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、虫刺され)、皮膚腫瘍、自己免疫疾患、あるいは遺伝的要因、膠原病や全身疾患に伴う皮膚変化などがあり、非常に広範な領域に及んでいます。また、高頻度に様々な内科的併存疾患を有する皮膚疾患もあります。あるいは、病気とまではいえないにしても、年齢的な皮膚変化が生活上問題になることもあり、たとえささいな皮膚の変化でも日常生活に大きなストレスが加わることもあります。

 当院皮膚科ではこれらの皮膚疾患を速やかに解決するために、例えばパッチテストによる原因物質検索などのアレルギー検査を施行しています。また手術が必要な場合には、より負担の少ない方法を常に考慮しています。他方で、それが隠れた疾患から生じる二次的な変化として皮膚に現れた場合や合併症や併存疾患が存在する場合には、しかるべき科での診察を紹介しています。

 近年、皮膚科疾患に対する治療は従来の基本的な外用剤(軟膏)に加えて内服薬や注射薬など様々な新規治療薬が登場しており、ここ数年で劇的に変化しています。特に生物学的製剤と呼ばれる注射製剤は、今までの治療では満足の得られなかった乾癬、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎などに優れた効果が期待できます。当院ではこれらの疾患に対して現在(2023年11月末)まで約250名(治験を除く)の患者様に使用経験があります。注射の治療は継続必要な場合や、短期間で完了する場合もあります。最近ではこれらの注射薬とほぼ同等の効果を有する新たな内服薬もあります。注射の苦手な方などには抵抗感が少ないかもしれません。使用する薬剤は個々人の症状によって異なりますので、一度相談されてみるのが良いでしょう。

 また当科では顔のシミに対するレーザー治療など、美容目的の施術も行っています。

 皮膚に何らかの変化がある場合には、まずは皮膚科を受診するのが効率のよい選択です。

皮膚科実績

1.入院患者 

疾患

各年患者数

平成30年度

(2018年)

令和元年度

(2019年)

令和2年度

(2020年)

令和3年度

(2021年)

令和4年度
(2022年)

ウィルス感染症
(帯状疱疹、水痘など)

27

27

26

31

18

細菌感染症
(蜂窩織炎、丹毒、糖尿病性壊疽など)

50

46

43

39

30

皮膚腫瘍

45

47

27

24

15

薬疹

7

5

1

3

3

熱傷

8

5

3

7

1

潰瘍(褥瘡、下腿腫瘍)、

28

39

30

26

32

湿疹・皮膚炎(アトピー性皮膚炎、慢性湿疹)

11

9

4

1

2

紅斑症、中毒疹

6

5

3

3

1

蕁麻疹、アナフィラキシー

15

1

4

5

2

その他(乾癬、水疱症、膠原病、円形脱毛症など)

36

35

20

13

15

合計

233

219

171

152

119

2.手術件数(手術室分)

年度

総件数

うち全身麻酔
平成30年度 135 48
令和元年度 150 53
令和2年度 96 20
令和3年度 70 16
令和4年度 76 12


3.新規薬剤使用実績:導入実患者数(2023年10月末時点、治療終了例・中止例も含む)

3-1.注射製剤(生物学的製剤)

疾患

総数

乾癬および乾癬性関節炎
掌蹠膿疱症
85
アトピー性皮膚炎 104
蕁麻疹 64
その他の疾患 2
3-2.内服薬(JAK阻害薬、TYK2阻害薬)

疾患

総数

乾癬および乾癬性関節炎 6
アトピー性皮膚炎 16
円形脱毛症 5
4.Qスイッチアレクサンドライトレーザー施術例数(2022年10月末):50

どのような時に皮膚科を受診するか

診療科の特徴で述べたように、皮膚に何らかの症状がある場合には皮膚科を受診するのが良いでしょう。

見た目に何らかの発疹が出ている場合は、発熱などの全身的症状の有無に関わらず皮膚科が担当になります。発疹に伴う症状には様々なものがあり、かゆい、痛い、チクチクする、ヒリヒリする、痛がゆい、しびれる、冷たく感じる、熱っぽく感じる、ほてった感じなどが挙げられます。自分で発疹を確認できなくても、これらの自覚症状がある場合に皮膚科を受診すると、診察により皮膚疾患が判明することがあります。

