認定看護師リレーエッセイ No.44(鳥インフルエンザについて)
認定看護師リレーエッセイ No.44 ~鳥インフルエンザについて~
感染管理認定看護師 寺部 美香
今年の春、鳥インフルエンザの発生で卵がスーパーからなくなり入手するのが困難でした。鳥インフルエンザにつて卵や食肉以外に私たちにどんな影響があるのかお話しします。
鳥インフルエンザとは
鳥インフルエンザは、インフルエンザウイルスが引き起こす鳥の病気です。鳥に感染するインフルエンザウイルスをまとめて鳥インフルエンザウイルス(以下:鳥インフルエンザ)と言います。家畜伝染病予防法という法律で、病気を引き起こす性質やウイルスの型によって「高病原性鳥インフルエンザ」(致死率の高い強毒タイプ)、「低病原性鳥インフルエンザ」(弱毒タイプ)等に区別しています。
鳥インフルエンザは、自然界においてはカモ類などの水鳥を中心とした鳥類が腸内に保有しています。これら水鳥が保有しているウイルスは低病原性(弱毒タイプ)であることがほとんどです。しかしこの水鳥由来のウイルスが家禽類に感染を繰り返している間に変異して、病原性が高まったウイルス(高病原性インフルエンザウイルス)が出現すると考えられています。そのため、国内で発生した場合には病原性にかかわらず殺処分が行われます。※家禽(かきん)とは、その肉、卵、羽毛などを利用する為に飼育する鳥の総称です。(七面鳥、カモ、ニワトリ、ダチョウ、ウズラ、アヒル、キジなど)
鳥インフルエンザの侵入時期と経路
鳥インフルエンザの国内での侵入ルートはさまざまですが、主に、秋に渡り鳥の水鳥によって国内に持ち込まれると考えられています。日本でも2022/2023年シーズンに28道県で242事例の野鳥の感染が確認されています。
※ 家禽への感染は、感染した鳥の羽やフンに接触したネズミなどの小動物、昆虫が飼養農場へ侵入して接触する。感染した鳥や小動物を捕食したカラスやハヤブサなどの猛禽類との接触や、感染した鳥のフンなど踏んだ履物やタイヤなどを介して、ヒトや小動物が飼養農場に持ち込んで感染が起こると考えられています。
鳥インフルエンザが発生した場合
国内の飼養農場で鳥インフルエンザが発生した場合、法律に基づいて発生農場の家禽は全て殺処分し、死体は焼却または埋却、消毒されます。また、農場全体は閉鎖、消毒され、人の出入りも禁止されます。発生農場を中心とした半径5~30Kmの区域では、21日間以上、生きた家禽などの移動が禁止されます。21日間に感染がなかった 場合、移動禁止は解除されますが、その後3ヶ月間は区域の監視は継続されます。これらの防疫措置は、国内の他の生きた家禽がウイルスに感染することを防止することを目的として行われます。今年、道内最大の鶏卵生産地の千歳で感染が相次ぎ、道内の約2割に及ぶ約120万羽の殺処分が行われました。それに伴い近隣の養鶏場の出荷や移動を禁止したため卵の入手が困難となりました。
鶏肉や卵を食べてインフルエンザにかかる?
発生が確認された農場の鶏肉や卵などが市場に出回ることはありません。また、国内では、家禽肉や家禽卵を食べて鳥インフルエンザに感染した例はありません。
鳥インフルエンザウイルスは、加熱をすれば感染性はなくなります。万一食品中にウイルスがあったとしても十分に加熱していれば感染の心配はありません。加熱するときは食品全体が70度以上になるようにしましょう。卵は生で食べることを考えて生産されていますが、不安な方や体調の悪い方は加熱することをお勧めします。
人への感染
鳥インフルエンザと新型インフルエンザ
鳥インフルエンザは、ヒトが鳥インフルエンザに感染する事が稀にありますが、その患者から別のヒトに病気がうつる事は通常ありません。しかし、ウイルスが特殊な遺伝子変異を起こしてヒトからヒトへ感染する能力を獲得して、ヒトとヒトの間で次々と感染が起こるようになった場合、「新型インフルエンザ」と呼ばれるようになります。
今までのところ、鳥インフルエンザウイルスが新型インフルエンザウイルスになったことはありません。
新型インフルエンザは、ほとんどの人が免疫を持っていないため、パンデミック(世界的流行)となって社会に大きな影響を与えると言われています。
野鳥の死骸や衰弱を発見したら
野鳥もさまざまな原因で死んでしまいます。電線に触れて感電したり、餌が取れなくて衰弱したりする事もあります。これは自然の中で起こる事ですから、野鳥の死体を発見したからといってすぐに鳥インフルエンザを疑う必要はありません。
野鳥が死んだ場合には、鳥インフルエンザだけではなく、さまざまなウイルスや細菌、寄生虫にヒトが感染する事を防ぐことも重要です。野鳥が死んでいるのを発見したら直接触れずに保健所へ連絡してください。
もし、直接触れてしまった場合には、速やかに手洗い、うがいを行いましょう。