アイヌ文化振興基本計画 参考資料

情報発信元 文化振興課

最終更新日 2016年2月24日

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参考資料

  1. 北海道旧土人保護法
  2. 旭川市旧土人保護地処分法
  3. アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律
  4. アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律案に対する附帯決議
  5. アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策に関する基本方針

資料1 - 北海道旧土人保護法

明治三十二年法律第二十七号

第一条 北海道旧土人ニシテ農業ニ従事スル者又ハ従事セムト欲スル者ニハ一戸ニ付土地一万五千坪以内ヲ限リ無償下付スルコトヲ得

第二条 前条ニ依リ下付シタル土地ノ所有権ハ左ノ制限ニ従フヘキモノトス

一 相続ニ因ルノ外譲渡スルコトヲ得ス

二 質権抵当権地上権又ハ永小作権ヲ設定スルコトヲ得ス

三 北海道庁長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ地役権ヲ設定スルコトヲ得ス

四 留置権先取得権ノ目的トナルコトナシ前条ニ依リ下付シタル土地ハ下付ノ年ヨリ起算シテ三十箇年ノ後ニ非サレハ地租及地方税ヲ課セス又登録税ヲ徴収セス
旧土人ニ於テ従前ヨリ所有シタル土地ハ北海道庁長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ相続ニ因ルノ外之ヲ譲渡シ又ハ第一項第二及第三ニ掲ケタル物権ヲ設定スルコトヲ得ス

第三条 第一条ニ依リ下付シタル土地ニシテ其ノ下付ノ年ヨリ起算シ十五箇年ヲ経ルモ尚開墾セサル部分ハ之ヲ没収ス

第四条 北海道旧土人ニシテ貧困ナル者ニハ農具及種子ヲ給スルコトヲ得

第五条 北海道旧土人ニシテ疾病ニ罹リ自費治療スルコト能ハサル者ニハ薬価ヲ給スルコトヲ得

第六条 北海道旧土人ニシテ疾病、不具、老衰又ハ幼少ノ為自活スルコト能ハサル者ハ従来ノ成規ニ依リ救助スルノ外仍之ヲ救助シ救助中死亡シタルトキハ埋葬料ヲ給スルコトヲ得

第七条 北海道旧土人ノ貧困ナル者ノ子弟ニシテ就学スル者ニハ授業料ヲ給スルコトヲ得

第八条 第四条乃至第七条ニ要スル費用ハ北海道旧土人共有財産ノ収益ヲ以テ之ニ 充ツ若シ不足アルトキハ国庫ヨリ之ヲ支出ス

第九条 北海道旧土人ノ部落ヲ為シタル場所ニハ国庫ノ費用ヲ以テ小学校ヲ設クルコトヲ得

第十条 北海道庁長官ハ北海道旧土人共有財産ヲ管理スルコトヲ得北海道庁長官ハ内務大臣ノ認可ヲ経テ共有者ノ利益ノ為ニ共有財産ノ処分ヲ為シ又必要ト認ムルトキハ其ノ分割ヲ拒ムコトヲ得北海道庁長官ノ管理スル共有財産ハ北海道庁長官之ヲ指定ス

第十一条 北海道庁長官ハ北海道旧土人保護ニ関シテ警察令ヲ発シ之ニ二円以上二十五円以下ノ罰金若ハ十一日以上二十五日以下ノ禁錮ノ罰則ヲ附スルコトヲ得

附則(省略)

(補足)北海道旧土人保護法は、大正8年(1919)、昭和12年(1937)・21年(1946)・22年(1947)・43年(1968)に一部改正が行われました。この条文は制定時のものです。

資料2 -旭川市旧土人保護地処分法

昭和九年法律第九号

第一条 北海道庁長官ハ旧土人保護ノ目的ヲ以テ旭川市ニ貸付シタル同市所在ノ土地ヲ内務大臣大蔵大臣ノ認可ヲ経テ特別ノ縁故アル旧土人ニ単独有財産又ハ共有財産トシテ無償下付スルコトヲ得

