旭山にゅーす・ぶろぐ

【しいくのぶろぐ】一覧

このページでは「しいくのぶろぐ」の記事のみを掲載しています。

「しいくのぶろぐ」飼育展示スタッフによる日々の出来事や想いなどを綴ったブログです。

2023年5月のしいくのぶろぐの記事

ヒグマかヒグマ以外か

 なかなか話す機会もないので、ここでは「えぞひぐま館」で飼育しているオジロワシと魚たちについて。

 まずは入り口横にいるオジロワシ。
 元々は数年前まであざらし館で飼育されていた2羽。2羽とも事故で翼をケガして飛べなくなった個体で、ここ数年はバックヤードで飼育されていましたが、ヒグマとの繋がりもあり、産卵したこともあったので新居で心機一転繁殖を目指していました。
 相性も悪くなさそうだったので期待していましたが、ちょうど繁殖期の最中の3月にメスが起立不能になり死亡してしまいました。動物園に来たのが40年程前でその当時で成鳥だったそうなので大往生だったと思いますが、産卵していたこともあったので繁殖の機会を提供できなかったのが心残りです。
 現在はオスが1羽だけの展示になってしまいましたが、えぞひぐま館のウェルカム役としてお客さんをお出迎えしています。

オジロワシ


 次に川魚(イトウ、ヤマメ、イワナ、オショロコマ、ニジマス、ウグイ)たち。
 昨年のオープン時にも魚はいたのですが、できたばかりの建物なのでコンクリートの灰汁が出きっていなかったようで5月に大雨が降った際に一時全滅してしまってました。その後ようやく水が安定し、それ以降は飼育している魚が死亡してしまうことはほぼありませんでした。本当はヒグマが魚を自由に捕まえたりしている様子も観察できればと考えていましたが、魚が早すぎるのか、とんこは早々に諦めてしまったので最初15-20cmほどだった魚もすくすくと成長して40cm前後のビッグフィッシュになりました。大きくなった分、皆さんからは見つけやすくなったかもしれません。
 ニジマスの勢力がすごかったので今年の春には、ニジマスを少し減らして在来のヤマメやオショロコマを少し増やしています。また懸案事項だったガラスの白濁も閉園期間に試行錯誤しながらなんとか取ることができたのでヒグマも魚も観察しやすくなったと思います。

ニジマス


 最後にひっそりと出口で飼育しているサケ。
 昨年12月に卵から展示を開始し、孵化、仔魚、稚魚へと順調に成鳥していきました。ほっきょくぐま館で、すでにサケの2年魚を展示していますが、えぞひぐま館ではえぞひぐま館の小川の水を利用し飼育をしており、ゆくゆくはその小川に放流したいと考えています。まずは淡水のまま、どこまで飼育できるのか見極めていければと考えています。

サケ


 長くなりましたが、これから暖かくなってきて野外で活動される機会も増えてくると思います。そういった際には事前に出かける場所のヒグマの出没情報などをしっかりとチェックし、十分にヒグマに注意した上で活動していただきたいと思います。ゴミを放置したり、写真や動画を撮影しようと近づくなどヒグマとヒトとの距離感を近づけてしまうような行動はしないようにしましょう。
 良い季節をお過ごしください。


えぞひぐま館・フクロウ担当:大内章広

トナカイの繁殖

 夏期開園となりゴールデンウィークも過ぎました。トナカイの生息する寒い地域にも春が来て、トナカイの食べる草花がたくさん生えてくるこの時期、5月から6月はトナカイの出産の時期になります。子供が元気に成長するために食べ物が豊富なこの時期に産むんですね。

 トナカイの出産の時期ということで、今回はトナカイの繁殖に注目してみたいと思います。

 トナカイは、雄1頭と数頭の雌が交尾をするハーレムという群れを作ります。9月下旬から11月上旬が繁殖期で、雄同士が雌をめぐって争い興奮状態が続きます。この時期は、近づくと危険なので飼育員も同じ空間に入らないようにしています。妊娠期間は230日前後で5月から6月に1頭出産します。子供は生まれて数分で立ち上がることができ、2-3日後には大人と同じように移動できるようになるため、いつ敵が来てもすぐに逃げることができます。

 旭山動物園では2019年の出産を最後にトナカイの出産がありませんでしたが、2021年に釧路動物園から雌個体(麻生)を導入し雄個体(デナリ)と同居させることで、昨年度は繁殖を試みました。導入後の繁殖期にはデナリが麻生に近付く様子は観察できましたが、交尾の瞬間を見ることはできませんでした。しかし、1日中観察できるわけではないので担当者が見ていない間に交尾していた可能性はあります。

 期待を持ちながら担当者は麻生の様子の観察を続けています。トナカイは妊娠していてもお腹の大きさがあまり変化しないため、妊娠を外見から確認することが難しいのですが毎日観察していると少しずつお腹が大きくなっているように思います。期待の目を持って見ているからかもしれませんが...。

 お腹の中の胎児が動けば胎動が見られる可能性もあるので、ぜひトナカイ舎を訪れた際には麻生のお腹をじっくり観察してみてください。
 麻生が妊娠していれば、1か月後くらいにはトナカイの子供が見られるかもしれません!

トナカイ

デナリと麻生

トナカイ担当・獣医師:篠原明

祝・2023年度 開園!

 いや~始まりましたね。2023年度、夏期開園です!
 旭山動物園には4月の約3週間、閉園期間があります。「じゃあ飼育係もその期間はのんびりできるのかな」と思ったあなた!とんでもない!!
 GWの新年度開園に向けて、3週間休日なしで作業に明け暮れる「地獄の4月」なのです。
 そして開園すると、各担当者が命を削って作った手書き看板や、動物用の遊具など、苦労の証をご覧いただけます。

 かく言う私も、新たな展示看板を作りましたよ!
 それは・・・こちらです↓↓


1
じゃじゃーん!!「アフリカ水槽 顔出し看板」!!
 

 アフリカ水槽は、楽しい中にも「すべての生物には生態系における役割がある」という深いメッセージがあります。それが伝わるように、誰もが耳にしたことがあるフレーズをタイトルに用いたり工夫を凝らしています。外国人観光客にも楽しんでいただけるよう英語表記も入れてみました。
「ぼくらはみんな自然の一員なんだ」をweb翻訳すると「We are all one of nature」となりました。これで通じると良いのですが・・・

 自分でも試し撮りしてみました。
 

2

ウガンデンシスオオツノカナブン

3
イベリアトゲイモリ

4
マダガスカルゴキブリ

5
アフリカオオヤスデ
 

 どうです?なかなか良いデキでしょう。シーマンっぽいですね。仮面ライダーの敵「地獄大使」にも似てる。(え?どっちも知らないって?)

 本来はおじさんが真顔で撮るよりもお子さんなどに喜んでいただければ、と考えて作りました。看板の高さも低く設計しています。
「でも、誰も記念撮影してくれなかったら寂しいな・・・」
そんな不安は全くの杞憂でした!
 いざ開園してみると、お子さんを撮影する親御さん、はたまたカップルがお互いに写真を撮りあったりと人気スポットになっていました。閉園中の苦労が報われて感激です。
 今年も熱いフリカ水槽。「あさひやまといえば、ぺんぎん館と、あざらし館と、アフリカ水槽だよね!」そう言っていただける日を夢見て、今年もがんばります!


(ホッキョクグマ・アフリカ水槽担当:大西 敏文)