第2回旭川大学の公立化検討に関する有識者懇談会会議録
日時 |
平成29年3月28日(火曜日)午後2時から午後4時5分 |
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場所 |
旭川市役所 議会棟 第4委員会室 |
出席者 |
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会議の公開・非公開 |
公開 |
傍聴者の数 |
13名 |
会議資料 |
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会議内容(要旨)
1 開会
2 資料説明
(1)事務局提出資料について
(事務局)
資料1から資料4までについて概要を説明。
(参加者)
資料3にあるとおり公立大学の収入の大半が市からの負担金となっているが、実際は国から市など設置団体に運営経費の一部として交付税が交付され、設置団体はその相当額を負担金の中に充当しているのが実態。交付税の算定に当たっては、教育学問の内容によって学生一人当たりの交付金の単価が大きく異なっており、文科省が公表している学部学科等専門分野別の交付税算出の基礎となる額の最近の資料を次回会議資料に用意していただきたい。
(参加者)
公立大学は他の大学よりも人件費の比率が高いようだが、その原因は何か。
(参加者)
前回、定着率が重要と話したが、道内定着率に札幌を入れてしまうのはどうかと思う。人件費は、大学の分野によって大きく変わるので、一概に年齢だけとは言えないと思う。分析が必要ではないか。公立大は文系が多いので、人件費が高めになるのかもしれない。
(事務局)
定着率については札幌に注目して見る必要があると思うので、もう少し調べてみたい。費用構造についても理系・文系によって違いもあると思うので、注意して見ていきたい。
(参加者)
収入の内訳の確認だが、私立大学の収入にある手数料は、入試の受験料のことかと思うが、公立大学だとどの内訳になるのか。
(事務局)
私立大の受験料は手数料に分類され、公立大だと学生納付金等に分類される。
(参加者)
今後経営する上で受験料収入も重要になってくると思う。公立大学の学生納付金の内訳が分かれば教えて欲しい。
(事務局)
次回までの課題とする。
(2)旭川に公立「ものづくり大学」の開設を目指す市民の会の資料について
旭川に公立「ものづくり大学」の開設を目指す市民の会が作成したパンフレットについて内容の説明があった。
3 議事
(1)旭川大学の公立化に関する学校法人旭川大学の検討状況について
学校法人旭川大学の山内理事長から検討状況等について説明があった。以下発言の要点について記載。
・公立化の要望の背景には、少子高齢化、国家財政の赤字、地方の疲弊の問題があり、とりわけ道北地方は過疎化と限界集落化が著しく、これらが先取りされた地域である。その中で中核市旭川も例外ではなく、進学と就職で若者が流出しないように若者のダム機能を果たすにはどうしたら良いのかを考え続けてきた。
・国はここ数年、地方の若年人口流出の抑制策を講じたが、大手私立大が駆け込みで入学定員を大幅に増やしてしまい、効果が出なくなってしまった。過疎化と少子化が進む中、大都市集中が進んでしまい歴史の浅い地方私立大の経営基盤は危うくなっている。
・国は人口減少の克服に向けた私立大学等の教育基盤強化を打ち出しており、本学としても大変な危機を迎える前に、道北最大の社会共通資本として理念ある持続を図っていきたいという思いで要望書を提出した。また、要望に当たっては、ものづくりの会の思いも引き継いでいる。
・本学はこれまでも地域に根差した大学であり、入口と出口、そしてカリキュラムで地域に密着してきたと自負しているところである。本学は、釧路、函館、名寄の公立大学と比較しても入学も就職も地元率は高い。特に就職に関しては、年間5回の地元企業の説明会や旭川信金と連携して学生に就職情報を流しており、地元に雇用先があることを知らせている結果だと思っている。
・日経グローカルが2013年に公表した設置形態別の大学地域貢献度ランキングでは、本学が経済・経営・商学系の中で7位にランクされている。北海道でトップ10に入ったのは本学と小樽商科大だけである。
・旭川市から提示された4つの条件については、これまでも学内の様々なレベルで真摯に検討しているところである。
・学校法人には大学・短大の他、専門学校、幼稚園、高校がある。公立化は大学と短大を考えているが、公立化が見えない中で、もう一つ学校法人を作って学園が二つの学校法人を運営することはできないと考えている。公立化に際しては、現在の学校法人から大学と短大が抜けて公立大学法人になり、残った幼稚園等については現法人が運営していくことを考えている。市が言う法人分離とは、公立化が決定する前に二つの理事会をつくって法人を分けてほしいということであれば、難しいと言わざるを得ない。
・法人全体の資産については、そのときの状況により分割して引き継いでいくことになる。現在、無借金で運営しているので、公立化の要請は赤字で旭川市に泣きついているわけではないが、少子化が進む中、理念ある持続をしていくには厳しい状況に入っていくことから、その意味では公立化は将来を考えた救済とも言える。
