2021年5月のしいくのぶろぐの記事
2021年5月31日 | しいくのぶろぐ
シンリンオオカミ「マース」について
シンリンオオカミ「マース」について
5月25日の朝、シンリンオオカミの「マース」が死亡しているのを確認しました。
「マース」は「ケン」との間に子を産み育て、長い間この旭山動物園でオオカミファミリーのお母さんとして飼育されてきました。
白い毛色をしていて、性格はおっとりマイペース。
普段からどの個体よりもエサを食べたがる、少し食いしんぼうなところがある個体でした。
そんな「マース」に変化が起きたのは5月22日のことでした。
朝から「マース」がいないと連絡があり探してみると、オオカミたちがいつもいる岩山のすぐ近くにオオカミたちが 掘った穴があり、そこから顔を出しこちらを見ている「マース」がいました。
私たちが近づくと穴から出てきてこちらを向いて伏せ、離れるとまた穴に戻っていきました。
帰り際にまた見に行くと、他の3頭は「マース」の近くで寝ていました。
時々「マース」に近づき、どの個体なのかは確認できませんでしたがクンクンと鳴き声がしました。
次の日も、その次の日も「マース」は朝から穴の中にいました。
他の3頭も同じように「マース」の近くで寝たり、周りを歩いたりしていました。
そして5月25日の朝、「マース」は穴の近くで園路側に顔を向け横になり動かない状態でした。
他の3頭は伏せの状態で岩山の上からこちらを見ていました。
外傷はなく、他の個体と争った様子もありませんでした。
解剖の結果、死に至るほどの大きな病気はなく、老衰・心不全ということでした。
生きている以上いつかはやってくる死。
野生とは違い動物園には獣医師もいるし、病気や怪我をした時には手術もできます。オオカミについては、独自の社会性を持っているため、入院や隔離などをすることにより、群れの関係性を壊してしまう恐れもあるため、病気や怪我をした時の対応も気を使います。
「マース」は死亡するほんの数日前までよく食べしっかりと歩き、群れの中で最後を迎えました。
旭山動物園にはたくさんの種類の動物たちが暮らしていますが、私たち飼育員が動物のことをよく見て理解することによって、その動物らしく、その個体らしく死を迎えることができるように考えていきたいです。
また、動物たちの生き様を伝えていけるような命の伝え方ができるといいなと「マース」の最後を見て思いました。
「レラ」・「ワッカ」・「ノチウ」は、「マース」の死後も元気に過ごしており、「ワッカ」が上げた尻尾を振りながら「レラ」に近づいていったり、「ノチウ」が「ワッカ」にクンクン鳴きながら近づいていったり、3頭で顔をくっつけたりする様子が見られました。
「ケン」と「マース」がつくりあげた群れは子どもたちだけになってしまいましたが、今後とも、みんなに慕われ立派に群れを率いて来た「ケン」と、おっとりマイペースに群れの中で一生を遂げた「マース」の背中を見て育った旭山動物園のオオカミたちを見て楽しんでいただけると幸いです。
マース(2021年4月撮影)
元気に過ごしています
マースにお花をありがとうございました
オオカミの森・ととりの村担当:原田佳
2021年5月31日 | しいくのぶろぐ
孵化から5ヶ月経ちました
爪の手入れ
5月になっても肌寒い日が続いていましたが、やっと春らしい気持ちのいい日がやって来ました。
春だからというわけではないのですが、何か最近ちょっと心が浮き立つことがあったかなと考えてみると一つありました。それは久しぶりにやった爪のお手入れです。
この仕事では伸びた爪は邪魔なので普段から短く切っています。そんな爪でも形を整えて表面をピカピカに磨くところまでやると、見た目もさわり心地もよくて仕事中もなんとなく触ってしまいます。爪切りはめんどくさいことの一つですが、きちんとやってみるといい気分が続くものだなと思いますが皆さんはどうでしょう。
