「演劇集団シベリア基地」~文化芸術のカタチvol.12

情報発信元 文化振興課

最終更新日 2022年6月16日

ページID 075525

印刷

演劇を旭川の新たな文化として根付かせたい。「演劇集団シベリア基地」の稽古場にお伺いして、野口代表にお話をお聞きしました。

12-1
この日の稽古場(新旭川公民館)

内容

12-2
左:今回の演出の野口さん 右:野口代表

-劇団の概要と立ち上げの経緯を教えてください。-

高校生から30代までのキャストで構成される若手の劇団です。

私は、旭川医科大学の学生なのですが、一昨年(令和2年)の2月に、当時在籍していた旭川歴史市民劇の役者仲間に声をかけ3名でスタートしました。

この寒い旭川からワクワクする作品を届けていきたいという思いで「シベリア基地」と命名しています。

高校時代に演劇部に入ったことが演劇を始めたきっかけです。演劇部に入った理由は、綺麗な先輩がいたからで、元々演劇に興味があったわけではありません(笑)

そのような感じで何となく演劇を始めたのですが、初舞台のときに、観客の皆様から心のこもった拍手をいただき、それまでの人生で経験していた「惰性の拍手」とは全く違う気持ちを受け取り、舞台に立つことの魅力を知り、今日に至っています。

現在は仲間が増えて、サポートの方も含めて12名で活動しています。


-どのような演劇を行ってきたのですか?-

旗揚げ公演は当初、一昨年の12月に行う予定でしたが、コロナ禍で頓挫しました。その後、感染状況をみながら昨年(令和3年)の8月に「まちなかぶんか小屋」をお借りして、10~15分の短編劇を3本上演しました。初めての公演ということで、江戸川乱歩の戯曲、コメディ、会話を主体としたしっとりとしたオリジナルの作品と異なる趣きの3本を実施して、自分たちには何ができるのか、どのような内容のものが受け入れられやすいのかを確認することとしました。結果として評価が分かれたので、そこで方向性が決まったわけではないのですが、旭川でも演劇が受け入れられるという手応えを掴むことができました。

第2回公演は客席数を倍にして、昨年12月にサン・アザレアの会場で、劇作家の野田秀樹さんの脚本で家族の崩壊を不条理なコメディタッチで描く「表に出ろいっ!」という作品を上演しました。

脚本を決める際には、皆で意見を出し合いながら、我々のように少ない人数でも面白く演じられるものを選ぶようにしています。

12-3
第1回公演
12-4
第2回公演

12-5
令和4年7月9日(土曜日)上演予定

-第3回公演の開催予定はありますか?-  

今年(令和4年)の7月9日(土曜日)に「赤鬼」という作品を旭川市市民活動交流センターcocodeで2回行います。(開演時間:[昼の部]14時から、[夜の部]19時から。上演時間:90分。)

「赤鬼」は、前回と同じ野田秀樹さんの脚本で、見た目や言語の異なる人なのかどうかも分からない生きものが流れ着いた海岸で、現地の村社会の人たちがどのように「それ」と向き合っていくのかというストーリーで、「差別」や「偏見」、「人と人との距離感」という現代社会に重なる普遍的なテーマが含まれています。

少しシリアスな内容なので、小さなお子さんには難しいかもしれないですが、中学生以上であれば十分に理解し、共感していただけると思います。

主演となる「あの女」は、今回が初舞台となる我々の中でも最年少の高校生が演じるので、本人はプレッシャーを感じていると思いますが、この公演に向けて3ヶ月間、一生懸命稽古を重ねていますので、きっと観客の皆さんの心に届く演技ができると思います。現在、チケット予約を受け付けていますので、是非、お申し込みください。


-公演に向けて、どのような練習をしているのですか?-

年初にその年の公演の開催時期を決めて、だいたい公演の3ヶ月前から、公民館などの公共施設に週3回集まり、稽古をしています。稽古場では、映画でいう監督に当たる「演出」の下で、皆で意見を出し合いながら少しずつシーンをつくっていきます。先ずは、短いシーン毎に動きを確認しながら修正を重ね、一通り最後まで終わったら最初に戻り、少し長めの区切りで稽古していくという流れで、段階的に通しで演じられるようにしていっています。

演じているシーンの情景や空気感と実際の舞台上の装置や音響を想像しながら、目線や手足の動きの細部に至るまで演出が確認し、何度も修正を重ねながらリアリティを追求していきます。この作業の成否が、観客に与えられる演劇の世界への没入感に大きく影響するので、手が抜けないところです。

このため、公演が近づくにつれて稽古場の雰囲気もピリついてくるときもありますが、基本的には同じくらいの年代のメンバー同士なので、冗談を言い合いながら楽しくやっています。

12-6
演出の前で演技の確認
12-7
演出による指導

-演劇をつくっていく際に、難しいと感じるのはどのようなところですか?-

キャストとしては、同時に様々なところに意識を向けなければならないことが一番難しいところだと思います。

脚本とセリフがベースにあり、基本的には決められたことをやっていく必要がある中で、常に動いていく場面毎の全体の様子と調和した形で、動きや気持ちの入れ方などそれぞれが考えていかなければならないので、バラバラにならないよう繰り返し体に刷り込ませていかなければなりません。

