市立旭川病院IBDセンター

最終更新日 2023年4月1日

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市立旭川病院IBDセンター

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)及び関連疾患の最新の診療・チーム医療、地域連携を行っています。

1.IBDとは

炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease; IBD) は主に潰瘍性大腸炎とクローン病を指し、いずれも厚生労働省の難病対策における「特定疾患」に指定されており、未だに原因が完全には解明されていない病気です。

以前は、比較的まれな疾患と考えられていましたが、近年患者数が増加し、平成28年度の報告では潰瘍性大腸炎が約17万人、クローン病が約4万人と珍しい病気ではなくなってきています。

この病気は、比較的若年者に発症します。

主な症状は、腹痛や下痢、血便であり、これらの症状の再燃と寛解を繰り返す例が多いことが特徴です。

根本的な治療はなく、完治させることは困難ですが、近年様々な内科的治療が開発され、長期に寛解維持できる方が増えてきました。

IBD患者数の推移

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2.IBDセンターとは

IBDの診療には様々な診療科が関与します。

IBD治療の基本は内科治療ですが、内科治療でも改善しない難治例や、大量下血、腸管穿孔、癌の合併がみられる例では外科治療が必要となります。

また、前述のように若年者で発症しますので、小児で発症される方、これから妊娠を考えている方も多くおられ、小児科や産科婦人科との連携も必要になってきます。

さらに、皮膚炎や関節炎といった腸管外合併症も少なくなく、皮膚科や膠原病内科をはじめ、感染症科、精神科などの先生とのチーム医療が不可欠です。

内科治療も多岐に渡るようになり、他科との連携の下に治療を行うケースが増えてきました。

例えば、白血球除去療法を行う場合は透析センター、生物学的製剤の点滴加療を行う場合にはがん化学療法センターと連携して診療を行っています。

また、先に述べたようにIBDは完治させることが困難であり、発症した場合は長く付き合っていく必要がある疾患です。

そのため、日常生活や学業就労支援面においては看護部、栄養管理科、ソーシャルワーカーなど、他診療部門との共同体制も欠かせません。

そこで、多科、多職種との連携をより強固なものとし、より良いIBD診療を提供する為に設立されたのがIBDセンターです。

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主治医や担当看護師を通して、お気軽にご相談ください。 

IBDセンタースタッフ構成

医師 稲場 勇平 センター長(消化器内科診療部長)

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資格・専門医

医学博士/日本内科学会認定内科医 /日本消化器病学会専門医・指導医(学会評議員)/日本消化器内視鏡学会専門医・指導医(支部評議員)/カプセル内視鏡学会 /日本炎症性腸疾患学会 /日本消化管学会 /日本癌治療学会 /日本消化器がん検診学会 /難病指定医、小児慢性特定疾患指定医 /臨床研修指導医

医師 村上 慶洋 副センター長(外科診療部長)

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資格・専門医

日本外科学会認定医・専門医・指導医 /日本消化器外科学会専門医・指導医 /日本消化器病学会専門医 /消化器癌治療認定医 /日本内視鏡外科学会 技術認定医(消化器一般)

医師 垂石 正樹 (副院長)

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資格・専門医

日本内科学会認定医・総合内科専門医 /日本消化器病学会専門医・指導医 /日本消化器内視鏡学会専門医・指導医 /日本緩和医療学会認定医 /日本癌学会 /日本臨床腫瘍学会 /日本癌治療学会

医師 岩間 琢哉 (消化器内科医長)

資格・専門医

日本内科学会認定医 /日本消化器病学会専門医 /日本消化器内視鏡学会

医師 中島 雅秀 (小児科診療部長)

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資格・専門医

日本小児科学会専門医 /日本血液学会専門医 /日本小児血液がん学会 /日本アレルギー学会専門医 /ICD(インフェクションコントロールドクター)

看護師 鈴木 慎太郎(化学療法センター)

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資格:がん化学療法看護認定看護師

コメント

患者さんやご家族の方が、安心して治療を受けられるよう生活面や精神面などサポートさせていただきます。

薬剤師 林 康弘(薬剤部)

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資格:外来がん治療認定薬剤師/ 栄養サポートチーム(NST)専門療法士

コメント

薬の使い方、効果、副作用などの確認や医薬品情報の提供を行い、適切で安全な薬物療法が行われるよう努めてまいります。

管理栄養士 阿部 綾音(栄養給食科)

