パックから考える動物園動物の死

最終更新日 2017年10月17日

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しいくのぶろぐ【パックから考える動物園動物の死】

 

 しいくにゅーすでお伝えした通り、ヒョウ黒変種(いわゆるクロヒョウ)のパックが死亡しました。いきものを扱う動物園、生もあれば死もある。パックの死は触れなければならないでしょう。

パック 

<写真1>在りし日のパック

 

 パックの黒い体に黄色の瞳、高台に登るしなやかな動き、そして日の光を浴びて浮かび上がるヒョウ柄の斑紋。来園者の中にもパックのファンが多くおられたようです。

飼育係に向かって檻越しに飛びかかってくる野性味を最後まで保ち続けたパックには、飼育係の中にも隠れファンがいました。

「クロヒョウは別種ではなく劣性遺伝による変種である」というのをパックから知った人も多いのではないでしょうか?(じつは僕もその一人です)

 

 最後は左ほおに腫瘍ができ、そこからの感染症によって死亡したと考えられます。

5月に発見した腫瘍は実質、摘出不可能で、獣医と協力して投薬などの緩和ケアをおこなってきましたが、10月4日に死亡しました。

 

 もうじゅう館と共に歴史を歩んできたパックが死んでしまったことは寂しく感じます。

しかしヒョウの飼育下寿命が15年程度といわれる中、19才8カ月まで長生きしてくれた、ともいえます。

 パックの腫瘍を発見した5月に、奇しくもアムールヒョウの交尾も確認していました。担当者として、アムールヒョウ妊娠の経過とパックの病状の経過を同時進行で見守ってきました。動物園にたくさんの命がある中で、こうした状況も起こり得るのです。

 動物の命の尊厳を最後まで尊重し「看取る」。それも飼育係の仕事です。「命を伝える」という意味では、老いや死も生の一部です。ありのままを伝えるのが「旭山らしい」と言えるでしょう。


ヒョウ双子 

<写真2> アムールヒョウのツインズは元気に成長しています。

 

 生まれ、育ち、子を産み、そして老い、死んでいく。でも次につながる新たな命もある。

 命は継続するもの。繁殖や死は大きな出来事ですが、動物飼育にゴールはありません。

 現在もうじゅう館には16頭の動物がいて、長寿な個体、繁殖可能な若いペア、生まれたばかりの幼い命などさまざまです。それぞれの命を、担当者としてこれからも見守っていきたいと思います。


(もうじゅう館担当:大西 敏文)