ゲンちゃん日記・令和3年10月「身近な命を通して自然の尊さを伝えたい」

最終更新日 2021年10月17日

ページID 074093

印刷

ゲンちゃん日記・令和3年10月「身近な命を通して自然の尊さを伝えたい」

りす3
リス2

(保護された当時のエゾシマリス(左)。今では、すっかり成長しました)

 秋晴れが続いています。実りの秋ですが園内のドングリは数も少なく、小さな実が多いです。夏の日照りが影響しているようで、森の実りはどうなのかなと心配になります。
 昨年から予定外の休園期間が断続的にあり、ふと思い返すと、動物園では哺乳類の幼獣の保護の持ち込みが続きました。昨年は、解体した納屋から出てきた4頭のエゾモモンガの子、なぜか段ボール箱に入って道端に捨てられていたキタキツネの子を保護しました。今年は、伐採現場で見つかったエゾシマリスの子、交通事故で死んでしまった母親の傍らでうずくまっていたエゾタヌキの子、公園の地面でアリがたかった状態で見つかったエゾモモンガの子。今では、みんな元気に成長しています。人が親代わりなので野生に戻すことはできませんが「親別れ」をして、それぞれ他の個体との同居を始めています。将来の繁殖に備え、他の動物園と血縁関係のない個体の交換なども行っています。そういえば、保護ではありませんが、市内で有害駆除されたヒグマの年齢鑑定のための抜歯なども続きました。
 昔の旭山動物園は、飼育動物の半分以上が保護動物でした。保護される個体は、幼獣・幼鳥はもちろん、飼育下の個体ではあり得ない複雑骨折や重度の化膿性の炎症、カイセンなどの寄生虫症、農薬中毒…実に様々な状態で運び込まれてきたものです。飼育下では診ることのない多様な症例と向き合うことで、飼育・診療技術の厚みというか、幅が広がりました。
 改めて思うのは、身近にどんな生き物がいるのか知らなければ、いなくなっても気付くことすらできないということです。保護して救うことができた命は身近な自然を代表する動物大使なのだと考え、より多くの人に見てもらい、自然のたくましさ、尊さを感じてもらえるように飼育・展示していきたいと思います。

                                      令和3年10月17日

                                    旭山動物園 園長 坂東 元