教育行政方針
令和7年度教育行政方針
はじめに
旭川市教育行政方針を申し上げます。
最初に、令和6年9月に、旭川市いじめ問題再調査委員会から市長へ提出されたいじめの重大事態に関わる報告書においていただいた厳しい御指摘を教育委員会として大変重く受け止めるとともに、未来ある命を救うことができなかったことへの責任の重さを改めて痛切に感じております。亡くなられた廣瀬爽彩さんと御遺族に深くお詫び申し上げるとともに、心から哀悼の意を表します。いじめ防止対策を最重要課題として、これまで様々な取組を進めてまいりましたが、再調査報告書でいただいた提言を十分に踏まえ、市長部局と一体的な取組による旭川モデルを一層推進するとともに、学校でのいじめ防止対策の充実に取り組み、本市の児童生徒が安心して学び、生活できる教育環境の整備を進めてまいります。
さて、情報技術やグローバル化、人口減少や少子高齢化が進展する中、大きな社会の変化に対応していくためには、一人一人が未知の場面や状況にあっても、自ら課題を発見し、自分の強みや他者との協働を基に、課題解決に向けて主体的に行動していく力が求められます。
教育委員会といたしましては、旭川市教育大綱の基本方針であります「主体的に学び力強く未来を拓く人づくり」の実現を目指し、関係機関等との連携を図りながら、教育行政を推進してまいります。
以下、学校教育、社会教育の順に、教育行政推進の重点的な取組について申し上げます。
基本的な考え(学校教育)
はじめに学校教育についてであります。
子どもたちが、ふるさと旭川への愛着と誇りを持ち、それぞれの夢や目標の実現に向けて、力強く未来へとはばたくことができるよう、社会の変化に対応し自立して生きていく力を育むとともに、安全で安心な教育環境の整備と学校・家庭・地域の連携・協働を推進してまいります。
令和7年度におきましては、「第2期旭川市学校教育基本計画」に基づき、3つの重点的な取組を進めてまいります。
子どもたちに未来を生き抜く力を育む
重点的な取組の1つ目は、「子どもたちに未来を生き抜く力を育む」であります。
確かな学力の育成に向けましては、各学校において、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実し、「主体的・対話的で深い学びの実現」を図る授業改善が一層進められるよう、文部科学省の指定事業等におけるICT活用等の好事例の普及や、授業力の向上に資する教職員研修の充実を図ってまいります。
また、全国学力・学習状況調査結果における児童生徒の実態を踏まえた指導の改善策やタブレットを使った授業実践のポイントをまとめた指導資料について、学校訪問を通じて活用の促進を図ってまいります。
英語教育につきましては、各学校にALT及び小学校外国語活動サポーターを派遣するほか、長期休業中の児童生徒向けイングリッシュ・チャレンジ教室を実施し、児童生徒の英語によるコミュニケーション能力を育成するとともに、ALTを講師とした教職員向け研修会を開催し、英語力及び指導力の向上を図ってまいります。
いじめ防止対策につきましては、旭川市いじめ防止対策推進条例や旭川市いじめ防止基本方針に基づく施策に加え、動画教材等を活用した情報モラル教育の一層の充実など、再調査結果を踏まえた再発防止対策を推進してまいります。
いじめ対策に係る研修や学校訪問の実施、いじめ対策コーディネーターによる指導助言や、新たに市内の中学校2校に兼務配置する(仮称)いじめ対策官による支援のほか、スクールカウンセラーの配置や派遣による相談体制の充実を通じて、いじめの積極的かつ幅広い認知や迅速な対処について、組織的な対応を徹底してまいります。
また、関係機関や団体と連携した人権教育の実施や生活・学習Actサミットの開催を通じた児童生徒の主体的な活動の支援など、いじめの未然防止に向けた取組を推進してまいります。
不登校への対応につきましては、児童生徒の多様な学びの場の確保に向け、教育支援センター「ゆっくらす」における、対面やICTを活用した遠隔による支援を継続するほか、学校において自分のクラスに入りにくい児童生徒が落ちついて学習できる環境として整備する校内教育支援センターのモデル校を新たに指定して支援員を配置してまいります。
また、スクールカウンセラーとの面談のほか、教職員による教育相談や家庭訪問を実施するなど、不登校児童生徒の社会的自立に向けた支援を引き続き進めてまいります。
健やかな体の育成につきましては、児童生徒の実態を踏まえた体育・保健体育の授業改善や年間を通した運動機会の確保に向け、北海道教育委員会の事業を活用した訪問指導や教職員研修を実施し、児童生徒の体力向上を図ってまいります。
学校給食につきましては、安全、安心の確保が重要であることから、給食調理施設の適正な維持管理や職員研修の実施を通じて、衛生管理と安全管理を徹底するとともに、給食調理体制の長期的な安定化を図るため、東旭川学校給食センターの調理業務の委託化に取り組んでまいります。