さて、人である私は爪の手入れを定期的に道具を使っておこなっていますが、動物たちはどうやって手入れをしているのでしょうか?爪の形は平爪、鈎爪、はたまた蹄など様々ですが、それらの爪はそれぞれに役割があり、動物たちは常に爪を使っているので特に意識しなくても自然とちょうど良い状態に削れていきます。ある意味手入れが行き届いているといえます。その完成度は動物園で働いているとごくまれに体験する機会があります。
例えばワシやフクロウの仲間の鈎爪は獲物を捕まえる武器ですが、動物園で捕獲に失敗して足で捕まれた際、爪が革手袋越しに手に食い込んだ時には痛みに悲鳴を上げました。また、チンパンジーは人と同じ平爪ですが、おやつをあげた時にちょっと爪で手をさすられるとまるでピーラーでむかれたように薄皮が剥けたこともあります。
そんな経験もあって、動物と相対する時は爪にも充分注意を払って仕事をしています。ただ何事も例外はあって、老齢だったり、どうしても運動量が足りない場合は爪(蹄)が伸びすぎ、歩くのに支障をきたしてしまう動物もいるので飼育員が切ることがあります。当園だとキリンの雄の蹄が伸びすぎるので蹄を切るための訓練を行った結果、定期的に切ことができる様になりましたし、高齢なヤギたちは定期的に保定して蹄を削っています
爪は人でも健康のバロメータとも言います。皆さんもたまには爪のお手入れに本腰を入れてみるのも良いかもしれませんね。では!
チンパンジーの爪は人と同じ平爪ですが・・・
旭山動物園主幹:池谷優子
【カナブン襲来】
今年度、アフリカ水槽では新規に動物を導入しました!その名も・・・
ウガンデンシス・オオツノカナブン です!
上の写真がオス。4月に羽化しました。そして下の写真が、
メスです。3月羽化。
あさひやまの動物の中で、おそらく一番長い名前ではないでしょうか。ウガンダにすむ角を持ったカナブン。だからウガンデンシスオオツノカナブン!
オスには立派な角があります。なかなかカッコイイでしょ?
アフリカ大陸では大型のカナブンやハナムグリが繁栄しています。そのブン、大型のカブトムシの仲間が少ない、といわれています。
「これだけ大きくてツノもあるなら、もうカブトムシに分類すればいいじゃん」そう思ったあなた!カブトムシとカナブンのちがいを教えてあげましょう。
カブトムシやクワガタは飛ぶとき上翅(甲羅のような翅)も下翅も開いて飛びますが、カナブンは上翅を閉じたまま、すき間から下翅を出して飛びます。そのためカブトムシより素早く飛ぶことができる、という違いがあるのです。
成虫寿命は数か月と思われます。まずはこのペアを繁殖させるのが至上命題ですね。
かといってオス・メスを常に同居させると交尾しすぎて更に寿命が縮んでしまいかねないので、別のケースで飼育しながら、担当者の判断でペアリングさせてみようと思います。
5月10日には最初のペアリングをしました!
深く交尾できたかどうかはハッキリしませんが・・・。今後の産卵に期待です!
今年は繁殖優先ということで、お客さんからはちょっと見づらい状況もあるかもしれません。でもそのブン、ぶろぐ等でカナブン情報をお伝えしたいと思っておりますのでご了承ください。
(アフリカ水槽担当:大西 敏文)
2021年5月11日 | しいくのぶろぐ
【シマフクロウ繁殖記~第3弾】
【シマフクロウ繁殖記~第3弾~】
みなさんこんにちわ~ 新人(2年目)飼育員の荒木地です。
これまで発信してきた『シマフクロウ繁殖記』ですが、本日最終回はみなさんにご報告があります!ついに最終回です~。
「片目のないメス モコ」
「オス ロロ」
3月9日、13日にメス(モコ)が卵を産みました。有精卵であれば「4月中旬に孵化予定!!」とお知らせをしていました。
ですが、残念ながら卵はどちらも「無精卵」でヒナは誕生しませんでした!(>_<)
絶滅危惧種のシマフクロウ、期待が大きかっただけに残念ではありますが…今シーズンは繁殖ならずという結果になりました。来年以降にこうご期待です~。
ただ、飼育員としては、この繁殖期を通し2羽の絆の深さを感じることができ大変貴重な時間でした。モコもロロも現在は一段落して、落ち着いています。今後とも、どうぞ温かく見守っていただければ嬉しいです!
