第4回旭川大学の公立化検討に関する有識者懇談会会議録

情報発信元 公立大学課

最終更新日 2017年9月14日

ページID 062422

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会議概要

日時

平成29年8月22日(火曜日)午後3時30分から午後5時30分

場所

旭川市役所 議会棟 第4委員会室

出席者

  • 参加者8人
    五十嵐、伊藤、大矢、澁谷、長澤、原田、山根、渡辺(50音順)
  • 事務局5人
    総合政策部政策調整課 黒蕨部長、佐藤次長、上代主幹、森田補佐、尾形

会議の公開・非公開

公開

傍聴者の数

14名

会議資料
(PDF形式)

次第(PDF形式 55キロバイト)

資料1 第3回会議における主な意見(PDF形式 93キロバイト)

資料2_1 ものづくり系学部案について(PDF形式 107キロバイト)

資料2_2 他大学の類似学部等(PDF形式 248キロバイト)

資料2_3 大学設置基準上の面積教員数について(PDF形式 375キロバイト)

追加資料 ものづくり系学部新設についての「市民の会」の案(PDF形式 1,268キロバイト)

会議内容(要旨)

1開会

(1)前回の懇談会の主な意見について

事務局から資料1について概要を説明。

(事務局)

 これについて、内容の確認等、意見があれば伺いたい。

(参加者)

 公立大学の全体像について、前回の会議においてグローバルな、世界をリードするものづくりのデザイン教育や、地域のことを突き詰めると必ず世界に通じるなどの意見も出ていたので、ここにあわせて載せると良いのではないか。

(事務局)

 追加する形で整理したい。

(参加者)

 一番下の「その他」の「地元の実務的な教員が教えることも考えられる」とあるが、これは地元に限定しない方が良い。

(事務局)

 その点についても今後の整理の中で反映したい。

2 議事

(1)ものづくり系学部(案)について

事務局から資料2-1及び資料2-2について概要を説明。

伊藤会長よりものづくり市民の会の案について追加資料により補足説明。

(事務局)

 今日はものづくり系学部についての議論であるが、今日的な社会、グローバルな視点も含め、専門的な意見をいただきたい。

(参加者)

 資料2-1のものづくり市民の会の案は、7年にわたってものづくりデザイン教育を研究してきた集大成といえる。四日前の北海道新聞に、今の若者は何を学びたいかという京大の先生の記事が掲載されていた。1番目がIT関係で、次に自動車などものづくりの技術者。3番目4番目以降も紹介されていて公務員や金融関係も含まれていた。2番目の自動車などのものづくりに携わることついては、流行といったものではなくて、若い人は夢を描いてそれを実現する仕事を望んでいることを表していると思った。以前評論家の間で「ものづくりの時代は終わった」、「ITも終わった」と言う人がいてそれからすると一面意外な感もあるが、若い人が、夢を描き、それを実現する教育を希望していることが、アンケート結果に如実に表れていた。ものづくりデザイン系学問から考えると、夢すなわち哲学レベルから具体的なものづくり方法、材料や機構、加工まで総体的に学ぶことを欲しているということで新しい学部にはそれらが網羅されることが重要だと思う。

 ものづくり市民の会のものづくりデザイン系教育案の特徴は、将来にわたる生活文化環境で人間が望むものを捉え、言い方を変えれば夢を描きそれを実際の形にすることを学ぶ、様々な人間社会の問題点を発見しその解決手段を含み考え試みる、先人の知恵を知り体験を通して学ぶ、というところにある。旭川市の案であるイノベーションデザイン学科のカリキュラムは従来型文系の座学中心で、創造能力開発や、人間研究、文化研究、技術といった面が大変希薄だと思う。旭川市の案は、資料2-2にある最近出来た国立宇都宮大学の地域デザイン科学部に近い。しかし宇都宮大学の地域デザイン科学部コミュニティデザイン学科は社会経済系学部学科のリニューアルであり、建築都市デザイン学科は工学部建築学科の、社会基盤デザイン学科は工学部土木学科のリニューアルである。どの専門分野にも時代はリニューアルを要求しておりそれに沿った形であるが、宇都宮大学には旭川が狙うものづくりデザイン系は入っていない。ただし、コミュニティデザイン学科はまさに、現在の旭川大学経済学部の一つの方向であって、参考になると思う。

