彫刻美術館だより vol.5 (2025年12月発行)

彫刻美術館だより Vol.5
館長よりごあいさつ
皆さま、いつも旭川市彫刻美術館を応援していただき、心から感謝申し上げます。
先日、11月23日に第44回中原悌二郎賞贈呈式並びに記念講演会が盛大に開催されました。多くの皆さまにお越しいただき、和やかな雰囲気の中で式が進行し、受賞者である藤原千也先生の表情がとても印象的でした。
中原悌二郎賞は、旭川市が昭和45年に悌二郎の業績を顕彰するために創設した賞です。「顕彰(けんしょう)」という言葉は、耳慣れない言葉ですが、「個人の著名でない功績や善行をたたえて広く世間に知らしめること」という意味があります。
悌二郎を看取った一人であり、友人であり、また近代日本を代表する彫刻家の一人で、107歳まで生きた平櫛田中が悌二郎について次のように語っています。「彫塑では荻原碌山(ろくざん)、絵では中村彝(つね)が彼の同輩であり、互いに切磋琢磨してその才を競った。荻原、中村の二人は、その価値をジャーナリズムも認め、改めて脚光を浴び顕彰され、国宝的存在に昇華している。しかし、同じ価値を持つ中原悌二郎の作品が、光を浴びずに埋もれていることに、私は耐えがたい苦しみを感じている。」
若くして世を去った仲間に対する平櫛田中の深い思いが、悌二郎と関わりがあり、旭川ゆかりの彫刻家である加藤顕清に伝えられ、当時の人々の努力によって、悌二郎の作品は今、旭川市に伝えられています。
中原悌二郎賞や当館と収蔵作品は、悌二郎の業績を伝えるだけではなく、日本近代彫刻の系譜や変遷を示す重要なコレクションとなっており、彫刻家たちには「聖地」とも言われています。今後も多くの方々に、この素晴らしい作品群をご覧いただきたく、心よりお待ち申し上げます。

《平櫛田中像》
- 作家名:中原 悌二郎
- 制作年:1919年
- 材質:ブロンズ
- 作品寸法:38×26×22cm
お知らせ
ステーションギャラリー
Ciao! Italia ―織田コレクションと巡るイタリアデザイン展―
椅子研究家の織田憲嗣氏が長年にわたり収集・研究してきた、20世紀の北欧を中心とする世界中の椅子や家具、日用品。その織田コレクションを、毎年2回、中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館ステーションギャラリーで展示するようになり、今年で8年目を迎えます。
今回は、「Ciao! Italia ―織田コレクションと巡る イタリアデザイン展―」と題し、世界的にも評価の高いイタリアの名作デザインをご紹介します。
古代ローマに始まり、様々なデザイン様式を経て、20世紀以降のイタリアでは、長い歴史に培われた職人技と美しいものを追い求める姿勢、日常を楽しむための遊び心が融合し、イタリアならではの数々の名作デザインが生まれてきました。
今回の展示では、20世紀以降のモダニズムからポストモダニズムまで、多様な名作デザインを展示しています。イタリア人の遊び心と創造性が息づく「人生を楽しむためのデザイン」を是非会場でご体感ください。
- 会期:令和7年11月12日(水曜日)~令和8年2月23日(月曜日)
- 休館日:毎週月曜日(月曜が祝日の場合は翌日)、年末年始(12月30日~1月4日)
- 時間:午前10時30分~午後6時30分(入館は午後6時15分まで)
- 会場:中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館ステーションギャラリー(旭川市宮下通8丁目3番1号 JR旭川駅東口)
- 観覧料:無料
- 主催:旭川市教育委員会
- 主管:旭川家具工業協同組合
- 協力:織田憲嗣、織田コレクション協力会、東川町
冬の旧偕行社
旭川にも雪の便りが届き、白銀の世界となりました。
冬の偕行社も、白銀に映える白亜の洋館が景観を作り出しています。
冬期間は落雪による事故防止のため、軒下等での立ち入りを一部禁止しています。
写真撮影などは、安全を最優先に行っていただきますようお願いいたします。

