あさひばし 平成29年5月号「特集 ものづくりとデザイン」
企業や商品の付加価値を高め、イメージアップや販売力のアップにつなげたいとき、「デザイン」が大きな力を発揮します。家具や工芸品、農産品、加工食品など様々な分野での取組みを通して、旭川におけるデザインを考えます。
デザインでさらに魅力を高める
旭川を代表するものづくりの1つ、家具製作。大雪山連峰の豊富な森林資源を背景に良質な木材の集散地である旭川では、明治20年代から家具製作が行われてきました。昭和30年代に入ると、旭川市木工芸指導所(現工芸センター)を中心に、旭川家具の魅力を高めるためデザインの重要性に着目し、高い志を持った多くの家具職人がデザインの勉強を始めました。
そして現在、旭川家具は品質の良さと優れたデザインで世界的に高い評価を得ており、その一翼を担っているのが、今年10回目を迎える国際家具デザインフェア旭川(IFDA)の開催です。
家具産業がデザイン性の追求を続ける一方、旭川の他の産業においても、デザインに対する意識が高まってきました。最近は、旭川の魅力をよく知る地元のデザイナーが、工芸品や農産品、加工食品などの旭川産品のパッケージなどのデザインを手掛けることで、その魅力をさらに高めています。
今回は、旭川の豊かな自然や高い技術力がもたらす「ものづくり」に、デザインという力で付加価値を付け、世界に発信する取組みを紹介します。
国際家具デザインフェア旭川
旭川家具のデザイン性を高め、家具産地として旭川地域を世界に発信することを目的に開催し、今年10回目を数えます。
世界の注目を集めるイベント
平成2年、旭川市開基100年記念事業の1つとしてスタートし、3年ごとに開催されるIFDA。記念すべき第10回を迎える今年は、6月21日から行われます。
第1回が開催された当時、旭川の家具業界は、婚礼家具などの製作から、時代や生活スタイルの変化に対応した家具製作への転換を目指していました。そうした状況を背景に、旭川家具のデザイン性を高め、優れた家具産地として旭川地域を世界に発信することを目的に、産学官が一体となり、未来に続く「ものづくり」のイベントとしてIFDAが始まりました。
今や、中心となる国際家具デザインコンペティション(家具デザインの競技会)は、世界の家具デザイナーの登竜門に成長。30以上の国と地域から作品が集まります。
デザインで産地の意識を変える
IFDA2017開催委員会会長の桑原義彦(くわばらよしひこ)さんは「これまでの開催には、カンディハウス創業者の亡き長原 實(ながはらみのる・旭川市の海外派遣技術研修生としてドイツで家具製作を学び、デザインの重要性を実感して、IFDA開催に尽力した)さんの功績が大きかった。長原さんは、30年(10回)は続けたいと願っていたので、今年はその節目の年でもあり、感慨深いものがあります」と話します。
30年という歳月は、社会全体が世代交代する時間であり、作り手側のデザインに対する考え方も変わっていきます。それはまさしく、「デザインをキーワードに家具産地としての旭川を変えていきたい」という長原さんの思いでもありました。
桑原さんは「世界的なコンペティションやデザインに関するイベントを、地方都市である旭川で開催していることの注目度は大きい」と力を込めます。また、ものづくりに関わる全国の学校などへIFDAの情報が伝わり、旭川に移住して、ものづくりに携わる若い世代も増えています。目標だった10回目を超え、次は2020年に11回目を開催予定。「ちょうど親世代から子供世代へと担い手が変わった。次の内容をどうしていくか、若い人たちと知恵を出し合いたい」と、桑原さんは、さらに力強い未来を思い描きます。
世界からの応募作品を旭川の優れた技術で製品化
IFDAの中心的な事業である国際家具デザインコンペティションは、世界の家具デザイナーの登竜門であるとともに、旭川家具の製作技術の向上にも大きく寄与してきました。
