ASAHIKAWA 100 PRIDE~逸品編Vol.10
自動車のエンブレム
上原ネームプレート工業株式会社旭川事業所
人気の国産車にも、憧れの輸入車にも。
旭川発、世界で輝く「車の顔」を作る技
ハンドル部分のエンブレムでは世界トップクラスのシェア
SUBARU(スバル)は青地に6つの星。メルセデス・ベンツ(MB)なら、1つの円を三等分したようなマーク。車に詳しくなくても、すぐ頭に浮かぶロゴはありませんか?まさに「車の顔」として輝くのが、エンブレムです。車通勤の人は無意識のうちに毎日目にしているでしょう。車好きにとっては、憧れの気持ちや所有欲をくすぐられる存在です。
フロントグリルやハンドルにあるエンブレムや、車種・グレードを示すリア部分のプレート、ホイールのセンターキャップなど、車には多くのマークが据えられています。これらを幅広く生産している企業が、北海道旭川市にあります。上原ネームプレート工業株式会社の旭川事業所。ハンドル部分のエンブレムでは世界トップクラスのシェアを誇ります。車の装飾パーツは多様化し、需要は拡大傾向とのこと。月に約180万個を出荷しています。
採用されているブランドは国内ならほとんどをカバーしています。アメリカ勢では電気自動車(EV)のテスラや高級車キャデラック、ドイツ勢はポルシェやフォルクスワーゲン(VW)、MBなど多岐にわたります。ユニークなものでは、熊本県のキャラクター「くまモン」とコラボレーションしたホンダ製二輪車の鍵のプレート、トヨタの限定車両にあしらわれた「機動戦士ガンダム」のマークも手掛けました。
シェア9割超!「スバル」エンブレムの秘密
生産に当たっては、デザインや設計から携わります。最適な素材や製法を検討し、それが定まれば、専用の金型に樹脂を流し込んで成型します。表面を金属で被覆するメッキ処理を経て、難易度の高いメッキ上の塗装まで一気通貫でできるのが強みです。
その中でコアと言えるのがメッキ加工。その技術は約70年の蓄積があり、金属を溶かした水槽に漬ける「湿式」、真空状態で化学反応を起こす「乾式」の両方に対応しています。
メッキの特許技術は複数あります。その1つが、複数の合金を組み合わて粒子を飛び出させる「スパッタリング」。高品質が要求されるVWやMBのハンドル周りのエンブレムに使われています。エアバッグ作動時も人を傷つけないよう、素材は柔らかい樹脂です。強度を保ちつつ、曲げても割れにくい門外不出の技です。
繊細な表現技術にも定評があります。同社が9割超のシェアというスバルのエンブレムでは、何度も塗装し、シルクスクリーンも施します。星が連なる複雑な造形や青色のグラデーションなど、装飾性の高いデザインをアクリル樹脂に施すため、手間を惜しみません。
人材の集めやすさ、空港の利便性も安心感に
旭川工場は徐々に拡充され、平成19年にメッキのラインが完成。最終的な品質チェックは人の目で全数検査するため、社内の認定基準をクリアした検査員の育成も進みました。メッキ加工と塗装を同一工場内でできる体制ができたことで、高い耐久性のある製品を効率的に生産できるようになりました。
自動車メーカーの関係先は関東圏に多いものの、製品は小型のため物流コストは抑えられます。旭川空港が近いため移動しやすく、航空便で納品する場合でも安定輸送できます。道北にはメーカーのテストコースが複数あり、その関係者が出張時に上原ネームプレート工業の工場を視察することも。「旭川空港の利便性や高い就航率が、メーカー側の安心や信頼につながっています」と、旭川事業所長の岩瀬弘明さんは語ります。
事業所の発展を当初から見てきた岩瀬さんは、「これからも他社が追随できない製品を作り続けたいです。激変する自動車業界のトレンドや環境対応など難問は多いものの、『世界に認められるUEHARA』として輝き続けます」と意気込みます。
取材にご協力いただいた岩瀬さんからのメッセージ
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岩瀬さん、ありがとうございました!