 今の世界のものづくりデザイン教育・研究の傾向は、明らかに持続可能な社会のためにどのようにするか、に移っている。市の案でも、物の価値を高める教育をしたいと書かれているが、市のカリキュラム案に挙げた授業は、従来の経済社会系学部そのままのような授業が並んでおり、それは全く必要無いわけではないが、物の価値を高め、持続可能な社会を実現するために必要かつ前向きな授業が他に沢山あるのではないか、というのが感想である。

(事務局)

 ものづくり市民の会からのアプローチと、我々が検討した中では、大きなところでは結構共通したかたちであり、焦点が当たってきたと思う。多少カリキュラムの差異はあるにしても、イノベーションデザインという一つの言葉が共通項として今回出てきたというのは良かったと思っているが、この点についても色々皆さんから忌憚のない御意見を、それぞれの立場でいただければと思う。

(参加者)

 「ものづくりデザイン」と「ことづくりデザイン」はかなり違うと思う。私の今までの知識だと、ものづくりにデザインが重要であるというのは理解できるが、ことづくりのデザインというと、コンサルティングとかマネジメントであるとか、そういうものにもデザインがいるということか。また別のものなのか。

(参加者)

 従来のものづくりはどうしてもハード中心思考で、実際は、どういう生活をイメージするのか、そこにはものが必要か不要かなど、ものを使う人の生活をよく見ないと良いものは作れないことが明白になってきた。生活というのは一種の「こと」で、地域の活性化も「こと」。「こと」を抜かすわけにはいかないというのが、今から15年くらい前にデザイン関係学会でも話題になり、グラフィックデザイン、パッケージ、宣伝なども総合的に捉えていく中で出てきた言葉が「ことづくり」であり、デザイン学分野の市民権はある。ただ、共通認識として何を示す言葉なのかを整理しておく必要がある。

(参加者)

 もう一点、非常に大事な視点と思うが、文科省が言っているように、産学官連携を更に充実させるためには課題もあり、上手くいっていないのが現状だと思う。それを改善するための手法として重要な「ことづくりデザイナー」というのは学生教育で学べるようなものなのか。もっと上の段階で、大所高所から、ある程度それぞれの状況を知りながらデザインをする必要があると思うが、大学教育で成立するのか。

(参加者)

 世の中にディレクターという立場の人がいる。そうした人は、もとはデザイナー、写真家やコピーライター、作家など何かの専門分野を持ち、その世界で修行した後に、全体を指導できるようになったというケースがほとんどである。だが、最初から上の立場を望む人がいるが、そう簡単には人を使う立場、それから莫大な予算を動かす立場にはなれないと思う。ただ、その立場を理解し学ぶような道は、今の時代にはあって良いと思う。というのは、ものづくりを学ぶ学生はつくることの面白さに熱中、埋没してしまい、全体が見えなくなることがあるので、教育方法として両方から教える考え方が多くなってくる。

(参加者)

 「もの」と「こと」をどう分けるかということだが、「もの」というのは一般的に物理的に実態のある、フィジカルなものと考えられる。ものをつくる上位概念として、ことづくりというのがあって、たとえば、パッケージデザインのパッケージは「もの」だが、パッケージをどのようにつくるかというのは「こと」であり、表裏一体の部分がある。私は家具というまさに物理的な道具としてのものをつくっているが、例えば伊藤さんがやっている領域で考えると、ポスターという「もの」はつくるがそのコンテンツは「こと」であるといった関係ではないかと思う。「もの」だって大学では学べないものがあるし、「こと」だって高校で学べるものがあるかもしれない。