第二条 北海道旧土人保護法第二条第一項ノ規定ハ前条ノ規定ニ依リ下付シタル土地ニ付之ヲ準用ス

第三条 第一条ノ規定ニ依ル土地所有権ノ取得ニ関シテハ登録税ヲ課セズ又地方税ヲ課スルコトヲ得ズ

附則(省略)

資料3 - アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律

平成九年五月十四日法律第五十二号

目的

第一条 この法律は、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統等」という。)が置かれている状況にかんがみ、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発(以下「アイヌ文化の振興等」という。)を図るための施策を推進することにより、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、あわせて我が国の多様な文化の発展に寄与することを目的とする。

定義

第二条 この法律において「アイヌ文化」とは、アイヌ語並びにアイヌにおいて継承されてきた音楽、舞踊、工芸その他の文化的所産及びこれから発展した文化的所産をいう。

国及び地方公共団体の責務

第三条 国は、アイヌ文化を継承する者の育成、アイヌの伝統等に関する広報活動の充実、アイヌ文化の振興等に資する調査研究の推進その他アイヌ文化の振興等を図るための施策を推進するよう努めるとともに、地方公共団体が実施するアイヌ文化の振興等を図るための施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

2 地方公共団体は、当該区域の社会的条件に応じ、アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に努めなければならない。

施策における配慮

第四条 国及び地方公共団体は、アイヌ文化の振興等を図るための施策を実施するに当たっては、アイヌの人々の自発的意思及び民族としての誇りを尊重するよう配慮するものとする。

基本方針

第五条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、アイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針においては、次の事項について定めるものとする。

一 アイヌ文化の振興等に関する基本的な事項

二 アイヌ文化の振興を図るための施策に関する事項

三 アイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策に関する事項

四 アイヌ文化の振興等に資する調査研究に関する事項

五 アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に際し配慮すべき重要事項

3 国土交通大臣及び文部科学大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、次条第一項に規定する関係都道府県の意見を聴かなければならない。

4 国土交通大臣及び文部科学大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、次条第一項に規定する関係都道府県に送付しなければならない。

基本計画

第六条 その区域内の社会的条件に照らしてアイヌ文化の振興等を図るための施策を総合的に実施することが相当であると認められる政令で定める都道府県(以下「関係都道府県」という。)は、基本方針に即して、関係都道府県におけるアイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本計画(以下「基本計画」という。)を定めるものとする。

2 基本計画においては、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 アイヌ文化の振興等に関する基本的な方針

二 アイヌ文化の振興を図るための施策の実施内容に関する事項

三 アイヌの伝統等に関する住民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策の実施内容に関する事項

四 その他アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に際し配慮すべき重要事項

3 関係都道府県は、基本計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを国土交通大臣及び文部科学大臣に提出するとともに、公表しなければならない。

4 国土交通大臣及び文部科学大臣は、基本計画の作成及び円滑な実施の促進のため、関係都道府県に対し必要な助言、勧告及び情報の提供を行うよう努めなければならない。

指定等

第七条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、アイヌ文化の振興等を目的として設立された民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定による法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一に限り、同条に規定する業務を行う者として指定することができる。

2 国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者(以下「指定法人」という。)の名称、住所及び事務所の所在地を公示しなければならない。

3 指定法人は、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を国土交通大臣及び文部科学大臣に届け出なければならない。

4 国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。

業務

第八条 指定法人は、次に掲げる業務を行うものとする。

一 アイヌ文化を継承する者の育成その他のアイヌ文化の振興に関する業務を行うこと。

二 アイヌの伝統等に関する広報活動その他の普及啓発を行うこと。

三 アイヌ文化の振興等に資する調査研究を行うこと。

四 アイヌ文化の振興、アイヌの伝統等に関する普及啓発又はアイヌ文化の振興等に資する調査研究を行う者に対して、助言、助成その他の援助を行うこと。

五 前各号に掲げるもののほか、アイヌ文化の振興等を図るために必要な業務を行うこと。

事業計画等

第九条 指定法人は、毎事業年度、国土交通省令・文部科学省令で定めるところにより、事業計画書及び収支予算書を作成し、国土交通大臣及び文部科学大臣に提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 前項の事業計画書は、基本方針の内容に即して定めなければならない。

