あさひばし 平成28年7月号「特集 アイヌ文化に触れて感じる」

情報発信元 広報広聴課

最終更新日 2016年7月15日

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チノミシリカムイノミの写真5月28日、嵐山で「チノミシリカムイノミ」が行われました。1年の無事を感謝し、幸せを願って祈りを捧げる儀式です。執り行ったのは、旭川アイヌ協議会、旭川チカップニアイヌ民族文化保存会、ピリカウレシカの会の皆さん。アイヌ文化に関心を持つ市民や大学生、高校生も参加しました。

嵐山は、アイヌ民族が「チノミシリ」(チ=私たち、ノミ=祈る、シリ=土地・山)と呼ぶ神聖な場所。現在は、アイヌ民族の住居「チセ」などを復元した「アイヌ文化の森 伝承のコタン」があり、かつてのアイヌの暮らしを垣間見ることができます。

旭川には他にも、アイヌ民族の歴史や文化が息づく場所がたくさんあり、自然と一体となって暮らしていたアイヌの文化に関心を寄せる人たちも増えています。

今回は、アイヌ文化を発信する人たちや、興味を持って学ぶ人たち、歴史や文化の伝承を担う人たちの思いを紹介します。

時を超えて、現代に発信されるアイヌ文化

伝統を尊び、チノミシリカムイノミのような儀式を継承する一方で、新しい感覚でアイヌの音楽やアートを発信する人たちがいます。

伝承されてきた歌声を 新たな感性で自由に楽しく

マレウレウの写真
マレウレウとは「チョウ」のこと。左から
マユンキキさん、ヒサエさん、レクポさん

アイヌ民族の伝統歌ウポポを歌い継ぐ「マレウレウ」は、ウコウク(輪唱)が特徴の女性ボーカルグループで、国内外で精力的に公演を行っています。

アイヌの伝統弦楽器・トンコリの奏者で世界的に活躍するOKIさんのライブに出演したり、作曲家の大友良英さんのプロデュースで、NHK Eテレのアニメ「オトナの一休さん」の歌を担当するなど、活動の幅を広げています。

リーダーで旭川出身のレクポさんは「アイヌ記念館の敷地内に住んでいたので、子供の頃からアイヌの踊りや歌を見たり聞いたりして育ってきて、あんなステージで踊ってみたいな歌ってみたいなと憧れていました。全国で公演をしますが、アイヌ文化にあまりなじみがないお客さんの反応がとてもいいです。アイヌの音楽という先入観を持たずに、1つの音楽として聞いてほしいです」と話します。

レクポさんの妹のマユンキキさんは「伝承のためではなく、純粋にかっこいいと思い、ウポポを歌い始めました。残っているウポポの音源は、どれも年を取った人の声です。伝統を受け継ぎつつも、無理に音源に近づけようとせず、今の若い歌声で、自分たちらしく表現したいです」と話します。

アイヌ文化を知ることは、自分の故郷を知ること

瀬川拓郎さんの写真
博物館館長の瀬川拓郎さん

「新しいアイヌ文化が生まれつつあると感じています。伝統的な文化を守っていく一方で、伝統に新しいものを付け加える人たちも出てきています」と話すのは、アイヌ研究者として知られる博物館館長の瀬川拓郎さん。博物館は充実したアイヌ関連の資料を展示・収蔵しており、全国からも多くの人が訪れています。

瀬川さんは「博物館だけでなく、旭川には、アイヌの伝説に彩られた豊かな自然、アイヌの人々が刻んできた歴史を学び、文化をより深く理解できる施設や、伝えようとする活動があります。こうした環境があるのですから、ぜひアイヌ文化に触れて学び、歴史を知ってほしいです。それは自分の故郷の歴史を知ることでもあるのですから」と話します。

漫画で楽しみながら触れる

マンガ大賞2016の大賞を受賞した『ゴールデンカムイ』をはじめ、アイヌ民族が登場する漫画が注目されています。

ゴールデンカムイ2巻の表紙
『ゴールデンカムイ』
(©野田サトル/週刊ヤング
ジャンプ・集英社)
エシカルンテ1巻の表紙

『エシカルンテ』
(森 和美/講談社)

イ シカリ神うねる河1巻の表紙
『イ シカリ神うねる河』
(横山孝雄/汐文社)