 先程色々聞いていて思ったが、旭川地域につくろうという視点がすごく大事で、例えばどこでもつくれるような議論に終始しても仕方が無いと思う。デザイナーは、扱う領域が極めて情緒的であったり生理的であったり生物的であったりするので、それをどうアレンジして人間社会に活かすか、まさに「こと」と「もの」を考えているので、そうした性格上、極めて環境志向が強い。そうなると、旭川地域のあるいは道北で大学をつくろうとすると、我々が持っている自然環境を強く意識して考えないといけないと思っている。今我々が抱えている問題というのは、極めて大きな話だが、端的に言うと生物が生産する能力、生物が自然を浄化する能力を超えて人間が活動した結果にあるわけである。生物が持っている生産性を如何に利用するかが非常に大きな課題になっていて、それはまさに旭川にある、例えば家具でいえば、旭川というか北海道にある木材を使うということであったり、あるいは農産物をどう高度化するかということだと思うし、それから、旭川という地域や旭川を含めた道北の地域が持っている力を高めていくための一つの手段として、大学の有り様を考えるようにしないと、一般論で終始し机上の空論になってしまう気がする。もっと強く地域性にこだわって議論を進めていく必要があるのではないか。

(参加者)

 少し違った視点からのコメントだが、資料2-1に2つの案が並列している。ものづくり市民の会の案は従来から色々教えていただいた中身で、こういうものが独立した学部として、旭川大学の中につくられるというのは、それ自体良いことと思う。ただ、その場合、後ろの資料に見られるように、既存の経済学部や保健福祉学部がそのままの形で維持されるというのであれば、これはおそらく相当難しくなるのでないか、つまり公立大学で運営するのは、新しい学部だけでよいのでないか、という議論になりはしないか。だから、旭川大学の中に一つの新しい学部をつくるとなれば、例えば、他の学部も含めて、全体として定員を増やさない、各学部の定員を少なくするという考え方はありうると思う。一つの独立した学部を別につくるというのは理想ではあるが、今述べたような問題があると思う。

 他方、旭川市側の案を見てみると、これも色々工夫されたのだと思うが、基本的には現在の旭川大経済学部の学問的資源(教員、図書、設備等)を活かそうとする考え方に見える。これはイノベーションデザイン学部という名称ではあるが、旭川大学にとってもスムーズに移行できそうな、つまり以前に理事長が来て説明した案、経済学部を地域政策学部にして、最終的には地域デザイン学部にするという案だったと思うが、それに近いように見える。ただその場合、中身はやはり社会科学的な内容で、社会科学的な地域デザイン・地域政策を教育・研究するということだと思う。しかしそこには、ものづくり系の、市民の会が考えているような内容は入りにくいだろうという話が前にあったが、依然としてそういう問題は残る。

 そこで、ものづくり市民の会と旭川市の2つの案については、両方ともたいへんにご苦労されて、夢もあるし、他方では現実を踏まえて考えられたもので両方を活かせないかと考えたとき、例えば1学部2学科制のようにすればどうだろうかと思った。つまり、ものづくり市民の会の案の方を、こういう形で地域ものづくりデザイン学科として設置し、もう一つの方は、既存の旭川大学の学部の学問的資源を活かす形で、しかしそれは地域を社会科学的にデザインするという課題を持つ学科にしていく。学科になれば学科別入試もできるし、しなくともよいし、学科の壁も高くも低くもできる。全体を、1つの地域デザイン学部ということで、ものづくり系と社会科学系・地域政策の2学科を持つ。そういうふうにできれば落ち着くのでないか思った。このまま、2つの学部の案が分裂してしまうと、どちらも上手くいかないのではないかと思う。

(参加者)

 公立化の機会に、現在の旭川大学より学生数など規模を大きくするのか、現状規模で中身を変えていくのか、一層コンパクトにするのか、大きな判断の前提になると思う。市民の会の案の最後に、学部名についての項目があり、学部名は同一学部内に経済など他分野の学科を擁する場合は、その学部名を例えば地域共創学部とするというのがまさにそれで、例えば定員が経済系40名、ものづくり系40名、というコンパクトなかたちで学部学科の内容充実を図ることもできる、というのを含む提案である。公立大学を、社会福祉系がひとつで、もうひとつは経済系とものづくり系の両方を擁する学部の2学部体制にするか、従来の経済学部と社会福祉学部にものづくり学部を加え3学部体制にするのか、実際のカリキュラムにものづくりデザイン教育に沿ったものが反映されるなら、どちらも可能と考えている。ただこれについては旭川大学の方の気持ちの問題もあるだろうから、それを含めて次の論議の対象になるかと思う。