学校給食費につきましては、令和5年度に一食当たりの単価を引き上げ、その上昇分をこれまで支援してまいりましたが、令和7年度においても、食料品価格の上昇などにより、再び単価を引き上げざるを得ないことから、家計への負担を考慮し、令和5年度の上昇分を保護者に負担いただき、令和7年度の上昇分について引き続き支援をしてまいります。
また、農政部との連携の下、旭川産有機米を提供する日を設けることで、地産地消、地域の食文化などについて学ぶ食育の取組を充実してまいります。
自分の夢の実現を図るキャリア教育や、ふるさと旭川のよさを生かした教育の充実に向けましては、本市の多様な教育資源を活用した体験活動や取組が進められるよう、地域人材や施設のリストを拡充してまいります。
特別支援教育につきましては、増加傾向が続いている特別な支援が必要な児童生徒の教育的ニーズにきめ細かに対応するため、専門員による助言や研修により教員の専門性の一層の向上に努めるとともに、医療的ケアを含めた児童生徒の支援体制の充実を図るなど、インクルーシブ教育システム構築の取組を進めてまいります。
子どもたちの学びの環境を整える
重点的な取組の2つ目は、「子どもたちの学びの環境を整える」であります。
冷房設備の整備につきましては、昨今の記録的な猛暑を受け、児童生徒の命と健康を守るため、令和9年度までに、市内全ての小中学校73校の普通教室及び職員室に対し、エアコン整備が完了するよう引き続き取り組んでまいります。
学校の増改築につきましては、令和8年度からの供用開始に向け、豊岡小学校体育館の工事を継続してまいります。
耐震化につきましては、令和7年度末までに、全ての校舎及び体育館等構造部の工事が完了することから、今後は体育館のバスケットゴールの落下防止対策や、窓ガラスの飛散防止措置等の非構造部材の耐震化について、令和12年度までの整備完了を目指してまいります。
「ゼロカーボンシティ旭川」の実現に向けた取組につきましては、小中学校の照明器具をLED化し、児童生徒の学習環境向上を図るとともに、消費電力を削減してまいります。
また、不審者の学校敷地内への侵入を未然に防止し、児童生徒の安全を確保するため、令和7年度中の全小中学校への整備完了を目指し、順次防犯カメラの設置を進めてまいります。
小中学校の適正配置につきましては、児童生徒のより良い教育環境を整えるため、「旭川市立小・中学校適正配置計画」に基づき、保護者や地域住民の理解を得ながら、学校の統合や通学区域の見直しに取り組んでまいります。
就学援助につきましては、関係部局と連携し、各種制度や相談窓口を周知するなど、支援制度活用に当たっての保護者負担の軽減ときめ細かな情報提供に努めてまいります。
国のGIGAスクール構想により整備された1人1台端末が令和3年4月に使用を開始してから約4年を経過したことから、最新の機器により、情報活用能力を身に着け、主体的に学び、多様な人々と協働して課題を解決しようとする子どもの育成に資するため、着実にその更新を進めてまいります。
子どもたちをともに育て豊かな学びをつくる
重点的な取組の3つ目は、「子どもたちをともに育て豊かな学びをつくる」であります。
コミュニティ・スクールにつきましては、中学校区単位での連携や地域学校協働活動との一体的な推進を着実に進めてまいります。
中学校の部活動につきましては、教職員の負担軽減に向け、単独指導が可能な部活動指導員の配置拡充を図るとともに、休日における地域クラブ活動への移行に向け、市長部局、学校及び競技団体と連携した取組を進めてまいります。
教職員が心身ともに充実した状態で、「働きやすさ」と「働きがい」を両立し、日々活き活きと児童生徒と接することができる環境の整備に向け、保護者や地域の理解と協力を得ながら、「旭川市立小中学校働き方改革推進プラン」に基づく取組を推進してまいります。
また、教育課題が多様化している中で、それぞれの教職員のキャリアステージに応じた研修を計画的かつ効果的に実施するとともに、研修履歴を活用した受講奨励を行うことにより、教職員の資質能力の育成・向上を図ってまいります。
教職員の服務規律の保持につきましては、学校教育に対する信頼を損なうことのないよう、強い危機意識を持って、教職員一人一人に教育公務員としての自覚を促す指導を徹底し、不祥事の根絶に取り組んでまいります。
基本的な考え(社会教育)
次に社会教育についてであります。
「生涯を通じた学びの振興」、「個性豊かな文化の振興」の着実な実施を目指し、市民の主体的な学習活動と学習成果の地域への還元の促進、学習環境の整備・充実、様々な文化芸術活動への支援、郷土の文化に触れる機会の創出に取り組んでまいります。
令和7年度におきましては、旭川市社会教育基本計画に基づき、5つの重点的な取組を進めてまいります。
市民一人一人の主体的な学びの機会の充実
重点的な取組の1つ目は、「市民一人一人の主体的な学びの機会の充実」であります。