外観(美容的な意味で)が気になる場合や汗の問題なども皮膚科に相談可能です。当科ではレーザー治療を定期的に施行しています。

現時点で症状がなくても、過去の皮膚疾患(特にアレルギー症状)の原因を調べてみたい場合でも受診できます。

対応している皮膚疾患

基本的に皮膚に生じた疾患全てになります。

外来治療で良くなる場合がほとんどですが、時には入院治療が必要になる時もあります。特に発熱や倦怠感など全身症状を伴う場合は、入院治療の方が早期の症状改善を期待できます。

皮膚疾患の種類は非常に多く具体的な疾患名を全てあげることは出来ませんが、その中で比較的多い疾患に、接触皮膚炎(かぶれ)、足白癬(みずむし)、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、帯状疱疹、乾癬、蜂窩織炎、皮膚腫瘍(ほくろ、粉瘤、脂肪腫などの良性腫瘍や悪性腫瘍)、薬疹、円形脱毛症、熱傷や外傷などがあります。

褥瘡(床ずれ)を生じて、なかなか改善しない場合も皮膚科で治療が可能です。当院では入院治療も含めて褥瘡に対応しています。

頻度が低くても皮膚科での専門的診療が必要な疾患はたくさんあります。すこしでも発疹がある場合には皮膚科を受診すると良いと思います。

代表的疾患の説明

1.アトピー性皮膚炎

 アトピー性皮膚炎は、慢性的にかゆみを伴う湿疹を繰り返す皮膚疾患です。アトピー性皮膚炎の患者さんは概して皮膚のバリア機能が低下しているため、外界からアレルギー原因物質(アレルゲン)や様々な刺激要素が皮膚に入りやすくなっています。これらがアレルギー反応を起こして皮膚炎が生じます。かゆみのため皮膚を掻くことで、さらに皮膚のバリア機能低下がもたらされます。症状の評価は、皮疹の部位や程度および皮疹のでている部分の面積などを総合して評価しますが、血液検査をして症状の程度を数値化することができ治療方針の参考としています。

 治療は、皮膚の炎症を抑える目的でステロイド外用剤を塗布します。また低下しているバリア機能を補完するために保湿剤も必要です。かゆみが強い場合、抗ヒスタミン剤の内服を併用します。これらの治療で十分な改善をみない場合に選択する全身療法として、生物学的製剤の治療などがあります。近年、アトピー性皮膚炎の治療に、新しい外用剤や注射の治療が加わりました。当科では、新しい治療薬に加えて治験も行っています。

 アトピー性皮膚炎の患者さんは、発疹が顔や手など他人からみえる部位に出ることが多く、それが一過性でなく慢性に続くこと、また眠りを妨げるような強いかゆみを伴うなど、心理精神的な影響を受けていることがあります。当科では皮疹の治療に加えて、心理面にも配慮した診療を心がけています。

2.乾癬

 一般に免疫が落ちると病気になると言われますが、その反対に免疫が働き過ぎて色々な疾患を生じることもあります。乾癬は、皮膚免疫が本来必要とされる程度を超えて過剰に作用ことで発症します。その結果皮膚が赤く厚くなり表面の皮がむけてきます。発疹は頭、腰、肘、膝、手足、爪などにできやすいのですが、全身どこにでも現れます。多くの場合診断は難しくありませんが、範囲が狭いと湿疹などと間違われてしまう場合があり、爪の異常だけで発症することもあります。痒みの程度は個人差があり、全く痒くない場合や非常に強い場合もあります。

 注意すべきこととして、乾癬では皮膚以外の症状として関節の痛みや腫脹を伴う場合があります。手や足、首、腰、膝など色々な関節に症状をきたします。発疹があって、関節痛などある場合は一度皮膚科を受診するのが良いでしょう。発疹が乾癬であれば、皮膚と関節両方の治療方針を決めることができます。

 治療は過剰な免疫反応を調整する薬剤を使用します。軟膏治療が基本になりますが、内服薬や注射がより効果的です。注射は生物学的製剤とよばれるもので、色々な種類があります。効果は非常に高く、軟膏治療が必要なくなる状態にまで改善することも期待できます。

3.蕁麻疹

 蕁麻疹の発疹は、痒みを伴って赤くなり、時に水疱の様に盛り上がります。この発疹は掻くと赤みが拡がって悪化しますが、我慢していると自然に消えていくのが特徴です。しかし時間がたつとまた出てきて痒くなります。

