あさひばし 平成28年6月号「動物園からの手紙」
旭山の歴史に残るアムールトラの繁殖
4月8日に生まれたアムールトラの子は元気に成長しています。雄と雌でした。この手紙の頃には無邪気に転げ回る子供たちと、そっと見守る母親ザリアの姿を皆さんに見ていただけているでしょう。
旭山動物園でのアムールトラのペアでの飼育は、3代目です。初代と2代目のペアの4頭は人工保育で人間に育てられた個体でした。一般的に人工保育の個体は、その動物としての学習やコミュニケーションを学んでいないために同居はできても交尾ができなかったり、出産しても育児ができなかったりなどの問題が起こることが多いのです。
初代も2代目のペアも交尾ができませんでした。2代目のときは、人工採精や凍結保存の技術など様々な知見を積み重ね、数回の人工授精を試みましたが、妊娠には至りませんでした。
そして、3代目のキリルとザリアは、共にアメリカの動物園生まれで、自然保育個体です。旭山に来た経緯は今までの場合とはちょっと違います。アムールトラは昨年イルカ問題で話題になったWAZA(世界動物園水族館協会)が積極的に種の保存を行う重点種で、現在世界中で飼育されているアムールトラの未来を考え、新しい血統をつくっていくという視点からのペアです。キリルとザリアをペアとして受入れ可能な動物園を世界中から募り、旭山に来ることになったのです。
キリルとザリアは平成26年に来園し昨年9月に出産、このときは環境に慣れていない中で、ペアリングから発情・交尾と、とんとん拍子でことが進みましたが、出産から育児にはつながりませんでした。
そして、2回目の出産となる今回は、見事育児につながりました。前回の失敗を受けて、産室の大改造や落ち着ける環境づくりに専念し、出産に備えた結果でした。担当者冥利に尽きる繁殖成功ですが、旭山動物園の歴史の中でも特別な繁殖成功になりました。
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