上手者
皆さんは、かば館下にあるこのコーナー、見たことありますか?
「アフリカのゲテモノたち」
ここでは、ゴキブリ・ヤスデ・ウデムシ・イモリ・カエルを展示しています。
旭山動物園は、見たい動物を好きな時間だけ見て欲しいという願いから、園内の見学順路は設けていません。なので、しっかりと姿を見たうえで気持ち悪いとは感じて欲しいものの、苦手な人に無理強いはしません。
ただ、どうしても気になってしまうことがあります。
ゲテモノ前の来園者を見ていると、子供たちの方が、ゴキブリをまじまじと見ているように感じます。
あまり、「気持ち悪い」だとか「怖い」のような発言も聞こえません。
もしかしたら、子供たちにとってみれば、カブトムシのようにカッコよく見えているのかもしれません。
それなのに、大人たちが「気持ち悪いから次行くよ。」と見ている子どもの手を引いて行ってしまう。
このやり取りを一日何度も目にしますが、一担当者として、堪えきれない悔しさと悲しさが込み上げてきます。
どうか、【ゴキブリは見てはいけないもの。】という、一方的な先入観を、純粋な興味を持っている子供たちに押し付けないでほしい。
その瞬間が子供たちにとってゴキブリという存在の全てが、悪なのだと認識されるのだと感じます。
旭山動物園で展示しているゴキブリ【マダガスカルコックローチ】は、ゴキブリとはいうものの、羽がなく飛ぶことができません。
また動きも、手で捕まえられるほどの速さです。近くで見てみると、アリのような顔つきをしています。ほんとに気持ち悪いですか?
また、ヤスデはよく「危険な奴だー」と言われるのを耳にしますが、噛みついたりするのはムカデであり、ヤスデは臆病で草食の生き物です。危険を感じると、すぐに体を丸めてしまいます。
ウデムシに関しては、世界三大奇虫と呼ばれるほど、ものすごいフォルムをしています。
タイミングさえ合えば、腕を使ってる姿を見られるかもしれません。
虫というのは、恐らく野生で一番身近な生き物だと思います。
虫がいなくなると、虫を食べる魚や鳥がいなくなります。
そしてその魚や鳥を食べる我々人間が…と続いていきます。
食べられるだけの役割ではなくて、彼らのような虫たちが食べてくれている、死体や枯葉、微生物が増えすぎても、必ず我々人間の環境にも影響が出ます。
どうしても、カバやキリンなど大きくて有名な動物に目が行ってしまう。
けれども、そういった大きな動物の足元で、生態系を支える小さなかけがいのない存在がいることを忘れないで欲しい。そういう意味を含めゲテモノたちを展示しています。
見た目は地味かもしれない、気持ち悪いかもしれない。それでも僕にとっては、ゴキブリもアザラシもヘビもみな主役。少しでも多くの人に彼らの本来のすばらしさが伝わればと思います。
(アフリカのゲテモノたち・アザラシ館・は虫類両生類舎・飼料担当 鈴木達也)