「旭川日韓手工芸交流会」~文化芸術のカタチvol.27
手工芸でつながる日韓の絆。令和5年度生涯学習フェア「まなびピアあさひかわ」に出展中の旭川日韓手工芸交流会 澤田会長にお話をお聞きしました。
内容
-まなびピアに来られているお客様の反応は如何ですか?-
本日は、「韓服について知ろう!」というテーマで、会員が制作した手工芸品の展示のほか、韓国の民族衣服である「チマチョゴリ」の着用方法の解説や試着体験を行っています。
試着して写真を撮れるというのが好評で、想像していたよりも多くの方にお越しいただいています。まなびピアでは、ダンスや和太鼓などの様々なジャンルの団体が出展しているので、手芸に興味のある方以外との接点も持てるとても良い機会になっています。
-普段はどのような活動をされているのですか?-
旭川市の姉妹都市である韓国の水原(スウォン)市の「閨房(キュバン)工芸研究会」と合同で交互に「日韓手工芸交流展」を開催し、お互いの作品を展示しています。そのほかに、我々の会員のみで実施する作品展示会や体験会、韓国の会員を講師とする作品作り体験会、韓国料理教室などのイベント開催が主な活動内容です。
現在の会員は6名で、普段は韓国手芸、ステンドグラス、木目込み(きめこみ)人形、織物、パステルアートなど、会員それぞれが自分の好きなジャンルの作品を制作しています。その上で、毎月第二火曜日の午後6時から午後8時に神楽公民館で例会を開催し、皆でイベントの企画や開催準備をしたり、会員同士イベントで作成する作品の作り方を共有したりしています。
-閨房工芸研究会 との交流に至った経緯を教えてください。-
閨房工芸研究会の「閨房」とは、朝鮮王朝時代の貴族の女性達が生活していた部屋のことで、彼女達はその「閨房」に集まり生活に必要な小物などを作っていたそうです。閨房工芸研究会は、当時、閨房で用いられていた伝統的な技法により作成したタペストリーやコースター、ストラップなどの作品の展示会を大規模に開催しています。
平成21年に水原市との姉妹都市提携20周年に合わせ、閨房工芸研究会から、姉妹都市である旭川で第1回となる日韓手工芸交流展を開催したいという要望があったことを受け、旭川市国際交流センターが手工芸を行っているメンバーを募集したことが会設立のきっかけとなりました。
その頃、日本に韓流ブームが訪れており、長年勤めた仕事を退職し新たな趣味を探していた私は、ちょうど独学で韓国手芸を学び始めた時期で、とても良いタイミングでの出会いだったと思います。
そのような経緯で、立ち上げ時の14~15人ほどのメンバーの1人として参加することとなり、20周年のときは、国際交流センターの支援を受けて活動することができましたが、その後は、会費と展示会での小品の販売や体験会での収入の一部を会に入れることにより、会活動を続けています。
-交流展の開催状況を教えてください。-
交互に開催する交流展に閨房工芸研究会の方にお越しいただいたり、我々が韓国に伺い、世界遺産となっている水原華城行宮(ふぁそん へんぐん)で交流展を開催したりと行き来があったのですが、コロナ禍の渡航制限により通常どおりの交流ができなくなってしまいました。人の行き来ができない間は、韓国から作品を送っていただき、旭川での交流展を続けています。直近では、昨年11月に旭川市民ギャラリーで開催し、3日間で320名の方にお越しいただきました。
コロナ禍により、長らく人的交流は出来ていないのですが、今年(令和6年)は閨房工芸研究会との交流が始まってから35周年になる記念の年なので、夏に韓国から旭川にお越しいただき、秋にはこちらから訪問するということで交流再開が検討されています。
韓国に行くと、閨房工芸研究会の会長宅にホームステイさせていただいているのですが、春雨と牛肉を使ったチャプチェやキンパブという韓国風のり巻き、サムゲタンなどのたくさんの韓国料理がふるまわれ、至れり尽くせりのおもてなしをしていただいています。おいしい料理を頂きながら、韓国の会員の方とじっくりとお話ができる、とても楽しく貴重な機会になっていますね。その反面、日本にお越しいただくときはお寿司やとんかつなどをふるまい、気持ちに応えなければならないので大変ではありますが(笑)
交流再開が待ち遠しいです。
-交流展以外の取組の状況は如何ですか?-
