ゲンちゃん日記・令和4年9月「ヒグマの良心に頼った私たちの日常」

最終更新日 2022年9月14日

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ゲンちゃん日記・令和4年9月「ヒグマの良心に頼った私たちの日常」

えぞひぐま
(えぞひぐま館で「ヒグマと共に

暮らす未来」を考えてみませんか?)

お盆期間の夜の動物園も無事に終了しました。期間を通しての来園者はコロナ以前の8割ほどでしたが、16時以降の夜間の部の入園者はコロナ以前よりも多くの方が来園されました。3世代そろっての方々、若い世代の来園者が多い印象を持ちました。

8月に入り、旭山公園でヒグマの目撃がありました。例年のことなのですが今年は状況が違う可能性があります。この時期に郊外で目撃されるヒグマは、親から離れた若い雄グマが自分の生活圏を求めてさまよい出てくる「一見さんグマ」がほとんどで「そのうちいなくなる」のですが、今回は自分も目撃し、旭山のとんこよりも体格の良い成獣でした。

今年は21世紀の森から旭山近郊にかけて家庭菜園などの食害が多く、足跡から複数のヒグマが食べ物を求めて出没しているようです。ヒグマ注意報が発令される事態になっています。

庭先の被害は気づきやすいですが、山や川に隣接する農地の「盗み食い」には気づきにくいのが実態に思えます。エゾシカ、アライグマも多く生息しているのでヒグマの被害だけを特定するのも困難だと思います。夏から秋にかけては山の恵みは非常に乏しい時期。反対にヒトの生活圏では実りの時期になります。ヒグマが本格的にヒトの生活圏を取り込み始めた兆候なのかもしれません。

と言うわけで、今年は旭山近辺を拠点に活動する長期滞在型ヒグマ出現の可能性があります。ヒグマはヒトを狙って旭山に現れたわけではありませんが、不意に出会ってしまうと危険なので旭山公園は封鎖しています。ただ人払いをするとヒグマにとってはますます居心地のいい場所になります。対応は難しいですね。 

今は本来臆病で慎重、さらに冷静にヒトの動きを観察しているヒグマなので、日中ヒグマを目撃することはほぼありません。というかヒグマがヒトと出会うことを避けてくれています。ヒグマの良心に頼った私たちの日常が続いているとも言えます。

でもこの関係だけは壊してはいけません。この関係を壊す一番の原因は食べ物です。ゴミのポイ捨が原因でヒトと食べ物が紐づくとヒグマがヒトに積極的に近づく「悪いクマ」に豹変させてしまう可能性が高まります。

まずは山であろうが郊外、市街地であろうがゴミのポイ捨てだけはしないように!心がけましょう。 

                                    令和4年9月14

                                    旭山動物園 園長 坂東 元