3 指定法人は、国土交通省令・文部科学省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書及び収支決算書を作成し、国土交通大臣及び文部科学大臣に提出しなければならない。

報告の徴収及び立入検査

第十条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、この法律の施行に必要な限度において 、指定法人に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、指定法人の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

改善命令

第十一条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、指定法人の第八条に規定する業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、指定法人に対し、その改善に必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

指定の取消し等

第十二条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、指定法人が前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。

2 国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。

罰則

第十三条 第十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者は、二十万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して同項の刑を科する。

附則(抄)

施行期日

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

北海道旧土人保護法等の廃止

第二条 次に掲げる法律は、廃止する。

一 北海道旧土人保護法(明治三十二年法律第二十七号)

二 旭川市旧土人保護地処分法(昭和九年法律第九号)

北海道旧土人保護法の廃止に伴う経過措置

第三条 北海道知事は、この法律の施行の際現に前条の規定による廃止前の北海道旧土人保護法(次項において「旧保護法」という。)第十条第一項の規定により管理する北海道旧土人共有財産(以下「共有財産」という。)が、次項から第四項までの規定の定めるところにより共有者に返還され、又は第五項の規定により指定法人若しくは北海道に帰属するまでの間、これを管理するものとする。

2 北海道知事は、共有財産を共有者に返還するため、旧保護法第十条第三項の規定により指定された共有財産ごとに、厚生労働省令で定める事項を官報で公告しなければならない。

3 共有財産の共有者は、前項の規定による公告の日から起算して一年以内に、北海道知事に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該共有財産の返還を請求することができる。

4 北海道知事は、前項に規定する期間の満了後でなければ、共有財産をその共有者に対し、返還してはならない。ただし、当該期間の満了前であっても、当該共有財産の共有者のすべてが同項の規定による請求をした場合には、この限りでない。

5 第三項に規定する期間内に共有財産の共有者が同項の規定による請求をしなかったときは、当該共有財産は、指定法人(同項に規定する期間が満了した時に、第七条第一項の規定による指定がされていない場合にあっては、北海道)に帰属する。

6 前項の規定により共有財産が指定法人に帰属したときは、その法人は、当該帰属した財産をアイヌ文化の振興等のための業務に要する費用に充てるものとする。

資料4 -アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律案に対する附帯決議

[衆議院・参議院内閣委員会]

政府は、アイヌの人々が置かれてきた歴史的、社会的事情にかんがみ、アイヌ文化の振興等に関し、より一層国民の理解を得るため、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

一 アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現に資するため、アイヌ文化の振興等の施策の推進に当たっては、アイヌの人々の自主性を尊重し、その意向が十分反映されるよう努めること。

一 アイヌの人々の民族としての誇りの尊重と我が国の多様な生活文化の発展を図るため、アイヌ文化の振興に対しては、今後とも一層の支援措置を講ずること。

一 アイヌの人々の人権の擁護と啓発に関しては、「人種差別撤廃条約」の批准、「人権教育のための国連十年」等の趣旨を尊重し、所要の施策を講ずるよう努めること。

一 アイヌの人々の「先住性」は、歴史的事実であり、この事実も含め、アイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発の推進に努めること。

一 現在、行われている北海道ウタリ福祉対策に対する支援の充実に、今後とも一層努めること。

資料5 -アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策に関する基本方針

平成九年九月十八日総理府告示第二十五号

アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(平成九年法律第五十二号)第五条第一項の規定に基づき、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策に関する基本方針を定めたので、同条第四項の規定に基づき、公表する。

一 アイヌ文化の振興等に関する基本的な事項

1 アイヌ文化の振興等の必要性

アイヌの人々は、少なくとも中世末期以降の歴史の中では、当時の「和人」との関係において北海道に先住していたと考えられており、独自の伝統を有し、日本語とは異なる言語系統のアイヌ語や独自の風俗習慣をはじめとする固有の文化を発展させてきた民族である。

