あさひばし 令和元年6月号「特集 STOP!『外来種』」
外来種が私たちの暮らしや生態系に与える影響を考えます。
はじめに
「外来種」とは、人間の活動によって、もともといなかった国や地域に運び込まれた動植物のことをいいます。現在、日本には約2千種もの外来種が生息しています。旭川にも、上で紹介しているような様々な外来種が生息しており、農作物への被害や、住居への侵入、また、生態系への悪影響などが問題になっています。
今回は、外来種の生態や外来種が及ぼす影響と、市や市民団体が取り組んでいる対策などについて紹介します。
特定外来種と指定外来種
特定外来生物とは
外来生物法で指定する、外来種の中で生態系や人の生命・身体、農林水産業への悪影響が特に大きいもの。
指定外来種とは
北海道生物多様性保全条例で指定する、道外から持ち込まれ道内の生物多様性に著しく影響を与える、あるいはそのおそれがあるもの。
知っておこう旭川の外来種
アライグマ
原産は北アメリカ。1980年代のテレビアニメをきっかけにペットとして販売され、逃げ出したり捨てられたりした個体が自然界で繁殖。成長とともにどう猛になり、その旺盛な食欲と繁殖力、さらに、日本には天敵がいないため、生態系への影響や農作物・人的被害が大きな問題に。
捕獲年度 | 生態系被害防止 | 農業被害防止 |
---|---|---|
平成23年度 | 71匹 | 51匹 |
平成24年度 |
41匹 |
42匹 |
平成25年度 | 49匹 | 24匹 |
平成26年度 | 96匹 | 43匹 |
平成27年度 |
142匹 |
154匹 |
平成28年度 | 173匹 | 134匹 |
平成29年度 |
240匹 |
190匹 |
アライグマとエゾタヌキの見分け方
よく似ていますが、顔やしっぽなどで見分けることができます。
- アライグマの顔には眉間に黒い筋がある。
- アライグマのしっぽにはくろい縞模様がある。
ウチダザリガニ
特定外来生物
原産はアメリカ。1920年代に食糧難解決策として持ち込まれ、道内の河川等に生息が拡大。雑食性で小魚や水生昆虫などを食べてしまうため、水辺の生態系への悪影響が甚大。また、希少なニホンザリガニに対して致死率の高いペスト菌を保有しているため、同じ生息域にニホンザリガニは生息できない。
アズマヒキガエル
指定外来種
本州から持ち込まれた国内外来種。大きいもので体長10センチメートルを超え、昆虫や在来のカエルなど何でも食べてしまう。また、北海道にしか生息していないエゾアカガエルやエゾサンショウウオなどの水辺の生態系に大きな影響を及ぼし、さらに、北海道には天敵がいないため、石狩川流域から生息域を拡大している。
オオハンゴンソウ
特定外来生物
原産は北アメリカで、明治中期に観賞用に導入。野生化し、大雪山国立公園の植物にも影響が大きい。
セイヨウオオハナマルバチ
特定外来生物
ハウス栽培の授粉のために輸入。
それが外に逃げ、在来種のマルハナバチなどに悪影響を与えている。お尻が白いのが特徴。
訂正
市内全世帯に配布した本誌5ページの「セイヨウオオマルハナバチ」の写真について、誤って「エゾコマルハナバチ」の写真を掲載しました。おわびして訂正します。
「セイヨウオオマルハナバチ」の正しい写真は次のとおりです。
フランスギク
指定外来種
原産はヨーロッパで、観賞用に導入。繁殖力が強い。寒冷地の種であり北海道での影響が大きい。
外来種の増加を防ぐためにできること
外来種が増えると何が困るの?
外来種は、ペットや食用として意図的に持ち込まれた他、荷物や乗り物に交じって意図せずに持ち運ばれてきました。これらの外来種が増えることで、次のような問題が発生しています。
生態系のバランスを崩す
在来種を食べる・在来種の生息環境や餌を奪う・近い関係にある在来種と交雑して雑種をつくるなど、生態系のバランスを崩してしまいます。
農作物への被害
田畑を荒す・農作物を食べる・樹木を枯らす等の被害があります。
暮らしや人への悪影響
毒や牙等で人に危害を加える他、民家の屋根裏等に生息すると、ふん尿による家屋の損傷や悪臭の原因になります。
病気や感染症等の拡大
外来種が媒介となり、病気や感染症を拡大させるおそれがあります。
まとめ
このような被害を防ぐために、私たちができることは、外来種被害予防三原則を守ることです。
外来種被害予防三原則
入れない
もともとの生息地から、むやみに日本に入れない。
捨てない
既に飼育している外来種を、野外に捨てない・逃がさない。
拡げない
既に野外に生息している外来種を、他の地域に拡げない。
外来種についてQ&A
ご相談は環境総務課(電話25-5350)へ
Q 外来種の動物を、飼ってはいけないの?