「最近よく並んでいます」
監視カメラで撮影した「オスがメスへ餌を運ぶシーン」をみたい方はぜひこちらからどうぞ!👇
<動画のリンク>youtu.be/tpuWtqf87PY(新しいウインドウが開きます)
さて、大切な報告が終わったところで、話は移ります。これまで、旭山のシマフクロウの巣箱についてや、保護活動をしているコタンコロカムイの会さんの活動についてお話してきました。
今回は、最終回ということで現在最も問題になっているシマフクロウの『事故』について話を膨らませたいと思います。”猛禽類医学研究所”で話を伺ってきました。
シマフクロウの死因として、多く挙げられるのは「交通事故」です。夜、餌となるカエルを捕るため道路に出たシマフクロウが、走ってきた車と衝突して起きます。車のヘッドライトは、フクロウにとって目くらましとなり、大抵は顔面衝突し即死のようです…。旭山で飼育しているメス(片目がない)も、交通事故に遭ったと考えられています。
そういった事故を防ぐために、猛禽類医学研究所の方々はさまざまな活動を行っています。下の写真は止まり防止器具です。👇ガードレールにこれを設置することで、フクロウが道路に飛び出すのを防いでいます。
止まり防止器具
モノクロの世界を生きてるフクロウにとって、赤と黄色が一番識別しやすいそうです(猛禽類医学研究所さんより)
そのほかにも、フクロウに音で危険を察知してもらうため、凹凸のある道路つくりなどにも取り組まれています。どちらもフクロウ側に距離をとってもらおうという働きです。
ですが、それだけでいいのかなと疑問に思いました。私たち人間も、車を走らせるときには野生動物にも気を配ってみませんか?
今回は、シマフクロウの交通事故についてお話しましたが、野生動物と人間との問題はたくさんあります。私自身勉強中の身ですが、まずは知ることから始めようと思います。ですので、みなさんもぜひ話を見聞きした際には、共有してください!身近な人にでも、SNSでも。人間と動物が共生できる社会をコツコツと少しずつでも、みなさんと作っていけたらと思います。
それでは、『シマフクロウ繁殖期』最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!!皆さまどうぞご自愛ください。
2021年5月10日 | しいくのぶろぐ
【夏期開園はじめました】
【夏期開園はじめました】
昨年度は緊急事態宣言にともない、5月いっぱい休園ではじまった夏期開園ですが、今年はなんとか例年通りの4月29日にはじまることができました。
さて、そんな開園に向けて4月の休園期間中というのは、私たち飼育スタッフにとっては動物舎のエンリッチメントや看板などをリニューアルする期間になります。
私はというと、昨年秋から担当になったトナカイで迎える初めての春ということで、看板類などを作成しました。
動物舎の看板というのは、担当者が一番見てもらいたい、伝えたいというところを表現する場になります。
トナカイの特徴と考えたときに、「シカの仲間の中で、唯一オスメス両方に角がある」と思ったことから、今まで展示していた落ちた角の展示をバージョンアップして等身大の角展示を作りました。
開園してみると、足を止めてくれる方も多く、なかなか満足いく結果となりました。
一方で「トナカイの角って生え替わるんだー」という声も聞こえてきて、私たちが当たり前に思っていることも、まだまだ伝えなければいけないのだとも考えています。
また、開園して楽しみなのは、他の動物舎の展示を見ることです。
意外と他の人が何を作っているのかはわからないもので、思わぬ大作や斬新な表現に驚くこともあります。
みなさんも夏期開園でリニューアルしたところを探しに来て下さいね。
トナカイの角展示・等身大シルエットと共に
(獣医師・トナカイ担当:中村 亮平)