ASAHIKAWA 100 PRIDE~逸品編Vol.9
旭川しょうゆホルメン 株式会社米谷産業
愛されて10年。
2大ソウルフードの新・ご当地グルメ「旭川しょうゆホルメン」が誕生するまで
全国区の「旭川ラーメン」に新たな魅力
旭川は「しょうゆ」、札幌なら「みそ」、函館では「しお」――。北海道のラーメンには、地域ごとに代名詞と言える味があります。どれも奥深いものですが、今回は旭川らしさが詰まった、あるディープなラーメンの秘話をお届けします。
全国的な知名度を誇る旭川ラーメン。豚骨と魚介の「Wスープ」や、加水率の低いちぢれ麺、スープの表面を覆う「ラード(豚脂)」は広く知られていますが、2012年に登場して新風を巻き起こした「旭川しょうゆホルメン」はご存じでしょうか?
チャーシューの代わりに、ホルモン(豚の直腸)がたっぷり盛られた逸品。「ホルメンレッド」と呼ばれる、赤いどんぶりが食欲を刺激します。旭川産しょうゆと国産コラーゲンで煮込んだ直腸は、プリっとした新食感。軟らかく、噛むほどに甘みが広がります。香ばしいスープと相性抜群だからか、ホルモン独特の臭さやくどさを感じにくい特徴があります。旭川市内にラーメン店は多くあれど、提供は5店のみという希少性も魅力です。
旗振り役は、市内のラーメン店などでつくる「旭川しょうゆホルメン倶楽部」。店頭と道内外のイベントを合わせ、これまで約30万食を売り上げました。
ルーツは養豚業…2大ソウルフードがコラボ
なぜホルモンなのか。それは、旭川の食文化が深く関係しています。
旭川では捨てていた骨を活用するために豚骨スープが考案されたとされるほど、養豚業が盛んな地域でした。新鮮な内臓が手に入りやすく、食糧難の戦後から食べる習慣があり、塩ホルモンは旭川発祥と言われています。しょうゆラーメンとホルモン。この2大ソウルフードの合わせ技が、「旭川しょうゆホルメン」なのです。
誕生の種をまいたのは、この養豚業をルーツに持つ企業でした。ラードの製造などで旭川ラーメンを支えてきた食肉加工の「米谷産業」。「臭くない、甘い、軟らかい。ホルモンに特化して40年超のノウハウをフル活用しました」。米谷慈祥(よねや・よしひろ)社長がこう胸を張るホルモンが完成し、ラーメン店に声を掛けたのが、全ての始まりでした。専用に仕入れた直腸をボイル加工し、同倶楽部の5店に提供しています。
良質で豊富な水も「隠し味」に
各ラーメン店ではボイル加工されたホルモンを炒めますが、その加工の質が全体の完成度を左右します。「あえて難しいしょうゆに挑戦したかった」と米谷社長。きれいな水で時間をかけて直腸を洗い、低温でボイルするという技術を編み出したことで、臭いを抑えることに成功。コラボ実現への道筋をつくりました。甘味を感じやすい厚い直腸を厳選、スープを最後までおいしく飲めるようマッチングも重視しました。
ホルモンは鮮度が命。同社は国内外の原産地に足を運び、急速冷凍などの環境を見極めています。旭川市内の自社工場も門外不出の処理技術がありますが、旭川の自然も大きな強みだといいます。「ラーメンのスープと同じように、ホルモンを洗う上で良い水は必須。大雪山系に囲まれた旭川は絶好の環境です」と米谷社長は言います。
「長く続けるには最高のものを」
当初は「邪道だ」という声もありましたが、地道にPRを続けました。デビューから10年超。ラーメン店は個別にアレンジしたり、派生商品を展開したりと工夫を重ねてきました。米谷社長は「『新しいご当地グルメを』という思いがある仲間で、諦めずに挑戦してきました。今後は100万食を目指し、市民に愛される存在にしていきたいです」と柔らかい笑顔を浮かべます。
取材にご協力いただいた米谷さんからのメッセージ
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米谷さん、ありがとうございました!