旭山にゅーす・ぶろぐ

【しいくのぶろぐ】一覧

このページでは「しいくのぶろぐ」の記事のみを掲載しています。

「しいくのぶろぐ」飼育展示スタッフによる日々の出来事や想いなどを綴ったブログです。

2022年7月のしいくのぶろぐの記事

レッサーパンダの近況

 先日お伝えしたとおり7月5日(火)にレッサーパンダの「渝渝(ユーユー)」が2頭の仔を出産しました。

 渝渝は今回の出産を含め11頭もの仔を育ててきたので、子育てに関しては安心して見守ることが出来るベテランお母さんです。

 例年は3日間ほど産箱に籠もりきりになってしまうのですが、今年は出産した日からエサを置くとすぐに食べに来るほど落ち着いており、生後0日の赤ちゃんを初めて生で見ることが出来ました。

 150g程度だった体重も、今では500gまで増えており順調にすくすくと育っています。

 まだ目は開いていませんが、徐々に体色も付き始め、動きもかなり活発になってきました。

 性別もすでに確認しており、おととし同様にオスとメスです。

 顔立ちや性格を踏まえた上で名前を決めていくので、もうしばらくお待ちください。

模様も出てきました

模様も出てきました

 展示に関しては親子の体調や成長具合によりますが、例年どおり10月頃になるのかなと思います。

 また、産箱内の様子が見られるモニターに関しては、出産直前に渝渝にカメラを破壊されてしまったため、準備ができ次第の公開となりますのでそちらも楽しみにお待ちいただければと思います。

レッサーパンダ・両生・は虫類担当:鈴木 達也

チンパンジーに4年ぶりの赤ちゃんが誕生しました

 4年前の赤ちゃん、メスのニコルは生後3ヶ月でオスの個体に乱暴され事故が起きてしまい大変残念な出来事がありました。(2018年6月14日しいくにゅーすより)その後、出産例はありましたが上手く育たない状態が続き、メスの高齢化や近親交配を避けて避妊など行ってきました。

しかし、今回近親交配を避けていた群れの中で、フルト(41才)が6月22日に7年ぶりの出産をしました。性別は不明です。

 複雑な心境ですが、生まれてきてくれた命には素直に喜びたいです。ベテランの母親はしっかり赤ちゃんを朝も夜も離さず抱きしめています。生まれてから3才半から5才くらいまで母親のお乳を吸っていますので母子はいつも一緒で深い絆で結ばれます。母親は約5年周期で次の出産ということになります。さて、赤ちゃんは生まれてから少し弱い子で心配しましたがひと月の間で随分大きく成長しました。

チンパンジー子ども

6月22日に産まれたチンパンジーの赤ちゃん

 赤ちゃんの生まれながらにして3つの行為が反射的にできる様子もみられます。一つ目は、腕を広げての先にある母親のおなかの毛をつかみ、しがみつきます。足の力はまだ弱いので母親が手で抱きかかえます。二つ目は、母親の乳を探します。頬に刺激があると口の方に持っていくことです。三つ目は、乳首を吸うことです。人も含めてサルの仲間に共通したことと言えるでしょう。子どもは母親にしがみつき、母親は子どもを抱きかかえて愛情たっぷりと成長していく姿が微笑ましく思います。繁殖成功と言える時期(生後半年)を楽しみに見守ってくだされば幸いです。

ちんぱんじー館・タンチョウ舎担当 髙井正彦

ぺんぎん館での3ヶ月

 はじめまして。4月からペンギン担当として勤務しております、川勝と申します。

 大阪出身で、3月までは一般企業で経理の仕事をしておりました。小さい頃から動物が好きで、学生時代に動物の生態や環境について学んでいたこともあり、飼育員として採用いただきました。飼育員となり3ヶ月が経ち少しずつ業務にも慣れてきましたが、日々生き物と接することの責任を感じております。今回は3ヶ月間ペンギンを担当して、感じたことをお話したいと思います。

 まず、衝撃を受けたのは、エサの時間(もぐもぐタイム)でのペンギンの個性の強さです。ペンギンたちはよく人を見ており、3か月経った現在でも私からエサを食べないペンギンもいます。どうしたら食べてくれるだろう?と食べ方やタイミングなど、飼育している46羽それぞれの個性を見極めてエサをあげることができるよう、歩み寄っていきたいと思っています。