特定外来生物を国の許可なく、飼うことはできません。また、それ以外の外来種も届出や許可が必要な場合があります。飼う前に、最期まで責任を持って飼うことができるかどうかなどを確認しましょう。また、むやみに繁殖させることは避けましょう。
Q 外来種を人にあげてもいいの?
特定外来生物は、国の許可なく人にあげたり売ったりしてはいけません。それ以外の外来種についても、許可が必要な場合があります。
Q 外来種を、自分で駆除してもいいの?
特定外来生物を許可なく、捕獲・駆除することはできません。アライグマなどを見つけたら、環境総務課へご連絡ください。
Q 特定外来生物か、それ以外の外来種なのかを知るには?
旭川市ホームページに、特定外来生物の一覧が掲載されています。また、普段から、身の回りの生き物や野生生物との関わり方について関心を持ちましょう。
ペットを飼う前にチェックしよう!
外国産のペットや観賞用の植物等が、逃げたり自然の中に捨てられたりして問題が起きています。ペットを飼う前には、次のことを確認しましょう。
- どのくらい大きくなるのか
- 成長すると、どう猛にならないか
- 最期まで、責任をもって自分で飼育できるか
旭川市の取組み
市では、市民団体や事業者等と協力し、環境や農業、生態系に被害を与える特定外来生物の捕獲や防除、生物多様性・外来種に関する知識の普及啓発活動などを行っています。
捕獲・防除活動
アライグマ
農業被害の防止を目的に平成18年度から捕獲を始めましたが、同23年度からは生物多様性の保全も目的に加えて実施し、捕獲数が増加しました。また、さらなる被害軽減のため、アライグマにGPS機能付きの首輪を装着し、行動を調査・分析することで捕獲効率の向上を目指しています。
ウチダザリガニ
市民団体と協力し、市内の河川に生息するウチダザリガニを、わなや手で捕獲する防除活動を実施している他、市民の捕獲体験などを行っています。さらに、石狩川流域におけるウチダザリガニを調査し、生息地の状況把握も行っています。
旭川ウチダザリガニ防除隊 児玉はつ枝さん「水の中の小さな生き物たちが長く生きられる川になることを目指し、10年前からボランティアで、ウチダザリガニの捕獲や調査、啓発活動を行っています。皆さんが、自然のことをもっと知ってくれるとうれしいです。」
アズマヒキガエル
市民団体と協力し、市内の公園内の池に試験的に産卵防止用のネットを掛けてアズマヒキガエルの防除活動を実施している他、市民の捕獲体験などを行っています。
知ってもらうために
生物多様性セミナー
ウチダザリガニやアズマヒキガエル、アライグマなどをテーマとしたセミナーを年に数回開催し、それぞれの生態や市の対策・独自の取組みなどを紹介。多くの人に、人と動物、外来種との関係などについて考えてもらうため、普及啓発の場として実施しています。
※開催日は本誌や旭川市ホームページでお知らせします。
ウチダザリガニ防除体験バスツアー
内容 江丹別川でウチダザリガニの防除体験、捕獲したウチダザリガニの試食、旭山動物園の飼育員による外来種についての講座
とき 6月29日(土曜日)
午前9時30分から午後2時30分まで
対象・定員 小学3~6年生と保護者 25人
【申込】6月17日(月曜日)から環境総務課(電話25-5350)
パネル展示
公民館などの施設で、アライグマやウチダザリガニなどをテーマに、パネル展示を行っています。
※開催日は本誌や旭川市ホームページでお知らせします。
【詳細】環境総務課(電話25-5350)
本来の自然のために
野生動物と人との関わり
野生動物に安易に餌を与える方がいますが、ハトやカラス、スズメ、キツネなどは、ペットではありません。厳しい自然の中で、自分の力で食料を確保して生きています。野生動物の生態を尊重し、餌を与えるのではなく、自然のままの姿を見守りましょう。
おわりに
外来種は、人間の勝手な都合で、本来は生息していない地域に連れて来られた被害者であるといえます。それと同時に、地域の中で長い年月をかけてでき上がった生態系を脅かす存在でもあります。本来の生態系は絶妙なバランスで成り立っており、このバランスが崩れ始めると、元に戻すことは非常に困難です。
市では、外来種への理解を深める取組みに加え、防除活動を行っている市民団体への協力など、今後も、様々な形で外来種対策を進めていきます。