(事務局)

 旭川大学をベースにした議論をしていただいた。学部の新設や再編について、どのようにアプローチしていくかという面での提案があった。実現する上では必要な視点と感じる。

(参加者)

 国立宇都宮大学は、地域デザイン科学部を新設して、従来工学系にあった2つと、それから文系にあった経済社会系をひとつの学部に統合した。これは一つのモデルとしていい。ただ繰り返すが、工科系の中身の基盤が建築と土木であるので、旭川の場合には建築と土木ではなくて、ものづくりデザイン系ということで、その辺は入れ替えて考えたらどうか。

 文科省の認可で授業と教員を審査する専門委員も、新学科がたとえ建築系を改編した場合でも、専門委員はやはり建築の先生が審査するし、土木も社会基盤デザイン学科として土木という名前がなくても、授業の中身を見ればほとんど土木であるから、まさに土木の先生が中心になって審査する。学科の基盤となる専門分野を決めておかないと、文科省も戸惑ってしまうというか、これは何の学科なのだ、ということになってしまう。看板の書き換え、専門の中身を新しい方向に育てて行く、という姿勢で構築すれば良いのではないか。

(参加者) 

 だいぶ整理されてきたのかなという印象を持ったが、今日拝見させていただいた青いペーパーで、市民の会の方達の御意見は明確に伝わると思った。特に建学の精神、これが重要なところであり、自然と人間と文化と社会、こういうのを英知と創造で実現する。これがやはり基本なのだろうというふうに思う。文科省がずっと言っている知識基盤社会において、どういう人間を育てていくのかと、これは社会情勢が激変していくという中で、常に基本として自然と人間を置くんだと。ただ知識として、それから情報基盤としてはいろんな物が変わっていくのだと思うが、その変化に対応しながら、必要とされる人間が育成されることが記載されていると思った。 

 それからイノベーションとデザインはすごく私にとって難しいが、デザインをやっている方達の話を聞くと、どうしても古く勉強したものにとっては、地域課題、課題解決型という手法を使おうとする。ニーズオリエンテッドで、こんなニーズがあるからどう解決しようかと思うのだが、イノベーションやデザインというのは、そこを超えて、もちろん地域課題を解決していくことも踏まえるが、新たなものを創造する力なのだろうと理解している。そうするとそれは新しい「もの」とか「こと」を世に出すことによって、新しいニーズが生み出されるという逆転の発想である。これを大学で教えるということは、とてもチャレンジなことではあるが、今全ての教育課程においてそれが求められていると思うし、高校も中学校も小学校もかたちで決まったことを教えるのではなくて、自分で考える力を教えるというふうに変わっていく。そうすると大学は当然その上に立って世の中を創造していくというところに目的を置くというのは、これは当然というか、そうあるべきだというふうに思った。デザインのコースの具体的な中身はわからないが、そういう意味では基本のところで、技術のところは基本であるが、座学だけではなくて、そういう外からの先生達とともに、農業や林業など書いていただいているように、旭川周辺の環境を使って、いろんなことが学べるというメッセージを是非残していただければと思う。

(参加者)

 教えていただきたいが、資料2-1の市の案ではイノベーションデザイン学科ということだが、デザインそのもの、例えば家具のデザインをするといったデザインそのものを学ぶということもこの中に、当然ながら入っているという理解で良いか。

(事務局)

 旭川市案の教養科目の中に地域学なども入っており、一定程度学ぶことにはなっている。

(参加者)

 地域学ではなくデザインそのものを専門的に学ぶということはどうか。

(事務局)

