ASAHIKAWA 100 PRIDE~企業・団体編Vol.13
北海道地図株式会社
日本を代表する地図の会社。創業70年を超え最先端技術にも全力!
始まりは官公庁の仕事。地図作りの職人技をデジタルにも
スマホの普及で地図が身近になった昨今ですが、実は日本の地図業界で大手と呼べる会社はさほど多くありません。旭川市の「北海道地図株式会社」は、日本の地図大手の一角に数えられる老舗です。
官公庁の地図製作に始まり、今やデジタル技術でも注目を集める存在。市内台場の広大な敷地にある大きくてモダンな社屋では、地図だけではなく最新技術を生かしたさまざまな業務が行われていました。
2D(平面)から3D(立体)に移り変わる中で磨いた、ハイレベルな技術力
名前は地図でも業務は広範にわたる、北海道地図株式会社。歴史と多彩な業務を小林社長に聞きました。
「会社は70年前、創業者で測量士の津田勝美が起業しました。当時は行政の計画用の地図作りがメインの業務です。旭川の都市計画や下水道の計画用地図も作りましたよ」。
当初は社名通りの業務内容。社屋の広い玄関ホールには成果物の展示があり、紙の地図や鳥瞰図、出版物はもちろん、カーナビやプロジェクションマッピング、ホログラム、ジオパークに至るまで興味深い展示物がズラリと並んでいます。特にジオパーク関連の展示が充実していますが、黎明期からジオパーク活動に参画されていたとのことで、驚きつつも納得しました。
「最初はもちろん紙の地図ですが、時代と共にデジタル化が必要になり、まず統計局の国勢調査のデータ化からデジタル業務を始めました。その流れでカーナビの開発に携わりました」。
今や標準装備といえるカーナビ。その先駆がここ旭川から生まれていたとは!
「GPS式市販タイプでは世界初(1990年)の、パイオニア様の製品を共同開発しました。既にあったジャイロ(地軸)式ナビにGPSを組み合わせて精度を上げてね。車載モニターもまだ珍しい時代でした」。
世は昭和から平成に変わる頃。その時代に手掛けたデジタル技術が会社を大きく発展させました。ホールに並ぶ美しい鳥瞰図(飛ぶ鳥の目線で見た地図)のポスターも、実はデジタル技術満載といいます。
「鳥瞰図は正確な地図データから制作されています。でも測量した数値通りではなく、多少デフォルメして見やすく作るものもあります。これが評価されて、ビスタマップ旭川がモスクワで開催された国際地図展にて最優秀賞を受賞しました」。
確かに厳密な地図とは少し違いますが、街の様子や地形がわかりやすく、とても美しいのが魅力。こうした地図のポスターやクリアファイル、全国の地図データの販売も行っています。地図を作る際にはライセンス関係が難関ですが、こちらのデータを買えば国土地理院への登録も代行してくれると好評です。
「CGなら、一つのデータで夕暮れや冬景色も簡単に作れます。時代は2Dの紙から3Dのデジタルに移ってきていますが、初めての仕事もできるだけ自分たちで作ります。システムをはじめほとんどが内製できるのが会社の強みですね」。
この積極的な姿勢が技術力の向上につながっていることは、想像に難くありません。
あまりにも広範な業務に驚きの連続
アナログとデジタル、そしてそれらを融合させた業務のほんの一端を紹介します。
印刷会社顔負けの印刷設備
紙の地図作りは、印刷も社内でやればコストが抑えられます。こちらでは道内で1台だけの「A0判印刷機」を備えており、駅の広告レベルの巨大な紙の印刷も可能。印刷職人さんが操作するアナログな作業を見ると、改めてデジタル部門とのギャップに驚かされます。
デジタルサイネージを利用した案内看板
タッチパネル式の大型デジタルサイネージは、JR仙台駅・博多駅、東京メトロ上野・浅草駅や洞爺湖ビジターセンターなどに導入されています。スマホの地図アプリのような経路検索や、多言語表示も可能。高度なデジタル技術を直感的に扱えるよう、アナログな「人間の使い勝手」を重視するのが会社の姿勢のようです。
VTuber御用達!モーションキャプチャースタジオ
3DCGのキャラクター(アバター)が、マーカー付きスーツを着た人と同じ動作をできるのがモーションキャプチャー。今人気の、CGキャラが演者として出演する「VTuber(ブイチューバー)動画」に欠かせない技術です。社内には専用スーツや何台ものカメラ、背景合成などの環境が揃った、誰でも使える時間貸しスタジオが。ここで動画制作を完結できます。
遠隔で自然なコミュニケーションができる新システム
ソニーグループと共同開発した「ジックス」。遠隔会議の課題である、スムースな会話を妨げる「音と映像の遅延」を極限までなくしました。全身が映る大きな縦型画面と相まって、遠隔コミュニケーションがより自然にでき、手元の画面を使った共同作業もラクラクです。ビジネスだけでなく離島の連絡ツールとして隠岐の島で使われているほか、医療や介護の現場からも引き合いがあるそう。
ほかにもドローンや360度カメラで地形を正確に撮影する技術や、風景と合成したCGをゴーグル内の仮想空間で操作するMR(ミックスド・リアリティ)システムなど、まだまだ紹介しきれない最先端デジタル技術がズラリ。これらは、小林社長が「この10年ほど、現実とCGを融合させた仮想空間の『デジタル・ツイン』に注力しています」と語る分野へのチャレンジです。
とはいえ、デジタル系業務は地図とかけ離れているように思えますが…
「いえいえ、全部地図の延長なんですよ。位置情報があるものは全て地図だと思ってますから(笑)。例えばモーションキャプチャーは人の動き、つまり腕や脚の位置情報をなぞって、CGキャラを動かします。これを始めたのも、防災マップを作った際、地図の中にアバターがいて案内してくれればわかりやすいなと思ったからですし」。
地図をベースに旭川や北海道の枠を軽々飛び越え、全国のさまざまなシーンで活躍。そんな活況の中で、小林社長の地元旭川への思いを聞きました。
「70年間、旭川の方にはたいへんお世話になってます。うちの社員はほとんど旭川に住んでますし、地元採用も多いです。そんな我々が旭川にどう貢献できるかと考えたとき、まずは教育だろうと。市内の学校の社会見学を受け入れて、地図の楽しさであったり、旭川の大地の成り立ち、生態系を学んでもらってます。ほかに道内の学校や島根県の隠岐の島の生徒さんも、来るものはウェルカムです(笑)。恩返しの気持ちは旭川はもちろん、日本全国に対しても抱いてますからね」。
地球を描く地図同様、全てにおいて大スケールの北海道地図株式会社。次に何が飛び出すか、興味は尽きません。
取材時の様子をYouTubeで公開中!
※画像をクリックするとYouTubeのリンクが開きます
結び
あさひばしでは、ASAHIKAWA 100 PRIDEを不定期連載しています。
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