ゲンちゃん日記・令和4年5月「保全・共存のプラットホーム」を目標に、夏期開園がスタートします」
この手紙を書いているのは4月中旬。夏期開園準備のため、一年で最も忙しい休園期間中です。今年の夏期開園は、約9年ぶりの大型施設である「えぞひぐま館」のオープン、ホッキョクグマの子のお披露目など、自分たちも今からワクワクしています。
エゾヒグマのメス・とんこの新居への引っ越しも無事に終わり、今は新居の寝室で過ごしていて、少しずつ慣らしている段階です。引っ越しは麻酔で眠らせて行うので、とんこにすると目が覚めたら「ここはどこ?」状態です。新居の寝室の檻や寝室の出入りの仕方などは「もうじゅう館」と同じ材質・形状にしていますが、新築の建物なので生活の気配がない無機質な空間になっています。もうじゅう館では向かいの寝室にトラがいて、にぎやかでした。とんこは、母グマが駆除されて旭山動物園で暮らすことになり、子グマの頃から今までずっと、もうじゅう館で暮らしてきました。もうじゅう館では母親にもなりました。新居に住むのはとんこだけなので、とんこも戸惑っていると思います。
でも徐々にとんこ自身の匂いや飼育員の匂い、人の出入りの気配などを感じて少しずつ落ち着ける場所になっていくはずです。とんこの生活空間として、まずは寝室と室内放飼場に馴染んでもらい、最後に屋外放飼場へ、という流れになります。もうじゅう館では発現する機会のなかった、よりヒグマらしい感性や行動が目覚めてくれると期待しています。今までよりもとんこが尊く見える、輝いて見える姿を想像しながら、えぞひぐま館を建てました。
今年、誕生から55年を迎える旭山動物園。「保全・共存のプラットホーム」を新たな目標に、スタートを切りたいと思います。
コロナ禍による空白の2年間を一気に取り戻します!
令和4年5月20日
旭山動物園 園長 坂東 元