あさひばし 平成28年2月号 動物園からの手紙
冬の剥製室に起きる怪奇現象とは...

例年、2月号の原稿を書いている時期は、来年度予算の折衝で頭を悩ませています。動物園は職員の給料も含めて、歳入と歳出がイコールになるように組まなければいけないので、大変なのです。
さて、今年度は、インドネシアやタイ、マレーシアなどからの来園者が増え、国際色がより豊かになったように感じます。ペンギンの散歩でも、聞き慣れない言語が飛び交います。暑い国が多いアジア圏の中で、冬の北海道の魅力は計り知れないものがあると思います。寒さと雪をどう感じてもらうのかを、しっかりと見据えなければいけませんね。
そういえば、冬になると毎年起きる怪奇現象があります。動物資料展示館の剥製室にハエが湧くのです。たぶん秋に侵入したハエが産んだ卵が、ふ化して成長し、蛹になり成虫になるのです。日中はほんの少し暖房をたいているので、真冬に目覚めるのかもしれません。剥製は中身がなく、皮は薬品処理をされています。ハエは夏場に大量発生することがあるので、剥製室ごと殺虫剤で薫煙しているのに。そもそも水分なんてほとんどないはずなのに。すごいもんです。昔、肉がハエになると信じられていたことが分かるような気がします。ハエも季節ごとに発生する種類が違うので、ちゃんと調べなければ勝負になりませんね。
もう1つあります。剥製室のレイアウトは飼育スタッフでつくったのですが、20数年前に、枝ぶりがまさに最適だと僕が切ってきた木があって、その木にも何かがすんでいます。毎年とても細かい木くずが至る所にたまっています。いまだに正体が分かりません。
今のところ剥製は維持できていますが、このままではいつか駄目になりかねません。薬剤など安易な方法だけではなく、根本的な対策を講じなければと考えています。まずは、元となるハエの侵入の確率を限りなくゼロにすることから始めなければと、目覚めた年の初めでした。
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