旭山にゅーす・ぶろぐ

【しいくのぶろぐ】一覧

このページでは「しいくのぶろぐ」の記事のみを掲載しています。

「しいくのぶろぐ」飼育展示スタッフによる日々の出来事や想いなどを綴ったブログです。

2021年2月のしいくのぶろぐの記事

「うんち!」

 ※今回のブログでは、うんちの画像を使用していますので、あらかじめご了承ください。


 「突然ですが皆さん、うんちの絵を描いてみてください。」

 と言うと、おそらくこんなうんちを書く方が多いのではないでしょうか?

うんちの絵

ザ・うんち


 皆さんは実際にこんな形のうんち見たことありますでしょうか?

 少なくとも犬や猫のうんちでもあんな形のものは見たことないし、いや、まさか他の人はあんな形のうんちをしているのか?

 と、自分の中で長らくの疑問であり、これがうんちのイラストとして一般化されているのも不思議なものだなと思いながら日常を送っていました。

 念願のうずまき

念願のうずまき


 ついに、ついに、ついに発見しました。

 これはレッサーパンダのチャーミンがペレット(固形飼料)を食べた後のうんちです。

 毎日あるわけではなく、稀にこの形になるようです。

 最初に発見したときはとてつもなく感動しました。

 ただ、SNSにこんな画像を上げるとBANされかねないので、ブログだなと思い温めておいた写真です。


 さて、ここから真面目な話もしますが、レッサーパンダの『主食』は植物でありながら、消化器官は肉食の構造をしているので、植物をあまり上手に消化することが出来ません。

 また、人間のようにご飯とおかずを交互に食べるような食べ方もしないので、好きな物から順番にまとめて食べていきます。

 結果として、レッサーパンダのうんちは食べた物の種類ごとに未消化のものが混じった状態で排泄されます。

 例えば、竹のうんちは竹の繊維が混じっており、ふんわりと竹の匂いがします。

 リンゴのうんちはリンゴの実や皮が混じっており、甘い匂いがほのかにします。

うんちの写真

 左から、竹・リンゴ・ペレット


 そんなうんちを実際に見れるのがこちら。

大人気生うんち

大人気生うんち


 毎日その日出た新鮮なうんちを展示しているので、匂いも残っていることと思います。

 うんちというのはすごいもので、やんちゃ盛りのちびっ子から、おふざけが楽しい学生達、純粋に興味を持ってくれる大人の方まで、老若男女問わず興味を示してくれる展示物なんだなと深々と思います。


 もちろん我々飼育員にとっては貴重な情報源であり、動物のうんちでも健康状態をチェックします。

 うんちの中に寄生虫や血が混じっていないか。柔らかさや色。異物を飲み込んだときはきちんと排泄されているか。

 また、うんちからホルモン物質を調べたりと研究にも使われることもあリます。


 動物園に来た際も、「どうしてカバはうんちをわざわざ撒き散らすんだろう?」とか、「ヘビはうんちをどこから出すんだろう?」みたいに、何か一つのテーマを持って見て歩くと普段気にならない新しい気付きが発見できるかもしれませんね。


小獣舎・両生類・は虫類舎担当:鈴木達也

【アフリカウシガエルの捕食】

 奇蟲ファンのみなさん、こんにちは!大西です。

 さて今回はアフリカウシガエルをご紹介しましょう。

1

 こう見るとコミカルな?表情をしています。大きなお口がキュート!

 しかし彼らの口が大きいのは「口に入るものなんでも食べてしまう」から。野生下では昆虫のみならずネズミや小鳥まで捕食するといわれます。獰猛な捕食者でもあるのですね。

 動物園では餌に何を与えているかというと・・・

2

 ジャジャーン!マダガスカルゴキブリです!!

 マダゴキは順調に繁殖しているので、増えた個体はウシガエルの餌とすることで、園内で生態系が成り立っているのです。

 ウシガエルが動いているところを見たことがある来園者の方はほとんどいないかもしれません・・・でも給餌の時は驚くほどのスピードでマダゴキを捕らえます。

 このたびウシガエルの捕食シーンを動画に収めましたので、アップします!

 ある研究によると、カエルが舌を伸ばす速度は秒速4000mだそうです。マッハ12に相当し、ジェット戦闘機の約4倍です。

大型種であるアフリカウシガエルの舌はマッハ12までは無いかもしれませんが「本気出したら素早い」というのはご覧いただけると思います。

「活き餌を食べるシーン」に抵抗がある方もおられるでしょう。でも、旭山で一貫して行っている「行動展示」や「もぐもぐタイム」。捕食も重要な行動の一つですし、餌イコール「他の動植物のいのち」です。いのちがいのちを食べるのは自然な事なのです。

 私たちは毎日を過ごす中でいのちを奪い「いただいている」ことを実感することがほとんどありませんから、「自分も毎日いのちを食べている」という当たり前の事を忘れてしまいがちですね。

 ちょっと衝撃的かもしれませんが、動物の能力、そして命の恵みへの感謝を感じていただきたく、こうした動画もアップしていきたいと考えています。

「どうしても見たくない」という方は視聴をご遠慮ください。

 ↓↓ご覧になりたい方はこちらをクリック!

youtu.be/pHc63pPF1Bk(新しいウインドウが開きます)<リンク先>【閲覧注意】アフリカウシガエルがマダガスカルゴキブリを捕食

(アフリカ水槽担当:大西 敏文)

【ヘコんでるわー。】

 皆さんこんにちは。今年の冬はいかがお過ごしでしょうか?

