旭山にゅーす・ぶろぐ

【しいくのぶろぐ】一覧

このページでは「しいくのぶろぐ」の記事のみを掲載しています。

「しいくのぶろぐ」飼育展示スタッフによる日々の出来事や想いなどを綴ったブログです。

2022年10月のしいくのぶろぐの記事

カイコの学校、開校(カイコう)まもなく1周年

 去年のある夏の日のことです。

 「そうだ、こども牧場でカイコの展示をしよう!」

 もちろんただの思いつきではありません。なぜこども牧場でカイコなのかというと、理由は2つあります。

 1つ目はカイコ(家蚕)が家畜であるということ。こども牧場はウサギやヤギなどの家畜・ペット種を飼育しています。カイコ(家蚕)は移動能力が低く、幼虫はほとんど移動せず、成虫は羽があるのに飛べません。人の手がないと生きていけない動物、いわば究極の家畜なのです。

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 2つ目は学びの機会が平等にあるといいな、と思ったこと。本州などの一部の学校では授業でカイコの飼育をすることがあるそうですが、旭川の学校に通っていた私は存在もあまり知りませんでした。野生にいないので、機会がないとなかなか見ることができないカイコを、多くの人に見ていただきたいと思いました。

こうして始まったカイコ飼育計画。入手方法や飼育方法を調べ、去年の12月になんとか飼育展示を開始することが出来ました。

 飼育する中でも困ったことがいくつかありました。特に困ったのは温湿度の管理です。カイコは温湿度の管理がとても重要で、温度は25度以上、湿度が70%ほど必要です。しかも風通しは良くなければいけません。しかし、冬のこども牧場は20度ほどしかありませんでした。そこで、網とアクリル板で作った専用の飼育ケースを準備し、ヒーターや加湿器で温湿度をなんとか保てるようにしました。

 そしてまもなく、飼育開始から1年が経ちます。現在3代目のカイコが繭を作っているところです。展示を始めてみて、たくさんのことを学びました。例えば、カイコの繭は1本の糸で出来ていること。交尾後、人の手でオスとメスを離さなければいけないこと。思った以上にカイコが繊細な動物であること。学んだことを上げ始めたらきりがありません。

 1番の収穫は思っていたよりも多くの方がカイコに興味を持ってくださったということです。

 明治時代、日本は諸外国と対等になるために製糸業に力を入れ、たくさんのカイコが飼育されていました。そんな日本の発展に一役買っていたカイコについて、これからも多くの方に興味を持ってもらえるよう、飼育展示に取り組みたいと考えています。

 まだまだ私自身分からないことも多くあるので、皆さんと一緒に勉強していきたいです。もし詳しい方がいらっしゃいましたら是非教えて下さい!

カイコ展示場

こども牧場での展示の様子

枝まぶし

枝蔟に作った繭

こども牧場担当:泉こはる

タンチョウのコウセイ

 秋を迎えて旭山も紅葉が進んでいますが、北海道で最も高い山、標高2291mの旭岳では10月5日初冠雪となり着実に冬の訪れの足音が聞こえてくるようなそんな毎日を過ごし一年の時のはやさを実感しています。

 さて、タンチョウの雄のコウセイは3月に釧路市からやってきて半年がたち初めて旭山で冬を過ごすことになります。

 コウセイは雌のノモ子が6月に亡くなりさみしくなりましたが食欲もあり元気です。食べ物は雑食性で、旭山では、ホッケ・ワカサギ・シシャモ・オキアミ・トウモロコシにペレットなど与えています。自らミミズや昆虫類など時にはネズミまで食べることもあります。冬は氷も口にします。

 私が餌をもってコウセイにもっていくと本来なら、なわばりもあるので威嚇してくるのですがコウセイは落ち着かずフェンス超しに逃げまわります。そして私がいなくなると餌を食べ始めます。

 コウセイは2017年、標茶町で他のタンチョウと争い喧嘩してしまい左羽翼は半分骨折して無い状態です。その影響で将来、空を飛ぶのもほぼできないので私に対してもおびえてしまっているのでしょうか?しかし、保護され獣医さんに手当され命は助かり、こうして元気に過ごしている姿、特に冬の雪景色のタンチョウをみなさんもぜひ見に来てください。

 新しいパートナーと将来めぐり合って鶴の舞う姿を見せてほしい願いはあります。

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タンチョウのコウセイ

(タンチョウ舎・ちんぱんじー館担当 高井正彦)

レッサーパンダの名前が決まりました

 10月になり、レッサーパンダにとっては過ごしやすい季節になってきました。
 SNSにも随時掲載しております、仔の続報です。
 ようやく竹をかじるようになってきて、日中も外でのびのびと遊び回っている状況であり、母親の渝渝(ユーユー)も外放飼場で授乳を行うほどに落ち着いています。
 また、レッサーパンダの仔の名前が決まりましたので、ご報告させていただきます。

 【仔の名前】
 オス「菫菫(ジンジン)」
 メス「茜茜(チェンチェン)」
となります。

ジンジン  チェンチェン

左の写真「菫菫(ジンジン)」  右の写真「茜茜(チェンチェン)」


 現状の個体識別の方法に関して、菫菫は目の周りに『S』がくっきり見えます。
 茜茜は目の周りの茶色模様が顔の中央側により伸びています。
 個人的には『S』で見分けるのが分かりやすいかなと思います。
 とは言うものの、上から見るとさっぱりですが。。。


 名前に関しては、「花の名前」「音の雰囲気・呼びやすさ」「顔のイメージ」を元に決めました。
 菫は「すみれ」で、茜は「あかね」となります。
 名前は最後まで悩みっぱなしでした。
 椿(つばき)や葵(あおい)、薊(あざみ)など色々な候補が自分の中でありました。
 特に楡(にれ)が個人的に激アツだったのですが、読みがユーユーにしかならず断念でした。
 もちろん生まれる前から名前を決めておく担当者もいるでしょうし、私のように顔つきが整ってきてから最終決定をする飼育員もいます。
日本だけでなく、世界にも発信される名前なので、じっくりしっかりと時間をかけて決められて良かったのかなとは個人的には思っています。

 さて、近況の様子に関しては、まぁ菫菫が困ったものです。
 おととし生まれの蓮蓮(レンレン)はかなりのやんちゃなのですが、当時の蓮蓮よりも身体能力も高く、まだ無理だろみたいなところもズイズイ登っていくので、正直どきどきです。
 とは言うものの、本来レッサーパンダは木の洞で子育てをする生き物であり、赤ちゃんだからと我々が過保護にしているだけで、能力的にはきっとまだまだ持て余しているのだろうなと飼育員ながらに思い知らされる日々です。


 公開に関して、現在は放飼練習中であり、晴れている日はシュート(室内への扉)を開放して、半日程度の放飼を行っています。
もちろん親子の様子や天気・気温次第になりますので、あらかじめご了承ください。
一担当者としては、仔だけでなく、他の大人の個体も素晴らしい魅力があるので、仔が出ていようと出ていなかろうと楽しみに来て欲しいのですが。。。

 レッサーパンダの近況に関してはSNS等で発信していくので、引き続きあたたかく見守っていただければと思います。
 

小獣舎・両生類・は虫類舎担当:鈴木達也