ある日、ひとつの彫刻(特別編)
第44回中原悌二郎賞 贈呈式・記念講演
「生まれようとしたときの光を見たい」
2025年11月23日、大雪クリスタルホールで「第44回中原悌二郎賞」の贈呈式が行われ、受賞者の藤原千也さんの彫刻『太陽のふね』が表彰されました。この特別な日に合わせて、藤原さんと選考委員の佐藤友哉さんによる記念講演「生まれようとしたときの光を見たい」も、対談形式で行われました。

藤原千也さんの紹介
藤原千也さんは1978年、北海道札幌市で生まれました。子どもの頃は、公園で自然と触れ合いながら遊んだり、神秘的なものや不思議な現象に強い興味を抱いていました。夏休みのお昼に放送されていた死後の世界を語る番組や、母親が用意してくれた手塚治虫の『火の鳥』をよく見ていたと言います。大学で立体造形を学んだ後、和歌山県で木こりの道を選びましたが、その後、養護学校で美術の教職を務めながら作品制作を再開。休職して大学院を修了し、試行錯誤を繰り返しながら、現在は北海道中札内高等養護学校で美術を教えつつ、独自の表現方法を確立し、精力的に活動を続けています。
受賞の言葉
受賞の知らせを受けた藤原さんは、「受賞のお知らせをいただいたとき、驚きのあまり何度も『本当ですか?』と確かめてしまいました。今は言葉では言い尽くせないほどの喜びと感謝の気持ちでいっぱいです」と語り、受賞作品《太陽のふね》については、次のように述べています。「この作品は、私がずっと求めてきた『魂に触れるとはどういうことか』という問いの中で生まれました。木の魂に触れる感覚を求め続けた結果、この作品が生まれました。」
藤原さんは、作品制作の過程で感じた苦悩を振り返り、「作品を作り始めてから長い間、私は焦りと、もどかしさの中にいました。どうしても木の魂に触れていると思えなかった。そんな無力な自分に、かつて世界のすべてと通じ合えていた感覚を重ねていました。」と語ります。
そして藤原さんは、試行錯誤を繰り返し、木を外側から彫るのではなく内側を掘るという発想にたどり着きます。そして、ある日、極寒の中で木を掘り進めている最中に大きな転機が訪れます。
「木がパキーンと割れ、その隙間から光が差し込んだ瞬間、私は初めて木の中に『魂』が宿っていることを感じました。それまでの自分の無力さが一瞬で溶け、光が心に深く響いた瞬間でした。」
(撮影:INOUE Koji)
藤原千也《太陽のふね》
第44回中原悌二郎賞受賞作品
幼少期の影響
藤原さんの作品には、幼少期の体験が色濃く反映されています。
「カーテンにくるまれば、部屋そのものと一つになり… 公園の砂場で掘った穴の中で友達とした握手は、全ての人と繋がった気がしました。」と語っています。
こうした幼少期の経験から生まれたのは、世界との一体感を描く藤原さんの作品の根底に流れるテーマです。
《太陽のふね》では、木の奥深くに潜り込み、そこから引き出される「光」を見つけ出すことで、藤原さんが幼少期に抱いた「世界と一体である感覚」を表現しています。

藤原千也 《太陽のふね Mother'sBoat》
第23回岡本太郎現代芸術賞特別賞受賞作品
- 制作年:2019年
- 材質:木(ヤナギなど)
- 作品寸法:185×630×150cm
- 令和8年3月頃まで当館で展示(予定)
作品に込めた「生まれようとしたときの光」
藤原さんが彫刻を通じて表現する「光」の概念は、彼の制作過程そのものと深く結びついています。「魂に触れるとはどういうことか」という自問から始まり、木の中を潜り掘り進むことで、作品の中に「生まれようとしたときの光」を見出していきます。
この過程が彼の作品に力強い生命力を吹き込み、観るものによっては、宇宙すら感じさせ、内面にまで深く触れるような感覚を与えるのです。
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お問い合わせ先
旭川市教育委員会 社会教育部文化振興課中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館
〒070-0875 北海道旭川市春光5条7丁目
電話番号: 0166-46-6277 |
ファクス番号: 0166-46-6288 |
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受付時間:
午前8時45分から午後5時15分まで(月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)及び12月30日から1月4日までを除く)












