あさひばし 平成28年11月号「動物園からの手紙」
秋の風物詩と、仮住まい中のニホンザル
不安定な気候が続いていますが、太陽が出ると、暖かい建物の壁にはアキアカネやノシメトンボいわゆるアカトンボ、多分オオクロバエ、カメムシの仲間、テントウムシがたくさん引っ付いています。この中で厄介者の筆頭はカメムシの仲間。どこからか建物内に侵入し長靴や上着の中などに入り込んでいて、ちょっと刺激するともう大変。次にオオクロバエ。体が大きく動きが鈍いので存在感があり、いきなり机の上にぼたっと落ちてきたりします。どうやって室内に侵入するのか観察すると、気温が低い日に、人の服にひっそりと止まり、室内に入ってくるのです。どこか憎めないやつらです。「オオカミの森」の岩に止まる無数のアカトンボと共に、僕の中では秋の風物詩です。トドノネオオワタムシ(雪虫)も現れました。もうすぐ冬です。
ニホンザルのさる山の改築も順調に進んでいます。ニホンザルは60頭を超える大所帯ですが、旧総合動物舎のライオン・トラ舎で実に快適そうに生活しています。発情期を迎えるこの時期、狭いので群れの状態が不安定になるのではとの懸念もあったのですが、とても安定しています。
改めて彼らを観察すると、どちらかの放飼場でちょっとした追い掛け合いが始まると、追われた方はトンネルを抜けて別の放飼場に逃げます。追う方も相手がトンネルに入ると見えなくなるので深追いはしません。時間がたつと頭に上った血が冷めて、次に出合ったときには何事もなかったようになります。
また、檻なので天井にぶら下がることができたり、成獣には無理でも、4・5歳ぐらいの若い個体なら腰掛けられる隙間があったりと、狭いけれど利用できる体積は広いのです。自分の居場所を確保できていることが、落ち着きにつながっていると思われます。
こうして気付いたことを、改築にも反映させなければと、アイデアの具体化を協議する日々が続きます。