毎年、東神楽図書館ギャラリーにて会員作品の展示会を開いています。その他に「神楽交流センター祭り」や「まなびピアあさひかわ」で、参加者に韓国の伝統的な紋様の折り紙を用いた韓服、チコモニ(巾着)、財布の作り方を体験していただき、喜んでいただいています。
また、韓国との交流の一環で、手芸制作キットの交換を行っており、最近は旭川日韓友好親善協会主催の「韓国文化教室」で、韓国から送られてきたキットを使用した体験会も行っています。一昨年は、韓国の独特な結び方を用いたマスクストラップの制作、昨年は「民画」という李氏朝鮮の時代に庶民の間で親しまれていた絵画の描き方講習を実施しました。今年は、1月21日に私たちが作成したキットで祝儀袋の制作を体験していただきました。
韓国は隣の国ですが、文化について学ぶ機会はあまり多くはないと思います。私たちの展示会、体験会にお越しいただければ、たくさんの学びや発見があると思いますよ。
-活動のやりがいや経験を通じて学んだことがあれば教えてください。-
展示会や体験会の開催により、自分たちだけでなく、たくさんの旭川市の方に韓国の独自の工芸品に触れ、作品の制作を体験して喜んでいただき、韓国の食や文化に興味を持っていただけたと直に感じられることが活動のやりがいとなっていますね。
また、日々の例会活動を通じて、会員それぞれが趣味としている異なるジャンルの手芸の作り方を皆で知ることができ、興味を広げることができるのも活動に参加する魅力の一つになっています。
活動を始めたばかりの頃は韓国語が分からなくて苦労もしましたが、皆と一緒に活動に参加し続けることで勉強も継続できましたし、韓国の方との交流を通じ、1人ではなかなかできない貴重な経験もできたので良かったと思っています。ホームステイの間に韓国の方と深くお話をしてみると、両国の「知られざる文化的共通点」を学ぶことがあり、交流の醍醐味になっています。手芸は基本的には一人で制作するものですが、人との交流や外とのつながりを意識的につくりだすことで、一人では得られない経験をしていくことが、趣味を充実させていく秘訣だと思います。
-今後の展望を教えてください。-
先ずは、コロナ禍でできなかった人の行き来を伴う交流の再開を考えていきたいと思います。その他のこととして、これまで閨房工芸研究会の方が来旭された際に、韓国手芸の講習会を日本で開催する機会はあったのですが、我々が韓国に行って日本の手工芸の講習をする機会はなかったので、開催してみたいと思っています。ちりめんや和紙、日本の折り紙などを用いた小物作り、韓国では見かけない手芸といった内容で講習すると面白いかもしれません。
日韓の心理的距離は、その時々の政治的な関係性によっても強く影響を受けるもので、とても不安定な状態にあると思います。しかし、両国は文化的な共通点の多い隣国であるので、国際情勢の変化に左右されず、このような民間・地方の文化交流を継続することが、良好な関係を維持していく上で、とても重要だと思います。
文化交流の継続という観点では、私たちの活動も15年目となり、一定の成果を上げられたのではないかと思いますが、一方で、会員の減少と年齢層が上がってきていることが課題となっています。今後は、特に若い方に我々の活動に興味を持っていただき、何らかの形で一緒に活動ができるようになることを目指し、展示会・体験会等のイベントの内容や情報発信の在り方について考えていきたいと思います。
まとめ
●韓国手芸のほか、ステンドグラス、木目込み(きめこみ)織物、パステルアートなど会員の趣味に応じた作品を自由に制作している。
●平成21年に国際交流センターを通して立ち上げられた交流事業を継続しているが、今後の存続に当たり、会員の減少、高齢化が課題となっている。
●毎年、作品展示会や体験講習会を行い、手芸を通じ、市民と韓国文化を共有する機会をつくり続けている。
団体情報
名称 | 旭川日韓手工芸交流会 |
練習場所 |
神楽公民館 (旭川市神楽3条6丁目) |
創作・練習の日時・頻度 |
毎月第二火曜日 午後6時から午後8時 |
会員の募集 |
あり |
会費 |
月500円 |
連絡先 |
岸田幸恵さん(事務局) 0166-63-3817 |
入会の条件等 | 手工芸の愛好家で韓国の文化に関心のある方 |
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