あさひばし 平成29年2月号「動物園からの手紙」
動物の死と春に向かって始まる命
旭川は厳冬期ではありますが、動物たちには恋の季節でもあります。寒い所で生活する動物は、子育ての条件が良くなる春から初夏にかけて出産期を迎えます。ほ乳類の場合、妊娠期間から逆算すると交尾の時期が決まってきます。
動物園では、レッサーパンダや大型ネコの仲間は、今時期から本格的な恋の季節になります。昨年はアムールトラ、ユキヒョウと繁殖に成功した「もうじゅう館」。今年はアムールヒョウの繁殖に取り組んでいます。また、順調に繁殖しているレッサーパンダですが、実は昨年は、今のペアの交尾が確認できていませんでした。前のペアだと2月頃になると独特な声で鳴き合ったり、追い掛けっこをしたりして、交尾も目撃できていたのですが、今のペアは放飼場ではとてもクールな関係。しかし、今年は交尾の確認もでき、ホルモン動態なども含めた、本格的なレッサーパンダの繁殖生理の解明に取り組み始めました。
サル舎では、アビシニアコロブスの赤ちゃんも順調に成長しています。生まれたときは真っ白な赤ちゃんですが、お披露目する春には大人と同じ色合いになっているので、ぜひ見に来てください。
誕生の一方で悲しい出来事も。特にワピチのサチ(雌)の死です。サチは31歳、異例なほど長寿でした。昨年から前足の変形が顕著になり歩くのも不自由になってきて、座ったり横たわったりする時間が長くなり、床ずれができたりと老衰に伴う状態は進行していたのですが、体調は良く病気知らずでした。昨年暮れから、補助をしないと起立できなくなり、目に見えて体力が衰えてきました。1月10日の夕方近くに、眠るように死亡しました。まさに大往生でした。旭山でのワピチの飼育の歴史は終わりとなりました。
春に向かって、今年はどんな命の物語が始まるのでしょうか?キリンの結(ゆい)、カバの旭子(あさこ)も繁殖可能年齢になります。