「動物のことを少しだけ考えて暮らしてみた」

最終更新日 2022年5月21日

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「動物のことを少しだけ考えて暮らしてみた」

 ブログ読者の皆様、はじめまして。

 今年の4月から旭山動物園に配属され、エゾシカ及び教育を担当している上江と申します。


 私の動物飼育経験としては、昔実家にいたネコやイヌの飼育を少し手伝ったことがあり、最近はSNSでかわいいネコの動画をよく見る、といったくらいで、多くの方々とほとんど同じか、少し乏しい経験からのスタートだったと思います。


 そんな私ですが、この約1ヶ月間で担当のエゾシカについて感じたことをお話します。


 エゾシカは、北海道にたくさん生息していて身近な動物である一方、「車とぶつかった」「農作物を食べられた」などの被害がクローズアップされており、一般的にはあまり良いイメージがない動物かもしれません。私自身もそうでした。


 私が給餌の際に初めてエゾシカと同じ空間に入った時には、そうした先行イメージと実際の体の大きさに驚き、「いつ襲ってくるのだろうか」と、非常に緊張しました。怖いばかりで、ウサギやリスといったかわいい小動物の担当の方が良かったと思いました。


 しかし、ほぼ毎日顔を合わせている今では、エゾシカはかしこくて、かっこよくて、勇ましいけど臆病で、少しのんきな一面もあり、旭山動物園で1番魅力的な動物だと感じています。(まるで親バカですが、距離感に関して油断しないよう肝に銘じております)


 自分が一生懸命掃除しているのに、ゆったりと座って、まるでガムをかんでいるかのように反芻したり、あくびをしてこちらを見ていたときは、少しイラッとして笑ってしまいました。


 これまでエゾシカは、肉や皮などを目的とした乱獲や天敵であるオオカミの駆除などにより、絶滅寸前まで追い込まれたり、現在では数が増えすぎて年間10万頭以上駆除されるなど、ヒトの行いに振り回されてきた動物といえると思います。

 だからといってエゾシカは、ヒトを威嚇したり襲ったりするわけではありません。生きるために必死に食べて、時にはのんきに暮らしたいだけなのです。私たちと同じですよね。


 エゾシカと接していると本当に多くの気づきがあり、家に帰っても動物のことをを少し考える時間ができて、環境や動物に関するニュースなども注目するようになりました。

 これから、私自身もっと多くのことを学び、展示や教育活動を通じて皆様にエゾシカや動物の魅力を伝えていきたいと考えています。


 さて、エゾシカの森では、5月におびひろ動物園からメスのエゾシカを迎え、繁殖を目指しています。また、今年もエゾシカとの共生を形にした野菜農園をつくる予定です。

 皆様もぜひ、私と一緒に楽しみながら動物のことを知ってもらえたら幸いです。

エゾシカ1

岩山でたたずむエゾシカ


エゾシカ2

角が片方落ちたエゾシカ

エゾシカ3

おびひろ動物園から来たエゾシカのメス


エゾシカ・教育担当:上江昌弘