アイヌの伝統及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統等」という。)は、アイヌの人々の民族としての誇りの源泉であり、歴史的遺産として貴重であるにとどまらず、これを現代に生かし、発展させることは、我が国の文化の多様さ、豊かさの証しとなるものであり、特に自然とかかわりの中で育まれた豊かな知恵は、広く世界の人々が共有する財産となるものである。

しかし、歴史的には、松前藩による支配、明治以降我が国が近代国家としてスタートし、「北海道開拓」を進める中でのいわゆる同化政策などにより、アイヌの人々の社会や文化は決定的な打撃を受け、今日では、十分な保存、伝承が図られているとは言い難い状況にある。特に、アイヌ語を解し、アイヌの伝統等を担う人々の高齢化が進展し、これらを次の世代に継承していく上での重要な基盤が失われつつある。

一方で、国民一般の間では、アイヌの人々が長い歴史の中で民族としての独自の伝統や文化を培い、現在に至るまで伝えていることについて、十分な理解が得られていない状況にある。

アイヌの人々の民族としての誇りの源泉となっているアイヌの伝統等が置かれている以上のような状況を踏まえると、アイヌ語その他のアイヌ文化の振興を図る施策並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策を推進することにより、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を目指すことが必要である。また、このことは我が国の多様な文化の発展にも寄与するものである。

2 基本方針の役割

この基本方針は、以上のような基本認識の下に、今後アイヌ文化の振興等を図るために必要な基本的な施策を定めるものであり、国、地方公共団体、法第七条第一項の規定により指定を受けた法人(以下「指定法人」という。)が施策を講ずるに当たっての共通の指針となるべきものである。

二 アイヌ文化の振興を図るための施策事項

1 基本的方向

アイヌ文化は、自然とのかかわりの深い文化であり、イオマンテに象徴される儀礼等の特徴、アイヌ文様に示される独自の芸術性、ユーカラを始めとする口承伝承の数々、さらには独自の言語であるアイヌ語の存在などが主要な要素として挙げられる。

これらのアイヌ文化は、アイヌの人々の民族としての誇りの源泉であり、アイヌ語その他のアイヌ文化の振興は、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会を実現する上で極めて重要であり、国、地方公共団体及び指定法人が、各々の役割に応じ、幅広く取り組んでいくことが必要である。

2 推進方法

地方公共団体においては、アイヌの人々の居住の状況等当該地域の社会的条件に応じて、アイヌ語その他のアイヌ文化の振興のために必要な施策の実施に努める必要がある。特に法第六条第一項の規定により政令で定められた都道府県(以下「関係都道府県」という。)にあっては、基本計画を策定することによって、計画的にアイヌ語教室、アイヌ文化の鑑賞会の開催その他の当該区域内におけるアイヌ文化の振興を図るために必要な施策を実施することが必要である。

指定法人においては、アイヌ語については、アイヌ語の指導者の育成のための講座の開設等アイヌ語を継承するための事業を実施するとともに、その他のアイヌ文化の振興についても、各種の展覧会の開催やアイヌ文化に対する表彰等を通じて、アイヌの伝統的な文化にとどまらず、アイヌの伝統的な文化をもとに発展した創作芸術を含め、アイヌ文化の振興を図るために必要な施策を実施することが必要である。

国においては、地方公共団体が実施する施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずるよう努め、また、指定法人が進める活動に対する助成等の適切な支援を行うことが必要である。

三 アイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策に関する事項

1 基本的方向

アイヌの人々が長い歴史の中で培い、伝えてきたアイヌの伝統等について、国民一人一人が理解を深めることは、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会を実現する上で極めて重要であり、国、地方公共団体及び指定法人が、各々の役割に応じ、一に記載した基本的事項を踏まえ、幅広くアイヌの伝統等に関する知識を国民に対して普及啓発していく必要がある。

2 推進方法

国においては、各種の広報活動の充実を通じて、アイヌの伝統等に関する国民の理解を深めるとともに、地方公共団体が実施する施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずるよう努め、また、指定法人が進める活動に対する助成等の適切な支援を行うことが必要である。

