あさひばし 平成29年4月号「動物園からの手紙」
50年のあのこと、このことを思い出して
開園50周年を迎える今年、今は、夏期開園までの完成を目指して、動物図録と開園50周年記念誌の編集、校正に追われています。
消えようとしていた名もなき地方の動物園が、全国的に知られる動物園になり、100万人以上の来園者を迎えるようになったこと。旭山動物園を目指して多くの外国人が訪れていること。
日々の連続として見ると気付きにくいことですが、私が働き始めた30年前と比べると、これが本当に同じ動物園なのかと感じてしまいます。アジアゾウ、マルミミゾウ、ローランドゴリラ、ウォンバット…今よりもずっと多くの種類の動物がいたのに、「つまらない、金食い虫」といわれ廃園の危機を迎えていたあの時代…。
餌代を工面できなくて、パン工場にパンの耳などを頂いていたこと。1万円の修繕費がなく、職員の工夫で乗り切っていたこと。野鳥の剝製をもっと臨場感のあるものにしたいと、園内の枝ぶりの良い木を切り剝製を枝に止めたら、園長室に呼ばれ、園内に2本しかない貴重な木の1本を切ったと大目玉を食らったこと。エキノコックス症の発生で風評被害が凄まじく、バーサースキー大会で開園ののぼりを持って10キロメートルを走り、春には市内の幼稚園や旭川駅前で動物の着ぐるみを着て「旭山動物園は今年も開園します!」とチラシを配ったこと。アジアゾウのアサコが倒れ、使えない体操マットがあったら下さいと小学校に片っ端から連絡をし、トラックで走り回ったこと。今思うと全てのことが今につながっているのだと気付きます。
今年は、動物園のあるべき姿を目指し、さらに一段高みに登りたいと決意しています。夢は逃げ水、常に追い付けないのは分かっています。
でも、今は未来のために。未来の今日、振り返って後悔しないために、今を積み重ねていきたいと思います。