 今回は冬のペンギンたちの様子をお知らせしたいと思います。

1

 この写真はぺんぎん館の放飼場。外の地面を写したものです。黒っぽくなってる所、この部分は雪(氷に近い)がヘコんでるんですけど、何のヘコみかというと・・・

 ジェンツーペンギンが腹ばいで寝ていた跡なんです。

2

 これは砂利の上ですが、イメージとしてはこんな感じ。

 すっかり体の形に雪がとけてますねー。

3

 最近のキングペンギンは、日中比較的外に立っている事が多いうえに、動かない!!なので足型のヘコみがいっぱいできます。

 少し暖かい日はペンギンの足の模様までハッキリ。(ブツブツ キャー>*0*< )

4

この足型がハッキリ残ります

 私たち人間だってはだしで雪の上に立てば足型にヘコんでいくでしょうが・・・ねー!!

まずやりたくないですねー。サムイ。

ペンギンって足冷たくならないの?なんて声も聞こえてきますが大丈夫!それに暖房がきいている。自由に出入りできる放飼場もあるので、寒かったり冷たかったりすればそちらへ移動すれば良いのです。まあつまりは自らの意思で外に居るってことですね。

ジェンツーペンギンの場所はヘコみが深くなったりするので、同じ場所に何度も来てるんでしょうね。お気に入りの場所なのかしら?

私はフンボルトペンギンと同じで暖かい方が良いので、早く春になる事を願っています←切実

(ぺんぎん館担当:木下 友美)

ヒトに近い類人猿?

 昨年11月に担当動物の変更があり、新たにオランウータンと北海道産動物の担当になりました、中野です。


 担当するオランウータンに(ちょっと)関わる話をしてみようと思います。


 オランウータンの仲間は分類上、我々ヒトに近い類人猿といわれる動物のひとつです。類人猿は他にチンパンジーの仲間、ゴリラの仲間、そして意外に思う方もいるかもしれませんが、テナガザルの仲間も類人猿です。類人猿(とヒト)に共通の特徴はいくつもありますが、一番分かりやすい点は尾が無いという部分です。これら類人猿はヒトに近い生物として知られていますが、よりヒトに近い順に並べていくとどうなるか。


チンパンジー
チンパンジー
ゴリラ
ゴリラ(台北市立動物園にて撮影)
オランウータン
オランウータン
テナガザル
テナガザル



 最も人間に近いのはチンパンジーの仲間(チンパンジーとボノボ)です。これは聞いたことがある方も多いと思います。次に近いのはゴリラの仲間です。その次に近いのがオランウータンの仲間で、その次がテナガザル科のサルたちです。この次までいくと、類人猿を通り越して尾を持ったサルたちになってきます。


 ではそもそも分類上、あるいは進化系統上、近いというのはどういうことかというと、それぞれの祖先を遡った時に共通の祖先に辿り着くのがより早い、ということです。これは家系図をイメージすると分かりやすいかもしれません。

 例えば、自分と兄弟がいたとして、家系図を遡っていくと出会う共通祖先は親(父母)です。いとこならば、祖父母の所で出会い、はとこの場合は曾祖父母のところで出会います。自分に近いのは(親や祖父母などの直系の祖先を除くと)兄弟、いとこ、はとこの順になります。これを生物種という大きなスケールで考えたものが、分類上の「近さ・近縁さ」だと思ってください。(あくまでイメージの話ですが)

 ヒトの祖先とチンパンジーの祖先を遡っていくとどこかで共通祖先に辿りつくわけですね。そしてその共通祖先のさらに祖先を遡っていくとゴリラとの共通祖先に辿り着くということです。オランウータンはその次ですね。

 さて、ヒトに最も近い生物はチンパンジーの仲間とお話しましたが、これには条件がつきます。それは「現在の地球上に生息する」という点です。

 この条件をつけないのであれば、ヒトに最も近い生物は「ヒトの直接の祖先」となります。先ほどの家系図でいうところの「親」にあたる種ということですね。我々ヒト、現生人類に至るまで、たくさんの種の人類が生まれて進化してきました。もしかしたら現生人類よりも後に生まれた種の人類もいたかもしれません。当たり前ですが、これらの他の人類たちの方が、チンパンジーより我々に近いですよね。

 しかし現在の地球で最も近い生物はチンパンジーです。なぜか。答えは簡単で、現生人類以外は全て絶滅しているからです。残っていた他の人類も諸説ありますが約1万年前から2万年前くらいの間に全て滅びた(逆にいうとそのくらいの時期まではいた)と考えられています。我々は多様に進化した人類の中の唯一の生き残りなのです。そのため我々に最も近い現生生物は、近縁の滅びた人類たちを全てすっ飛ばして、類人猿のチンパンジーになってしまうんです。

 こう考えるとあんまりヒトとチンパンジーって近くないな、3番目に近いオランウータンならなおさら遠いな、という気がしてくるかもしれませんが、極めて多様な生物全体から見ると、やはりヒトと類人猿はものすごく近いと言えます。捉え方次第ですね。


 今回は少しややこしい話をしましたが、様々な生物の祖先を辿っていくのはとてもおもしろいです。興味が出た方は色々調べてみてくださいね。


オランウータン・北海道産動物(草食系・野鳥系)担当:中野奈央也