※品切れ中。
図書館で貸出し可。

触れて、学んで理解する

次に紹介する場所の他、「アイヌ文化情報コーナー」(旭川駅構内)でも、アイヌの歴史や文化を紹介しています。

アイヌ文化情報コーナーの詳細はこちら

知里幸恵生誕祭~その昔、美しいアイヌ語が響いていた場所で

知里幸恵文学碑に花をたむける生徒の写真
アイヌ伝統舞踊を習う生徒の写真
上川アイヌの長・クーツンクレの碑に祈るアイヌ民族の写真

北門中学校郷土資料室の写真
北門中学校郷土資料室

見学希望の方は事前に連絡を。

初めてユカラ(口承文学)を文字で表した『アイヌ神謡集』を、19歳でまとめた知里幸恵。かつて幸恵の家があった北門中学校校庭に建つ文学碑の前で、毎年6月8日、生誕祭「銀の滴降る日」が開催され、アイヌ語を後世に残すという幸恵の願いを思い、祈ります。

知里幸恵文学碑・北門中学校郷土資料室(北門中学校 錦町15 電話51-1431)

幸恵さんは誇りです

川上香奈さんの写真
川上香奈美さん

北門中学校3年生の川上香奈美さんは「幸恵さんが書き、大正12年に出版された本が、今も読み継がれているのはすごいと思います。19歳で亡くなったのは悲しいですが、今も私たちの誇りです」と話します。

アイヌ文化の森 伝承のコタン~聖なる山に祈りを捧げコタンの暮らしに思いをはせる

アイヌの輪踊りの様子
アイヌの住居「チセ」の写真
上川アイヌの長・クーツンクレの碑に祈るアイヌ民族の写真

「アイヌ文化の森 伝承のコタン」には、アイヌ民族の住居などを復元。上川アイヌの長・クーツンクレや木彫熊の祖・松井梅太郎の碑もあります。嵐山公園センターでは、アイヌ民族の植物利用を展示。

アイヌ文化の森 伝承のコタン(鷹栖町字近文9線西4号 電話55-9779)

アイヌ文化の森 伝承のコタンの詳細はこちら

北海道だからこそ

山 脩斗さんの写真
山 脩斗さん

旭川大学1年生の山 脩斗さんは、「自然と調和し歩んできたアイヌの生き方に興味を持ちました。アイヌの歴史や文化を知ることは、北海道に暮らす人間として大事なことだと思います」と話します。

実際に体験して

龍谷高校郷土部の写真
旭川龍谷高校郷土部

旭川龍谷高校2年生で郷土部の石崎華央さん(写真前列、右から2番目)は、「まちのすぐ近くに、アイヌ民族の伝統を伝える場所があることに感動します。実際に儀式を体験して、嵐山が神聖な山であることを実感しました」と話します。

刺繍・サラニプ講座~個性的で美しい手仕事を伝承する

アイヌ文様の入った刺繍の作品の写真
サラニプ(かご)とチタラペ(敷物)の写真
チタラペ(敷物)織りを習う受講生の写真

アイヌ民族の生活用具や儀礼具などの資料を展示している市民生活館では、アイヌの伝統的な刺繍や、サラニプ(かご)、チタラペ(敷物)を作る講座を開講。人気の講座で、長く続ける受講生もいます。

市民生活館(緑町15 電話52-8866)

市民生活館のページはこちら

受講生に引き継いで

小河原憲子さん
小河原憲子さん

刺繍を教える小河原憲子さんは、「母や祖母の刺繍を見て育ちましたが、今ではアイヌ女性でも伝統的な刺繍ができる人は少ないです。ここの受講生にぜひ引き継いでほしいです」と話します。

旭川に来たからには

楢木野睦美さん
楢木野睦美さん

サラニプを学ぶ楢木野睦美さんは「3年前に大阪から旭川に移り住みました。旭川では、ぜひアイヌ文化を学びたいと思っていたので受講しています。自然と共生してきた生き方に敬意を払いたいです」と話します。

アイヌ語講座~アイヌ語を通して北海道を学ぶ

アイヌ語講座の様子

博物館のアイヌ語講座では、歴史や文化を交えながらアイヌ語を学びます。毎月第2・4木曜日の午後2時~4時、毎回10人以上が熱心に受講しています。

博物館(神楽3の7 電話69-2004)

博物館のページはこちら

1人でも多くの人に

太田満さん
太田 満さん

アイヌ語を教える太田 満さんは、「アイヌ民族でも若い世代はアイヌ語を話せない人が多いです。言葉は、話せる人が亡くなれば失われてしまう。1人でも多くの人に教えたいです」と話します。