演出側としては、伝えることの難しさをいつも感じています。なかなかキャストに思いが伝えられないもどかしさがある一方で、演出が指示するときに想定していた内容を超えるような演技をキャストが見せてくれる場合もあります。演出は、キャストの主体性を尊重しつつ、一つの作品として全体をまとめ上げていくという相反する作業をバランスよく行わなければなりません。このような苦労があるのに、あくまで裏方で、舞台上で直接日の目を見ることがない役割なので、報われない気持ちになることもあるんですよ(笑)

12-9
演技の確認
12-10
細かな動作の修正について意見を出し合う

12-11

各々で発声練習

-演劇の経験のない方がキャストとして舞台に上がるまでに、どのような練習が必要になりますか?-

キャストとして必要となる最も基本的なことは、声の大きさです。新団員が初心者の場合、先ずは、皆の前で腹の底から大きな声を出し、恥じらいをなくす練習を行います。次に、セリフを覚えて演技の練習に入っていくのですが、その際に、それぞれのシーンで何故そのセリフが使われているのか、何故、そのような動きをするのかという理由を問いかけ、自分なりに考えてもらうようにしています。漫然と決められたことをやるのではなく、ひとつひとつの挙動の意味を理解しながら演じることで、自信が出てきて、生き生きとした演技ができるようになってきます。

このような練習を経て、恥じらいなく自信を持って演技ができるようになれば、その後の発展的な技術については、それぞれの配役に応じて一緒に芝居を創りながら指導していきます。

仕事や学業と並行して週3回稽古を続けていくのは簡単なことではないかもしれませんが、苦労を上回るやりがいがあるので、興味がある方には是非チャレンジしていただきたいですね。


-どのようなところにやりがいを感じますか?-

付き合いで観に来た方が、公演をきっかけに演劇というジャンルに興味を持って、他の団体の演劇を含めて色々と観に行くようになったということもありましたし、過去に演劇をされていた方に「お芝居をもう1回やり直したいと思いました。」とお話いただいたこともあります。このような行動の変化とまでは行かなくても、公演後には、多くの方の笑顔や、ときには泣いてくださったりしている姿を直に見ることができます。

このように、演劇を通じて人の心を動かし、"ほんの少し、1ミリでも観る人の人生をずらすことができた"と感じるときに、苦労を上回るやりがいを覚えますね。

旭川は、演劇鑑賞の機会が少なく、特に若い世代にあまり浸透していないと感じているのですが、我々は団員の年齢層が若いこともあり、日頃演劇に触れない同世代の方に直接、生の芝居を届けることができます。

「お客様の記憶に刷り込まれる芝居創り」をモットーに、特に若い層への演劇文化の浸透を目指すというのも、私が活動を続けるモチベーションになっています。



 

 
12-12

-今後の展望をお聞かせください。-

旭川に演劇文化を浸透させるために、先ずは公演を継続していくことが重要だと思っています。公演の継続で何を狙っていくかというと、団体の認知度を上げていくというのはもちろんなのですが、地域に演劇を広めるためには多様な演劇鑑賞の機会が創られていくことが大切なので、ファンだけではなく、シベリア基地のアンチとして、我々とは違った演劇をやっていきたいという人も増やしていくということです。

そのような形で地域に劇団が増えてきたら、ゆくゆくはまさにシベリア基地の命名の由来である「道北の演劇拠点」となる演劇専門の小劇場を造りたいという夢があります。劇場を持って、公演を高頻度で開催することで、地域の方に映画のように気軽に観に来ていただけるような文化を根付かせたいですね。

わざわざ劇場を造らなくても、映像配信で多くの方にご覧いただくことができる時代かもしれませんが、映像にしてしまうと作り込みができる映画の方が、演劇よりも比較優位になります。

演劇の強みは、画面を介さず、お客様に100%の一発勝負の演技を直接伝えられるライブ感なので、状況に応じて映像の活用は考えつつも、活動の基盤として「生」で実施していくことには拘っていきたいです。

今後の公演開催等の活動については、団体のツイッターで情報発信していきます。

7月9日(土曜日)に旭川市市民活動交流センターcocodeで開催する「赤鬼」への沢山の方のご来場をお待ちするとともに、やる気のある新団員の加入希望も随時受け付けていますので、興味のある方はお気軽にご連絡ください。

まとめ

  • 高校生から30代のキャストで構成される結成から間もない若手の劇団である。
  • 未経験者に対する基礎的な演技指導も可能であり、同年代の団員の入会を受け付けている。
  • 「お客様の記憶に刷り込まれる芝居創り」をモットーに、地域への演劇文化の浸透を目指している。

団体情報

名称 演劇集団シベリア基地
住所

創作・練習の日時・頻度

市内の公共施設で、週3回(以下の時間帯に)実施。

火曜日・木曜日:19時30分~21時30分。土曜日:13時30分~16時30分

団員の募集

あり。

※高校生以下、40歳以上は要相談。

※面接と諸条件のすり合わせを行い、入団の可否を決定する。

会費 準備費として1,000円~10,000円
連絡先

shiberiakichi@gmail.com 野口代表

又は団体のツイッター

その他

  • 他の団体・サークルの記事については、以下のページにまとめています。

 「文化芸術のカタチ」‐旭川市の文化芸術に関連する団体・サークルをご紹介します。

関連記事

お問い合わせ先

旭川市教育委員会 社会教育部文化振興課

〒070-8525 旭川市7条通9丁目 総合庁舎4階
電話番号: 0166-25-7558
ファクス番号: 0166-24-7011
メールフォーム
受付時間:
午前8時45分から午後5時15分まで(土曜日・日曜日・祝日及び12月30日から1月4日までを除く)