 蕁麻疹は皮膚の毛細血管のまわりにあるマスト細胞が色々な刺激に過敏状態になってしまうことで発症します。日常生活での温度変化、運動、ストレスなどでも過敏状態のマスト細胞は反応してしまいます。このような刺激を生活の中から全て取り除くことはできませんので、蕁麻疹治療の目的はマスト細胞の過敏状態をなだめて平常な状態を維持することになります。ほとんどの場合は、抗ヒスタミン薬という内服薬で目的が達せられます。内服薬の効果が不十分でも、月1回の注射製剤など幾つかの有効な治療で改善が期待されます。

 蕁麻疹の中には単純なマスト細胞過敏反応でなく、食物アレルギーや薬物アレルギーなどを有していることがあります。当院ではこれらのアレルギー検査も行っています。

4.薬疹

 薬疹とは薬剤(内服、注射など)によって引き起こされる皮膚病変です。鎮痛薬や抗菌薬を内服して数日後に顔やからだに赤い発疹が出てくる場合が多く、自分自身でも薬剤と発疹の関連性がわかりやすいパターンです。しかし、内服開始後数か月以上たって皮膚症状が出てくることもあります。薬疹とわからず原因薬剤の内服を続けていると、治療を行っていても改善せず症状が重症化する可能性があります。

 薬剤を内服している時に現れた発疹が全て薬疹とは限りませんが、内科などの薬剤を内服していて難治性皮膚疾患がある場合には薬疹の可能性も疑うことが必要です。当科では、血液検査など行い診断を進めていきます。

5.帯状疱疹(たいじょうほうしん)

 皮膚とからだの中心部(脳や脊髄)は、痛みや痒みを伝える神経線維で繋がっています。帯状疱疹はこの神経組織において、子供の頃にかかった水痘(みずぼうそう)のウイルスが長い期間を経て再度活発になることで生じます。神経を舞台にして病気がおこるため痛みや痒みの原因になり、神経に沿って帯状(おびじょう)に水疱が並びます。疲労が蓄積している、大きな病気にかかった後など、身体に負担がかかっている時に生じることがしばしばあります。そのため、休息・安静を心がけることが必要です。

 治療はウイルスを抑える薬剤(内服、点滴注射)に加えて鎮痛剤などを用います。外来で治療できる場合がほとんどですが、痛みが強い時などには入院治療を行っています。また、最近では効果的な帯状疱疹ワクチンも使用できるようになっています。

6.蜂窩織炎

 帯状疱疹以外にも痛くなる皮膚疾患があります。その代表は蜂窩織炎で、細菌が皮膚に侵入し炎症を起こすことで、痛みを伴って赤く腫れます。表面の小さな傷からでも病原となる細菌は侵入しますが、治療中の足白癬(水虫)、熱傷や褥瘡から生じることもあります。抗菌薬の内服や点滴で治療を行いますが、細菌の侵入が皮下脂肪まで深く及んだ時や広範囲に拡がった時など、重症化すると高熱や倦怠感を伴い、切開排膿など療緊急手術が必要になることもあります。

 このような蜂窩織炎を起こさないためにも、普段から皮膚を清潔に保ち細菌が皮膚に侵入しないよう予防することが大事です。先に述べたように足白癬(水虫)は蜂窩織炎の誘因になりますので、しっかりと治療することが必要です。

7.円形脱毛症

 円形脱毛症では、本来起きることがない自分の毛根に対する免疫反応によって毛髪が傷み、最終的に脱毛に至ります。典型的には丸く髪の毛が抜けるため円形脱毛症と呼ばれますが、多発して広範囲が脱毛するなど色々なタイプがあります。一般に言われるようにストレスが誘因となることもありますが、本質的には毛の病気と考えられます。

 毛がない状態が続くと異常な免疫反応が自然に治まっていくため、たとえ時間がかかっても基本的に円形脱毛症は治癒する疾患です。しかし長く続くこともあり、このような場合免疫異常を調整する治療を行います。点滴や内服薬、外用剤などがあります。
 

スタッフ紹介

スタッフ紹介
役職 医師名 所属学会等
統括診療部長 坂井 博之

日本皮膚科学会専門医
日本アレルギー学会専門医
日本皮膚免疫アレルギー学会
日本小児皮膚科学会
日本乾癬学会

日本臨床皮膚医会

診療部長

堀 仁子

日本皮膚科学会専門医

日本皮膚科心身医学会副理事

日本心身医学会北海道地方会評議員

日本レーザー医学会

日本皮膚病理組織学会

皮膚かたち研究学会

日本臨床皮膚科医会

医員

桑原 史朗