豊かな世界が広がる

広谷和文さん
広谷和文さん

アイヌ語を学ぶ広谷和文さんは、「北海道では、日本語が話される前から各地域でアイヌ語が響いていたのです。アイヌ語を学ぶことで世界が広がり、自分が豊かになる気がします」と話します。

知ってほしい、近文アイヌの歴史

今年、開館100周年を迎えた「川村カ子トアイヌ記念館」について、副館長の川村久恵さんに話を聞きました。

アイヌの歴史と文化を伝える

川村久恵さん

アイヌ記念館副館長の
川村久恵さん

アイヌ記念館は、大正5年にアイヌ文化を正しく理解してもらうことを目的に始めました。当時の記念館周辺は、知里幸恵さんの『アイヌ神謡集』の序文に描かれている様子そのものでした。

100年で環境は一変し、この辺りで当時の面影を残すものはアイヌ記念館しかありません。私財で運営してきたアイヌ記念館は、旭川の観光や文化の振興にも寄与してきました。様々な理解者や協力者のおかげで、記念館を続けてこられたことに感謝します。

生活様式や自然環境の変化によりアイヌ文化の伝承は難しくなっています。言葉を大切にしてきたアイヌが言葉を失い、物を作るのに必要な材料の調達も難しい状況です。アイヌというと、昔の知恵や文化について聞かれることが多く、近現代や現状に目を向けられることは少ないと思います。アイヌは、アイヌの発展を願った先祖の思いを胸に、アイヌ文化の伝承に努めています。音楽や漫画をきっかけに、歴史や現状にも目を向けてもらえるとうれしいです。

今後は、市民の皆さんが気軽に来て憩えるカフェスペースを設けるなど、アイヌ記念館を、アイヌ文化をもっと身近に感じてもらえる空間にしたいと思っています。

川村カ子トアイヌ記念館

川村カネトアイヌ記念館の外観写真

川村カ子トアイヌ記念館(北門町11 電話51-2461)では、「ぴりかうれしか(心豊かなくらし)」をテーマに、開館100周年記念事業を開催。詳細は同館にお問い合わせください。

開館100周年記念事業

記念式典

内容 カムイノミ(神への祈り)、ウポポ(古式舞踊)、講演「記念館と近文アイヌ」ほか

日時 8月6日(土曜日)午後1時~5時

場所 同館

定員 100人

料金 入館料が必要

申込 同館

ぴりかうれしかアート展

内容 彫刻、絵画、布アートの展示

日時 8月6日(土曜日)~31日(水曜日)

場所 同館

料金 入館料が必要

ぴりかロマンティックツアー~近文アイヌゆかりの地とパワースポットを巡る

内容 知里幸恵文学碑、旭岡墓地(アイヌ墓地)などを講師の解説を聞きながら見学

日時 8月7日(日曜日) 午前8時30分~午後5時

定員 50人(小学生以下は保護者同伴)

料金 1,000円

申込 同館

大友良英さんとマレウレウによる音楽ワークショップ

日時 8月8日(月曜日) 午後1時~3時

場所 同館

定員 30人

料金 1,000円

申込 同館

シンポジウム「ぴりかうれしかな観光」

内容 新しい観光の在り方を考える

日時 8月9日(火曜日) 午後3時30分~5時30分

場所 旭川トーヨーホテル(7の7)

申込 同館

ぴりかうれしか歴史講座

内容・日時

  • 遺跡から見た上川アイヌの歴史=7月24日(日曜日)
  • 近文アイヌの近代史=8月14日(日曜日)
  • 口承文芸の心の世界=8月28日(日曜日)

午後1時30分~3時30分

場所 同館

定員 100人

料金 入館料が必要

申込 同館

アイヌ語入門講座(全20回)

日時 1回目は7月29日(金曜日) 午後7時~9時

場所・申込 同館


知里幸恵はアイヌ民族について「その昔、この広い北海道は私たちの先祖の自由の天地でありました。天真爛漫な稚児のように、大自然に抱擁されてのんびりと楽しく生活していた彼らは真に自然の寵児、なんという幸福な人たちであったでしょう」と書いています。

自然を敬うアイヌ民族の暮らしや文化は、今を生きる私たちが忘れつつあることを教えてくれるでしょう。

【詳細】博物館 電話69-2004


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電話番号: 0166-25-5370
ファクス番号: 0166-24-7833
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