地方公共団体においては、アイヌの人々の居住の状況等当該地域の社会的条件に応じて、当該地域における住民への広報活動等当該区域内におけるアイヌに関する知識の普及及び啓発を図るために必要な施策の実施に努める必要がある。特に、関係都道府県にあっては、基本計画を策定することによって、計画的に広報活動、啓発資料の作成その他の当該区域内におけるアイヌに関する知識の普及及び啓発を図るために必要な施策を実施することが必要である。

指定法人においては、アイヌの歴史や文化等を紹介したリーフレット及び小・中学校向けの副読本の作成、インターネットによるアイヌ文化等に関する情報の提供、北海道外に居住するアイヌの人々の文化活動等の拠点となるとともに国民一般がアイヌの伝統や文化等に触れる交流の拠点となる場の設置等を通じてアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発を行うことが必要である。

四 アイヌ文化の振興等に資する調査研究に関する事項

1 基本的方向

上述のとおりアイヌの伝統等については、歴史的経緯の中で失われたものも多く、十分な保存、伝承が図られているとは言い難い状況にあることから、アイヌ文化の振興等を図る上で、施策の基礎となる調査研究を推進する必要がある。特に、アイヌの伝統等に関する研究は、民族学、法律学、社会学、考古学、歴史学、言語学等と多岐にわたっており、また、研究成果を施策に適切に反映させる必要があることから、アイヌの伝統等についての施策の基礎となる総合的かつ実践的な研究を推進し、その充実を図ることが必要である。

2 推進方法

指定法人においては、アイヌ文化の振興等の基盤となる総合的、実践的な調査研究の実施や研究者への助成を行うとともに、出版物の作成経費を助成する等により、研究成果の公開を促進するように努めることが必要である。国においては、指定法人が進める活動に対する助成等の適切な支援を行うことが必必要である。

なお、指定法人が研究を推進するに当たっては、大学等においてアイヌに関して研究を行っている者との連携を図りつつ進めることが必要であるとともに、将来的には、我が国におけるアイヌの伝統等に関する総合的かつ実践的な研究の拠点となる研究体制を整備することも重要である。

五 アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に際し配慮すべき重要事項

1 アイヌの人々の自発的意思及び民族としての誇りに対する配慮

今日においては、アイヌの人々一人一人は様々な生活を選択しているという状況があることから、国、地方公共団体及び指定法人がアイヌ文化の振興等を図るための施策を実施するに当たっては、これらの者を本人の意思にかかわらず、一律に施策の対象とすることは避け、アイヌの人々の自発的意思を尊重するよう配慮することが必要である。

また、国、地方公共団体及び指定法人がアイヌ文化の振興等を図るための施策を実施するに当たっては、その民族としての誇りを尊重するよう配慮することが必要である。

2 国、地方公共団体及び指定法人の連携

アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図るためには、国、地方公共団体及び指定法人が各々の立場で必要な施策を実施することが重要である。このため、国、地方公共団体及び指定法人はアイヌ文化の振興等を図るための施策を推進するに当たっては、必要な連携を図ることが望ましい。

特に関係都道府県は、基本計画に基づき総合的に施策を実施するものであることから、施策の実施に当たっては、国と密接な連携を図るとともに、指定法人を効果的に活用することが望ましい。

3 関連施策との連携

アイヌ文化の振興等を円滑に推進するためには、法に基づく各施策を所掌する北海道開発庁及び文部省は、必要に応じて関係行政機関と適切に連携することが望ましい。

アイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発は、国等が人権擁護活動として実施するアイヌに係る啓発活動とその内容上関連性が深いものであることから、国、地方公共団体及び指定法人がアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発を実施するに当たっては、人権擁護機関と密接な連携を図り、効果的に実施することが望ましい。


アイヌ文化振興基本計画(目次)

  1. はじめに
  2. 推進する施策
  3. アイヌ文化の歴史と現在
  4. 関係年表
  5. 参考資料
  6. 基本計画策定までの取り組み
  7. アイヌ語表記について

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