Q&A(放射線治療について)

最終更新日 2016年2月24日

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中央放射線科

放射線治療について

放射線治療機器の写真

放射線治療(R/T)とはどのような治療法?

「がん治療の3本柱」

  1. 手術
  2. 化学療法
  3. 放射線治療

「目的」

  1. 「根治的照射」
  2. 「緩和的照射」
  3. 「術前照射」「術後照射」
  4. 「予防的照射」
  • X-PやCT等 放射線を用いて画像診断をする
  • 放射線治療 放射線を用いて主にがん治療を行う
  • 外照射 体の外から放射線を照射
  • 内部照射 小さな線源を病巣付近に入れて体の中から照射
  • 放射線の「細胞分裂を止める作用」により腫瘍を縮小させます。
  • 放射線治療の特徴は「切らずに治すこと」です。

手術をすれば傷跡が残り身体の形や機能が損なわれるような場合でも、放射線治療が適応になれば、切らずにがんを治療することが可能です。
体への負担が少なく、高齢の方や合併症があって手術が難しい方でも治療できることが多いのです。

  • R/T radiation therapy(ラジエーションセラピー)

リニアックって何?

リニアックとは放射線治療装置のことで、正しい名称は直線加速器(Linear Accelerator リニア アクセレレーター)といいます。
放射線治療はこの装置の名称からリニアック治療とも呼ばれています。
一般に、装置から発生する高エネルギーX線や電子線を用いて治療します。
以前はコバルト60も用いられていましたが、エネルギー不足や精密な照射を行なえないなどの理由から、最近では使用されません。

放射線治療の適応は?

適応疾患

脳腫瘍・頭頸部がん(咽頭・喉頭・舌など)・肺がん・食道がん・乳がん・子宮頸がん。
膀胱がん・前立腺がん・造血器のがん(白血病・悪性リンパ腫・など)・骨、軟部腫瘍。


通常、対象は一部の良性腫瘍(ケロイド・血管腫など)と、ほぼ全ての悪性腫瘍です。
また、外科手術・化学療法・ホルモン療法などと組み合わせた「治療の一環」として利用される場合も多くあります。

がんの種類や進行レベルによっては、手術成績と同等の結果が期待できます。骨髄移植のための全身照射などもあります。
治癒を目指せる癌は、

  1. 放射線感受性の高いもの
  2. 腫瘍サイズの小さいもの
  3. 早期癌など

また治癒が望めなくても、症状緩和を目的とした照射では、全てのがんが対象となります。

ピンポイント照射って?

技術の進歩で、より効果的にかつ正常組織への影響を少なくするために、5から10方向からがん病巣を狙い撃ちすることが可能になりました。
正確には「定位放射線治療」といいます。この方法は腫瘍が比較的小さく、その治療範囲だけにとどまっていることが重要で、脳腫瘍・早期肺癌などが対象になります。

放射線を照射すると熱い?

放射線治療は照射すること自体には、熱さや痛みはありません。
しかし照射回数が増えるにしたがって、照射部位の粘膜炎や皮膚炎などが起こることがあり、それらの症状が強い場合には痛みが伴います。
重度の有害事象は少なくなりましたが、さらに抗がん剤を利用した場合などでは、それらの有害事象が強く出ることが予測されます。
有害事象(副作用)は一時的なものが多く、治療が終了して10日から2週間程度で軽減していく場合がほとんどですが、まれに半年から数年後に発生する晩期の有害事象もあります。

具体的な有害事象は?

  • 「全身的な有害事象」照射部位に関係なく生じる可能性がある

易疲労感、食欲不振、骨髄抑制による白血球減少など(特に化学療法併用の場合)

  • 「急性期の局所的な有害事象」主に炎症が原因となる

皮膚炎、頭蓋内圧亢進症状(頭痛・嘔気など)、脱毛、口腔・咽頭粘膜炎、唾液分泌減少による口内乾燥、味覚低下、食道炎、放射線肺炎、胃・十二指腸炎、下痢、膀胱炎など

  • 「晩期の有害事象」耐容線量以上の大量の照射がされた場合に発症のリスクがある

皮膚・血管・組織の繊維化や硬化による難治性の出血、機能低下、骨髄炎、脊髄炎など

放射線治療は髪が抜ける?

脱毛についての質問がよくありますが、頭部など毛の生えた部分へ照射した場合は一時的にその部位の脱毛が起こりますが、それ以外の部位には影響ありません。
放射線治療はほとんどが局所療法なので、その作用も副作用も基本的には照射された部位だけに生じます。
抗がん剤と併用した時の脱毛のイメージが強いようで、誤解されている方が多いようです。

放射線治療は通院でも受けられる?

装置の技術的な進歩により、多くの疾患で外来通院治療が可能となりました
治療時間 1回につき1から2分
照射室に入って位置をあわせる時間を含めても10分程度

  • メリット

大体普段通りの生活を続けられる。
内容によっては仕事を継続しながらでも治療をうけられる。

  • デメリット

期間が長い場合(週4から5回で2ヵ月程)もあり、通院が大変。
自宅では対処しずらい有害事象もある。

  • 症状により、途中から入院での治療に変更した方が良い場合もあります。
  • 化学療法との併用などでは、身体への負担が大きくなるため、初めから入院が必要となることもあります。

トピックス

当院でも採用になりました!
骨転移が多発している場合は、ストロンチウムという放射性医薬品を注射して除痛治療する方法があります。
当院でも今年からストロンチウム(薬品名 メタストロン)が採用となりました。
ストロンチウムはカルシウムとよく似た代謝を示すため、転移した骨に多く取り込まれて、骨内から放射線を出してがん細胞に影響を与え、痛みを軽減させる仕組みです。

メモ

がん治療ではがん細胞を死滅(または抑制)させる効果を狙います。そのため治療に使用する放射線は、画像診断に使用する放射線よりも強力で高エネルギーなものとなります。
放射線はがん細胞だけでなくその周囲の正常で健康な細胞にも作用します。ではどうしてがん細胞だけが死滅するのでしょうか。
細胞の放射線感受性は、活発に分裂している細胞ほど高くなるという特性があります。一般的にがん細胞は細胞分裂がさかんであり、最終的に自身を修復する能力をもちません。放射線を繰り返し照射することで、細胞分裂が活発ながん細胞はより強く損傷を受け、細胞分裂する能力をなくしてゆき、やがて死滅します。一方で健康な細胞は損傷を受けても、ある程度は自らを修復する機能をもつため時間の経過とともに回復します。こういった両者の特性をうまく利用したのが放射線治療です。