社会的な課題や多様なニーズに対応した学習機会、学習情報の提供につきましては、社会教育施設において児童生徒向けの体験学習やイベントの充実に努めるほか、公民館でのデジタルデバイド解消を目的としたスマートフォン講座など、ICTを活用した事業を実施してまいります。
ジオパーク構想の推進につきましては、構想地域で活躍する各種ガイドや学校関係者など様々な方と連携し、貴重な地域資源を活用した講座やツアーを開催することで、教育や観光振興につながる取組の充実を図ってまいります。
開館20周年を迎える科学館におきましては、「特撮」をテーマに、「ゴジラ」をはじめとする実際の作品で使用された道具や資料、旭川を題材にした巨大ジオラマを展示する特別展を開催し、科学への興味関心を高め、楽しく学ぶ機会を提供してまいります。
市民の学びを支える環境の整備
重点的な取組の2つ目は、「市民の学びを支える環境の整備」であります。
市民文化会館の建替えによる整備につきましては、令和6年度に引き続き、施設整備内容の具体的な検討を行う基本計画検討会の開催や関係団体への聞き取りを行うなど、基本計画の策定に向けた取組を進めてまいります。
中央図書館におきましては、旭川市子ども読書活動推進計画に基づき、全ての子どもが自ら読書に親しむことができる環境づくりを進めるとともに、インターネットを活用した自主的な学習活動を支援するため、読書室のWi-Fi環境の整備に取り組んでまいります。
地域における学びの循環
重点的な取組の3つ目は、「地域における学びの循環」であります。
シニア大学におきましては、学生が社会の担い手として学習成果を地域に還元できるよう、地域共生社会の実現に向けたカリキュラムの充実を図ってまいります。
生涯学習フェアまなびピアあさひかわにつきましては、生涯学習に取り組む市民団体等による実行委員会が自ら企画・運営することで、地域社会を担う意識を醸成するとともに、日頃の活動の成果を地域に還元する機会として開催いたします。
地域学校協働活動につきましては、モデル地域の主体的な活動を促進するとともに、コーディネーターを配置できた中学校区を新たなモデル地域に設定し、地域と学校の更なる連携・協働体制の整備を進めてまいります。
市民の心を豊かにする文化芸術活動の充実
重点的な取組の4つ目は、「市民の心を豊かにする文化芸術活動の充実」であります。
旭川ミュージックウィークでは、昨年に引き続き、空港で結ぶ友好都市提携を締結した豊中市ゆかりの演奏者を招へいするほか、市民文化会館及び大雪クリスタルホールにおきましては、多くの市民が優れた舞台公演を鑑賞できるよう自主文化事業を実施いたします。
文化芸術団体等への支援につきましては、演奏会や展覧会などを実施する団体に対し経費の一部を補助するとともに、市民ギャラリーやリハーサルホールの運営を継続し、 文化芸術活動の場の確保に努めてまいります。
文学資料館につきましては、長年にわたり同館を運営している旭川文学資料友の会が発足25周年を迎えることから、文学資料館収蔵資料図録の発行などの記念事業を支援し、情報発信を充実させてまいります。
彫刻美術館におきましては、第44回中原悌二郎賞を実施し、優れた彫刻作品の鑑賞機会の充実を図るなど、彫刻のまちとしての魅力の発信に努めてまいります。
郷土文化の保存・活用と郷土愛の育成
重点的な取組の5つ目は、「郷土文化の保存・活用と郷土愛の育成」であります。
博物館におきましては、まちのあゆみを写真で振り返る企画展や、あさひかわ菓子博の開催に合わせ、菓子作りの文化に触れる企画展を開催し、郷土の歴史や文化への関心を高める機会を提供してまいります。
アイヌ文化の保存と伝承につきましては、令和7年度から第2期計画となる旭川市アイヌ施策推進地域計画に基づき、アイヌ文化の森「伝承のコタン」に再現展示しているアイヌの人々の伝統的な住居「チセ」の補修や博物館におけるアイヌ文化関連講座の充実などに取り組んでまいります。
また、あさひかわ菓子博の来場者を対象として博物館や川村カ子トアイヌ記念館などを巡るスタンプラリーを実施するとともに、菓子博のオープニング式典でアイヌ古式舞踊を披露することで、アイヌ文化関連施設への来館の促進を図ってまいります。
優佳良織の技術の伝承と普及促進につきましては、技術伝承者の養成と市民や観光客向けの機織体験事業への支援を継続してまいります。
むすび
以上、教育行政推進の重点的な取組について申し上げました。
めまぐるしく変わっていく現代社会において、教育が果たす役割はますます大きくなっております。新しい知識、考え方、手法を取り入れ取組を更新していくことが求められる一方で、時代を超えても変わることのない普遍的な価値があることを疎かにしてはならないものと考えます。
教育委員会は、このことを踏まえ、市長部局や地域社会との連携の下、児童生徒や市民が旭川市に愛着をもち、心豊かに幸せを感じながら暮らしていくことができるよう学校教育部と社会教育部が両輪となり、本市の教育の発展に向け全力で取り組んでまいります。
市民並びに議員の皆様の一層の御支援と御協力をお願い申し上げ、教育行政方針といたします。