資格:管理栄養士

コメント

食事のこと、栄養のことを身近で支えつつ、しっかりとした栄養療法が行われるよう努めてまいります。

長野 あゆみ(地域医療連携課、医療福祉相談室)医療相談員

コメント

ご不安なことなどありましたら、お気軽にご相談ください。

3.IBD診療の実際

1)IBDの内科治療について

以下に代表的な内科的治療を挙げていきます。

(1) 5-ASA製剤

この薬剤のみで寛解維持できる方も多く、IBD治療の基本ともいうべき薬剤です。

病変部位に集中的に作用するように工夫された製剤が複数開発されており、病変の罹患部位にあわせて製剤を選択しています。

経口剤と経肛門剤があります。

(2) ステロイド剤

比較的活動性の高い時期に用い、寛解導入を目的として用います。

ステロイド剤は副作用が強調されることが多いのですが、短期間に使えば副作用もほとんどなく非常に有効な薬剤です。

ただし、寛解維持効果は乏しいとされ、副作用を避ける為にも、漫然と長期間に渡り使用することは避けるべき薬剤です。

近年、従来のステロイド剤より副作用の少ないステロイド剤(ブデソニド)の治療薬が開発され経口剤や注腸フォーム剤を用います。

(3) 免疫調節薬

主に潰瘍性大腸炎の寛解導入に用いるタクロリムスと、潰瘍性大腸炎とクローン病の寛解維持に用いるアザチオプリンがあります。

タクロリムスは非常に強力な薬剤で、主に重症化した潰瘍性大腸炎の方に用います。

血液中の薬剤濃度を測定しながら使用する必要がある為、原則的に入院して治療を開始します。

この薬の登場により緊急手術を避けられる方が増えてきました。

アザチオプリンはステロイドやタクロリムスなどの寛解導入治療から寛解維持治療に用います。

定期的に血液検査を行う必要があります。

(4) 血球成分除去療法

炎症によって活性化した白血球を血液中から取り除く治療方法で、主に寛解導入に用います。

一方の腕の静脈から血液を取り出し、血球成分を除去する特殊なフィルター、あるいはビーズを詰めた円筒形の血球成分除去器に血液を通過させ、炎症により活性化された白血球を取り除いた後にもう一方の腕の静脈から血液を戻します。

1回の治療で1時間程度かかり、週に1回から数回行う必要がある点が難点ですが、大きな副作用がなく小児や妊娠中の方にも安全に使用できる点が利点です。

(5) 生物学的製剤(抗TNF-α製剤ほか)

TNF-αと呼ばれる炎症性サイトカインを抑える薬剤で、寛解導入と寛解維持のどちらにも用いられます。

現在、点滴で用いるインフリキシマブ(商品名:レミケード)と皮下注射を行うアダリムマブ(商品名:ヒュミラ)が適応薬剤となっています。

非常に有効性の高い薬剤で、特にクローン病の治療方法を劇的に変えた薬剤です。潰瘍性大腸炎の方にも効果があります。

最近、さらにシンポニー、ステラーラという新たな抗体製剤が保険承認されました。

また、ゼルヤンツ、エンタイビオというこれまでとは作用機序が異なる薬剤も治療選択肢に加わりました。

(6) 成分栄養療法

一般にクローン病患者の治療として行われます。

抗原性が低く、脂質の含有量が極めて低い成分栄養剤(商品名:エレンタール)を服用することで、腸管安静を保ちながら栄養補給を行うことができます。

強力な治療薬の登場により存在感が薄くなりがちですが、必要カロリーの半分をこの成分栄養剤で補うことで寛解維持効果が認められることが明らかになっています。

(7) 新規治療薬

IBDの治療は日々進歩しており、新規薬剤の治験、臨床試験が多く行われています。

現在では、保険で使用されるインフリキシマブやアダリムマブも以前は治験が行われた上で認可されており(当院でも行っておりました。)、多くの方のご協力をいただいたおかげで現在治療薬として用いることができております。

当センターも全国規模の治験や臨床試験の分担施設となっており、多くの新規薬の治験、臨床試験が進行中です。

興味のある方は、是非担当医にご相談ください。

2) IBDの外科治療について

IBDに対する外科治療は緊急手術と待機手術に大別されます。

緊急手術の適応例としては、大量出血、大腸穿孔、中毒性巨大結腸症などの重症例が挙げられます。

一方、待機手術の適応例には、適切な治療にも関わらず治療に難渋する難治例や癌の合併例などが挙げられます。

特に緊急手術例は、内科治療から外科治療への切り替えのタイミングが重要であり、内科医と外科医の連携が必須となります。

また、近年の長期治療例の増加に伴う、潰瘍性大腸炎に合併する癌(一般人と比較して癌発生の頻度が高い)に対する手術が増えています。

特にクローン病では腸の狭窄や瘻孔を生じ易いため、外科手術が必要となるケースが多く、また、栄養吸収に重要な小腸に病変を生じることから、できるだけ切除する小腸の範囲を最小限にする工夫が必要となります。

そのため、比較的小さな範囲の狭窄に対しては小腸を切除しない狭窄形成術なども行っています。

当院外科ではクローン病に対する小腸切除や狭窄形成術、潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘なども、適応となる患者様では傷の小さい腹腔鏡下手術で行っております。IBDの患者様では日常生活の制限が多かったり、やむなく複数回の手術が必要となったりする場合も御座いますので、手術は出来るだけ患者様の負担にならないように心がけて手術の方法を選択しています。

3) その他

学術講演会、ケースカンファレンスや患者会支援なども実施いたします。

4.診療実績

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5.業績(2014年~2019年)

5.業績(消化器内科)(HP)(PDF形式 686キロバイト)