旭川地域のアイヌの伝統的生活空間の再生に関する基本構想 3旭川地域イオルの目指す姿とイオルの機能
3 旭川地域イオルの目指す姿とイオルの機能
交流型イオル
かつての上川のアイヌの人々は、上川盆地の豊かな自然を基盤として採集や狩猟、漁労を生業とし、日本海方面やオホーツク海方面、十勝方面などを自由に往来して北海道の広い範囲で交流を行っていました。
こうした広大な自然を舞台に、豊かな文化をつくり上げた旭川地域イオルの目指す姿は、かつての上川アイヌの人たちが行っていた"交流"を北海道の中での独自性としてテーマに掲げ、「交流型イオル」を指向します。
旭川のまちは、35万人の人口を有し、恵まれた自然環境や冷涼な気候、交通の要衝といった地理的条件を生かし、農業を始め製造業や卸・小売業など多様な産業が展開され、教育、医療、福祉などの都市機能が共存する北海道の拠点都市であります。
旭川市は現在、旭山動物園の全国的な人気や国際定期便の就航などを背景に、観光を切り口としたまちづくりを進めております。
こうした観光客をはじめ本市を訪れる多くの人々や市民に、旭川地域イオルの整備によりアイヌ文化の魅力を紹介し、新しい「交流」を始めようとするものであります。
旭川の地域イオルは、こうした本市の恵まれた自然環境や都市機能を生かし、「交流」をテーマに、アイヌの人々によるアイヌ文化の保存・伝承を進めるとともに、旭川に来た人たちや市民がアイヌ文化に触れ、知り、体験し、楽しみ、学び、親しむことのできる環境を整備し、アイヌ文化の理解の促進とアイヌ文化の伝承活動の総合的な推進を図るため、次の2つの機能を持つイオルとして展開します。
交流型イオルの機能
- 豊かな自然を基盤として「自然を活用するイオル」
- 都市の中で行われる「まちの中で活動するイオル」
自然を活用するイオル(1つめのイオル)
イオルの機能
旭川には、都市化が進んだ現在においても、嵐山公園・神居古潭地区など公園化された地域のほか、それに隣接して、神居地区・江丹別地区の森林・河川など、市街地に近い所に豊かな自然が多く残されております。
これらの自然環境を基盤として、生態系に十分配慮しながら、かつてのアイヌの人々の暮していた生活空間をイメージして、自然素材を活用したアイヌ文化の再現に努めるとともに自然との関わりから生まれた独自の文化を発信するため、次のことを自然を活用するイオルとして展開します。
具体的なイオルの機能 | イオルにおいて必要とする主な活動 |
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自然素材の採集、狩猟、漁労などに関するアイヌの人々の独自の生活文化の再現に努めます。 |
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アイヌ文化の遺跡やアイヌの人々のかつての暮らし方、自然との関わりなどを紹介しアイヌ文化を発信します。 |
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まちの中で活動するイオル(2つめのイオル)
イオルの機能
旭川のアイヌの人々は、本市の近文地区を中心にアイヌ語や口承文芸、古式舞踊や音楽、木彫り等の手工芸、伝統的な儀式、衣装、アイヌ料理、生活用具、住居などのアイヌ文化の伝承活動を展開しております。
こうした様々なアイヌ文化の保存・伝承のための実践活動、市民や本市を訪れる人たちのアイヌ文化の体験・学習活動、伝承者の育成、特色ある工芸品づくりを推進するため、次のことをまちの中で活動するイオルとして展開します。
具体的なイオルの機能 | イオルにおいて必要とする主な活動 |
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アイヌ文化の保存・伝承活動、アイヌ文化の体験・学習活動、伝承者の育成を推進します。 |
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地域の特性を生かしたアイヌの伝統工芸品づくりを推進します。 |
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旭川地域のアイヌの伝統的生活空間の再生に関する基本構想(目次)
- 旭川地域のアイヌの人々の生活空間とアイヌ文化
- 旭川地域イオルの骨格
- 旭川地域イオルの目指す姿とイオルの機能
- 旭川地域イオルの展開
- 資料編