 旭川市案ではデザインそのものを学ぶというイメージは少し薄いと思う。

(参加者)

 どちらかというと、ことづくりにつながるような地域づくりとか世の中のことを良くしていくということかと思う。ものづくり市民の会が考えている、ものづくりそのもののデザインの学部という意味ではちょっと違うのではないかなと思い、今お聞きしたところである。

(事務局)

 ものづくり市民の会の2つのコース、具体的にものを作ろうというコースと、ことづくり、いわゆるイノベーション的な、ものをつくるのではなくどちらかというとプロデュースするようなコースのうち、どちらかというとことづくりのデザインを旭川市ではイメージしている。実際に技術を学ぶというよりは、何かを創造するという視点を学んでいただいて、何かを作り出すきっかけであるとか、そういうものに繋げていきたい。

(参加者)

 創造力を含めた関係づくりの力をということで、今の段階ではちょっと違うということで良いか。

(事務局)

 同じイノベーションデザインという名称でくくっているが、具体的にものをデザインするところの内容としてはものづくりの会の方がコースの中に色濃く出ている。

(参加者)

 私自身としては、ものづくりも当然大事であるが、世の中づくりということで、まちづくりとか、地域をどうするとかということを含めて考えると、そういった創造力と連携する力というのが、若い人、我々もそうだが、今後大事な力になって、それを育てていく分野というのはすごく良いなと思ってお聞きしたところである。

(参加者) 

 デザイン教育は始まってかれこれ100年位経つが、そこに見られる共通した特徴は、課題を60ぐらい4年間でこなすことにある。課題は何かというと、大小の違いはあるが人々が直面している問題を先生が提起、または学生が発見してそれに具体的な形で答える、その答えは人のマネは絶対にしてはいけない、先人の知恵はおおいに借りてもあくまでもオリジナルの答え。これを60回プレゼンテーションする。世界の各大学は平均60回トレーニングしているのである。これはいわゆる技術教育ではない。これを体験するということは人間形成といえる。ものづくりの基本態度を学ぶことであり、作法というか、人の為にものを作るというのは結構難しいぞ、そう簡単に良いものはできないぞ、と、それで60課題を、非常に初歩的な造形演習から、人々が直面する社会的問題の解決までを体験する。それを単に技術と捉えてしまうと、ノウハウを書いた本があればそれを読めば良いだろうとか、暗記すれば良いとか、そっちの路線になってしまう。だけどそうではなくて、考える、手を動かす、現場を知る、相手と向き合う、困ったなぁ、先人はどうやって解決したのか、アドバイスを受けながら解決策を出すというのが、100年間ものづくりデザイン教育が行ってきた特徴なのである。座学だけでどんなに本を読んでもディレクターにはなれない。大きなお金を動かす責任者としては信用がおけない。元来ものづくり職人、デザイナー、ましてディレクター的立場は、ものの良し悪しの見分けがつく、当然技術やコストがわかって、つくり方が細かいところまでわかっている、地域の、世界のどこの工場で作れるかわかっている、どのように売るかわかっている、その上でのディレクションであって、簡単にものづくりのマネジメントを学ぶということはできない。例えばマーケティングの教科書に売れるものについて書いてあったらと思うが、統計処理で結論が出るとも思うが、回答はそこには無い。もしあったらみんながお金を儲けられるし、みんな良い会社になるはず。そういう座学で使うような教科書が存在しないからこそ、ものづくりデザイン創造教育の価値があると私は考えている。

(参加者)

 例えば表現技術というのは、ものを創造したりことを考えたりすることの手段でもある。結果を表現するのではなくて。言い換えると例えば文字がないと文章が書けないように、絵を描く手段や形をつくる技術がないと、結局創造を表現することができない。というより、それを自分の頭から取り出して誰かに伝える手段がないといけない。ものを考えたりつくったり、ことを考えたりつくったりするということは、必然的に表現手段が必要である。だからコンテンツと表現というのは私は50:50くらいの要素だと思ってる。どんなにいろんなことを考えていても、表現する手段が拙劣だと全然駄目で、汚い字で書いたら文章の価値が半減するように、汚い表現でデザインしたことの価値、デザインの価値が半減する。表現する手段は今の世の中ITを活用しても良いかもしれないが、それは極めて核になる要素である。それがないと駄目なんだろうと思う。