毎回、画像審査を通過した作品の最終審査用の試作の一部が、旭川の家具メーカーに依頼されます。各メーカーの職人たちが企業の枠を超えて知恵と技術を結集し、審査会までの短期間で試作品を完成させます。
デザインを家具として形にする工程では、美しいデザインと優れた機能を両立させるために高度な技術が要求されますが、こうした作業を通して、旭川家具の高いデザイン性と優れた技術力がさらに磨かれていきます。
また、応募作の中から、これまで50点が製品化。世界から選ばれたデザインと、旭川の職人の技術が融合してこそ完成する、上質でデザイン性の高い製品が、旭川から全国へ、そして世界へ送り出されています。
IFDAを支える旭川のデザイン力
「旭川で行われるイベントに関わるグラフィックデザインは、地元のデザイナーに」というIFDA開催委員会の考えにより、2002年から市内のデザイン会社「デザインピークス」が、IFDAのポスター、募集要項、ガイドブック、入賞・入選作品を集めた図録の制作や、入選作品展示会場のディスプレイなどを行っています。
これらのデザインは、地域から世界に発信する取組みとして高く評価され、北海道デザイン協議会が主催する北海道デザインアワード2016のグランプリを受賞。IFDAに関わるグラフィックなどのデザイン性が、北海道のデザイン界においても大きな評価を得た証しです。
IFDA2017主なイベント・関連イベント
国際家具デザインコンペティション旭川2017入賞入選作品展
内容 世界30か国・地域から応募があった683点の中から選ばれた入賞作品6点、入選作品19点を展示
日時 6月21日(水曜日)から25日(日曜日) 午前9時から午後6時まで
場所 旭川デザインセンター(永山2の10)
【詳細】IFDA開催委員会 電話0166-47-0655
旭川家具エキシビション
内容 旭川家具の47メーカー・団体が、デザイナーと共同開発した新作や、人気アイテムを展示
日時 6月21日(水曜日)から25日(日曜日) 午前9時から午後6時まで
場所 旭川デザインセンター(永山2の10)
【詳細】IFDA開催委員会 電話0166-47-0655
IFDAのあゆみ展
内容 写真や映像で、10回までの歴史を展示するとともに、「IFDA記念制作展」、「長原實が遺したもの展」を開催
日時 6月21日(水曜日)から25日(日曜日) 午前9時から午後6時まで
場所 旭川デザインセンター(永山2の10)
【詳細】IFDA開催委員会 電話0166-47-0655
旭川クラフト展2017
内容 旭川地域で、クラフトや工芸品を製作する企業と個人による作品展
日時 6月13日(火曜日)から25日(日曜日) 午前9時から午後6時まで(月曜休館)
場所 デザインギャラリー・チェアーズギャラリー(宮下通11)
【詳細】工芸センター 電話0166-66-1770
デンマーク・デザインの魅力 織田コレクションと旭川
日時 6月25日(日曜日)まで 午前9時30分から午後5時まで(入場は午後4時30分まで、月曜休館)
料金 問い合わせを
場所 道立旭川美術館(常磐公園内)
【詳細】道立旭川美術館 電話0166-25-2577
ものづくりのデザインに触れてみよう
旭川家具メーカー35社・団体の自信作やクラフトが一堂に展示される「旭川デザインセンター」。ぜひ足を運んで、旭川のものづくりが持つ高いデザイン性に触れてみませんか。
ものづくりとデザインの発信拠点
旭川家具の高度な技術やデザインは、国内外で高く評価されています。その洗練された家具デザインを一堂に見ることができるのが、今回のIFDAの会期に合わせて「旭川家具&クラフトショップ 旭川デザインセンター」として生まれ変わる旭川家具センター(永山2の10)です。リニューアルを機に、新たに家具メーカー4社が増え、計35社・団体の家具やクラフトなどの展示が一層充実します。
旭川家具工業協同組合の杉本啓維(すぎもとよしまさ)さんは「旭川地域のものづくりへのこだわりや高度な技術を知ってもらい、多くの方に暮らしの中でデザインの果たす役割を実感してほしい。センターは家具産地旭川を世界に発信する拠点でもあり、ぜひ、足を運んでいただきたいです」と来場を呼び掛けます。