・本校舎の耐震化については、今年から短大校舎の耐震工事に着手する準備をしており、来年以降は大学校舎を予定している。国の補助制度を活用しながら、ここ1~2年程度で本校舎の耐震化を終える予定でいるので、公立化になってからの負担はないと言える。
・市からは定員充足率の低いコミュニティ福祉学科や短大の生活福祉専攻の改善を求められているところであるが、大学の認証評価においてもコミュニティ福祉学科の充足率を上げるよう求められている。そのため、改善に向けた経営判断をして、取組を進めてきた。今年度の入試では、経済学部は定員100人に対し94人、コミュニティ福祉学科は定員40人に対し34人、保健看護学科は定員60人に対し63人となっており、大学全体では95.5%の充足率になっている。
・札幌圏の大学も定員割れしている状況にあるが、本学の充足率も平均90%である。コミュニティ福祉学科の定員を減らして充足率を上げることも考えられるが、それぞれの理念を実現するには定員減にも一定の限界がある。そのため努力は続けるが、不振の学部学科、特にコミュニティ福祉については充足率が約85%まで来ているので、あと1~2年様子を見させてほしい。
・ものづくり系学部については「ものづくり系」の内容が多岐にわたるため、学内でもワークショップを積み重ねており、ものづくりの会のビジョンも参考にしながら検討している。仮称だが地域デザイン学部といったものを考えており、北海道が展開している6次産業化や食農クラスターを支えることができる学科であったり、プロダクトデザインを中心にしながら、地域ネットワーク、スポーツ健康科学などについて今年1年かけてワークショップで検討していきたい。
・公立大学になった後には、大学の定員増や短大の4大化、大学院の拡充と産業経済、医療福祉、教育文化といった地域を成り立たせる高度人材育成、生涯学習、市民協働の拠点としての役割、教育大学、高専、旭川医大とのコンソーシアムの実質化を進める上でも公立化した大学が主役になり得るのではないかと考えている。そうすることによって、道北の中核市である旭川市の役割と機能を支える大学として新しいステップが生まれるのではないかと考えている。
(2)意見交換
(参加者)
法人分離についてだが、公立化の前に二つの法人を作るのは無理だということは分かったが、公立大学法人を作って現法人から抜けるということか。
(理事長)
大学・短大の公立化が決定すると、大学・短大は公立大学法人に移行するということで、残された高校等は現理事会が引き継いでいくということ。その際、現法人の名称は変わることになる。
(参加者)
定員充足率が改善されたとのことだが、何か特別なことをされたのか。
(理事長)
市内を中心に高校の進路担当者に対してコミュニティ福祉とは何かやこれからの時代における意義を説明したことや生涯学習であるAEL事業で福祉を特集して市民講座を行ったこと、「先端介護技術研究会」などの研究会を開き、そこでのネットワークの活用や福祉人材に奨学金を提供することで優遇措置を講じてきた。
(参加者)
充足率も大事だが、入試の倍率も重要だと思う。倍率はどうなっているのか。一般的には2.0を切ると厳しいと言われており、国立大でも2.0を切っているようなところもある。2.0を切ると危機的だと思う。
(理事長)
危機的だとは思わない。倍率で勝負するより、大学教育は伸びしろが問題だと思う。大学で何を学んでどう卒業するのかが重要だと思う。
(参加者)
地元定着率が大事だと言っているが、認証評価では大学で学んだことが社会に出たときに生かされているかといった調査がポイントになっていると思うが、そういったことは分析されているのか。
(理事長)
基本的には卒業した後に会社の中でのOJTなどに委ねることになると思うが、大学で学んだことがそのまま使えるかということより、社会人基礎力である、他人とチームを組んで働く力、考え抜く力、一歩前に出る実践力を培えるかが重要だと思う。本学の学生が経産省が主催する社会人基礎力グランプリに東北・北海道の代表として全国大会に出場したのが良い例だと思う。
(参加者)
そうだとするとリベラルアーツを学んで基礎学力を身につけることで良いと言うことになるのではないか。企業ではOJTをする余裕がないので、大学でもっと専門学術を学んでほしいというのが国の方針だと思うが。教養軽視は良くないが、かといって大学で何を学んでも社会に出てから学び直すのは違うと思う。定着率の問題だが、地元から入って地元に就職した場合、大学で何を学んで何が生かされているかという調査が認証機関評価のポイントになっていると思う。
(理事長)
社会変化の中で、大学はそれぞれの特色を出していかなければならない時代だと思う。技術革新が進む中、今あるものがすぐに陳腐化してしまう時代であるからこそ、考え抜く力や自分と違った人達とチームを組んで仕事ができる社会性、一歩前に出る実践力といったものを身につけることができるようカリキュラムを組んでいる。
(参加者)
コンソーシアムの実質化とはどういったことか。
(理事長)
少子化が進む中、今後、高専や教育大学の再編も考えられるので、公立化後10年か20年経って、地域の高等教育需要とその形と求められるものを考えると単位互換だけではなく、共通の教養科目などを取り入れていくことができるのではないかと思い、「実質化」という言葉を使った。
(参加者)