(事務局)

 色々な角度から発言があったが、大学をつくる上で、学生が確保できるのか、魅力ある大学という視点が大事だとも思うが、その視点から意見を伺いたい。

(参加者)

 公立大学の全体像については、これまでの懇談会の中で私はお話しさせていただいたので、今日のこのテーマに基づいてだけお話しさせていただくと、今日のテーマは私は全く専門外なので、勉強させていただくだけである。非常に勉強になった時間だったと思うが、ただやっぱり地域のための、もちろん地域の人たち、地域の子どもたち、地域の親たちのニーズに応えるということももちろん大事だが、今回考えているものづくり系の学びの場は、全国あるいはひょっとしたら世界から学生を集めることが出来るようなものにしてもらいたいなという気持ちがまず一つある。今の高校生というのは、例えばかつてと違って、名前の売れている大学であればいいとか、その象徴的な大学として早慶上智とか国立大であれば東大、京大、大阪大学とか、より偏差値の高い大学に求めがちだったが、今の高校生はちょっと違う。自分の今後の将来に向けて今何を学ばなければいけないのかということを真剣に考えて、自分の将来を見据えて大学選びをするようになっているし、学校側もそう指導しているし、親にも話しているとそういう話になる。必ずしも偏差値の高い大学を目指せということではなくて、何を学びたいのかということを中心に進路先を考えるように今の高校生はなっている。例えば、これは実際にあった例だが、結構学力の高い子で、四国の大学に行きたいという。何のためにそこへ行くのかと聞くと、勉強したいのはその大学のこの学科にしかないということで、わざわざふたつの海を渡っていく。たとえばもうひとつの例では、何とか東大行けるよという生徒でも、いや僕は別の大学のこの学部のこの学科で学びたい。だから別に東大ではないその大学に行きたいという高校生が今非常に増えている。繰り返しになるが、高校側もそういう指導をしているし、これからは新しい教育の姿を見据えて、そういう傾向が強まっていくと思う。だから、今回この場に出ている学部学科あるいは学びの場を、旭川でしか学べないという、そういうものをつくるべきだと思う。そうしたら全国から集まるし、ひょっとしたら九州あたりからもくるかも知れないし、ひょっとしたら国外からからも生徒が受験してくれるかもしれない。そういうことが大事だと思う。ニーズに応える、今日のテーマで言えばイノベーションデザインを学びにわざわざ旭川に来たいんだという学びの場を作ってもらいたいと思う。ここで学んだ者が、必ずしも旭川に残らなくてもいいと思う。この大学で卒業した生徒が。もっと大きな可能性を持ってこの学びの場を卒業して、日本でそして世界で活躍する人材を育てていく場にしてもらい、そういうビジョンを持って作るべきかなと思う。

(参加者)

 家具分野で旭川に関係する人は、世界で最高レベルの人たちである。東海大学旭川校舎の卒業生も含めて、国内はもとよりスウェーデン、ドイツ、デンマークの第一線の人達が関係していて、ものづくりデザイン分野では旭川はあこがれの地ともいえる。旭川で学び博士号をもって活躍している人もいる。旭川で働けるものなら働きたい、まして大学の先生に呼ばれたらすぐ行く、という状態といえる。国立佐賀大学芸術地域デザイン学部は世界の有田焼で、ドイツのマイセンよりも有田の方が伝統もあるし良いものを作り続けて来た、という強い地域意識から発足した。同じような旭川は、この先生が、という人が確実に呼べる土地なのである。ものづくりデザイン系教員募集に、北海道で生活でき給料がもらえるならすぐ行く、二つ返事が目に見える。実際に道内の関連学科では1名の教員募集に対して100を超す応募履歴書が届いた。世界の学生からも旭川にものづくりの大学ができたら確実に注目される。ケンブリッジやオックスフォードでなくても、ものづくりデザイン分野なら旭川の大学へと、入学希望者はかなり多いと思われる。地場産業に自信を持ちその発展継承の意味からも教育機関づくりに取り組んで良いのではないか。それから、ものづくりデザイン分野で今日空白なのが農業で、農業デザインを教育研究テーマに掲げると、日本初となる。その兆候はすでにいろんな大学で見られ、農業とデザインに関する授業を始めた大学も出てきた。北海道の第一次産業の環境の中でその将来性は期待でき、また学生も確実に集まると思う。