商品の魅力を伝えるデザインの力
旭川には、様々な分野の高品質な地場産品があります。それらの魅力をさらに高めるために旭川のデザイン力が生かされています。
まずは手に取ってもらうために
明治45年創業の「くまだ」は、水産加工品を製造・卸販売していますが、魚の加工品「塩麹と酒粕の北海道二段仕込み」が、観光庁が主催する平成25年「世界にも通用する究極のお土産」として全国から厳選された9点に選ばれ、注目されました。創業100年の年に情熱を注いで作ったこの製品は、品質の良さとともに、斬新なパッケージデザインが目を引きます。
同社の熊田泰也(くまだやすなり)さんは「商品には自信がありましたが、手に取ってもらうためには包装が大事だと思いました。市主催のパッケージデザイン研修会で紹介されたデザイナーに依頼しました」と話します。出来上がったデザインはこれまでの水産加工品にはない斬新なもので、多くの商品が集まる展示会でも強い印象を与えました。
魅力を伝える入り口として
パッケージデザインをしたゲンママコトさんは「水産加工品に多い筆文字は使わずに和のイメージを出すこと、コストを抑えるために多くの色を使わないことを基本にデザインしました」と話します。冷蔵・冷凍に対応できるなど資材の制約などもありました。
「パッケージは商品の魅力を伝える入り口です。最も大事なのは商品その物で、くまださんの商品は強い魅力を持っていますから、やりがいがありました」と話すゲンマさん。「旭川には素晴らしい地場産品がたくさんあります。生産者を好きになってもらうことが重要なので、デザインで生産者のメッセージを表現して、素晴らしい地場産品を世の中に出すお手伝いをしたいです」と、意欲的に取り組んでいます。
旭川産品の販路拡大を支援しています
「あさひかわ産品プロモーション戦略補助金」制度では、市内の中小企業が自ら開発、改良し、旭川市内で生産、製造、加工されている製品や技術の販売促進活動(展示会やパッケージデザイン、ウェブ製作など)に必要な経費を助成します。
対象 市内の中小企業ほか
補助額 対象経費の2分の1以内
補助限度額・募集件数
- 支援企業連携枠=100万円(海外での実施は150万円)・2件程度
- 小規模事業枠=20万円・6件程度
補足 書類審査、ヒアリングがあります。詳細はあさひかわ産品プロモーション戦略補助金のページに掲載。
申込期限 5月26日(金曜日)までに産業振興課 電話0166-65-7047
デザインの力で旭川産品を全国へ、そして世界へ
旭川では、パッケージデザインなどで地場産品の付加価値を高め、世界に発信する取組みが行われています。
- 錫製酒器(アルブロ) デザイン=20パーセント
- アロニアドレッシング、ジャム(ハルカムイ) デザイン=坂井寿香(さかいひさか)さん
- 麹で造る吟醸甘酒(髙砂酒造) デザイン=あべみちこさん
- 製品カタログ(ササキ工芸) デザイン=カギカッコ
- リスのテーブル(壺屋総本店) デザイン=20パーセント
- きゅーと米(上森米穀店) デザイン=カギカッコ
デザインで旭川の魅力を発信
旭川家具のデザイン性を高め、家具産地として旭川地域を世界に発信しているIFDAは、旭川にデザインという意識を根付かせる役割を果たしています。
そして、旭川の豊かな自然と高い技術が生み出す地場産品。地元のデザイナーは、旭川のまちの魅力や生産者の思いをデザインで表現し、旭川の地場産品の魅力を高めています。
市では、これからも地場産品を全国や世界に発信する取組みを応援し、また、地場産品や旭川の魅力を広く伝えていきます。
【詳細】工芸センター 電話0166-66-1770、産業振興課 電話0166-65-7047
マイタウンあさひかわ
市の広報番組「マイタウンあさひかわ」でも旭川の産品とデザインを紹介します
放映 HBC 5月28日(日曜日) 午前6時30分から15分間
補足)番組は放送終了後、マイタウンあさひかわのページでご覧になれます。