ゲンちゃん日記・令和5年7月「隣り合うヒグマとヒトの生活圏」

最終更新日 2023年7月13日

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ゲンちゃん日記・令和5年7月「隣り合うヒグマとヒトの生活圏」

とんこ

母グマとヒトとの接触をきっかけに

動物園に保護された「とんこ」

例年6月は暑くなる印象ですが今年はそうでもありません。本格的な夏に備えて体を暑さに順化させる時期ですが、25度で暑い暑い!と感じてしまいます。
今年も旭山にヒグマが出没しています。この時期になると特に若いオスグマが自分の生活圏を見つけようと活発に移動します。旭山でもかなり前からその過程の中でたまたま目撃される、いわば通りすがりの一見さんグマはいたのですが、近年は旭山周辺を生活圏にしていると思われる長期滞在居座り型のクマが現れるようになりました。ただ、食べ残しのごみや空き缶を探し求めたり、平然と姿を現したりといった行動は認められていないので、すぐさま駆除しなければいけない危険なクマではありません。今のところ目的は緑豊かな旭山なのでしょう。とはいえ気になる点もあります。それは活動時間帯です。ヒグマは本来夜行性ではないのですが、慎重で臆病な性格なので、ヒトの生活圏近くではヒトが活動する時間帯を避けて行動します。目撃情報が日没後や早朝なのはそのためです。ところが近年、日中の時間帯に姿が確認されています。場所は昔の旭山スキー場中腹くらいです。ヒグマからは駐車場の車や人が見えていたでしょう。今日も閉園時に流れる「蛍の光」に何の警戒心も持たず、聞いているのかもしれません。活動時間帯がヒトと重なると、不意に出合ってしまう確率が格段に上がります。
  ヒトが優先的に占有しているつもりの土地を生みに例えるなら、旭山は大雪山から続く岬の先端のような場所です。旭山はヒト優先の場所なので、ヒグマにとって長く滞在するには居心地が悪いと感じる場所にしなければいけないでしょう。さて、どうするか・・・。
 生存競争は生活圏の確保が鍵です。自然を象徴するヒグマの勢いに、ヒトが圧倒され始めているとも言えます。ヒグマとの問題は、ヒトの勢いの衰退の必然なのかもしれません。

 

                                  令和5年7月13

                                  旭山動物園 園長 坂東 元