(参加者)

 今の話で、北海道の経済規模はGDPで18兆円かそのくらいであったかと思うが、北海道の資源、例えば林業の世界でいうと、林野庁あるいは北海道のデータからいうと約8億立方メートルくらいの蓄積量があると言われている。この半分が広葉樹であるが、これが年間どれくらい育つかというと、300万立方メートルくらい育っているはず。300万立方メートルを仮に5万円/立方メートルで考えると1500億円である。全部は材料に使えないが、理屈から言えば、天然資源であるから、生産した分だけは使って良い訳で、逆に言うと使わない限り過剰に増えていく。そう考えると、実はポテンシャルとしてはそれくらいあって、仮に桁一つ下げても150億円、さらに減らして10億円くらいの材料があるとすれば、例えば家具に直したら50億100億生産するだけの材料になる。変な言い方だが、自然の恵みとして得られるということである。家具だけで使わなくても良いが、広葉樹資源の27%は北海道にある。最大の魅力というか強みの一つとして認識するべきと思う。

(参加者)

 木材を取引する市場が、国内に40数カ所あったが、今は無くなり旭川だけとなった。国内の関係者からは旭川に行けば良質の木材が手に入ると思われている。広葉樹を使うものづくりでは中国、ロシア、アメリカの木材資源は枯渇していて、旭川は貴重な場所なのである。その意味からもドイツにも北欧にもアメリカにもない教育ができると思う。

(参加者)

 ちなみに旭川家具は年間1万立方メートルしか使っていないので、北海道の生産する量の300分の1である。

(参加者)

 洋家具の本場ヨーロッパの若いデザイナーは、広葉樹の材料を見る機会が少なくなった。使えるのは合板、プラスチック、金属になってしまう。そのような中、旭川の木材製品デザインとその加工技術は、大きな地域資産なのである。

引き続き事務局から資料2-3について概要を説明。

(事務局)

 試算結果ということで報告させていただいた。残りの時間、今の説明、資料に関わらず、先程御意見をいただいているところも含め、ものづくり系学部の御意見をいただければと思う。皆様からご発言いただいた中では、論点がまとまってきているのではないかと思っている。残り時間、改めてご発言いただきたい。

(参加者)

 資料1に書いてある「理念がない」というところ、新しい大学であるからこれから考えていくと思うが、とても大事なことである。建学の精神やミッションなど、どんな人材育成をしていくのかというのがとても重要で、それに応じて中身も変わっていく。どういう人材育成をするのかというところをまず固める必要があると思う。以前にも申し上げたと思うが、今、大学というのは非常に大変な時代である。国立大学は北海道に7つあるが、あと30年後どうなっているのか、7つそのままのわけはなくて、いったいどうなっているのか。北大にしても、かたちが大きく変わっているんだというふうに思っていて、今の総長もすごい危機感を持って、どういう大学づくりをしていくかということを考えておられるようだが、私のところの大学も2050年には学生がほぼ外国人になっているかもしれないし、形態もかなり変わるだろうなと思っている。旭川大学も同じように危機感持って、いろんなことを考えていると思うが、大事なのは、今のままで行けるはずがないのでどう改革していくかということである。30年後の社会を担う人材がその大学から出て行くわけであるから、ある程度予想して育てていかないと将来非常に厳しくなる。かなり長期的ビジョンを持ってミッションを考えるべきである。旭川大学を基本にしてということだが、今、社会福祉と経済は非常に重要な分野だと思っている。いろんな分野で経済的な考え方を入れないといけないと思うが、現存の経済学ではたぶん対応しきれないと思っていて、どう変えていくのか課題は大きい。旭川大学の経済学部が今後どのように「ものづくり」の中で役割を持つのか、それから社会福祉、そちらの方も生活面でデザインをどうとらえるかとか、「デザイン」「ものづくり」と「経済」「保健福祉」とどう絡んでいくのかということを、大きな改革、再編の中身の中でとらえて、旭川大学も一緒になって考えていかなければならない。あまり小手先で変えたくらいで対応すると、5年10年くらいは良いかもしれないが、30年40年は持たないんじゃないかなと思う。なので、地域だとか文理融合だとか、グローバル人材の育成だとか色んなキーワードを入れながら、今ある分野、想定される3つの分野を統合させた形で、どう持って行くかという、まさにそういうデザインが必要なんじゃないかと思う。