学部学科の見直しとものづくり系学部について説明があったが、最近の傾向として九州大学の共創学部といった文系と理系の融合を図り、新しい時代に対応しようとしているところもある。それぞれの専門分野の学部ではなくて、文系と理系が入った学部や、専門に特化すると地域で生かせなくなるので両方を取り入れて学生が社会ニーズに合った形の専門を学び能力を付けるような、地域創生学部といった学部形態も現れてきている。ものづくり系の検討でワークショップをやられているとのことだが、ものづくりだけのものなのか、福祉や経営経済も入れたワークショップなのか。
(理事長)
経営とどう結びつけるかといった議論もしている。かつて流行った情報や国際の名称を冠した大学は定員を減らしてきているが、最近では地域創生に関する学部も数多く出来ており、そういった学部でどうやって留学生を集めるかや10年後の姿をどういう風に捉えるかといったことも議論している。
(参加者)
地域デザイン学部を考えておられるようだが、専門家がいない中で検討するのは無理があるので、大枠での考え方や理念が、ものづくり大学をつくる会の考え方と共通していればいいと思う。地域だからといっても旭川だけのことを考えてもだめだと思う。日本のローカルな意味の地域ではなく、北海道の研究と共に世界の様々な国々の地域の状況に目を向けて今後の地域のあり方を考えていくことが必要だと思う。新法人の設立も色々なやり方があると思うが。
(事務局)
法人分離については、事務局でも確認を取りながら一度内容を整理してみたい。
(参加者)
中国や台湾から学生を呼んでくるのは良い考えだと思う。これから中国・台湾の高齢化が進んでくるので、先進国である日本で学習の機会を作ることを考えても良いのかと思った。
(参加者)
国立大は国から改革の指示が出ており、学長のリーダーシップや組織再編など改革だけではなく、結果も出さなければならないと言われている。それは私立大学も同じなのか。
(理事長)
学校教育法が改正され、学長のリーダーシップが求められているが、現実はなかなか難しい。国から求められているのは、私立も同じである。
(参加者)
新学部についてワークショップで検討されているとのことだが、中身をどこまで共有していけるかが重要だと思う。今までこの会議で配付された資料では新学部のキーワードとしてものづくり、家具、デザインなどが挙がっており、旭川・上川ならではの人材育成を目玉にすることによって、地域活性化に役立つとの話があった。しかし、大学で検討するにはこの領域の専門家がいないと思うので、どの程度、どういったものをイメージしていくかが難しいと思う。外部との協力が必要と思う。
(理事長)
新年度からアドバイザリー契約を考えているほか、デザイン系の方を客員教授として迎えたり、地域政策と結び付けるために他の大学でものづくり系のことを教えている方を迎えて、準備室に移行できるような体制を考えている。
(参加者)
生徒を送る立場から考えているが、市民や地域から支持が得られるような大学について議論をしていきたい。
(参加者)
ものづくり系学部の決定権は大学にあるのか。
(理事長)
大学側としては基本構想や基本計画を提示していくことになると思っている。スタッフやカリキュラムもとなると体制を整えなければならないし、次期学長もそれに当たる人を考えなければならないと思う。その辺については、この懇談会や議会での議論や市の判断もあるので、相談を積み重ねていくことになるのではないか。
(参加者)
今回の有識者懇談会は、ものづくり大学設立ありきの議論なのか。ものづくり大学の設立も含めた新たな公立大学の設置について意見を聞きたいということなのか。
(事務局)
4つの条件の中にものづくり系学部の設置が入っている。市がものづくりの会からの要望を受けている中で、旭川大学をベースとした公立化を検討する際に、ものづくり学科についても一つの条件として検討を進めていくことになっている。ものづくりの会とも協議を進めながら、一定の方向性を見い出す中で検討していきたいと考えている。背景としては、会からの要望や市としての考えもあって俎上に挙がっているいるということ。(参加者)
あくまでも新しい公立大学を作る上での一つの要素としてものづくり大学があるという理解でよいか。
(事務局)
そのような理解でよい。
(参加者)
事業を行う中で旭川大学との関わりが多いが、学生たちが育っていく姿を見てきた。是非、そういった良さと世界から人が集まるようなことが両立できるような形になっていってほしいと思う。
(参加者)
ものづくりの会としては、スピード感を持って進んでほしいと思っている。その中でネックになることもあると思うので、どの時点でどういった判断をするかという着地点を見い出すかということが大事だと思う。公立化後の将来ビジョン、今後あるべき大学像といったものが、もう少し具体的に見えてくると良いと思う。ものづくり系のデザイン学部に関する知識は多少なりともあるので、ワークショップにものづくりの会や家具業界、デザイン業界なども入れてもらって検討させてもらえたらと思う。
(事務局)
本日は結論を出すということではなく、旭川大学の現段階での考えを説明していただき、皆さんと意見交換をさせていただいた。その中で様々な論点が見えてきたと思うので、事務局で論点を整理して、次回の議論の基礎資料にしたいと思う。予定では、旭川大学から3月末までに4つの条件について文書で回答いただけることになっているので、この会議でも資料として提出したいと思っている。
4 その他
次回の会議については、日程調整の上、決定することとなった。