 現在の私の課題は潜水作業です。1ヶ月に数回、ぺんぎん館のプールを掃除します。具体的には水中で体勢を維持しながらガラス面を擦ったり、掃除機をかけたりします。潜水作業を行うには潜水士という国家資格が必要で、この資格は学生時代に取得していました。また、趣味で海でのダイビング経験は有りました。しかし水中で作業を行った事はなかったため、プール内で浮いたり沈んだりしてしまい、まだまだ練習中です。早く先輩方のように潜れるよう慣れていきたいと思います。

 さて、先日もブログにてお伝えしましたが、6月17日にキングペンギンのヒナがふ化しました。毎日大きな声で鳴き、元気に育っております。体重は1ヶ月で10倍以上になり、成長が早いなと感じました。是非足を運んでいただき観察いただければと思います。

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ふ化当日のヒナ。体重は200gほどでした。

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 7/17(30日令)のヒナ。体重は2,640gになりました。毎日体重を測っています。

 まだまだ未熟な点が多くありますが、日々変化するペンギンたちの魅力を伝えられるようになりたいと思っております。また、私自身お客様との会話から気付きを沢山いただいております。ぺんぎん館で見かけた際は是非話しかけてください!

(ぺんぎん館担当:川勝 優衣)

キングペンギンの雛のふ化のお話

 6月17日にキングペンギンがふ化しました。今回は、このヒナのふ化のお話です。

 毎年、キングペンギンが産卵すると卵はふ卵器へ入れ、親には偽物の卵を抱卵させます。ふ化したら、その偽物の卵とヒナを交換します。そうすると親は自分で孵したと思って、そのまま育ててくれます。

キングペンギンは、はしうちしてから雛が孵るまで48~72時間かかります。時間がすぎても卵から出てこられないと、そのまま死んでしまうので、飼育係が殻を割ってふ化を介助することがあります。ふ化できない雛は、体が十分に成長していないこともあるので、必ずしもそれがうまくいくとも限りません。

今回は72時間たってもふ化しませんでしたので、雛の状態を見て介助すると判断しました。体を傷つけないように、卵を慎重にすこしずつ割っていきます。雛は介助後も元気そうでしたので、もう少し待つと出てこられたのかもしれませんが、その判断は難しく、毎回迷います。

今は両親の元、順調に成長しています。ふわふわの茶色い綿羽が生え、愛らしさが増してきました。しばらくは室内展示場にいるのでぺんぎん館内でご覧ください。

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(ぺんぎん館・ダチョウ・ヤマアラシ担当:田中 千春)

モカの独り立ち

 今年の4月、閉園期間中にオランウータンのモカの独り立ちを行い、3年に及ぶ兄モリトとの同居を終了しました。

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独り立ちしたモカ

 令和元年にモカの母であるリアンが急死し、当時4歳になりたてのモカが孤児となりました。孤児となったモカですが、エサに困ることはないため、そのまま一人で暮らすこともできましたが、精神面の成長のことを考え、当時すでに独立していた兄のモリトとの同居を試みました。モリトが穏やかな性格であることや、モリトの独立後もたまにリアン親子と一緒に過ごさせていたことなどが功を奏したのか、同居は成功し、モリトは保護者のようになってくれました。あくまで母親ではないので、モカにとっては頼れる大人といった感覚でしょうか。


 オランウータンは群れを作らない動物です。仔育て期間が長く、一人の仔が独立するまでに7~10年ほどかかり、その間は基本的に母と二人だけで暮らします。仔は一人で生きていくために、エサの取り方や探し方、他の個体との距離の取り方など、「オランウータンとしての生き方」の全てを母親から学びます。母親の存在は精神的にも肉体的にも仔の成長にかかせません。野生では考えられない兄と妹の二人暮らしという形でしたが、この同居はモカの精神の安定や成長に良い影響があったと考えています。

 お互い良い遊び相手になり、寒い時には寄り添って暖め合い、モカがやんちゃをしすぎた時には怒っても、本気で激怒するようなことはありませんでした。エサの時だけはやさしさが一切無くなっていましたが、とても良い関係で同居できていたのはモリトだったからこそと思っています。