(事務局)

 今日はものづくり系学部ということに焦点をしぼって意見をいただいたが、最終的には、長澤さんが言われたとおり、この公立化する大学が全体としてどういう理念、ミッション、展望を持って設立をしていくのかということにまた戻ってくると思う。前回の学部・学科のときにも、資料1の一番最初にあるが、公立大学の全体像をどうするのかということは、常に毎回議論の際にここのところが一番大事だという雰囲気に行き着くところがあるので、ここはまた意見を整理する中で、重要なご発言として整理していきたい。

(参加者)

 最近の新聞記事で、財務省が私大助成を削っていくことについて報じられていた。新聞記事なので、どこまではっきりしたことかはわからないけれども、定員割れした大学にはもうお金を出せないとか、削るとか、もしくは、定員は埋まっていても入試において選抜機能を持っていないような大学にはもうお金を出さないというところに踏み出したようにも読めた。だから旭川大学の危機意識もこれからいっそう拍車が掛かってくるのではないだろうかという気がする。それが今の時代なのだから。そういう中で、個人的には、今の旭川大学の教育資源なり研究資源なり学問的資源を大事にしてほしいという気持ちがある。社会科学というのは、やはりどのような社会を我々は構想するのか、どのような制度どのような社会を望ましいものとして創ろうとするのか、そういうことをメッセージとして放つものである。社会科学系や経済学系が大学にないと、社会全体としてどちらの方向に向かうのかわからないということになる。そういう意味で、やはり旭川にも社会科学系や経済学系の高等教育は必要だと思う。また、先ほど述べたような危機意識の中では、資料2-1に出てくるような伝統的な名称の科目ではあっても、中身は、教員の危機意識とともに変わってくる。授業も座学ではなくて、学生がまちへ出て行ったり、地域の課題を考えたり、アクティブラーニングに力を入れるというように、社会科学系の教育・研究も大きく変わりつつある。旭川大学も危機意識のもとで随分変わりうると思う。そういう意味で、学部が地域やデザインという名や実を取り入れることが、大きな刺激を生み出すと思われる。

(参加者)

 今回教員数等設置基準の説明があったが、ものづくりデザイン学部学科をもつ大学では、1学科6名、国公立を含めてこれで十分機能はしているところが多い。それに限られた専門の非常勤職員と、授業により他学部学科の先生にお手伝いいただければ最小限の運営は可能である。どのような建学の精神で、どのくらいの規模を想定するのかによってだが、ものづくりデザイン学科はミニマムで例えば学生の定員が40~50名、常勤の教員が6名で十分機能はしていけよう。今回のものづくり市民の会案は2学科で常勤教員12名、それは大変充実した内容を持つことができると考えている。関連して、今日の議題ではないが保健福祉学部のコミュニティ、保健看護の2学科、これが現在のままなのか内容を変えるのか、短大をどうするのかは、ものづくりデザイン学科を考える上で気になるところである。その方向によっては、ものづくりデザイン学部学科のカリキュラムをより良い形に活かしていくことができるからである。次の段階でその辺も議論の対象になることを期待したい。

3 その他

次回の会議については、10月17日予定。

4 閉会 

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