 モカは今年7歳になりました。野生のオランウータンでも早い個体なら独立しはじめる年齢になったこと、モカの性成熟まではまだ猶予があるものの、近親交配の可能性があることなどから同居を終了し、モカは独り立ちとなりました。

同居解消後、モリトは気にした様子も無く普段どおりでしたが、モカは不安そうな声で鳴いたり、イライラしたりしていました。寂しさもあったのだろうと思います。しかし独り立ちから2ヶ月以上たち、今のモカは大分おちついてきています。


 モカとモリトは今後、オランウータンらしい一人暮らしをすることになります。

 モリトは独り立ちした後にモカと同居となり、遊び相手がいる状態で長く過ごしたためか、年齢のわりに少し子どもっぽいところがあります。一人暮らしに戻り、これからは立派な大人のオスになっていくでしょう。そしてモカは独り立ちの寂しさを乗り越え、一人前のオランウータンに成長していくはずです。彼らの今後をぜひ見守っていただければと思います。

(オランウータン担当 中野 奈央也)

2022年7月9日 しいくのぶろぐ

「55th」

「55th」

 7月1日、旭山動物園は開園55周年を迎えました。1日が平日だったので「どうせなら2日の土曜日もやっちゃう?55の節目だし・・・」ということで、2日間にわたりいろんなイベントを行いました。飼育員の回顧トークや○×クイズ、あちこちで行われたマルチポイントガイドばどなど、どのイベントも盛り上がり、やってる私たちもとても楽しいひとときでした。

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○×クイズ

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人形劇

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働く車大集合

 中でも初の試み、午前0時から始まる「真夜中のインスタライブ」「そんな夜中に誰が見る?」と想っていましたがフタを開ければ常に1800人くらいの人が見てくれていて、トータル1万人の方が視聴してくれたという結果にビックリです!

 みなさん、楽しんでいただけたでしょうか?

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 個人的には、この日用に作った「55thスプレーアート看板」新境地でございます。処女作ゆえ出来はいまいちですが、腕を磨きまたトライしてみようと想っています。

 60年、80年、100年とまだまだ頑張っていきますので、これからも旭山動物園をよろしくお願いいたします。みなさん、ありがとうございました。

(副園長 あざらし館 てながざる館担当:中田 真一)

キンクロハジロのヒナが生まれました

 6月19日の朝、ととりの村の大池を見るとキンクロハジロのヒナが3羽、母鳥と一緒に泳いでいました。

 その3羽はフラミンゴとととりの村の間にある出入口の近くで卵を抱いていたキンクロハジロの卵から孵ったヒナでした。

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 キンクロハジロは潜水が得意なカモですが、ヒナたちも卵から孵るとすぐに泳ぎ回り潜ることもできます。

 ととりの村では、鳥たちの間で闘争などもあり、ヒナが産まれても死んでしまうこともありますが、キンクロハジロのヒナたちは、母鳥がしっかりとヒナたちのことを見守っているため、順調にすくすくと成長しています。

 3羽のうち、1羽だけ好奇心旺盛ではぐれがちなので、2羽しか見つからない時にはいつもドキドキします。

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水を飲むキンクロハジロのヒナ

 ヒナがかえると、育雛用のペレットと大人が食べるペレットを砕いたものを混ぜて池にまきます。

 最近では、陸に上がって餌台にある餌を食べようとする姿も見られました。

 クチバシがまだ小さいため、ペレットを池まで運んで食べようとする姿に、成長を感じました。

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羽繕いするキンクロハジロの親子

 ととりの村では、今も3羽のキンクロハジロが卵を抱いています。

 3羽のキンクロハジロたちが安心して卵を温め、ヒナを育てられるように環境づくりをがんばりたいと思います。

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 余談ですが、ととりの村では毎年野生のスズメも繁殖しているようで、少し薄い色をしたスズメの幼鳥が餌を食べたり砂浴びするのを見かけることがあります。また、網の外ではカラスが巣を作って子育てをしているようです。

 アオダイショウも細くて短い若そうな個体が多く、飼育動物以外でも新たな命が生まれているのを感じました。

(ととりの村・オオカミの森担当:原田 佳)